- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784770040824
作品紹介・あらすじ
人生の奇跡は脳のなかで起きている。失われた機能をふたたび"取りもどした"人たちの再生物語。
感想・レビュー・書評
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1960年代から70年代にかけて脳の可塑性を示唆する例が出始めた。しかし事実を思い込みが封じた。先入観が大手を振って歩くのは科学の世界も例外ではない。功成り名を遂げた科学者が新たな知見を軽んじることも多い。
https://sessendo.hatenablog.jp/entry/2022/03/22/122044 -
生まれつき、事故、うつなど...脳障害を負った患者の脳をいくつかの例をあげて治療し良くなる過程が書かれている。
脳の特に可塑性に注目している。
脳は運動能力と連動しており、視覚や聴覚、触覚など五感とも連動し、仮にそれを司る部分が機能しなくなっても、電気信号などを使い刺激する、あるいは何度も繰り返し練習することでニューロンの結びつきを強くし、また脳の可塑性により損傷した部分を補い普段の生活に支障なく以前の生活に復帰できる事例も書かれている。
脳の可能性、脳の一部が損傷しても、そのほかの健全な脳がそれを補い修復するという事実...
ただただ「凄い!」と思うことばかり。
自分の能力の無さに色々諦めてきたこともあるけれど、
まずは左の指がスムーズに動かなくて断念していたピアノ曲をまた練習してみようという気になる。
知性も感情も運動能力も...
やっぱり全てを脳は司っているということなのか??
本当に脳は凄いと改めて思う... -
"この本を手に取るきっかけを与えてくれたのは、ジェームズ・ロリンズさんの小説。シグマフォースシリーズで、自閉症、サヴァン症候群の研究から人類の進化を意図的に操作しようとする人たちが登場する小説のあとがきに紹介されたのが、本書だった。この小説を読まなければ、本書に出合うことはなかっただろう。
この題名に大いなる不満がある。「脳は奇跡を起こす」原題は「The Brain That Changes Itself」
本書に記載されていることは、科学の歴史であり、脳を研究し続けてきた研究者の軌跡である。それなのに「奇跡」という言葉が、宗教的なものを連想させたり、非科学的な出来事を連想させる。この題名だけでは
私は手にとることがなかったであろう本だ。残念でならない。確かに奇跡のように見える事例が多々紹介されている。左半分の脳が機能していないまま成長してきた人などその代表だろう。でも、それは脳の機能そのものであり、成長する中で両親兄弟の育成結果である。出版社の失敗事例の一つではないか?
もちろん爆発的に売れていれば失敗ではなく、成功事例になりますが・・・
さて、本書の内容は
平衡感覚を失った人(常に自分が落下し続けているように感じている人)が、舌の感覚から平衡感覚を取り戻す事例や脳梗塞でマヒした機能を訓練・リハビリを通じて運動能力を取り戻したりする事例を紹介しながら、脳は可塑性ということを読者にわかりやすく説明をしてくれる良書。昔の脳への考え方は、きまった場所で、きまった機能をつかさどる機械のようなものが脳だとされていた。そうした考えを本書に登場する科学者たちが、時には理不尽な社会的な抵抗に受けながらも研究を続けることで、脳は機械のようなものではなく、可塑性を持ったもの(粘土のように力を加えると変化した状態が続くもの)
脳の機能障害を持っている人にも希望を与えてくれる。
自らの成長を信じて、学習意欲も刺激される素晴らしい本。" -
本書は、脳の可塑性についての解説書である。可塑性とは、goo辞書によると「固体の性質の一つ。固体に、ある限界以上の力を加えると連続的に変形し、力を除いても変形したままで元に戻らない性質」である。脳もこのような性質をもっていることにより、良し悪し、さまざまな現象がおこる。「右手を失ったにもかかわらず、その右手が痛む」、「小さいときの、トラウマが人生を支配する」、「トラウマからの支配を脱するとこは、困難ながら可能」、「言語獲得臨界期を超えても、完璧な言語習得は困難ながら可能」、「生まれながらに左脳がない人でも、右半身が動く(これには、びっくりした)」、「平衡感覚をつかさどる脳の一部を失ったため、立つことができない人に、電気信号で平衡を舌に伝える機械を装着することで、立って歩くことが出来るようになった」などなど。まさに奇跡といえる。 現在は、脳の可塑性はほぼ証明されており、脳研究者たちはこれを前提に、このメカニズム解明を目指している。しかし、この説が支持される前(1980年以前程度だと思われる)は、脳は先天性局在的だと固く信じられてきた。つまり、「体の部分(目や手など)や、脳の機能(言語、記憶、計算など)」と結びついた「脳の物理的部分」が生まれつき存在すると信じられていた。そのため、脳卒中などで脳の一部が破壊されると、そこに結び付けられた機能は永久に失われると信じられていた。ところが、上記のような臨床例により、可塑性を持つことが立証される(もちろん、ある程度の局在性を持つ)。 これは我々にとっては、極めて明るい事実である。生まれつき愚鈍な人はいるだろうが、それを努力で覆すことができる。とはいえ、「努力を継続」する能力は、果たして局在的(先天的)だろうか、可塑的(後天的)だろうか?読者諸氏は、これをご自分で確かめられたら良いと思う。
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「脳の可塑性」を題材に、十件の実例を紹介していく。
脳科学の最先端を扱っているため、普遍性、専門性がやや乏しいが、その分私のような門外漢でもすんなり読むことが出来た。
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講義の課題読書として。 -
不思議としか思えない脳の能力に関する話題は大好きなのですが、
本書はその中でも特によかったですね。
「何が素晴らしいのか」と言いますと、
その脳の能力を患者さんの治療に利用する話題がいくつも登場するところです。
知的興奮と胸あたたまる感動の両方が味わえます!
それぞれが、まさに奇跡としか思えず、
一つ一つの事例が感動でして、話を聞いただけでも胸が熱くなるのですから、
当の患者さんの驚き、喜びはいかばかりでしょう!
例えば、まず登場するのが、平衡感覚をつかさどる前庭器官を損傷した人の話。
そうすると、たえず「落ちていく」ように感じ、立っていられないのだそうです。
(眠りについた時、ガクッと落ちる、あの感覚がずっと続くのですかね?)
従来、治療不可能とされてましたが、
平衡感覚に関する信号を舌から脳に送る装置により、その症状がなくなる。
それだけでなく驚くべきは、その装置(=人工の感覚器)を取り外した後も、
その感覚が学習されて続いたことです。
バランスをとれる感覚を取り戻した喜びに感極まる患者さん。
そんな例がいくつも登場し、
そのたびに驚くような喜びを一緒に体験した感覚に浸れるところが、
とってもよいですネ!!