- Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
- / ISBN・EAN: 9784766002089
感想・レビュー・書評
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この本より前の感想が6月とかで、息が止まるほどびっくりした。そんなに読んでいなかっただろうか。いや別に、読書が嫌いになったとかではない。8月までは大学の前期試験の合格と、来年度に取り掛かる卒論の、研究計画書を提出することで頭がいっぱいだった。9月10月は家族が病を得て、その看病やらなにやらで、読書より疲れ切って寝てしまうことが多かったのだ。もう感想書くのよそうか、とも思った。だって誰も読んでないしね。なんて。習い性は怖いもので、それでも書かなかったら気持ちが悪いのだ。というわけで。
まずは、大変可愛らしい絵日記。フジコ・ヘミングさんの生い立ちや少女時代のこと、この本で初めて知った。描かれた絵の、なんとまあ淳一風の色合いよ。時代を感じるし、愛らしい。プールが楽しみだったり、お裁縫がお好きだったり、本当に当時の女の子、という感じで、すごく素朴だ。もしかしたら日常、日本語と外国語、混ぜて話してらしたのかしら、とも思う。考えていらっしゃる事が大人びてる以上に、表現は年齢より稚い印象を受けた。
ごく普通の女の子の日記ではあるけれど、異色なのは毎日ピアノのお稽古の記述があること。やはりそうでないとピアニストにはなれないだろう。息をするようにレッスンがあるのが当然の日常。それは芸事の世界では、いつの世でも変わらないのだなあ……と感心するような、納得するような。
でもこの本の中で衝撃的だったのは、なんとも愛らしい日常の記述が、ご本人のあとがきの中で、『どんなに楽しげに書かれた日記に見えていても、これは戦争の中で毎日おなかを空かせ、苦労をした中で、そのように書かれたものであることを理解して欲しい』と解説されていたことだ。だからといって嘘を書いていたわけでは、決してないだろう。
本当のことの中から、戦争や空腹や差別や、生活苦を取り除いて、書いている間は平穏なことだけに目を向けて、毎日を一生懸命に生きていたということだと思う。
書かれていない真実や、書きたかったのに書けなかった夢を、私達は好奇心からでなく、やわらかな優しさをもって読み取るのがいい。そんなふうに思う。
フジコさんが注目を浴びたNHKのドキュメンタリーは、あまりにその後がセンセーショナルで、ブームになっていた時、かえって聴く気にはなれず、演奏よりご経歴で騒がれているようで、ご本人はどんなふうにお思いなんだろう、本当の演奏はどんなだろうと、遠巻きに見ていたのを覚えている。今になってこの本を読むと、そろそろ落ち着いて演奏を聴いてみたい。11月に、カンパネッラは似合うだろうか。
なんとなく、これを読んだらまたぞろ、武田百合子の『富士日記』も読み返したくなった。文章の質感が似ているのかも知れない。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
小林聡美さんの本で紹介されていた本。ピアニストのフジコ・ヘミングさんが14歳の時(1946年)の夏休みの日記を収録したもの。筆記体の英語が添えられた絵もとても上手で味わい深い。終戦直後で岡山での疎開から戻った一家は三鷹台の伯母さんの家で暮らしていた(このお宅はなんとお家にテニスコートがある!)。ピアノのお稽古をしたり、友達と遊んだり、配給品で洋風の料理やお菓子を作ったりと少女時代の楽しい夏休み日々と受け取ってしまうが、戦争が終わったばかりで心には深い傷があり辛い時があったあとがきで書かれていた。
日記の合間にはコラムがあり、これまでの人生を振り返った内容もあった。ドイツ留学時代は多くの苦労をされ、35歳の時、ようやくウィーンでのリサイタルを行うチャンスを得たものの、風邪をこじらせ耳が聞こえなくなってしない、初日で中止。どん底に再び突き落とされたが、いつかは自分の出番がある、この世でなくても天国であると信じ続け、60歳で大きく花開いた人。これまでの人生を振り返って無駄なことは何もなかったと言い切れるのはすごいし、元気づけられる。住んでいるパリのお家の中の写真も素敵だった。
フジコさんの日記というだけでなく、戦後間もない日常生活の様子が良く分かる貴重な記録だと思う。 -
これはもう、フジコヘミングのピアノを聴きながら読まねば、と思い、ラカンパネラなど聴きながら読む。彼女の人生の苦しさや楽しさに想いを馳せつつ。
人生のどん底、本当の失望を知っている人は、かすかな光の存在に敏感。結果、幸福への感度は高くなり、幸福の実践に長けてくる。そんなところを、わずかにでも学びたい。曰く;
幸せは、待っているものではない。
ぼたもちみたいに降ってくるものでもない。
自分が許される限り、もらった限りの範囲で、自分でつくるしかない。 -
“私はやっぱり孤独のほうが好き。毎日一緒にいたら、相手の食べものから何から心配して、クタクタになってしまうでしょう。自分の仕事ができなくなるのは、いやです。”(p.112)
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しっかりした子供だったわね
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<たけつなの絵日記>
世界的ピアニストである、フジコ・ヘミングさん(90)の14歳の夏を描いた絵日記。
1946年夏という、戦後わずか1年後の大変な時代の中ですが、「素敵なバッグを作った」や「先生に怒られるからピアノの練習をした」など、ふつうの女の子のかわいい日々が綴られています。
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所在記号:762.3893||ヘミ
資料番号:20106640
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大好きなピアニスト、フジコ・ヘミングの少女時代の日記。
彼女のピアノの音色はもちろん、絵も大好きなのですが、その彼女の14歳の夏休みの絵日記が見つかったということで、これは、絶対に読まねば!と、思っていたら、運よく図書館に入本。
終戦の時代背景が、とてもよくわかります。
配給制度、ピアノの練習、食生活、学生生活、色々な人を訪ねたり、訪ねてきたりの、当時の人付き合い、日々、どのようなことをして過ごしたか等々。
途中途中で、現在のフジコさんが、当時を思い出して語る回想も入っています。
フジコさんの父親が、国へ返されてしまったため、母親は女手一つでピアノを教えながら育てています。
栄養失調と思われる、体調不良。
絵も、今描かれる感じとは少し違いますが、色遣いなど、原点がみられると思います。
文章だけでなく、色鮮やかな絵もあることで、より一層、当時の生活が思い描くことができて、ステキな本でした。 -
3.8/121
内容(「BOOK」データベースより)
『魂のピアニスト、フジコ・ヘミング。1946年幻の絵日記を発見!永遠の少女のすべてがここに。初公開、フジコの書込み付。母から譲りうけた大切な楽譜ショパン「バラード第1番」を写真で完全収録!』
出版社 : 暮しの手帖社
単行本 : 160ページ