ぼくの村は壁で囲まれた―パレスチナに生きる子どもたち

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  • 現代書館
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  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784768458020

感想・レビュー・書評

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  •  イスラエルの建国や中東戦争に関する本は,30年以上も前にまとめて読んだ事があって,その辺りの事情は分かっているつもりだったが,最近のパレスチナをめぐる情勢は,なかなか捉えきれずにいた。
     本書の内容は,実際にパレスチナに入り,子どもたちにいろいろと聞き取りをする中で得た情報と最新の社会情勢を折込ながら,今,現在の生の声を教えてくれるので,大変,説得力がある。
     イスラエルがユダヤ人国家である,という見方も,ある一面ではそう見えるかも知れないが,決して一枚岩ではないこと。またホロコーストを経験したハズのユダヤ人が,それとよく似たことをパレスチナ人に対してやっていることについても,それこそ「イスラエル=迫害されたユダヤ人」という図式でははかれない証拠であることを教えてくれる。
     とてもコンパクトで,読みやすく,現代のパレスチナ問題を考える上で,とても参考になると思う。そして,やっぱり,わたしたちは,行動することが必要だ。

     筆者は,「あとがき」で次のように述べる。

    「パレスチナ問題は遠いか?」という問いへの答えは、ここにあります。パレスチナ
    問題に無関心でいられる人は、実は沖縄の問題にも、原発事故後の福島で起きている問題にも、あるいは自分の町で起きている問題にも、自分自身が直接巻き込まれるまでは他人事であり、無関心になれるのではないかということです。イスラエル市民の多くが、すぐ近くで起きているはずの人権侵害に気づかないのも同じことです。彼らの多くは本気でイスラエル社会に差別などないと信じ込んでいます。
     知らないことは罪ではありませんが、知ろうとしないことや、見て見ぬふりをすることには問題がある。ぼくはラミの言葉を聞いてから、自戒を込めてそう考えるようになりました。(本書p.192~193)

  • パレスチナの問題が起こる過程はおおむね理解通りだったけど、常時ここまでの抑圧を受けているとは知らなかった。
    これでは悪循環が止まらない。
    何をすればよいのかよくわからないので、国連に寄付とかはしているが、役に立っているかもわからない。
    欲をセーブする世の中にしないと、世界の太平はないなあと思う今日この頃。

  • パレスチナ問題と一口に言うけれど、パレスチナ人の居住している場所はまさに現代のゲットーであり、とても今現在進行中の事とは思えないくらいに人権が無視されています。
    自治区一般市民への殺意を隠さないイスラエルの強気は、国際社会からの評価を気にしていないです。これはアメリカからの支持を受けているという事も有るし、何が何でもユダヤ人国家を存続させるという強烈な意志もあります。
    岡真理「ガザに地下鉄が走る日」を読んで疑問に感じた「ユダヤ人は何故ホロコーストを体験したのにパレスチナ人に同じことをするのか?」という疑問はこの本に答えがありました。
    イスラエルの主流となっているユダヤ人は、迫害を受けたユダヤ人とは別物で、逃げ延びてきた人たちに、イスラエルはとても冷淡だったと言います。避難民は戦わず迫害された臆病者という評価を下されていたようです。
    そして「迫害されたユダヤ人」という世間的なバッチのみをアピールして、国際的に優位な位置に立った。これが真相でした。
    現在の居留地も狭められ、必要なインフラ(水、電気)も足りず、食料や医薬品も足りない。検問所ではその日のイスラエル兵の気分で足止めされ出勤が通学が出来ない。病人や妊婦が検問所で亡くなるなどの事も日常的にあります。
    子どもたちの遊び場も満足に無く、男児が集まっているだけで逮捕されるなど信じられない事が沢山あります。そして容赦ない空爆や狙撃。2014年に大規模な空爆が有り数千人の命が奪われました。

    ちなみに基本的な所で、何故この地にイスラエルが出来る事になったのか。そこで最も原因として大きかったのは、第一次世界大戦時のイギリスの悪名高き三枚舌外交だと言います。アラブ、ユダヤ、フランス、各国へ別々に交渉する事によって有利に事を運びました。特にイギリス国内のユダヤ人から戦費を引き出すためにパレスチナにユダヤ人の国を作るという約束をした事。これがシオニズムの活発化につながり、パレスチナ人が先祖代々の土地を追われる事になったのでした。
    当然ユダヤ人が安住する事が出来る地が無い事は同情します。民族的に絶滅させられるのではないかという恐怖に立ち向かう為に必死というのも分かります。しかしパレスチナ人に行っているイスラエルの行動はまさに民族浄化と言えると思います。

