もっと! : 愛と創造、支配と進歩をもたらすドーパミンの最新脳科学

  • インターシフト (合同出版)
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695701

作品紹介・あらすじ

■私たちを熱愛・冒険・戦略・成功に駆り立て、
人類の運命をも握るドーパミンとは? ■

ドーパミンは、よく言われる「快楽物質」ではない。

脳の2つの回路 ーー「欲求ドーパミン」によって〈期待〉を駆り立て、
「制御ドーパミン」によって〈達成への力〉をもたらすのだ。

・創造力の源
・先を見越した戦略
・恋愛が長続きしないわけ
・依存症からの脱却
・飽きっぽさ、充足感の欠乏
・支配と服従の関係
・変化に適応できる柔軟さ
・保守・リベラルの気質
・人類の大いなる進歩と破滅
 ・・・
すべて「もっと!」を求めてやまないドーパミンが鍵を握る。

そして、未来志向のドーパミンと「いまここ」志向のH&Nとの
バランスこそ、脳の潜在能力をもっとも解き放つ。

★Forbes誌「年間ベストブック」受賞!
★激賞!
V.S.ラマチャンドラン + ダニエル・ピンク + デイヴィッド・イーグルマン

◎ 新たな洞察にあふれている ーー V.S.ラマチャンドラン
◎ 驚嘆すべき偉業だ ーー ダニエル・ピンク
◎ 読み始めたら止まらない ーー デイヴィッド・イーグルマン

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::著者::
ダニエル・Z・リバーマン
ジョージワシントン大学の精神医学・行動科学部教授および
クリニカル・アフェアーズ副議長。アメリカ精神医学会の特別研究員。

マイケル・E・ロング
ライター、スピーチライター、脚本家。ジョージタウン大学でライティングを教える。
プロフェッショナル・スピーチライターズ協会の常任コーチ。

::訳者:: 梅田智世
翻訳家。訳書は、リアム・ドリュー『わたしは哺乳類です』、
ダレン・ナッシュ博士『恐竜:驚きの世界』など。

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::目次::
はじめに: 上と下
第1章: 愛 ーー 恋愛から友愛へ
第2章: 依存症 ーー「欲求ドーパミン」の駆動力
第3章: 支配 ーー「制御ドーパミン」の達成力
第4章: 創造と狂気 ーーすごい発想が生まれる源
第5章: 政治 ーー 保守とリベラルの脳の違い
第6章: 進歩 ーー 新しさを求め冒険する気質
第7章: 調和 ーー ドーパミンとH&Nのバランスをとる

感想・レビュー・書評

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  • ドーパミンとh&n回路。バランスが大切。どちらも必要な力。場面によって、生き残る為に何が上手く働いたかでしかない。

  • ひたすらドーパミンについて語る。
    ドーパミンに対する医学的見解がわかる。
    快楽物質と言われていたのは昔。今は快楽ではなく、予測誤差(想定よりよかった)に対して、放出される、未来思考の物質であるとされている。

    ドーパミンは2種類存在する
    ・分泌後に側坐核に連動する、欲求型ドーパミン(欲しいという気持ち。性欲・食欲)
    ・分泌後に前頭葉に連動する、制御型ドーパミン(未来を考える気持ち。計画・創造・グリット)

    特に後者は、人類のさまざまな発展に寄与してきた。
    ちなみに、出アフリカもドーパミンが寄与していると。
    面白いのが、アメリカ大陸の先住民における遺伝子構成。
    特にこのドーパミンのうち、未来の欲求が強い遺伝子R4が北米・中米・南米にいくほど濃くなる。
    つまり、未来思考の強いドーパミンの濃さが移動距離に比例するということ。
    人類はドーパミンとともに居住地域を広げてきた。

    なお、ドーパミンは未来志向であるとともに、今ここにないものを現実のように考えてしまう双極性障害との相関も高く、
    ほぼ移民で構成されるアメリカ人で人口の4.4%で世界平均の倍の発症率。
    移民のいない日本は0.7%の発症率。

    ドーパミンは進化に貢献するものの、現状に満足する気持ちはない。
    そのために、手に入れても手に入れてもさらに欲しがる特性があり、
    中毒とも相関が強いと。

    筆者曰く、ドーパミンと、現状に満足する神経伝達物質系(本書ではH&Nとして、HereこことNow今に反応する物質系を指す/セロトニン・アドレナリンなど)のバランスが必要だと説く。

