生きるための選択 ―少女は13歳のとき、脱北することを決意して川を渡った
- 辰巳出版 (2015年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784777816095
感想・レビュー・書評
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それは北朝鮮では通用
しない─
私が当たり前と思って
享受している権利は、
平和な社会に暮らして
いるという、
幸運の上に成り立って
いることがわかります。
そしてそのような幸運
に恵まれながら、
不幸を標榜している己
の無明よ。
その不幸はどれほどの
ものなのか?
日常のなかで私たちが
感じる不幸の多くは、
実にとるに足らぬもの
なのではないかと。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
勝負球はパームボールさんの
ブックリストから興味本意で
読んでみました。
読後感、半端ないです。
どの内容も想像を絶し、胸に
突き刺さってきました。
著者が韓国に亡命した当初、
自由が残酷で大変で、飢えさえしなければ
北朝鮮にいたほうが良かったと思う箇所は
何か、違う意味で恐ろしさを感じます。
大学入学し、コスタリカでボランティアをすることで人を助け、思いやる事で、自分を思いやり、
自身の傷を癒えはじめたのは、はっとさせられました。
是非、多くの人に読んで欲しいと思います。
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ノンフィクション。
読みながら。
どんなに想像しても、現実の事とは到底思えないような生活。
著者ヨンミの子供時代。
北朝鮮での生活。
彼女は4歳にして母から「何か話す時は鳥やネズミが聞いてるかもしれないと思え」と教えられる。
9歳の時に父が逮捕。
母も事情聴取で奪われ、姉と2人きりで長く寒くひもじい冬を虫を食べたりして肩を寄せ合い過ごす。
13歳で死を覚悟の上、国を捨てる決意をし、母を説得し、冷たい川を渡り2人中国へ。
脱北の際、自分の身代わりに母がブローカーにレイプされるのを目の当たりにする。
生きるために自らも別の中国人ブローカーの愛人になり、15歳の時にはさらなる安住の地を求めてモンゴルから韓国へ。
常に命の危険にさらされ、いざと言う時は自死する覚悟でカミソリを隠し持つ日々。(←15歳だよっ?!)
心にあるのは、先に脱北した姉に会いたい。会いたい。
やっと韓国へ逃げ延びた彼女と母を待つものは、かけ離れた文明と侮蔑の視線。
賢く強い彼女は努力し、ひたすら知識を得て。
自らの人生を変えていく。
レビューだけ読むと、陳腐なサクセスストーリーを描いた小説みたいよね?
でもつい20年くらい前の現実なんだ。
ヨンミの覚悟と勇気と努力の人生をなぞる今、得体の知れない国、北朝鮮がますます恐ろしく思えてしまう。
まずはこの現実をみんなが知ること。
なにもできなくても知ることはできる。
そこからなんだろうな…って。
YouTubeで美しいヨンミが涙を流しながらせつせつと語る演説を観て苦しくなった。
たくさんの人に、観て、読んで、知って、感じて欲しいと思った。
わー。
初めてこんなにブクログで語ってしもた。。
そのくらい響いた1冊。 -
パク・ヨンミ氏の命懸けの選択が彼女を救った。一つでも何かが欠けていれば彼女はこの場にいなかったかもしれない。ヨンミさんのお父さんが死しても彼女を守り、数えきれないほどの幸運が重なったとしか思えない。中国で人身売買を行っていたホンウェイさんが彼女に行った行為は許されることではない反面、どこにいてもヨンミさんを追いかけて守ってくれたホンウェイと出会わなければ、お母さんにもお姉さんにも会えなかったかもしれない。北朝鮮による洗脳は時代錯誤も甚だしい。いつかヨンミさんの声が世界中に届き、一人でも多くの北朝鮮人の洗脳が解けることを祈るばかりだ。
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北朝鮮から中国に行きそして韓国へ行った
北朝鮮の女性のノンフィクションです。
本の中の写真を見たら 写真も撮れるし 綺麗な服を着ていたのに
どうして 脱北したのだろうと 読んでいくと
北朝鮮の社会というものが わかってきました。
中国へ行ってからも 大変な思いをして
やっと自由になった パクさんですが
このような 本を書いちゃって大丈夫かしら?と 心配になりましたが
これだけ反響のある本を書いたのだから 人目を集めてるし大丈夫でしょう。
それにしても
北朝鮮もひどい国ですが 中国のブローカー達もひどいです。
女性はいつも こういうつらい目にあってしまいます。
この本が出たことで 今後同じような目に合う女性がいなくなることを祈ります。 -
普段、メディアを通して見る北朝鮮という国と実際、生まれ育った著者を通して見る北朝鮮。内情は想像を絶するものだった。これは是非、たくさんの人に読んでほしい一冊。
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ブクログのレビューで見かけて読んだ。
北朝鮮と聞いて最初に思い浮かぶのは、核保有国であることと力強くニュースを読み上げるキャスターの姿。
田舎の方ではかなり飢餓が酷いと聞いていたが、その姿はテレビに映ることはないので、現実味がなかった。テレビで見る姿は本当に一部で、この本で書かれていることが大半を占めるのだろう。
著者は本当に壮絶な経験をしていると思う。それでも彼女の運が良いのも本当だ。買った人間の家族をリスクを冒して引き合わせようとは考えないと思う。人身売買を行い、レイプや暴力を当たり前とする人間が、他人の家族を気にかけ、約束を守る姿にとても複雑な気持ちになった。
自分が今、安全で自由であることを改めて知った。人権活動なんて大きなことはできなくても、安全で自由である立場の人間ができることはきっと多いと気付かされた本だった。 -
4.0知らないと言うことは、人権の存在さえ気づかない悲劇を生む。狭山事件の石川さんとも重なる。人間は順応はできても、機械にはなれない。人の命の重さは全て同じである。そう思う。世界は変わらなければならない。
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脱北者の声を聞いてみたいという興味本位で軽はずみだった。時代は2000年を過ぎた北朝鮮。著者である彼女は、未だに20代。まるで文革の頃の中国かと思うくらい、未だに、そのような状態なのか。戦後の引き揚げを彷彿させるような、脱北における悲惨な経験。星何個で評価できるシロモノではない。初めて、著者の謝辞まで感情移入して読んだ。
生きるための選択。脱北もそう、亡き父が選んだ闇商売もそう。娘を守ってレイプされた母。アダルトチャットで金を稼ごうとした事も、最終的には韓国に辿り着き、テレビ出演で姉を探そうとした事も。
壮絶なノンフィクション。パク・ヨンミは、世界を変える重要な証言者の一人だ。 -
私は小学生の頃、共産主義者の兄の影響で、朝鮮中央放送の日本語放送を良く聞いていた。本当に北朝鮮は、この世の天国と信じていた時期がある。
その後、それは全くの嘘であると知って、少なからずショックを受けた。大人になったら、この国を自分の目で見たくて、旅行に2回行った。最初に行くときは、無事に帰ってこれるのかという不安、この国にお金を落として来ても良いのかというためらいもあったが、好奇心が勝った。
二回目も、どうしてもマスゲームが見たくて行った。
後半で、筆者が洗脳から解けて、世界に注目されるようになるまでの変化が告白されているが、それを読んでいる途中で、何度も表紙の写真を眺めた。
目が印象的だ。悲しみに沈んでいるような、救いを助けているような目だ。でも、視線は定まっているような目をしていると感じる。
北朝鮮は、数年のうちに崩壊すると言われ続けて来たが、まだ、体制は維持されている。この本を読んで、情報統制、思想統制、相互監視により、内部崩壊を防いでいる状況には、変化はないのだと感じた。