よくがんばりました。

著者 :
  • サンマーク出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784763140128

作品紹介・あらすじ

(編集中)

感想・レビュー・書評

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  • 中学2年のときに母と2人で東京に出てきてからすでに38年経っていた。
    父が亡くなったと警察からの電話で愛媛・西条へ。

    父がずっと『貸本業』を営んでいたことに驚き、自身が教職についたのが教育実習生の郷田先生の影響だったことを思い出す。
    その郷田先生が、父の死を発見してくれた真鍋陽子であることを知る。
    その先生から話しを聞くことで、いくつになっても気づかないことを気づかせてくれた。

    じんわりとひとつひとつの言葉が染み込んでくる。
    いろんな家族のかたちはあって、その誰にも変われないけれど懸命に生きている。

    執着を捨てる。確かに難しいが、無理に捨てようとする前に言ってあげるべき言葉が「よくがんばったね」。



    貸本屋、だんじり、法被…なぜか懐かしく思える数々に香川にある実家と重ねてしまった。




  • 刺さったところもあれば、う〜ん…
    それは違うんじゃない?って思うところもあり、でもやっぱ読んでよかったと思える。そんな本でした。幼少期の頃、怖く大嫌いであった父との別離。約30年の時を経て、父の死後、大人になり、父親になった自分が生前の父を知る人物達との交流の中、徐々に明らかにされる本当の父の輪郭。と言った内容だが、最終章で自分の一番の相談相手は自分であること。そして、多くの本を読むことで様々な考えに触れ、言葉を養い、自身が気づかぬ内に自分への救いの言葉をかけてあげられるようになっていくというくだりが妙に腑に落ちた。

  • 書かれている内容が大切で、良いことだとはわかる。けれど、頭や心にすっかりと納得して入っていく事は、今の自分には難しいように感じた。
    心が渇ききっているのかもしれない。
    時間を置いて再読してみたい。

    心に残った所…
    明らかにするというのは、強い光を当てて子供のアラを白日のもとに晒すという意味ではない。月明かりの下で見るように、その子の美しさを全体として捉えてあげるとよい。

  • あとがきまで良かった。
    物語の始まりは、父親が亡くなったことを警察から知らされこと。

    はるか昔に父とは縁が切れており、教師をしている嘉人は煩わしく思いながらも諸々の手続きのため故郷へ帰る。

    父との空白の数十年に想像をめぐらせる嘉人。
    みじめで孤独だった記憶、だんじり祭りの日のささやかな父との思い出。

    父と子。親子だから許せること、許せないことがある。
    親も一人の人間。いろいろな顔を持っている。
    嘉人の凝り固まった気持ちがスッと解けてゆくのを見届けられて良かった。

    誰もが、自分だけの苦しみを乗り越えて生きている。それだけですごいこと。

    喜多川さんの作品は、生きていくうえで心に留めておきたい言葉や考え方に出会える。
    それらが物語を通じてじんわり自分のなかに沁みていく。
    作品を読み終えるとき、いつも心を軽くして、見える景色を変えてくれます。

    私の地元にもだんじり祭りがあるので、読みながら昔を思い出して懐かしかった。

    『本当に今あるものに満足して、今できることを楽しんで、自分の機嫌は自分で取ろうとしてたの。そして、よく言っていたの。「私ほど運がいい人はいない」って。』

    『誰も他の誰かの人生を生きていられるだけの強さなんてないのよ。そういった意味では誰もがすごい人なんだって思うわ』

    『あなたの人生は、あなただから乗り越えて生きていけてるのだ。そういう、自分にしかない強さをあなたは持っている。』

  •  喜多川さんの本、4冊目を読了。
     おかげで、父、そして両親への感謝の気持ちが高まりました。

  • とても穏やかな気持ちになる小説でした。大きな事件は起きないのですが、主人公の父親という一つの謎を基軸としてどんどん読み進めることができます。同じ人間でもその人を観測する人によって、捉え方が異なってくる。当たり前のことですが、改めて考えさせられました。
    結果だけを求められる世の中で『よくがんばりました』という過程を評価する言葉は、前向きで良いですね