    今、テルアビブ・オン・ファイヤーというイスラエルとパレスチナをテーマにしたコメディ映画が上映されています。まだ見ていないのでどういう映画なのか分かりませんが、一般の人に少しでもこの問題を認識して貰える材料になるのではないかと期待しています。
    最近TVでもイスラエルの高度な技術の特集や、芸能人がイスラエルのダンスについて熱く語る番組なんかもありましたが、まずパレスチナ問題が現在どうなっているのかを見て、その上でイスラエル賛美をして頂きたいと思います。アメリカに右ならえ、ばかりだから世界で禁止されている薬剤を日本で撒きまくっても誰も騒がないんだと思います。話逸れましたけど。

    • ありんこゆういちさん
      ゆきさん、コメントありがとうごさいます!
      私は逆に古い方になかなか興味湧かなくて・・。まんがパレスチナ問題を読んでなんとかぼんやりアウトライ...
      ゆきさん、コメントありがとうごさいます!
      私は逆に古い方になかなか興味湧かなくて・・。まんがパレスチナ問題を読んでなんとかぼんやりアウトラインが見えたかなって思っています。
      これもなんですが、「ガザに地下鉄が走る日」はもっとおすすめですので是非!
      2019/12/03
    • ゆきさん
      なるほどー。またいい本をご紹介いただきました。うれしいな。本書に加え「まんがパレスチナ問題」と「ガザに地下鉄が走る日」もぜひ読みたいと思いま...
      なるほどー。またいい本をご紹介いただきました。うれしいな。本書に加え「まんがパレスチナ問題」と「ガザに地下鉄が走る日」もぜひ読みたいと思います。ありがとうございます!
      2019/12/03
    • ありんこゆういちさん
      ありがとうごさいます!こちらこそ嬉しいです!^_^
      ゆきさんの本棚見ましたが、見たことがない本がたくさんでびっくりです!(◎_◎;)参考にさ...
      ありがとうごさいます!こちらこそ嬉しいです!^_^
      ゆきさんの本棚見ましたが、見たことがない本がたくさんでびっくりです!(◎_◎;)参考にさせていただきます!
      2019/12/04
  • 本書では取材されたガザ地区の少年・アラがこう言っています。「ぼくは、外の世界にいる人たちがガザのことを知っていると思いたい。ガザがどれほどひどい状況かということや、ぼくたちがどれおほど苦しんでいるのかということを」ほんとうにひどい、イスラエルのパレスチナの人々への基本的人権を無視した行いは、本書を呼んでもらうに尽きるのですが、最低限のルールである基本的人権に関しては、1947年に国連により「世界人権宣言」が採択されています。イスラエルはこれをないがしろにしているんです。パレスチナで起こっていることは、「ホロコースト」や「アパルトヘイト」と同じようなものなんですね。また、本書に書かれていたイスラエルの平和活動家の中でよくいわれていることの解釈を。「イスラエル人は、恐怖の囚人になっている」。恐怖に捉われた人々は、相手を悪魔のように思いこみ、冷静な判断力を失う。どんなに自分たちが圧倒的に有利な状況でも「自分たちがやられている」と思いこめば、とことん打ちのめさないと安心できなくなってしまう。それは、被害妄想的でもある。視野が狭くなると論理的に考えることができなくなって、感情的に反応するようになる、と。そんななか、希望もありました。「パレスチナ・ビジョン」というNGOがあり、非暴力で社会を変えていこうとする若者が集まり育ってきているそう。こういう、非暴力で社会を変える、というのは、日本でもどこの国でも当てはまること。世界中で、そういうよい影響を与えたり受けたりしつつ増幅していって、よりよい世の中が実現するとほんとうにいいのになあと思いつつ、そして、パレスチナの現状と歴史に憤りを感じつつ、本書を読み終えることになったのでした。

