いまだ、おしまいの地

著者 :
  • 太田出版
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感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778317225

感想・レビュー・書評

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  • 悩み、眠れなくなり、鬱になり、ポジティブさは暴走しがちな毎日から搾り出されるエッセイがこんなに面白いなんて。
    考えすぎてしまうタイプの人にとって、こだまさんの存在と文章は本当に救いだと思う。
    書くことについても無理しすぎず、ゆっくり長く続けてほしい。

    デビュー作が『夫のちんぽが入らない』で、タイトル的になかなか手に取るのに勇気がいる本なので、未読の方も多い作家さんなのでは。
    でも第1作を読んでからの方が『ここは、おしまいの地』『いまだ、おしまいの地』も楽しめると思う。
    なんとかみんな『夫のちんぽが入らない』から、読んでみてほしい!!

  • 人間の生き様ってそんなにかっこいいのだろうか?
    周りの人がどんな良い人生に見えても中身って
    本当は、そんな綺麗事でなくてカッコ悪い。

    そんな人間の生々しい人間らしさを
    こだまさんの言葉はあたたかく表す。

    みんなみんな一生懸命生きてるんだ!
    って、背中を押される作品でした。

  • おしまいの地、というまるで、この世の終わりのような場所をイメージするが、侘しさや、孤独を感じさせるわけではなく、とても温かみのあるエッセイだ。

    生きているだけで、こんなにも日々事件に巻き込んだり、巻き込まれたりする?っていう人がいる。それがこだまさんだ。明らかに詐欺でしょ、って人にお金を渡したり。しかも総額44万円。
    おじいさんが、誰も傷つけない、いい感じの嘘つきとして近所で名を馳せていたり。
    同級生との甘酸っぱくなりそうな夏祭りの話も「苗字が変わった名前の男の子」という呼び名が気になってしまったり。
    エッセイって、エピソードだけでなく、こちらに渡される感じがするのだ。こんなこと、私にもあった気がしてくるのだ。そういった意味でも、とても浸れるエッセイとして、とても好きな本で、とても居心地のいい本だ。

  • 相変わらず表現がおもしろくて文才すごいなぁと思う。
    何度かつい声に出して笑ってしまう。

    でも、どうしても読んでいて辛くなって、読み終わるまで相当時間がかかった。こんなにおもしろいのに、イッキ読みはできない。

    人になかなか打ち解けられず、気の利いたことを言えなくて落ち込んで、人の眼が気になって、自意識ばかり肥大して、というのは、思春期の頃の自分にも(こだまさん程ではないにしても)非常に覚えがあり、その辛さはとても分かる。
    分かるだけに、こだまさんに対し、もっと楽に生きてほしい、もっと他人に対して適当でいい、そんなに無理にポジティブでいようとしなくていい、などとそういうことばかり考えて、読んでいてすっかり疲れてしまった。

    ご本人がもっとも自分らしくいられる「書く」ということすら、少し重荷になりつつあるような気配があり、芥川龍之介とかヘミングウェイみたいな方向へ向かわないといいのだけどと、他人ながら心配になった。
    著者の感じている息苦しさがとてつもなく巨大で堅牢なものに感じられて困った。
    完全なる余計なお世話なんだけれども。

    でも、同じような生きづらさを感じている人には、本当に優しく寄り添う作品なんじゃないだろうか。
    この人の作品を読むことで救われる人は多くいると思う。
    それは小説の効能の重要な一つだと思うけれども、そういう作品って、たくさんあるようでいて、実はそんなにないと思う。希少。

  • エッセイを読み進めるうちに著者の人柄が解ってきて面白かった。こだまさんは繊細でお人好しでユーモアのある方なのですね。「九月十三日」の脇毛の話が一番面白い。次は「おそろい」の夫婦のメロンの食べ方の話。いい夫婦だなと思う。後半の「郷愁の回収」はこんな苦しい気持ちを聞いてしまってよかったのかな…なんて思いになってしまった。

  • エッセイで読者を惹きつける。
    やはり、こだまさんは、丁寧に人を観察している
    のだと思う。
    編集者さんなどから「自信がついたように見える」と言われるようになったと書かれているが、
    抱えている苦しみも同じ場合がある。
    こだまさんを通じてモヤモヤしたものを
    吐き出しているのだ。
    少し楽になった。
    誰でも持っている感情にそっと寄り添ってくれる。

  • 相変わらずおもしろい。よく次から次へネタが出てくると思う。なんだかんだいって、多くの人との出会いがあるからだろう。松尾スズキのエッセイを読んだ時にも感じるが、何か「持ってる」んだと思う。引き寄せてしまうのだと思う。

    もちろん「持ってる」だけじゃない。観察力があって、それを面白く書く描写力もある。間違ったホテルを予約してしまった話では、こだまさんの意外に楽し気でポジティブな一面を見た気がした。ネガティブなことをユーモアに変えて書く才能は、こんなところから来てるのかもしれない。その才能が先天的なのか後天的なのかわからないが、困難な人生を生きるのに必要な才能だと思う。みうらじゅんの言う「そこがいいんじゃない!」に近い。ただ終盤は失速気味な気もした。

  • 冬になればごっそりと雪が積もる辺境の地(おしまいの地)で現在も暮らしているこだまさん夫婦。
    未だに周囲の人たちには、文章を発表していることや本を出していることを伝えていないらしい。自分のことだけじゃなく、旦那さんやご家族のことも色々書いてきているから、言いにくさは増しているんだろうな。

    こだまさんは固有名詞を出していないけど、なんとなく青森の北のほうに住んでいて、生まれ育った集落は日本海側の新潟とか秋田のあたりなのかな、と想像しながら読んだ。

    どんなに辺鄙な場所でもインターネットがあれば大喜利にも参加できるし、文章を発表することもブログを書くこともできる。詐欺に遭うことだってある。
    そしてコロナウイルスだって、おしまいの地までやってくる。消毒用のアルコールは品薄になる。

    コロナ禍でも「探検」の精神で、ラーメン屋にテイクアウト用の鍋を持っていこうと考えたり、元教え子の飲食店から安価で売ろうとしている冷凍餃子を定価でたくさん買ってくるこだまさん夫婦。
    パニック障害を抱えながら教員を続ける旦那さん。定期的に通院しながら、身近な人たちに内緒で文章を発表するこだまさん。
    辺鄙なおしまいの地で暮らす中年夫婦は、コロナ禍でも素敵だった。

  • やっぱりこの人の文章が好き。
    性別さえ違うのに、こんな文章を書きたいなと思って(思わされて)しまう。
    たぶん(人間性や感受性が?)私と似ている。

    半年ごとや一年ごとにずっと読み続けるような気がする。たぶん死ぬまで。読むたびに「自分」を見つけてしまうから。

  • 面白かった。
    ぶっ飛んだ思考回路や失敗が愛おしくなってくる。

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著者プロフィール

主婦。ブログ『塩で揉む』が人気。同人誌即売会「文学フリマ」に参加し、『なし水』に寄稿した短編を加筆修正した私小説『夫のちんぽが入らない』で2017年にデビュー。翌年には2作目となる著書『ここは、おしまいの地』を上梓した。現在、『クイック・ジャパン』『週刊SPA!』で連載中。

「2020年 『夫のちんぽが入らない(5)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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