新版 軍艦武藏 上巻

著者 :
  • 太田出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (626ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784778314477

作品紹介・あらすじ

巨艦を通して描く戦争の真実。ノンフィクション文学の金字塔。

感想・レビュー・書評

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  • ★2016年9月10日読了『新版軍艦武蔵(上 )』手塚 正己著 評価A

    上巻だけで600ページを超える大作。戦艦武蔵の乗組員たちの艦内での生活と思いが丁寧に描かれ、真摯に生き抜いた人たちの物語である。

     昭和11年末にはワシントン海軍軍縮条約が失効し、昭和12年1月にはロンドン海軍軍縮条約も破棄され、再び軍艦建造競争が始まった。その時代背景から、大和と武蔵の巨艦建造が推進された。しかし、すでに広く知られている通り、ハワイ海戦とマレー沖海戦で日本軍の航空機による攻撃で、航空優位の時代が来ていることを思い知らされた米国は、航空機および航空母艦建造に注力する。そして皮肉なことにその航空機の威力を知らしめた日本軍は方向転換ができずに巨艦主義へ驀進してしまう。

     上巻では、武蔵建造から最終決戦となる昭和19年10月24日フィリピン シブヤン海での航空機一次戦までが描かれている。
     戦艦武蔵は、起工昭和13年3月29日、 進水式昭和15年11月1日、その後艤装を施して、大和を追うように戦線に投入するも、原油不足にあえぐ。日本軍では、そうそう簡単に巨艦を出動させる余裕もなかった。また、最後の出撃では、自慢の46サンチの主砲は、射撃方位盤(目標に照準 各砲を正確に連動指向させて一斉に発砲する装置)が架台から外れて、旋回が不能となり、攻撃力が激減した。高角30度以上には撃てなかったため、航空機攻撃には不向きだったことなどの話が書かれており、日本海軍が望んだ艦隊決戦での主砲大活躍の場面はほとんど訪れなかったらしい。 
     初めて知った話としては、悲惨な戦いとなって死亡率が異常に高かったミャンマーのインパール作戦に参加する計3-4千人の陸軍将兵と兵器を大和とともに呉からシンガポールまで運んだりしている。(その時の陸軍と海軍の大きな違いのエピソードはいかにも象徴的で笑ってしまう。)
     また、乗組員は、海軍兵学校卒の超エリート士官から兵力が足りなくなって後から徴兵された中年兵まで、さまざまな人間が乗り、2400人超も乗り合わせていたことを聞くと、そこには本当にさまざまな人間ドラマがあったことは、容易に想像がつく。

     筆者が取り上げた生存者および話を聞けた戦死者たちの話を聞いても、どれだけ彼らが頭脳、体力、人間性においてかなり優秀で、色々な思いを持ちながら死地に出向いたかがよくわかるし、もし、彼らが生きていたら、たとえ戦争に負けたとしても、どれだけ戦後の日本復興が楽だったことか。逆に彼らなしでもよくぞあれだけ早く復興を遂げたものだと改めて考えさせられた。

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著者プロフィール

手塚正己
昭和21年12月15日、長野県生まれ、東京で育つ。日本大学芸術学部映画学科中退後、フリーの助監督として、映画・テレビの助監督を務める。岩波映画製作所でドキュメンタリー映画を初演出後、ドラマやドキュメンタリー・テレビ番組などに携わる。平成元年4月、映像制作会社シネマジャパンを設立。3年4月、長編ドキュメンタリー映画『軍艦武藏』を製作・監督する。主な著作に、『軍艦武藏』、『『軍艦武藏』取材記』(以上、太田出版)、『海軍の男たち』(PHP研究所)等がある。現在、雑誌『歴史群像』(旧学研/ワン・パブリッシング)や、『丸』(潮書房光人新社)で執筆中。

「2023年 『嗚呼 戦艦武蔵』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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