- Amazon.co.jp ・本 (65ページ)
- / ISBN・EAN: 9784773812176
作品紹介・あらすじ
人生で自分の好きなことを仕事にする以上に、幸せなことがあるかい?
鍵盤をひとつずつ叩いて、まるで聴診器を当てるように、悪いところはないか、聞いてあげているのです。女の子はそれを仕事にしようと思いました。
デビー・ワインストックは、活発でがんばり屋さんの女の子です。彼女にとって、ピアノを調律する音は、もうそれだけで、他のどんな音楽よりも最高に美しい音でした。
デビーのおじいさんのルーベン・ワインストックは世界一のピアノ調律師です。仕事に厳しく、そしてデビーをとても愛している、素晴らしい人です。デビーはそんなおじいさんのような調律師になる決心をしました。
末盛千枝子さんより
尊敬する新聞記者が病床にあって、この本を受け取ったときの手紙の一節が、強く印象に残っています。「『人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことはあるかい?』 このメッセージ、確かに受け取りました。」
末盛千枝子ブックスについて
すえもりブックスを主宰し、国際児童図書評議会(IBBY)の国際理事としても活躍した名編集者・末盛千枝子さん。「末盛千枝子ブックス」では、末盛さんが新しく企画・編集する絵本や著作を刊行するほか、末盛さんがかつて手がけた名作の復刊にも取り組んでいきます。本書は復刊第一作目です。
「末盛千枝子ブックス」ホームページにて復刊リクエストを受け付けています。
www.jca.apc.org/gendai/contents/suemorichiekobooks/index.html
感想・レビュー・書評
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そう言えばピアノ調律師という仕事に憧れたことがあったなぁ。
使用する工具箱だけでも何とか持ちたくて、傍にくっついて離れなかった。
私はワクワクして仕事ぶりを見ていたけど、今思えばずいぶん邪魔だったことだろう。
この本の一番最後にも、調律に使用する工具がイラストで登場する。
本文の中にも調律の過程がテキストで登場して、見たことのない人にも分かりやすい。
華やかに見える演奏は、実はこのような重要な仕事が支えているからだと知ることが出来る。
主人公は世界一のピアノ調律師・ルーベン・ワインストック氏と、その孫デビー。
デビーは両親亡き後、おじいさんと暮らして2年。
ピアノ調律の仕事を見て育ち、調律師になりたいと心底憧れるようになる。
かたやおじいさんは、デビーをピアニストにしたいと望んでいるが。。
お話のはじめと最後の部分にあらわれるふたりの暮らしの光景がとても素敵だ。
お互いのさりげない愛情が手に取るように描かれていて、胸がじーんとしてくる。
ワインストックさんは、仕事への情熱のかけ方と、デビーへの愛情がイコールだったのね。
だから、デビーは「おじいさんのようになりたいから」と調律師を目指しているのね。
時に無茶をするデビーでも、その本心は「おじいさんのようになりたいから」だもの。
無邪気な子供の願いを周りの大人が受け入れ応援していく過程が温かい。
お話の中では、おじいさんが専任している有名なピアニストも登場して、デビーに仕事へのモチベーションを高める役目を担っている。
『人はそれぞれ、自分は本当は何をしたいかということを、よく考えるべきだと思うよ』
『人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?』
ゴフスタインの本はこれで2冊目だが、どちらも読み手の「こうなってほしい」という願いどおりに展開していく。そして、嫌な人間は登場しない。
素直で静かな文章でウィットが効いてるわけでもなく、展開の面白さとも無縁だ。
「発見」はないが「確認」があり、そしてその「確認」がなんと温かいことだろう。
高学年からじっくり読むのに適しているかも。もちろん大人にもおすすめ。
デビーはきっと、良い調律師になっていくだろう。
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ゴフスタインさん追っかけ中。深く心を揺さぶられた一冊でした。両親を亡くしたデビーと暮らす祖父のルーベンはピアノ調律師。孫娘をピアニストにしたいと考えています。丁寧な暮らしぶりと実直な仕事ぶりが、彼の人となりを表しているよう。周りに多くの人が集まるのは人望。祖父の仕事を心から尊敬し、自分も調律師になると決めているデビー。一流ピアニスト・リップさんも絡んで、大団円のラスト。絵は多くないのですが、1つの職業を通して人間模様を描くゴフスタインさんの作品は素晴らしいです。タイトルが英語も日本語訳も秀逸。オススメ。