  • 喜多川さんの本を読むのは7、8冊目だろうか。
    読んでいくと、物語よりも伝えたいことが先行していき、説教っぽさが顔を出していく。喜多川さんの本を読むと感じる感覚。主人公に没頭し切る頭から離れ、客観的に冷静になっていく感覚。
    それは残念なところでもあるけど、喜多川さんの人間性、考え方に触れたくて、感じたくて読むので結局のところ、それで良くて凝り固まりそうになる考え方に影響を与えてくれる。
    人生にとってとても大切な感覚を感じさせてくれる。
    「よくがんばりました。」では、今を感じながら生きること。家族は、なんでも言えるくらいにならないと家族と言えず、気を使う相手ではないということ。人は、それぞれ自分にしかない大変な苦労を乗り越えて人生を過ごしている「凄み」があるということ。つまりは、誰に対しても尊厳と尊敬を持って接することが大切であるというメッセージを感じた。

    最後のお遍路さんのくだりは、ふがふがとうなずいてしまう。

    やっぱり、出会いは宝だ。人も本も出会いは宝だ。

    そう思う。

    あと、だんじり見たくなりました

  • 家族って難しい。
    一番近くにいるからこそ、家族ではない人が決して見ることのできないたくさんの面を見せ合って生きるわけだから。そのなかには、醜い面とか、弱い面とか、自分勝手な面とか、そういうのがいっぱいある。家族だけが見る角度っていうのがある。きっと、一人の人間のなかには、あらゆる面がある。好きでたまらない面もあるし、嫌でたまらない面もある。それが一緒に生活するんだから、難しい。でも、迷惑かけ合うのが家族だって思う。

    器の話。
    グラスに水が入っている。そこに石が投げ込まれる。そうすると器が壊れて、水が溢れてしまう。洗面器に同じ石が投げ込まれると水が溢れる。お風呂の浴槽なら波が立つ。大きな池なら波紋が広がり、海なら何の影響も感じられないかもしれない。やってきた状況は「望んでいない石が急に投げ込まれる」というもの。まったく同じことが起こっても、器の大きさで、それがすべてを壊してしまうほどの大ごとになるか、何の影響もないかが決まる。要はこちら側の心の器の問題なんだっていう話。

    いまの自分、これからの自分にとって忘れたくない話だった。

  •  心を揺さぶる数々のエピソード。 
    怒濤の如く押し寄せる感情の波。 
    大粒の涙が爽やかな疲労感に。
    最後は、「あゝ『よくがんばりました』」と、自分自身を抱きしめたくなりました。

     最後の筆者の『あとがき』に、更に心を持っていかれます。

    『誰の人生なら、今の自分の人生より「楽だ」と感じられるだろうか。
     おそらく、誰と入れ替わっても、あなたには耐えられないほどの重荷をそれぞれが抱えながら、それでもひたむきに自分の人生を生きていることに、相手の人生を知れば知るほど気づくだろう。
     誰もがそうやって、他の誰も耐えることができない、過酷な「自分」という人生を生きている。
     ・・・・・
     ということは、他の誰もあなたと入れ替わってあなたの人生を生きていけるだけの強さはない、ということである。 ・・・』

     長々と引用してしまいましたが、わたしのつたない " あらすじ " を記すよりも、よほど良いでしょう。

     疲れて澱んだ心を癒してくれる一服の清涼剤。
    そんな一冊でした。

  • 【自分最強説】
    小説です。

    喜多川泰さんの本はすべて読んでいます。

    裏切りませんね。
    すばらしい。

    複雑な伏線回収は不要です。

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著者プロフィール

1970年生まれ。愛媛県出身。東京学芸大学卒。2005年から作家としての活動を開始。『賢者の書』でデビューする。10年『「また、必ず会おう」と誰もが言った。』が13万部のベストセラーとなり、映画化、舞台化された。「喜多川ワールド」と呼ばれるその独特の世界観は、小学生から80代まで幅広い年齢層から愛され、その影響力は国内にとどまらず、多数の作品が台湾・韓国・中国・ベトナムでも翻訳出版されている。執筆活動だけではなく、全国各地での講演やセミナーも開催している。主な著書に、『おいべっさんと不思議な母子』『One World』『秘密結社Ladybirdと僕の6日間』『[文庫]福に憑かれた男』『君と会えたから……』『手紙屋』『株式会社タイムカプセル社』『運転者』等がある。

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