アナーキストの銀行家;フェルナンド・ペソア短編集

  • 彩流社
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  • Amazon.co.jp ・本 (180ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779125997

作品紹介・あらすじ

ポルトガルの詩人ペソア 幻の小説がついに刊行!

ポルトガルだけでなく、今や世界的詩人として高い評価を
受けているペソアの、数少ない貴重な短編を編んだ
本邦初訳の作品集!―タブッキ、ヴェンダース…ら絶賛の詩人!

感想・レビュー・書評

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  • ポルトガルの詩人ペソアの小説は、本邦初訳ということで手に取る。今まで訳されてこなかったのはもしや...と思ったりもしたけど杞憂。なかなかに皮肉たっぷりだったり、奇想だったり、哀調だったりと楽しませてくれた。表題作は、俺こそは真のアナーキストだ、労働運動や爆弾持ってる奴らなんかアナーキストでもなんでもない、と嘯く友人が、滔々と我何故にアナーキストとなりしか、アナーキストとは何ぞやと捲したてる一品。聴き手は説得された体だったけど、論法が、別にその二つの選択肢に限られないのに、二つの選択肢を提示し、こちらがダメだからあちらを選択した、という連続で組み立てられていて砂上の楼閣に感じられた。改題によればそれもまた金がすべてといった風潮が見られた当時のポルトガルの世相を反映したものだったらしいのだが。「独創的な晩餐」は、なかなかに後味の悪い中編。俗物中の俗物の描いた独創とはいったい...と。なんとなくそうかなあ、いやまさかなあと思った結末に。その他の短編は、ぎゅっと短く、スケッチのような。ことわざの起源のような小話の「大したポルトガル人」。背中の病気の故、人前に出たくない娘が一目惚れした男性に綴った「手紙」。日々繰り返される存在の退屈さゆえに夫を手にかけたのだと裁判で縷々述べる妻の「夫たち」。闇夜の行軍で弾けそうでギリギリのところで保たれている精神が描かれる「忘却の街道」など。

  • 『不穏の書』を読んでペソアに興味を持ち、この本を手に取った。けれども、そこには『不穏の書』にあったような、風景と溶け合った人生についての思索はなく、ただやや鈍いポー的な大衆小説があるだけだった。

    タイトルになっている「アナーキストの銀行家」はポーから遠く離れた形式で書かれているけれども、内容といったら銀行家が正しいアナーキストのあり方についてひたすら話し続けるだけのものだ。

    銀行家が葉巻を喫うだけの描写しか地の文には表れないのに、わざわざ小説にする必要は無い。まるで悪い見本だ。これならペソアお得意の“異名”を使って思索をつらつらと書かせれば良かったのだ。

    ただ5ページの短篇「忘却の街道」はとても良かった。といってもこれは散文詩のようなもので、だからこそ良かったのかもしれない。

    ペソアは優れた詩人であり、優れた作家だ。けれども優れた小説家とはどうしても言い難い。

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著者プロフィール

Fernando Pessoa (1888-1935)
20世紀前半のヨーロッパを代表するポルトガルの詩人・作家。
本名のフェルナンド・ペソアだけでなく
別人格の異名カエイロ、レイス、カンポスなどでも創作をおこなった。
邦訳に上記4名の詩選『ポルトガルの海』(彩流社、1985年/増補版1997年)、
『アナーキストの銀行家 フェルナンド・ペソア短編集』(彩流社、2019年)ほか。
散文集『不安の書』は、ペソア自身に近い男ソアレスの魂の書。



「2019年 『不安の書【増補版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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