心を操る寄生生物 : 感情から文化・社会まで

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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695558

作品紹介・あらすじ

::: あなたの心を、微生物たちはいかに操っているのか? :::

微生物などの寄生生物は、私たちの脳神経に影響を与え、
感情や行動を操っている。

たとえば、気分や体臭、人格・認知能力を変えたり、
空腹感・体重もコントロール。

ネコやイヌからうつる寄生生物が、
交通事故や学習力低下の要因になりうることも明らかに。

また、人々の嫌悪感に働きかけ、道徳や文化、
社会の相違にまでかかわる。

その脳を操るワザは、あっと驚くほど巧妙だ。

こうした操作力を逆利用して、
うつや不安、ストレスを和らげる療法も開発中。

この分野(神経寄生生物学)の先端科学者たちに取材、
複雑精緻なからくりに迫っていく。


★amazon.com ベストブック(月間)!
きわめてオリジナルで、思考を刺激し、恐しくどきどきさせる・・・必読の1冊だ。
ーージョン・フォロ(amazon シニアエディター)

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::著者:: キャスリン・マコーリフ
サイエンスライター。多くのメディアに科学記事を執筆し、数々の賞を受賞。
年間の最も優れた科学記事を掲載するアンソロジー
『ベスト・アメリカン・サイエンス・ライティング』にも選ばれている。

::訳者:: 西田美緒子
翻訳家。訳書は、ペネロペ・ルイス『眠っているとき、脳では凄いことが起きている』、
ジェンマ・エルウィン・ハリス編著『世界一素朴な質問、宇宙一美しい答え』、
フランク・スウェイン『ゾンビの科学』など。

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::目次::

はじめに: マインドコントロールの達人
第1章: 寄生生物が注目されるまで
第2章: 宿主の習慣や外見を変える
第3章: ゾンビ化して協力させる
第4章: ネコとの危険な情事
第5章: 人の心や認知能力を操る
第6章: 腸内細菌と脳のつながり
第7章: 空腹感と体重をコントロールする 
第8章: 治癒をもたらす本能
第9章: 嫌悪と進化
第10章: 偏見と行動免疫システム
第11章: 道徳や宗教・政治への影響
第12章: 文化・社会の違いを生み出す

感想・レビュー・書評

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  • 身投げをするコオロギ、ネコに寄っていくネズミ、寄生虫の卵を守るカニ、アリタケの胞子散布に都合の良い高いところに登って死ぬアリ・・・寄生生物が自分に都合のよいように宿主をコントロールする例は数多い。知ったときには驚いた。気色悪いし興味深い。進化の妙の極みだな。

    冒頭は事例が豊富で快調だ。知っていた話が多いが、研究者がどういう手法で寄生と行動の因果関係を確かめたか詳しく書いてあって、説得力がある。
    でもそのあとがだんだんトーンダウンしてくる。寄生生物が「どうやって」宿主をコントロールしているのかという説明が希薄なのだ。まだよくわからないのだろうか? 状況証拠は揃っているけれど、犯行の手段がわからず、再現ができず、物証に乏しい。

    引き続き本書は、寄生生物はわれわれ人間もコントロールしているのではないかという仮説を証明にかかる。確かに、ネズミをコントロールできるのなら、人間に影響を与えることもできそうだ。
    だがそのへんになると、眉につばしたくなってくる。仮説がショッキングで、おれ寄生虫にコントロールされてたりしないよな、という実感が邪魔をしているのは確かだが、この統計処理は正しいのだろうかとか、サンプル数が少なすぎるんじゃないだろうかとか、疑問に思う。特に腸内細菌が個人のパーソナリティに影響しているという下りは、直感的にほんまかいなという気分になる。インスタント食品ばっかり喰っている人は切れやすいとか、野菜をいっぱい食べる人は穏やかだとか、そっちのほうがありそうだな。

    いつも思うことだが、こういうときには本の立場に沿う主張や研究ばかりを選ぶのではなくて、反対の立場をとる研究も取り上げて欲しい。論理的に反駁することで、客観的な説得力を増すことになると思うのだが。それができないのなら、語るに落ちたということだ。

    この分野はまだ研究中のようだ。今後どんな事実がわかってくるか、楽しみだな。

  •  知られざる、ショッキングな寄生生物の生態に圧倒される本。
     ヒツジの胆管の中でしか有性生殖ができないため、アリの脳の中に入り込む虫がいるという。その虫に感染されたアリは、昼間は他のアリと変わらないのに、夜になっても巣に帰らずに草の葉のてっぺんに登って草を食むヒツジに食べられるのをじっと待っている。アリは操られていることに気づかず、朝になると何事もなかったかのように巣に戻るという。
     また別の寄生生物は、神経化学物質でコオロギの行動を操作して、交尾ができる水辺に向かわせ飛び込ませるという。ほかにも何ともグロテスクで耳を疑うような寄生生物の生態が冒頭から次々と紹介され、おぞましくもページを繰る手が止まらない。

     なかでもいちばん衝撃的だったのは、ネコから人間に感染するトキソプラズマ原虫というもので、世界中の人口のおよそ30パーセントの人々が感染しているという。これに感染すると統合失調症に近くなり、自殺をしたり交通事故に遭う確率が高くなるという。
     歴史的にも人間がネコをペットとして飼い始めてから統合失調症が急増しているということを聞くと、実際にネコを飼っている人やペット業界に限らず、現代に暮らす我々を相当不安にさせる。

