隔離の記憶

著者 :
  • 彩流社
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本棚登録 : 39
感想 : 6
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784779121371

作品紹介・あらすじ

社会とのつながりが絶たれてきたハンセン病、隔離の施設。
想像を絶するような絶望の人生を生き抜いた人たち。
その、あまりにも力溢れる彼らの言葉と人生を
ていねいにつむいだルポルタージュ。
時に励まされ、時に生きるヒントを得た著者は、
彼らの心の豊かさと明るく生きる姿勢に焦点をあてた。
逆風とかなしみを糧にしながらも、人生を前進させてきた
人々との出会いの物語。
俳優・吉永小百合さんがハンセン病にかかわる理由も明かされている。

❖朝日新聞の好評連載「ニッポン人脈記~隔離の記憶」を
大幅に加筆修正し単行本化。

感想・レビュー・書評

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  • 瀬戸内国際芸術祭で大島に行ったのがきっかけとなり手に取る。大島の施設のことは最後のみ。ハンセン病のことは知ってはいたものの、たしかにこの本を読むと知らないことの多さに気づく。生き方を教わりました。

  • 「ナチス・ドイツはユダヤ人だけではなく、同じアーリア人でも身体に
    障害を抱える人や、精神を病む人々を断種しようとした。日本でも
    これと同じような医療行政があったのだ。」

    瓜谷修治『ヒイラギの檻』の感想に、私はこう書いた。遠くない過去、
    日本にあったのはハンセン病療養所という名の絶滅収容所だ。

    隔離された人々の壮絶な人生は他の作品に譲る。本書は差別や
    偏見に晒されながらも、自身の生を精一杯生きた人たちの記録だ。

    ハンセン病は怖い病気ではないと啓蒙活動を続ける人や、詩人として
    有名な故・塔和子さんのことは知っていた。

    しかし、社会と隔絶され、過酷な環境に身を置きながらも、少なくない
    人々が生きる光を見つけていた。

    指を失っても手に絵筆を括り付けて絵を描く人がいる。学業に打ち込み、
    大学受験を目指した人がいる。自分と同じ病で苦しんでいる人たちが
    充分な治療を受けていないことを知り、中国奥地の隔離の村に薬や
    包帯を届けた人がいる。

    「あんた。キムチョンミっていう名前なら日本人じゃないよね。朝鮮人の
    子だろう。おれたちは社会に差別されているけれど、この園の中にいた
    ら安全。あんたはこれから社会に出たら冷たい風にあたって大変だ。
    つらいことがあったら、いつでも遊びにおいで」

    偶然、隔離施設を訪れた在日朝鮮人の女子学生にこんな言葉をかけた
    人は半世紀以上の時間を隔離施設で過ごし、重い後遺障害を背負った
    詩人だった。

    なかでも要撃だったのは黒川温泉宿泊拒否事件のその後の「その後」
    だ。熊本県・黒川温泉のとある旅館が直前になってハンセン病患者たち
    の宿泊を拒否し、該当旅館はその後廃業したことは知っていた。

    旅館の廃業に伴い解雇された従業員たちは雇用継続を求めて会社側を
    訴えた。この元従業員たちの支援に立ち上がったのが宿泊を断られた
    患者たちだったのだ。

    強い。ただ強いだけではない。彼ら。彼女らの心は、しなやかに強い。
    この強さは一体どこから来るのだろうか。絶望の中にあって、死を
    思ったこともあるだろう。実際、病を得たことに生きる気力をなくし、
    自死してしまった患者も多くいると言う。

    それでも「生きる」ことに希望を見出した人たち。著者も「あとがき」で
    触れているが、ハンセン病を語る時に絶望や悲しみ、苦しみが付き物
    になっている。でも、著者は言う。「喜怒哀楽」が揃って、人間の営み
    なのだと。

    ハンマーで頭をガツンと叩かれた気分だった。そうのなのだ。同じ人間なの
    だも。「怒」や「哀」は強いかもしれないけれど、人には「喜」もあり、「楽」も
    あるのだもの。

    だが、忘れてはならない。ある病気の人たちを私たちは存在してはいけない
    者として扱って来た歴史がある。戦争体験の風化は折に触れて言われる。
    ハンセン病の体験者の話も同じだ。みな、高齢化している。

    私たちがしてきた差別と偏見の歴史を風化させない為に、覚えておきたい
    ことだね。そうして、毎年1月の最終日曜日は「世界ハンセン病の日」だ。

  • 配置場所:摂枚普通図書
    請求記号:498.6||T
    資料ID:95160426

  • 国立ハンセン病資料館に行ったのが昨年10月。「ハンセン病」そのものについて、その「隔離の記憶」のほんの一端について、展示資料を眺めながら初めて出逢った。それでも実際に一人ひとりと出逢うことはまだ出来ていない。思えば多摩全生園の敷地内を通り抜けたのだから、ほんのすぐそこに生活していらしたのか。ここに記された出逢いの記録「隔離の記憶」は、とてつもなく、想像を絶する。この「生きてきた」記録は、やはり出逢いの中で聴かないとわからない。話を聴きたい。

  • 新聞記者であった筆者が、回復者たちの背負った「隔離の記憶」を丹念にたどり綴ったルポルタージュ。朝日新聞で好評を得た連載記事「ニッポン人脈記」を大幅に加筆修正し単行本化した。「彼らの魅力を伝えたい。私ひとりの胸にとどめておけない」。根強い偏見や差別の目に晒され苦しみながらも、豊かな心を持ち、凛と生きようとする回復者の生き方に光を照らす。女優・吉永小百合がハンセン病に関わっていく経緯も記されている。

  • 一言では表現できない。人に勧めたい。

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著者プロフィール

たかき・ともこ
1972年、福岡市生まれ。
朝日新聞社会部専門記者(人権)。
2000年、朝日新聞に入社。
前橋支局に赴任し、国立療養所「栗生楽泉園」で
ハンセン病だった人たちへの取材を本格化させる。
2008年、大阪社会部。
人権、戦争の記憶の語り継ぎ、再犯防止などの
テーマに取り組む。
2014年4月~16年3月、朝日新聞編集委員。

「2017年 『増補新版 隔離の記憶』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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