「死にたい」とつぶやく:座間9人殺害事件と親密圏の社会学
- 慶應義塾大学出版会 (2022年12月15日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766428186
作品紹介・あらすじ
事件はなぜ起きたのか
「死にたい」とつぶやいた者たちは、本当に死を望んでいたのか。
なぜ、家族ではなく、その外部に救いを求めたのか。
SNSに溢れかえる「死にたい」の声に、私たちはどう向き合うべきか。
『失踪の社会学』で颯爽とデビューした俊英による快著。
感想・レビュー・書評
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筆者の本はすべて他の本よりも考えがわいてくるのでとても読んでいて刺激になります。自分なりになぜか考えたのですが、思考や論理の前提・過程・Limitationなどがしっかり書かれている、インタビューなどは意識的にだと思うのですが、できる限り元の会話を乗せるようにされている、文章がとてもきれいであるなどいろいろ考えましたが、とにかく読んでいて思考が刺激されます。内容に同意出ない部分についてもとくにそれにこだわらず読めます。
既知の論理を適応していいのか、いけないのかについては科学的な目線で既知の理論の素地となった背景に当てはまるのかという点を重視している点などは、当方の扱う化学でも重要な視点でありとても好感を持ちました。社会学的な目線なのかわからないのですが、なぜ〇〇をしたのか、という問いを〇〇しかできなかったのではないか、なぜ××しなかったのか、など問題のとらえなおしをする点などはリサーチクエスチョンの立て方としてとても勉強になりました。手法も社会学的な研究についてはあまり存じ上げていないのですが、それでも読んでいて興味をひかれるほど丁寧に書かれており、感銘を受けました。
さて、内容ですが。
死にたいという言葉はとてもハイコンテクストになってしまっているため、研究についてはとても難しい側面があるのだなと率直に思いました。何かを言っているようで結果としてはあまり思考の外に出るような特異な結果は出ないという印象をもちました。もちろんとても研究自体には興味を惹かれるのですが。死にたいの対義語はいきたいではないと個人的には思うのです。
死にたいとつぶやく人が現実世界のコミュニティでは排除されないにしてもなじまない存在になりがちというのはとても身に染みて思うところで、相手になにかを突きつける言葉であり、現状の否定の意味も根本に含むという点でそれも納得できるような気もしました。背景に厄介な自分をそのままで受け入れてほしいという願望はあるように個人的にはおもいました。近しい存在には言えないというのはとても納得いく事象であり、それゆえに座間の事件では死にたいを受け取った犯人が特別な存在になり得てしまうという危うさも感じました。
死にたいとつぶやく人はどのような人なんだろうか、という考察については筆者のご意見をもっとお聞きしたかったです。死にたいとつぶやくということはそこにたどり着いていない人ということは根本的な前提となっているのでしょうが。それをもって実際には死ぬつもりのない人とするだけでかたづけることは、何も生まない・救わない対応であり、背景にある求めを知ろうとする試みや突きつけられた死にたいという言葉に対応する重要さを感じました。『手の倫理』で出てきた子供が母親に問うたエピソードを思い出しました。
シェアハウスインタビューも面白い内容ではあると思うのですが、個別的過ぎて一般的な何かを抽出するのは難易度が高い印象を持ちました。それでもシェアハウスに必要なルールとして、他人に何かを強いないというのはなんとなくあるように感じました。そこが家庭の中で生きづらくなり離れた原因の重要な部分なのではないかと想像しました。
犯人像についても個人的に想像するところはありましたが、殺人がその日暮らしのための手段になっていたという印象を持ちました。犯人の言説として、加害を加えない人もいる、という言説がとても印象的でした。
逆に、一番最初の殺人がかなり特異的に思われたので、もし分析するとすればそこの分析が最も重要であるように想像しました。なんにせよ、いびつな歯車である犯人が、最終的に何人もの犠牲を生んだ連続殺人を起こすほど機能し得た事実については重要なことと思われます。 -
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第1章で言いたいことは全て終えているので、以降の3章が「なんだったの?」としかならない。
終章で結論めいたことを語ってはいるものの浅瀬でちゃぷちゃぷしとんなとしか。 -
中断。興味深い内容なので時間が取れる時に再開する。
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