君の名前で僕を呼んで (マグノリアブックス)

  • オークラ出版
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感想 : 83
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784775527610

感想・レビュー・書評

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  • 本作を原作として撮られた映画のエンドロールで、オリヴァーから結婚を告げられたエリオが、ひたすら暖炉を眺めて失恋による気持ちを表情だけで現した演技に衝撃を受けた。
    映画観賞後の当時、英語で原作を読んでその空気を感じたかったので四苦八苦しながら読んだが、今になって翻訳を読むと4割程度しか理解出来ていなかったのだなと軽く落ち込んだ。
    イタリアの夏、地中海沿岸のねっとりした原色風景とその熱さの中で繰り広げられる思春期の恋。エリオが感じる心の変化を自分もあの時代に同じように同性に感じたことがあった。自分が相手に惹きつけられていながらも、それを隠そうと無関心を装いながら、けれど相手の一挙一動に心を揺り動かされ、いきなり有頂天になったと思ったら、海の底まで落ち込む。なんとも甘酸っぱい気持ちにさせてくれた。
    エリオが17歳にしては浮世離れしていて、どの年代の誰にも理解をされないという鬱屈した精神を持っている中で、オリヴァーだけがそれを理解し応えてくれる。桃で自慰をして自分の精液がついたものを食べてくれたオリヴァーに対し、受け入れてもらえたことで涙を流す描写は、心に迫るものがあった。
    紡がれる物語の途中途中にダンテからの引用など、知的な言い回しがあることで、ピリッと空気を引き締めて物語に抑揚をつけるのが、また素晴らしいなと思う。
    『君の名前で僕を呼んで』の意味が、一番最後のフレーズで漸く理解出来た。そこへの纏め方が秀逸で、じわっと涙が出そうになった。
    続きのFind Meも楽しみ。

  • なぜ十代の自意識過剰で繊細な少年が永遠に悶々と悩み続ける様を描いた小説はこうも魅力があるのか。「潮騒の少年」はまさにこの小説のアメリカ版って感じだったけど、「君の名前で〜」の方が上品。どっちが良い悪いとかではない。なぜどちらの少年も好きな男がはいたパンツを頭に被るのか。もしこの小説と同じような設定の作品を探してるなら、「潮騒の少年」はオススメ。「君の名前で〜」のような静かで美しくてハイソな雰囲気ではなく、精子の匂いが立ちこめるような思春期男子!て感じだけど。
    映画が最高だったから原作はあまり期待していなかったが、いい意味で裏切られた。本当にこの小説の雰囲気をそのまま映画にした感じだったんだなと思った。映画ではよく分からなかった二人の行動の意図とかが、小説には書かれていたりして、また映画を見返したくなる。

  • 映画がちょっと受け付けなかったので、原作を読んでみた。こんなに二人の間に繊細な駆け引きがあっただなんて!私が映像から読み取れなかっただけかなあ。情景は、映画で観た美しい景色を存分に脳内で再生しながら読んだ。20年後のエリオとオリヴァーの再会のシーンがあるのにも驚いた。私は20年後のエリオの歳になるけどこんな美しい思い出はない…。けど、その美しい思い出の一部を味わわせてもらって、満足。


  • 彼女いわく“恥ずかしそうに顔を赤らめている”アプリコットの実を摘むように頼んだ。
    (オリヴァーは)これは恥ずかしそうに顔を赤らめているかと尋ねた。
    いいえ、とマファルダは答えた。
    それはまだ若すぎます。若い者は恥を知りません。恥は年齢を重ねて知るようになるんですよ。

    ----------------引用終わり

    同性愛とは「君が僕であり僕が君である」という感覚をもちうるというのが、新しい発見だった。
    お互いの気持ちがよりわかったりして、異性愛よりも分かり合えることが多いかも。
    「この人しかいない!」という想いは想像を遥かに超えるだろう。
    舞台の時代が古いために一生を十字架を背負って歩くように感じている主人公が不憫だった。
    日本でも早くLGBTQの制度を充実させてほしい。
    読了後はみんなが幸せになれるようにと祈る気持ちになった。

