増補新版チェ・ゲバラモーターサイクル

  • 現代企画室 e託
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  • Amazon.co.jp ・本 (219ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784773804089

作品紹介・あらすじ

ゲバラの医学生時代の貧乏旅行の様子を綴った日記。無鉄砲で、無計画、他人の善意を当てにする旅行を面白おかしく描写して、瑞々しい青春文学の趣きをもつ。

感想・レビュー・書評

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  • チェ・ゲバラ(本名:エルネスト・ゲバラ 1928~67年)は、アルゼンチンのロサリオで生まれ、ブエノスアイレス大学で医学を学ぶが、在学中にマルクス主義に共感を抱くようになり、大学卒業後、南米各国を放浪し、グアテマラで医師を続けながら革命政権を支持したが、同政権がアメリカを後ろ盾にした反対勢力に倒されたのを見て、武力によるラテンアメリカ革命を本気で志すようになった。その後、グアテマラを追われて移り住んだメキシコで、亡命中だったフィデル・カストロと出会い意気投合し、1956年にカストロの率いる反乱軍と共にキューバに入国し、2年の戦闘を経て、1959年にキューバ革命を達成、その後、国立銀行総裁、工業大臣等を務めた。しかし、理想主義的な姿勢が強く、1965年にキューバを離れ、一時コンゴで革命を支援した後、ラテンアメリカに戻り、ボリビアでの革命闘争に参加したが、1967年に政府軍に捕らえられ処刑された。享年39。
    ゲバラの革命家としての情熱と信念は、死後も、世界中の社会運動家や革命家をはじめとする人々に大きな影響を与え、南米をはじめとする世界中の多くの街に、今でもゲバラの肖像画が掲げられている。
    本書は、(上述の南米放浪より前に)大学在学中の1951年から1952年にかけての8ヶ月間、6歳年上の友人アルベルト・グラナドスとともに(アルベルト29歳、ゲバラ23歳)、南米を回る放浪旅行をしたときの記録である。行程は、アルゼンチンからアンデス山脈を越えてチリに入り、ペルー、コロンビア、ベネズエラと北上するものであった(更にゲバラは、カラカスでアルベルトと別れた後、米マイアミにも行った)が、アルゼンチンを発つ時に二人の乗っていたオンボロのオートバイ「ロシナンテ号」はチリで壊れてしまい、その後はヒッチハイクなどで移動することになる。
    そして、ゲバラは旅の途中で、チリの最下層の鉱山労働者やペルーのハンセン病患者らと出会い、当時南米の中でも比較的裕福だったアルゼンチンとは異なる状況にある人々を知り、また、ペルーの政治思想家ホセ・カルロス・マリアテギの影響を受けてマルクス主義に共感を持つようになり、この体験は、その後のゲバラの人生に決定的な意味を与えることになったのだ。
    私は、暫く前に戸井十月の『チェ・ゲバラの遥かな旅』を読んで、ゲバラのことをひと通り知っていたものの、今般たまたま新古書店で本書を目にして読んでみたのだが、ゲバラの生の声はやはり心に刺さるものだった。
    尚、本書を原作として、2004年に映画「モーターサイクル・ダイアリーズ」が製作・公開されており(私は見ていない)、また、同時期に角川文庫から改題された『モーターサイクル・ダイアリーズ』が出版されている。(現在絶版)
    (2024年4月了)

  • 革命の英雄というのは生まれた時から革命の英雄なのか(つまりそういう資質が先にあるのか)、時代や状況が革命の英雄を産み出すのか、どっちなんだろう…そんな気持ちを抱いて読み始めた。

    “チェ”・ゲバラが、24歳(1951~2年)前後の頃に南米を旅した時の手記である。(モーターサイクル…とあるが、モーターサイクルは旅の早い時点で壊れてしまった)

    全体の空気感としては、以前読んだロード・ノベルなどに通じるものがある。腹を空かせ、ある時は人の世話になり、ある時は人をかついだりたかったりして(大衆からたかるものと戦った人も、個人相手にたかるのはいいんだ…と意地悪く思わなくもなかったけど)、人と出会い、見聞を広めながら旅を続けていく。

    当時、南米の大地から見えるものは、搾取と貧困であった。中んづくアメリカの資本主義や持てる白人による圧制が、文化を、資産を、生活を奪って行く。

    その矛盾を24歳の目は(まだ萌芽にしか過ぎないまでも)正面から見据える。

    さて、アメリカによる覇権主義の歪みや格差・貧困・搾取など権威者と従属者との軋轢は、60年近く経った今、日本でも、少し形は違うが見ることができる。

    そういう意味では、今こそ読み直してみる価値のある本ではないだろうか。

    ゲバラはいう、「革命家になるためには、まず革命を起こすことが必要だ」。言葉より行動を、と。

    政局…党利党略ばかりで社会の根元を見つめようとしない、ただそうとしない政治家ばかりの中で、(残念ながらオレではないけど)真なる行動を起こす人を来るべき総選挙には求めたいものである。