  • ぼんやり「天井のない牢獄」、等の言葉は知っていても、ぼんやり「ひどいなあ」とだけ思って特に関心を払わずにきたらえらいことになってきたので。といった動機ではじめてこうした本を手に取るのも我ながら恥ずかしくあるのだけれど、そういった人間にとってとてもいい本だった。日本にいると「イとパの「紛争」」であるかのように表現されることが多いし、宗教問題として聖書時代に遡った話がされたりするけれど、どシンプルに現代の人権侵害なこと、「紛争」として起きている以上に、日常の話であることがよくわかる。

  • 遠い異国の話としてニュースを見ればイスラエルの大統領も首相の顔もわからないけれど、知った日から、それは自分の目に誰であるか、そして何を発言し行動しているかがわかってくる。知らずにいたら「ユダヤ人は今もなお、かわいそう」「かわいそうなの?」で終わってしまう。
    今、画面に映し出される恐ろしい紛争をただの不思議としかとらえられない。でも、知ることによって国を持たなかったはずのユダヤ人たちはちょっと前の昔にある特別の場所で武力をもって住み始めたこともわかる。
    無知は罪であり怠惰の証であると思う。
    数年前、日本の若手俳優はイスラエルに留学なるものをしたことを思い出し、日本が米国寄りの姿勢の「イスラエルを支持」するための影響力となっている。日本からの物資が彼らの紛争で使用されている。
    日本からの武器があの紛争に使われているという事実を私たちはちゃんと知るべきだと思った。

  • パレスチナのバティール村の分離壁建設反対の取り組みが興味深い。

    人権侵害を訴えても無駄だったため村の景観の美しさを国際社会に訴えたところ、世界遺産にまで登録され壁の建設も止まった。

    人間に対しては偏見が生まれるが、景色は素直に心を動かすものなのかと考えると素晴らしくも複雑にも思える。

    ナチスの迫害経験者や子孫がイスラエルを非難する声明を出してる。良心的兵役拒否をするイスラエル人がいる。両国の若者たちの交流やNGOなど。

    パレスチナに希望は少ないが諦めない人たちがいることでゼロにはならないのだと考えさせられた。

  • パレスチナとイスラエルの対立について、とてもとても詳しくわかりやすく書かれた本。
    中学生くらいから理解できる内容だと思う。

    イギリスの三枚舌外交によって、イスラエルとパレスチナ問題が起きたのは知っていたが、そもそもなぜ簡単にシオニズム運動が起きたのか、なぜユダヤ人はホロコーストなど民族浄化を経験したのに、同じことをパレスチナ人にしているのかなども詳しく載っている。
    ホロコーストにあったユダヤ人と、シオニズムで移住したユダヤ人は別物らしい。
    当時のユダヤ人の中でも、イスラエルへ移住するのは反対していた人たちもいたそうな。

    PLOのアラファト議長や、その後パレスチナを支配するハマスなどは報道を見ている限りずっとテロの集団だと思ってきた。
    しかし、パレスチナ人はイスラエルから生活だけでなく生命の危機を含む理不尽な扱いをされ、人権侵害を受けていて、それに抵抗する最後の方法が自爆テロしかないという事実を知ると、彼らは本当にテロリストなのだろうかと疑問が湧いてくる。
    もちろん自爆テロに巻き込まれるのは一般市民が多いし、決して許されることではない。
    が、イスラエルで行われている自爆テロはもともとイスラエルがパレスチナに対してやってきたことと同じことではないか。
    単純にハマスがテロ集団だと言えなくなってしまった。
    知れば知るほど、単純にどっちが善でどっちが悪という判断ができなくなってくる。

    国連が批判してもダメで、周辺諸国が批判してもダメ。
    何もをどうしたらこの問題が解決するんだろう。
    そもそも、イスラエルのユダヤ人たちもイスラエルがパレスチナに対して行なっている非人道的な行いを全く知らず、本気で心からイスラエルには差別なんかない、ひどい事なんてしていないと思っているからタチが悪い・・。

    とりあえず巻末にパレスチナ問題について支援を行なっているNGOが載っているので、支援するかどうか考えよう。

  • 状況は本当に末期的。
    でも、終わりはいつまでもこない。
    そりゃ絶望もするよね。
    こんな世界滅ぼしてしまえとも思うかもしれない。
    人のエゴは恐ろしい。

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著者プロフィール

ノンフィクションライター。持続可能性をテーマに国内外を取材。

「2023年 『SDGS自由研究』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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