  • ネットで映画の感想を見かけて、タイトルに惹かれて読んでみました。
    脚本のジェームズ・アイヴォリー氏がアカデミー脚色賞受賞のスピーチで語ったとおり、初めての恋というのは誰もが経験することです。
    ひと夏の出会い。恋をして、切なく苦しい思いに身を捩り、結ばれた喜びに胸踊り。そして訪れる別れ。

    もちろん全てに共感するわけではありませんが、オリヴァーとエリオの切ない恋がリアリティを持って描かれています。
    ネタバレになりますが
    ひと夏の恋だけではなく、その後の別れと再会まで描かれているのが自分としてはリアルで良いなと思いました。
    ご両親がわかっていてなにか変に止めたり貶したりするのではなく、大切に見守ってくれているというのがとても素敵でした。

    原作ではどのような表現がされていたのかはわかりませんが、
    「そうしたかったんだ」
    「大丈夫だと思ってた。いずれ立ち直るよ」
    というような繊細な表現がとても好きでした。

    『階段をのぼりながら、明日の朝この階段をおりる自分を想像しようとした。そのとき僕は別人になっているだろう。』
    と思うような大きな出来事が、人生に一度や二度は起きるのではないでしょうか。
    そんなことを思える恋は、そして人生は、とても素晴らしいものだと思うのです。

  • 北イタリアでの夏と、二十年後の話。
    映画を見終わった時は、その余韻がすごかった。
    ひとりで見に行って良かったな、と思う。

    本作と映画の描写は所々違うがけれど、羽音をたてて飛び回る蝿はエリオの不安を表していた気がした。自分の名前で相手を呼ぶ愛情表現はすごく美しく、儚い。

  • 映画の後に読みました。
    映画中ひたすらオリヴァーに腹が立っていたのですが、此方で少し和らぎました。
    映画に比べエリオがかなり生々しいのと、自分が思っていた心情ではなかったこと、映画のその後の話があるので、大筋は一緒でも違う印象です。

  • 色んなかたの感想を読んでいたらもう一度、読みたくなりました。
    異国の風景をイメージしながら読みました。
    夏の一時、冷たい川の水や、太陽の降り注ぐ道、他にもいっぱいあるのですが、やめておきます。
    続編も読んで…ちょっと泣いてしまった。
    大好きな本です。

  • 映画とともに、じっくりと味わえる物語。美しくて泣きそうになる。どのページを開いても異世界にビューンと連れていってくれる。現実逃避もの。

  • タイトルが美しいのと評価の高さで久しぶりに手に取った恋愛小説。
    イタリア人らしい(?)情熱さ。ふたりの人物をなんの後ろめたさもなく素敵だなと思ってたり、パーティで出会った女の子といい雰囲気になってたり。
    でも後半エリオの相手の女の子全く出てこなくなってあっさりしすぎだろ…とも思った。

    最初の夜を迎えるまでの駆け引きは甘酸っぱくてもどかしくて、必死に相手のことなんて僕は興味ないけど?て無関心を装うのは万国あるあるなんだなーって思った。
    桃での自慰シーンはちょっと気持ち悪かった…笑

    タイトルの「君の名前で僕を呼んで」というのは、なんとなく素敵だなーと思ってただけで、作中で同じ言葉が出てきても理解してなかったんだけど、他の方の感想を読んで腑に落ちた。
    好きな人の顔を思い浮かべながら呼ぶ自分の名前は、その人に自分はどんな風に呼ばれるんだろうって思い浮かべることなんだね。

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著者プロフィール

マンハッタン在住。ニューヨーク市立大学大学院センターで比較文学を教えている。著作に『Call Me By Your Name』『Out of Egypt』『False Papers』

「2020年 『Find Me』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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