  • この本を忍ばせて南アメリカ大陸を旅したい。若かりし医学生エルネストの人生を変えた旅とは!?
    G.H.先生

  • 「世界で最も美しい革命家」チェ・ゲバラの若き日の姿。無鉄砲で情熱的な毎日を綴る放浪日記。映画「モーターサイクルダイアリーズ」原作。写真を差し替え、演説などを新たに収録した1997年刊の増補新版。
    原題:Notas de viaje
    原題:Diarios de motocicleta
    (1995年)

  • 若いときの旅というものが、その後の人生にどんな痕跡を残していくのかということは、旅をしているときにはわからない。チェ・ゲバラのこのときの旅も、そんな旅であったにちがいない。
    たいへんにおもしろい旅の記録なのだが、直訳口調の訳文なので、何が書いてあるのかまるで判然としないところが多々あった。評価の低さは訳文のため。

  • 旅行記はたいてい面白く読めるので、特にどうということはないのですが、ゲバラという人の“この先”がどうしても頭の片隅から離れない。うがった読み方をしてしまうのは避けられないかもなあ。

    知らないなら知らないで、こんな旅をしてみたいとも思える。
    若者だからできるあんなことやこんなこと。

    難を言えば、翻訳を翻訳したからなのか、ゲバラ自身の文章が文章だからなのかわかんないけど、高校生の教科書の直訳のような痛い文章に耐えながらの読書でした……。

  • 革命家になる前の、24歳の若者チェ・ゲバラの南米放浪日記。
    無鉄砲というか、結構めちゃくちゃなことをしつつチリーペルーエクアドルーベネズエラと旅をする。まだ全然「革命」なんて頭にない時期のはずだけど貧乏旅行をしていけば自ずと南米の矛盾に気付いていくようすがちらほらと。

    原文の並びをそのまま訳した感がある箇所がいくつかあるのだが、逆になれてくるとまだ書慣れていない青年の筆致がそのまま現れているような気になってくるのが不思議。

  • 革命家チェ・ゲバラよりも、「ただの夢ある若者」に過ぎなかった、青年チェ・ゲバラに興味があって・・・。
    そうだよなぁ。みんな何かを成し遂げる前は名もない若者に過ぎない。
    その時期にどう過ごすか、ってほんと大事なんだなぁ、と思った。

    若い時にしか出来なさそうな、無鉄砲な貧乏旅行。
    喘息の体で、あんな無茶をよくしたなぁ、と呆れつつも感心する。
    ゲバラはこの南米縦断旅行中に24歳の誕生日を迎えたそうで。
    まさに今の私と同い年。ゲバラ青年を身近に感じ、同じ風景を見たいなと思いました。
    ハンセン病療養所を訪れたり、各国の貧困などを目の当たりにしたときの、彼の意識の中で頭をもたげた問題意識に後の革命家の姿がきらり。
    ああ、もう一回映画観たい。
    ポデローサ?号や、友人アルベルト・グラナードのように、旅を共に出来る仲間が欲しい!
    今度は革命家ゲバラの本が読みたい。

    好きな街の表現メモ
    ━チュキカマタは現代ドラマの一場面みたいだ。美しさに欠けるとは言えないが、ここにあるのは優美さのない、威圧的な、氷のように冷たい美しさだ。鉱山地帯に近づくとその眺め全体が平原の真ん中に集中していて、息が詰まる感じがする。
    ━クスコの定義としてぴったりくる言葉は「回想」だ。他の時代のうっすらとした埃が通りに堆積しており、その基盤を踏みしめると、ぬかるんだ沼からざわめきとなって巻き立つ。
    ━あの山の街の空に光の縞模様をつけている星々と、静寂、そして寒さが、暗闇を非物質的なものにしていた。どう説明してよいのかよく分からないが、それはまるで、形のあるもの全てが僕らを取り囲む天空に蒸発してしまうかのようだった。(カラカス)

    足跡メモ
    コルドバ→ロサリオ→ブエノス→ビジャ・ヘセール→ミラマール→ネコチュア→バイーア・ブランカ→チョエレ・チョエル→ピエドラ・デ・アギラ→サン・マルティン・デ・ロス・アンデス→ナウェル・ウアピ湖→バリローチェ→ペウージャ→オソルノ→バルディビア→テムーコ→サンティアゴ・デ・チレ→バルパライソ→アントファガスタ→バケダーノ→チュキカマタ→アリカ→タクナ→タラータ→プーノ→シクアニ→クスコ→マチュピチュ→アヤクーチョ→ウアンカヨ→リマ→ラ・オロヤ→タルマ→サン・ラモン→セロ・デ・パスコ→オクサパンパ→プカルパ→イキトス→サン・パブロ→レティシア→ボゴタ→ククタ→サン・クリストバル→カラカス・・・

    南米はほんっと広いわ。
    バリローチェとバルパライソには行こう。

  • これこそ本当の旅行記だな、と思った。
    脚色がまったく無い、リアルな日記。
    本を読む前と読んだ後と二回、映画モーターサイクルダイアリーを観たが
    はやり読んだ後に見たほうが内容がしっかりつかめた。

    キューバでの演説も一読の価値あり。
    革命家の魂を感じた。

  • タニィは若き日のゲバラ少年の旅の足跡がつかめる良書と思った。発行当時この手の本が少なかったし、西語→日本語翻訳も少なかったので、重要と思える書

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