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〝「どうやってあの子の面倒をみるつもり? あなたは男やもめのなのよ。それにもう若くはないし、あの子に何をしてあげられるの?」「そうですね・・・でもわたしは音楽を知っています。何人もの偉大なピアニストたちのためにピアノを調律してきたし、あの子にピアノを教えることができると思うのです・・・」〟息子夫婦に先立たれた世界一のピアノ調律師ルーベン・ワインの孫娘デビ-の喜びや哀しみ、ひたむきさに、限りない愛情をこめて奏でられる、M・B・ゴフスタイン不朽の名作。
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「羊と鋼の森」を読み、思い出し、再読。
世界一のピアノ調律師、ルーベン・ワインストックとその姿に憧れる幼い孫娘、デビーの物語。
物語はおじいさんと孫娘の朝のシーンから。
淡々と静かで丁寧な朝。
映像が浮かんでくるよう。
全体を通しても、まるで、
静かな映画を見ているようだった。
孫娘をピアニストに育てたいおじいさんと
おじいさんのような調律師になりたい孫娘。
ある日、町に偉大なピアニスト、アイザック・リップマンがやってくることに。
おじいさんは彼のピアノの調律を任され、
その日に請け負っていたパールマン夫人宅の調律をキャンセルしなければならなくなる。
おじいさんは、そのキャンセルのことづてを孫娘に託す。しかし孫娘デビーはその調律を自分が頼まれたと嘘をつき、パールマン夫人宅のピアノを調律しはじめる…。
静かだけれど、熱い想いがこもった絵本。
おじいさんの気持ちもデビーの気持ちもわかる。
リップマンさんやパールマン夫人の人柄も優しく、暖かく、読むと心洗われる。
「もし、ピアノを弾くことが本当に好きな人だけがピアノを教えてくれたら、世界はもうすこし良いところになっているかもしれないよ。」
「人はそれぞれ、自分は本当は何をしたいのかということを、よく考えるべきだと思うよ」
「人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?」
偉大なピアニスト、リップマンの言葉が静かに心に響く。
時折、立ち止まり、自分に向き合いながら読みたい本。 -
帯にもなっている、物語でピアニストのリップマンが語った言葉「人生で自分の好きなことを仕事にする以上に幸せなことがあるかい?」シンプルな物語や絵の中に、ふと立ち止まり自分の心の声に耳をすませるような、深い世界が広がっている。そして、調律の音や、美しいピアノの音色が聴こえてくるようだった。
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4.5年から。ピアノ調律師のおじいさんの仕事に魅了された孫娘。真っ直ぐに調律を愛する眼差しと心が、またシンプルな絵に愛らしさを描く。大人と子どもの夢の見かたの温度差にも孫を想う気持ちが伝わってくる。
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人生で自分の好きなことを仕事にできる以上に幸せなことがあるかい?
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ピアノ調律師のワインストック氏は、小さな孫娘のデビーにピアニストに なってもらいたいと考えている。けれどもデビーは大好きなおじいさんのような、世界一の調律師になりたいと思っていた。 そんなある日、世界的ピアニストがワインストックの町でコンサートを 行うことになる。
仕事への誇りや、家族に対する期待や愛情や尊敬、大人の子どもに対する 理解など、優しさにあふれた一冊。ピアノの調律は様々な道具を使う。赤いフェルトを色々と引っ張り出したり、 音がぴたっと合っていく様をみて、子どもの頃はすごくわくわくした。そんな思い出とともに読んだ。 -
「人生で自分の好きなことを仕事にする以上に、幸せなことがあるかい?
鍵盤をひとつずつ叩いて、まるで聴診器を当てるように、悪いところはないか、聞いてあげているのです。女の子はそれを仕事にしようと思いました。
デビー・ワインストックは、活発でがんばり屋さんの女の子です。彼女にとって、ピアノを調律する音は、もうそれだけで、他のどんな音楽よりも最高に美しい音でした。デビーのおじいさんのルーベン・ワインストックは世界一のピアノ調律師です。仕事に厳しく、そしてデビーをとても愛している、素晴らしい人です。デビーはそんなおじいさんのような調律師になる決心をしました。」