〈わたし〉は脳に操られているのか : 意識がアルゴリズムで解けないわけ

  • インターシフト
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772695527

作品紹介・あらすじ

悪いことをするのも、脳のせい? 脳科学の最重要テーマ「自由と倫理」「意識とアルゴリズム」に挑み、大きな反響を呼んだ話題作!

感想・レビュー・書評

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  • 第15章
    著者は決定論的アルゴリズムについて考える際に、最初に決めた公式をそのまま使い続ける、不変性を前提としている。しかし、アルゴリズムといえど、経験をアルゴリズムの式に盛り込むことは可能ではないか?ディープラーニングのように、アルゴリズムであっても学習は可能なはずだ。そして、経験を式に盛り込むことは決定論的には破綻しない。なぜなら、その経験のもとになった出来事も、決定されていることだからだ。この点を考慮していない。

    4枚カード問題について、著者はビールなどに変えると正答率が上がることは、経験に頼ることの実例であり、数学的アルゴリズムならばどちらの提示法でも正答率は変わらないと述べている。しかし、それはどちらの提示法についてもアルゴリズムが完全な理解をすることを前提としている。この前提は誤りである。なぜなら、脳の能力があるからだ。これも決定論を破綻させはしない。脳の能力が有限であり、個人差があることは誰が見ても明らかだ。しかし、その限界があることによって、イコール自由意志があるとはならないからだ。

  • 実に平易に書かれた本だと思う。私自身、自分の「自由意志」をどこまで信頼していいのか考えていたので(多分この「自由」を根源的に疑い抜く態度はスピノザ/國分功一郎的な発想ではないか、と当て推量で書いてみる)、タイムリーに刺激的な議論を紹介したものとして受け取れた。日常と地続きで考えを深めることができる、そのいい意味での「下品ではない俗っぽさ」に惹かれる(例えば、薬で精神/脳を調整することは「自由意志」にどう影響を与えるのか考えさせられる)。そして、最後に私たち人間存在全てに希望を与える結論で閉じているのもいい

  • 人を殺したのは脳のせい?
    意志はころがり落ちる石なのか
    二つの対立する答え
    頭のなかの嵐
    抑えられない衝動
    神経科学者の見解は間違っている
    理性は情動に依存する
    決断の引き金が明らかに
    マジシャンとしての脳
    心や体の動きを予測する
    人間はプログラムされたマシンか
    悪徳の種が脳に植えられている?
    倫理の終わり
    意識の深さを探る
    アルゴリズムは「限りのない問題」を解けない
    内面世界を意識的に旅する
    道徳的行為主体はいかに生まれるのか
    心の宮殿

  • 献本にていただく。

  • 脳科学では、人の意思決定はニューロンが自立分散的に行った結果を自分が主体的に行ったと錯覚してエピソート記憶(ある期間と場所での出来事についての記憶)をしているに過ぎないとする受動意識説があります。本書はそれに対して人は意識を持って自分で意思決定していると反証してますが、人はアルゴリズムで解けない難しい思考と判断をしているからでは根拠が薄いと言わざるを得ない。そもそもアルゴリズムで解けないから人工知能(アルゴリズムで解く人工知能もありますがw)なのではなかったのか。と言いつつもドストエフスキーの引用からブロザックなどの薬品が脳に与える影響など、とても興味深い内容も盛りだくさんでした。

  • 未来について考える、哲学シリーズ3冊読了。
    人類はどこへ向かうのか?より良い未来とは?

    人類とテクノロジーは切っても切り離せない。テクノロジーは問題も引き起こすが、良いことをもたらすことのほうが少しだけ多い。これまでもそのようにして発展して来た。(中世の王様より、現代の我々一般市民は確実に良い生活環境を授かっている)
    このようにしてテクノロジーの進化を促す目に見えない流れをテクニウムと呼ぶ。
    しかし、そのようにして発展して来たのは、必然なのか?それとも、我々自身の意思によってなのか?人間には自由意志はあるのか??我々は初めから決められたレールの上を走っているだけなのか?
    自由意志に関する現在のコモンセンスは「自由意志はない」ということらしい。しかし、「あると思いたい」。なぜなら、自ら熟慮し、判断し、選択することが「より良い未来」を作るはずだから。そしてまだまだ劣勢ながら「自由意志はある」という勢力が増して来ているらしい。
    より良い未来のためには、テクノロジーを活用しながら、生命や宗教といった多様性を容認していかねばならない。
    そのためにも、もっと人間を理解しなければならない。これからの人類において、間違いなく脳科学はキーテクノロジーだろう。
    なーんてことを学び、考えたのでした。

  • 人間の意識がどこから来たのかを考察。
    神経学的には脳が決定している決定論、脳と体は異なる二元論が出てくるが、普通に考えるとそうは思われないが学者的には事前に判断は決まっているつまり人間に道徳責任はないという決定論が主流らしい。
    もっとも著者が主張するのは、脳が指令を出しているが、その前段階が本当にどうなっているのかわからない。記憶や経験を探っていくということが意識であるという。

  • 最近の脳神経学関連の本を読むと人間には自由意志がないという結論にたどり着くものが多い。

    そもそも自由意志とは何か?という定義づけから考えるとなかなか難しい問題なのではあるが、私自身もどちらかといえば自由意志がないと言う意見である。

    しかしこの本はその考え方に異論を唱え自由意志があるというスタンスで書かれている。

    その論説はなかなか見事で読んでいると思わずうーんと唸ってしまうほど。

    なるほどこの本で書かれている考え方であれば自由意志というものの捉え方が変わる可能性も出てきた。

    脳神経学の世界はまだまだ奥が深くて面白いです。

    非常に読み応えのある本でした。

  • 請求記号 491.371/St 5

  • つい悪いことをしてしまうのも、脳のせい?

    なにかをしようとする前に、すでに脳(無意識)がそれを決めている。
    では、人間に自由な意志はあるのか?

    脳科学の最重要テーマ「自由と倫理」「意識とアルゴリズム」に挑み、
    「自由意志はある」と解き明かして、大きな反響を呼んだ話題作!

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著者プロフィール

イェール大学附属病院の神経科医(レジデント)。脳神経科学と哲学をバックボーンに、意識と意思決定の謎について研究している。本書を含め、3冊の著作がある。

「2016年 『〈わたし〉は脳に操られているのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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