愛着障害は何歳からでも必ず修復できる

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784772615068

作品紹介・あらすじ

近年、愛着の問題を抱えるこどもが増えています。
愛着障害については、以前から偏見や誤解が多く、また発達障害と混同されやすいため、こどもに対して適切なアプローチが行われにくい現状があります。本書では、長年、保育や教育、福祉の現場で、愛着の問題がある子どもを支援してきた著者が、保護者や支援者向けに愛着障害の背景や原因についてやさしく解説します。また、愛着障害の特徴を紹介しながら、発達障害の違いとその見極めのポイント、対応の仕方も具体的に紹介します。

感想・レビュー・書評

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  • 愛着障害の概念について新たな理論を提唱するとともに、愛着障害の支援について心理士の立場からかなり詳しく、かつ丁寧に説明している。著者の提唱する理論の是非はともかく、新たな視点を得られたことは間違いない。
    卑劣な行為で世間を賑わしているあの人たちも、きっと背景には愛着の問題が隠れているのだと思う。このような人たちに早い段階でアプローチすることが結果として平穏な社会をつくる一助となるだろう。

    ✏障害の程度はさておき、30%以上の子どもに愛着の問題があると考える。

    ✏愛着の特徴
    ①愛着とは「特定の人と結ぶ関係」である。
    ②「特定の人」とは「親」とは限らない。
    ③人間同士の絆は気持ちや感情でつながる「情緒的」なものである。
    (←②について、親でなくとも愛着形成できることは間違いないが、子が"認めてもらいたい"と感じる相手と愛着形成することもまた本人の自尊心を培ううえでは重要であり、その相手は大抵親である。この点については完全に同意しかねる)

    ✏愛着形成の3つの基地機能
    ①安全基地…不安、怒り、悲しみなどのネガティブな感情を持ったとき、「特定の人」に守ってもらえるという認知・行動の基地
    ②安心基地…「特定の人」と一緒にいるとき落ち着く、いい気持ちになるなどのポジディブな感情を生じさせる感情の基地
    ③探索基地…「特定の人」から離れ、行動し、その後また「特定の人」のところに帰ってくること。自身の体験を「特定の人」と共有し、受容してもらうことでポジティブな感情は増加し、ネガティブな感情は減少する。

    ✏以前、攻撃性の原因は発達障害にあると誤解されていたがこれは間違いである。発達障害自体に攻撃性があるのではなく、発達障害に合わない関わり、対応をされたことによって二次障害が引き起こされ、その結果として攻撃性を獲得する。

    ✏「できた」という主観は、自分だけでは感じ取ることができず、相手から認められるという関係性の中で感じることができる。この現象を「間主観性」と呼ぶ。

    ✏愛着障害は感情の障害、感情がきちんと発達していない障害である。子どもへの関わりだけを意識しても、その関わりを受け止める感情ができていないのだ。
    そのため、愛着障害への支援では、子どもに感情を確認する、問う行為は禁物である。

    ✏愛着障害の3大特徴
    ①愛情欲求行動
    ②自己防衛の行動
    ③自己評価の低さ

    ✏安全基地がない状態(自分を必ず守ってくれる人がいると思えない状態)で自分が悪いことをしたという罪悪感を感じることは、自分が壊れてしまうことですから、できるはずがありません。

    ✏自己評価の低さとは、絶対的な低さではない。自分がこうあるべきという評価の要求水準より、低いと感じることが自己評価の低さである。

    ✏自己評価が低いという特徴の現れ方
    ①自己否定
    ②自己高揚(自分は本来もっと評価されるべき存在だと思う)→優位性(他人を指摘する、モノをあげる、仲間外しやいじめによって相対的に優位な地位に立つ)への渇望を引き起こす

    ✏愛着障害かそうでないかの区別ではなく、愛着の問題の程度と現れ方の違いがあるだけである「愛着スペクトラ厶障害」として愛着障害、愛着の問題を捉えるべきである。

    ✏「片付けができないように見える現象」
    ADHD→実行機能の脆弱性が原因。
    愛着障害→「片付けない状態より片付けた方が気持ちがいい」という感情が育っていないことが原因。

    ✏「ルールが守れないように見える現象」
    ADHD→「ルールは守るべき」という遵守意識はあるものの、注意欠如や衝動性、行動制御の問題があることが原因。
    ASD→ルールが本人の捉え方、認知と合致していないことが原因。
    愛着障害→ルールを守って行動した方が気持ちいいという感情が育ってないことが原因。
    (規範的行動をすることでポジティブな感情が生じることを特定の人と形成していない。むしろ、ルールを守らないことで周りから注目されるため、余計にその行動をしてしまう。)

    ✏不適切な行動をした理由を問うた際
    ADHD→思い出せない
    ASD→自分の理屈で反論
    愛着障害→「してない」「知らない」と自己防衛的に責任を回避

    ✏突然起こる激しい攻撃行動
    ①特定の対象だけしか攻撃しない
    ②攻撃し出したら止まらない
    →この2つの特徴を満たしている場合、衝動性ではなく感情混乱が原因=ADHDではなく愛着障害が原因

    ✏愛着障害と自閉障害を併せ持つタイプも存在する。しかも、私が出会った中でこのタイプの愛着障害が一番多いのだ。

    ✏行動の問題の強さ=自閉の程度×愛着の問題の程度
    →片方が少なくてももう片方が多くなると、より大きな問題行動として表出される。
    (5×30=30×5=150のように、どちらも同じレベルのリスク因子となりうる)

    ✏人の感情が分からないからこそ、相手が嫌がることを平気でできる。一方で、どう嫌な気持ちになるかはわからないが、嫌がるという反応を示すことは敏感に察知する。人の反応に敏感なのは、安全・安心基地が無いからこそ起こる特徴である。