  • 人の行動をドーパミンという観点から著した本。

    ーーーーーーーーーーー

    ざっくりまとめると、人類はドーパミンによって高度な文明を築き上げたよーというところでしょうか。

    んでもって、高度な文明をもたらしたドーパミンは、翻って現代では不都合な状況を招いているよ。それは、過剰な消費主義だったり、環境破壊だったりを引き起こし、最悪のシナリオは戦争を引き起こすというものだ、と筆者は申しております。
    なのでドーパミンに頼りすぎたらアカンよねという最終的な結論に至ります。

    ーーーーーーーーーーー

    本の前半部分ではドーパミンとやらについて詳しく説明されています。この分野に明るくない人でも問題なく読めるでしょう。続く後半では、前半に紹介したドーパミンの知識をもとに個人間における行動の差(なぜ私たちはリベラル派と保守派に分かれるのか、など)に切り込んでいきます。
    最後の部分では、未来志向であるドーパミンと現在志向であるH&N(幸福物質;セロトニンとか)の調和を図ることが重要性を説いて、終了します。

    ーーーーーーーーーーー

    <ドーパミンとはなんぞや?>

    ドーパミンは脳における神経伝達物質の一つ。一般的には快楽物質と呼ばれているが、実際はそうではない。ドーパミンは期待物質である。ゆえに、欲しいものを手にしても人は満足しないし、手にした瞬間にもう別の対象に目移りしている。したがって、ドーパミンに支配されている人が幸せになることはない。満足するためには手元にあるものに意識を集中させないといけないからである。ようするに、ドーパミンは人類をして「もっと」をモットーにあらゆることを追求させる物質なのである。

    ひぃ、コワイ。

    ーーー

    とはいえ、悪い側面だけではないんだと。ドーパミンには欲求回路と制御回路の二つがあるらしい。後者の方がうまいこと機能すると、偉業を成し遂げる可能性が上がる。アインシュタインなんかが代表例。なんでかっていうと、制御回路っつーのは前頭葉にあるから。前頭葉は人間を人間たらしめている部位。ようするに理性が働くわけ。制御回路が上手に機能する人は理性が働き、目標に対して計画的に粘り強く取り組めるんだと。

    一方で欲求回路の方が強い人は衝動的に行動してしまうんだとか。物事を長期的に考えられず、その場その場の考えで行動してしまんだとか。1週間後の10,000円より今日の5,000円を選んでしまうわけです。

    欲求回路は感情と理性のベクトルが逆向きで、制御回路は同じ向きになっている感じですかね。

    ーーー

    まぁいずれにしても、ドーパミンっていうのは常に私たちを未来志向にするものなんだと。だから、欲求の対象を手に入れても満足することなく、はい次!という感じに多くを求めるようになる。
    一方で、現在志向の人も存在している。この人たちは、手元にあるものでしっかりと満足を得ることができるらしい。ゆえに幸福感が高い。人生のパートナーとも長期的な関係を築いていく可能性が高いんだとか。まぁ、納得のいくことではありますね。

    ーーーーーーーーーーー

    <ドーパミンの差により生まれる行動の違い>

    とまぁ、こんな感じで人は大きく2つのカテゴリ─未来志向と現在志向に分けられます。んで、これが政治的な分断─リベラルと保守をもたらしているんだとか。真偽は置いとくとして、なるほどなーと感心しました。

    ーーーーーーーーーーー

    <ドーパミンが文明を滅ぼす?>

    進化論的な観点からは、現代を生きる人類はドーパミンに強く反応するようになっているらしいです。それは、太古の昔、ドーパミンが生存戦略に有利だったから。「もっと」を求めて探索した個体はより多くの餌や異性にありつけて子孫を残すことができた。その子孫が私たちだというわけです。

    だけど、その遺伝子は現代ではミスマッチを引き起こしていると。現代は、特に先進国では、生活に困らないほどに豊かになったのに、私たちはいまだに「もっと」を求めている。それが環境破壊につながり、戦争を引き起こし、挙げ句の果てには人類を滅ぼしてしまうかもしれない。

    それを防ぐためには、現在と調和するような生き方をしていくしかないらしい。今あるもので満足しよう、と。

    ーーーーーーーーーーーー

    *「酔い」と「ハイ」の違いとは?というコラムが面白かったです。

    お酒を飲んで「気持ちよくなってきたわー」と言うとき、それは「酔って」いるんじゃなく、「ハイ」になっているんだとか。気持ち良くなっていること・高揚感に浸っている状態を「ハイ」と言うみたいです。

