- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766426809
作品紹介・あらすじ
▼「テロ」。その政治的暴力の真実を探る。
「テロ」とは果たして何なのか。
終わることのないテロの問題は、我々にも決して無関係ではありえない。
理論と実際の両面からテロ問題の全体像の素描を試みる。
感想・レビュー・書評
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実務と研究の両方に目配せした、テロリズムとテロ対策の入門書。
テロ対策には、安全と権利自由の両立と、社会的レジリエンスの強化が必要だとする。 -
週刊ダイヤモンド2020711掲載
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東2法経図・6F開架:316.4A/Ko12t//K
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テロ研究の理論と実例(アルカイダとISIS、米の国内テロ、日本)に大別し、書名どおりテロの全体像を俯瞰できる。また今後テロについて見聞きする時の視点ができたような気がする。
9.11テロが起きた2001年頃はテロの事案数も死者数も特別多いわけではなく、00年代中旬以降に増加傾向、特に10年以降が急激に増加。14年にピークに達しそれ以降は減少傾向。アルカイダとISISは非中央集権ネットワークに変容、一方で欧米ではホームグローンの人物による自立型テロの増加。
テロの分類には難しい面もある。イスラム過激主義のテロは分かりやすい。一方、ヘイトクライムと言われるような犯行や5.15事件が「極右主義」テロに分類されているのを見ると、違和感を覚えたり、でもやはりそうかもしれないと感じたり。
さらにはテロの定義自体、外縁が分からなくなる。本書で「新左翼の波」「宗教の波」に含まれるものは典型的テロとしてイメージしやすい。本書でも政治的目的、恐怖の拡散、非国家主体とその結果として攻撃する側とされる側の非対称性、といういくつかの共通点が挙げられている。その一方で、政治的目的がなさそうなコロンバイン高校での乱射事件も事例として挙がる。伊藤博文暗殺をはじめ、本書でテロとされる事例の中には立場が変わればそう見ないものも多いだろう。
また、テロの成功、目的とはそもそも何か。売名、資金獲得、社会活動の萎縮、当局の権威失墜、このようなことができれば、暴力行為自体は思いどおりでなくとも、やはり成功したと言えるか。
著者は結論として、テロ対策として「安全と権利自由の『両立』」「テロに対する社会の心理的強靭性(レジリエンス)強化」の2点を挙げている。