     人間の身体にも生まれたときから寄生生物が住み着いている。というより、人間と数千種の微生物は共生しているともいえる。
     近年になって、脳が人体をコントロールしているのではなく、臓器そのものがお互いに信号を出し合って制御しているという事実がわかってきたが、本書では腸が最も原始的な脳であることに言及し、そこで生息する腸内細菌の移植によって人格そのものまで変化することがあるというから驚きだ。

     そこからさらに著者のイメージは広がり、生物が根源的に持つ、感染に対する不安や嫌悪感が、人間関係のいざこざや引いては戦争を引き起こす原因になっているかもしれないという。後半はやや想像力を働かせすぎと感じたが、目に見えないほど小さい微生物によって我々の行動が操作されている可能性を思うと、すべての自然が持つ意図に畏怖すら覚える。

  • 人間や動物の体に棲む微生物が、宿主をコントロールするというお話し。

    トキソプラズマという寄生虫に感染されたネズミは、猫に対する恐怖心が薄れて猫に近づき食べられる。そして猫に寄生したトキソプラズマは、フンを介してまたネズミに戻るらしい。またインフルエンザウイルスに感染した人は一時的に社交的になるらしく、知らず知らずのうちに人混みでウイルスをばらまいてしまう。

    つまり寄生生物は宿主を巧みに操縦して、上手いこと自分たちの子孫を残しているという話なのだ。もしかしたら普段の行動や生活パターンも、自分の意思で決定していると思い込んでいるだけで、実は寄生虫や腸内細菌の命令なのかもしれない。

    しかしピロリ菌の除去と肥満の関連性やヨーグルトの整腸作用を考えると、すべての微生物が人体に有害というわけではないので、あまり神経質にならず上手に付き合えばよろしいんじゃないでしょうかね。

  • 斬新です
    理系なのか難易度は高めです。
    寄生するだけではなく宿主を操作する、思いもよらない世界でした
    色々調べるとすごいことだらけの世の中です

  • 第25回アワヒニビブリオバトル「記憶」で発表された本です。
    2017.05.09

  • 私は40代で宗教が集団と感情を形成していることに気づき、50代では宗教といっても情報とアルゴリズムに還元できる事実に思い至った。だが、よもや寄生生物が宗教に関与しているとは夢にも思わなかった。文明論的には気候を重視する見方が常識となっているが(『情報社会のテロと祭祀 その悪の解析』倉前盛通、『新・悪の論理』倉前盛通)、その気候に適応しているのは動植物であり、動植物の生を支える細菌だ。
    https://sessendo.blogspot.com/2019/12/blog-post_38.html

  • 科学的に証明されていない説も多数紹介されています。支離滅裂なのだが、内容は非常に興味深い。別の人が同内容を語れば、もっと読みやすく構成されるのではないかと、思ってしまう。

  • ☆猫からトキソプラズマが移り、人間の脳に感染。世界中の人口の約3割が脳に感染。これが人間を支配?

  • 衝撃的だった。寄生生物は宿主から栄養を摂取する程度と今まで思い込んでいた。また、気持ちの悪いもんだ、ぐらいの認識だった。まさか、脳に入り込み、行動を変化させることがあるとは、思ってもみなかった。
    腸内細菌の働き、影響も驚きだ。

  • 寄生生物がどのようにして人を含む動物の行動を操るのかを知ることができた。

    心と行動はどのように異なるのか、といったややこしい問題にはあまり触れていないのだが、タイトルと異なり「行動を操る」といった方が適切か。

    どちらにせよ、寄生生物は宿主の行動をコントロールして「自由」を奪う。これは宿主からして「自由が奪われている」と感じない場合が多い。

    人が持つ「偏見」は寄生生物への防衛手段であったり、それら防衛が現代の道徳や社会などに及ぼす影響などを知ることができた。
    「偏見」は生得的に誰もが持つ防衛手段であり、これまで身を守る手段として役立ってきたのは事実であり、その「偏見」がもたらす嫌悪感を捨てることは難しい、ということなのであれば、「自分は偏見がない」と主張することは一見「理性的」ではあっても、生得的な防衛手段を持たないことになるわけではなく、自己理解に欠けていることを宣言していることになる。その意味で「理性的ではない」ことになるのか。

    嫌われ昆虫「Gさん(仮名)」は自分も嫌いだ。でも寄生バチに背中に乗られて脳をやられてゾンビ化、ハチに操られたまま死にゆく一連の流れは読んでいて憐れみを感じた。

    なぜ嫌われ昆虫「G」に同情するかというと、我々ヒトにも気がつかないだけで「寄生生物による行動の操作」は確実に行われていて、その集合体が「現代の社会」に他ならないからだ。

    https://twitter.com/prigt23/status/1038763277520592898

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著者プロフィール

サイエンスライター。多くのメディアに科学記事を執筆し、数々の賞を受賞。
年間の最も優れた科学記事を掲載するアンソロジー
『ベスト・アメリカン・サイエンス・ライティング』にも選ばれている。

「2017年 『心を操る寄生生物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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