    じゃあ「酔う」ってなに?と疑問が出ますよね。それは「アルコールによって脳機能が低下している状態」のことを指すみたいです。判断力の低下、意識の混濁などなど、快感の有無とは関係なしに、アルコールの摂取によって脳の機能が一時的に低下している状態を「酔い」というみたいです。

    大方の人は、この点を混同しているようです。つまり、「酔い覚めたわ」と言うとき、それは「ハイの状態じゃなくなった」ことを指します。依然として脳機能は下がったままです。

    酔うって気持ち良くなることじゃないんだと感心しました。たしかに、車酔いとか気持ち良いどころか不快ですもんね。一般的な感覚は別として、脳科学的には飲酒して気持ちがいい≠酔いということですね。

  • 脳細胞の0.0005%に過ぎないドーパミンが、人類のもっとも重要な要素になっていて、この「果てしない不満を育てる」物質を知ることで、薬物やアルコール依存症やワーカーホリック、ハリウッドの有名俳優や創造性豊かな芸術家、果ては保守とリベラルの政治的対立から人類の大移動まで説明がつくと語る。
    かなり荒っぽく単純化し過ぎではないかと危惧されるが、一般読者にもわかりやすく面白い論旨が展開されている。
    まず、ドーパミンの本質は快楽ではないという前提に驚いた。なんとドーパミンとは、快楽物質ではなく期待物質だというのだ。

    生存と生殖につながる行動を促進するために進化したドーパミン回路は、好きかどうか、必要かどうかは関係なく、未来に備え、あらゆるものを"もっと"、そして"より多く"手に入れることに力を注ぐ。
    ドーパミンを始動させるものは、予想外の幸せの誤差であり、驚きもなく、予測に誤差も生じないなら、ドーパミンの放出は止まる。
    ドーパミン回路が処理するのは、現実の世界の体験ではなく、想像上の未来の可能性だけなので、必然的に失望につながる。
    それは情熱が、私たちに可能性の世界を夢見させるときに高まり、現実に出くわしてしぼむのと同じ塩梅だ。

    ドーパミンが、生存に役立つものの登場を告げる"早期警報システム"という役割を果たしている時、驚きを伴う出来事を予測できるように脳を形づくり、資源を最大限に活用できるようにしている。
    しかしその過程で、驚きを排除し、報酬予測誤差を消し去ることで、ドーパミンは自らの活動そのものを抑制しているというのは面白い指摘だ。

    さらにある実験で、ドーパミンを増やす薬を猿に注射したところ、服従的な仕草が増加したというのも面白い。
    制御回路のドーパミンが駆り立てるのは、環境を支配することであり、必ずしもその環境にいる誰かを支配することではないのだとしたら、服従的な行動を引き起こしても、何ら矛盾はないのだ。

    ・依存症患者などの快楽追求者
    ・ワーカーホリックなどのよそよそしい計画者
    ・創造力溢れる天才
    これら3つの異なる性格に共通するのは、未来の資源を最大化することに過度に集中し、いまここにある状況を味わうことを犠牲にしていることだ。
    どれほどの富や名声、成功を手にしようとも、彼らが幸せを感じることはほぼないし、満足することは絶対にない。
    そうした特殊な人たちは、種の存続を促す進化の力により生み出された存在だ。
    彼らは自然の力に駆り立てられるままに、自らの幸福を犠牲にし、人類全体に恩恵をもたらす新しいアイデアやイノベーションを世界に届けている。

    天才とは、その分野でドーパミン活性の高い人を指すが、大量のドーパミンはH&Nの機能を抑制するため、対人関係で問題を抱える事が多い。
    相対性理論の発想を可能にした大量のドーパミンとまさに同じドーパミンが、アインシュタインを恋愛から恋愛へと駆り立て、「触れあって感じあう」H&N志向の長期的な友愛へ移行することを許さなかった。

    彼らのような友愛に乏しくドーパミンに駆り立てられた人々が共通に抱く思い、「人類を愛しているが、人間は大嫌い」という言葉も、人類を愛することと隣人を愛することの違いは、子犬という概念を愛することと子犬の世話をすることの違いに等しいのだと考えると、合点がいく。