    ✏愛着障害支援では「1対多」の支援は禁物である。いきなり色んな人と関わる状況では誰とも安心感が持てないのだ。

    ✏「愛情の器」の受け入れ口を広げ(どんな関わりでもポジティブな感情として受け止められる)、底がしっかり閉じている(受け止めたポジティブな感情を愛情としてためておき、愛情エネルギーとして持続していつでも利用できる)状態にすることが大切である。

    ✏発達障害の支援では、その発達障害に合った支援を関わる人で統一すれば支援が成功するのに対し、愛着障害では支援の統一だけでは成功しない。「キーパーソンの決定」が必要なのである。 

    ✏愛着障害の子どもには、良かれと思って「丸ごとのあなたが好きだよ」と自己肯定感の確認からしてしまうと、かえって自己高揚の状態を増幅してしまい、愛着修復に失敗してしまう。
    ここでは定型発達の逆順で行うのがコツである。まず、役割を付与して自己有用感を意識できるようにし、感情発達の出口を固定する。そこから逆算していくのである。自己有用感は自己効力感に繋がり、最後には自己肯定感に行き着く。

    ✏キーパーソンこそが自分の気持ちをわかってくれる存在であることに気づき、キーパーソンに大切にされる経験から、自分の気持ちが自分でわかる、わかるというのはポジティブな感情になるのだということがわかるようになる。

  • 愛着形成の基本は。。
    ①一緒に○○しよう。
    ②楽しいね!(感情の共有)

    あとは、役割を与える。
    それが、認めてもらう機会になる。

    感情の共有は大切よね。
    そして、それを口に出すこと。

  • ASDと愛着障害の併存については感情と認知の両面からのアプローチが必要。認知にズレがある為納得できないと行動できないというのは凄くしっくり来た。これからは納得よりも言われたら即に行動することを意識したい。

  • 良書。支援技法で使いたいと思う箇所が様々ありました。

  • 独身未婚中年男性の自分が読んでみました。
    「何歳からでも」とあったので、大人になってからでも大丈夫なのかなと思って読み始めたら、子どもの問題行動への対処法の本でした。

    自分自身は、他人に対して攻撃的な行動を起こしたりはしませんが(「人に迷惑を掛けるな」と教育されてきたので)、愛着障害なんじゃないかと思っています。
    この本での分類では、「愛着障害第2タイプ」で、人との関わりを避け、「抑制タイプを叱ると、長期にわたってその人との関係を一切遮断します」とあり(p117)、おそらくこれにあてはまります。もっとも、一応社会人をやっているので、一切遮断することはないですが、一度相手に対する信用を失ってしまうと、それが回復することはほぼないです。
    もっとも、それは相手がこちらを「叱っている」のではなく「怒る」からそうする場合がほとんどです。「怒る」ことをしなくても「叱る」ことはできるはずなのに、大人でも「叱る=怒る」と思っている人が多くて困ります。そして、その「怒り」が時に理不尽なので(相手に非があるのになぜか自分が怒られる)、人間不信となるのです。(怒らないで叱るという技術を持つ同僚にたまに叱られますが、その同僚との関係は良好です)
    いじめられる星の下に生まれてしまったのかもしれません。それはそれで受け入れようと思いますが、せめて親には「それは辛かったね」と受け止めて欲しかった。今考えると、自分にとって家もそんなに居心地のいい空間ではなかったのかもしれません。
    親などによる「恐怖政治」というのもあるようで(p131)、自分自身は常に怒られていたわけではありませんが、今でも親は怖いものだというイメージは拭えません。
    おそらく、「当事者のことを一番知っている人(本人よりも知っている人)」(p151)がいると少しは救われる気もしますが、大人になると、そういう人は自分で見つけなければいけません。親のせいではないのですが、親密圏の人間関係を作ることができない人間になってしまったようで、今もがんばって人を信用しようと努めていますが、自分が信用されていないのか、なかなか他人が自分のことを大切に思ってくれる気配は感じられません。孤独で生きていくしかないかなと思い始めた最近です。

    今、お子さんがいらっしゃる方々はぜひ、お子さんと触れあう時間を存分にとってあげてください。そして、親御さんは全面的に、お子さんの味方であげてください。そこが、他人を信用・信頼できる人に育つ第一歩です。
    これからの子どもたちが、住みやすい日本社会になることを願うばかりです。

  • 必ずと書かれているだけはあるなあと思う、再読メモ

  • ADHD,ASD,愛着障害の見分け方、具体例を出して下さってて、現場で児童と接する身としてはとても勉強になる本だった。

  • 子育てをする上で我が子が愛着障害になることを防ぎたいという想いから読了。
    著者は現場主義で記載内容に説得力があった。

    愛着形成は以下3つが重要
    安心基地:リラックスできる、安心できる人の存在
    安全基地:危険から守ってくれる、防衛してくれる人の存在
    探索基地:

  • 自分にとっては、新しい解釈の仕方を得られた一冊。

  • なるほど、と思ったところに付箋はってたら、読み終わった頃にはフッサフサになっておりました。今日読み終えたけど、明日もう一度読んで大事なところをメモしとおこうと思える一冊でした。

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著者プロフィール

和歌山大学教育学部教授。臨床発達心理学・実践教育心理学専門。臨床発達心理士スーパーバイザー。学校心理士スーパーバイザー。上級教育カウンセラー。ガイダンスカウンセラー・スーパーバイザー。日本教育カウンセリング学会理事。日本教育実践学会理事。日本学校心理士会幹事、日本臨床発達心理士会幹事。

「2022年 『愛着障害は何歳からでも必ず修復できる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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