    政府からの給付金というアプローチはドーパミン的で、個人的な寄付というアプローチはH&N的だという指摘も興味深い。
    政府の福祉支出が多すぎると考えている人が、実は慈善活動に熱心だったりする一方、政府による貧困層への支援を求める人が実は、身近で困っている隣人に見て見ぬふりをしているなど、ありえる話だと思った。
    確かに政府による給付金のほうが寄付よりも金額は圧倒的に多いだろうが、人間味に乏しく、細かな調整が難しいため、満足度に違いが出ることも。

    多くの人にとって恐怖心がなぜ大きな影響を与えるかというと、損失回避で説明できる。
    単純な算数で、儲けの可能性がドーパミンから+1、H&Nから0なのに対して、 損失の可能性はドーパミンから-1、H&Nから-1で、合計すると一目瞭然。
    鍵となるのはH&Nで、ドーパミンと違って未来は関心がなく、あるのは現在だけなので、この結果となる。
    扁桃体が損失に対する反応を増幅しているのだが、扁桃体がなければ、損失回避は消滅し、苦痛の体験もなくなる。

  • ドーパミンと言う脳内ホルモンは知っていても、何とく快楽物質と言う程度の認識だった。
    しかし、このドーパミンこそが人類を進歩へと駆り立てた、という論旨には驚くとともに、興味が持てた。
    例題や実験が豊富に紹介されていて、実に楽しく興味深く読めた。
    自分の力でドーパミンを分泌したり止めたりすることは出来ないとしても、予めその働きを理解することで、自分の行動ベースを知ることも出来る上で有用な本でもあった。

  • 第一章だけ読んでお腹いっぱい…
    最近糖質制限をしていて思うのは、ドーパミンが出る要因がなんであれ、刺激される場所は同じだということ。
    糖質をたくさん摂るとドーパミンが出る。この時、脳の中で刺激されているところは、その他のドーパミンが出るような行動(衝動買い、SNS、ポルノ)をとった時に刺激される場所と同じな感じがする。

  • 20230804
    刚看了20%,感觉很有意思。讲述了多巴胺的原理。以及期望回路和已有回路的工作方式。但是,有点拖沓,我现在很想知道我们应该怎么做。看得急死。哈哈哈

    The Molecule of More

  • 我々の様々な精神活動に多大な影響を与えているドーパミンに関して、様々な研究結果を元に我々の身近な内容を例に詳細に述べられている。ドーパミンは「快楽物質」と誤解されることもあるが、実際は「期待と可能性」を司る物質であると述べられている。「未来の報酬を最大化」することが主な役割であることから、ドーパミンは満足することない、ひたすら「もっと」を要求する。「いまここで(Here and now)」(H&N)体験を司るオキシトシンやエンドルフィンと対象的・相補的な関係に関しても様々な事例とともに述べられており、理解しやすい。単純には「未来の報酬を最大化」するために存在するドーパミンであるが、「遠い未来」のために計画・戦略をたて努力することを掻き立てる作用もあれば、「近い未来」のため欲望を掻き立てる作用もある。注意することとしては、いずれにおいてもその「未来」が「現実」となった時にはドーパミンは「幸福」をもたらすことはなく、その幸福をもたらすものはH&N体験を司る物質である。本書の後半には、ひたすら「もっと」を追求するドーパミンが人類の科学や芸術を飛躍的に前進させてきた反面、それらを達成してきた人物達が必ずしも幸福な人間関係を築いてきてはおらず、それをH&N物質ではなくドーパミン優位として説明されており、非常に興味深い。本書の最後にはこれらのバランスをとり融合させるメリットに関して著者の考えが述べられている。

  • 覚醒剤は気分の高揚をもたらすが、ニコチンはニコチンへの渇望感以外なにももたらさない

    全然依存症にならないんだよな
    タバコもすぐやめれたし、ポルノも先延ばしにできるし、多分ドーパミン欲求がそんな無いのかも
    じゃないとひきこもらないか

    その分か分からないけれど良い方向に夢中になることもあんまりない
    もうちょいドーパミン活性化させて、行動できたらいいなと思う
    ワクワクするとかほしいとかにもっと正直になる
    決めたことはできるから制御ドーパミンが強いのかもしれない

  • 依存症の決定版と言ってよい。脳神経科学の視点から依存症を機能的に捉えている。仏教が説く業(ごう)を化学で読み解くことが可能となる。
    https://sessendo.blogspot.com/2022/03/ze.html

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著者プロフィール

ジョージワシントン大学の精神医学・行動科学部教授。
アメリカ精神医学会の特別研究員。

「2020年 『もっと!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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