パリのすてきなおじさん

著者 :
  • 柏書房
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感想 : 113
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784760149117

作品紹介・あらすじ

難民問題、テロ事件、差別の歴史…。世界は混沌としていて、人生はほろ苦い。だけどパリのおじさんは、今日も空を見上げる。軽くて、深くて、愛おしい、おじさんインタビュー&スケッチ集!

感想・レビュー・書評

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  • 金井真紀さんの本を読むのは2冊目。
    2016年頃、パリにいる人々から話を聞き纏めた本。2015年の大規模テロ事件直後のパリで、その爪痕も感じられた。ヒアリング対象者の共通点は「おじさん」。パリに長いジャーナリストの広岡裕児さんと共に聞き取りを行ったそうだが、たった2週間の取材期間で集めたとは思えないほど中身が濃かった。時系列(インタビュー順)の掲載かは定かではないが、終盤にいくにつれどんどん面白くなり、時系列だとすれば、聞き取りを重ねて段々コツを掴んでいかれたのかなと想像する。本書を読むと、自分が普段見ている世界がいかにちっぽけかを実感する。平和な日本では想像のつかない、さまざまな人生の経験を重ねてきたおじさんの言葉は重みがあり、また励まされた。特に、人生で大切なものを問われた70代のおじさんの「今、この時を味わうこと。大事なのは将来ではなく、今、この瞬間に大事なものをちゃんと愛すること」との答えは、シンプルだけど心に刺さるものだった。広岡さんの多大なサポートがあってこそ完成した本だと思うが、金井さんの行動力や人間力のようなものに、今回も舌を巻いた。本書を通じ、パリで生きる市井の人々の生の声をたくさん聞くことができ、とても良かった。

  • 昨年度、学校図書館に購入した本。
    当時話題になり、イラストも素敵で読みやすそうだったので、生徒にも先生にもいけるのでは?と思ったのだが、パラパラとめくっただけで、きちんと読んでなかった。

    もっと早く読んでおけば良かった!
    しかし、このタイミングで読めて良かった!

    パリはオシャレなだけでなく、本当に懐の深い街なのだということが、色々なおじさんの語りから分かる。
    また、金井真紀さんと広岡裕児さんのコンビが絶妙。
    パリ在住40年の広岡さんの伝手でお願いしたおじさんも数人いたようだが、残りほとんどは街歩きの偶然頼み。しかし、金井さんのおじさんハント能力は目を見張る。
    自称25歳から92歳までのおじさんたちのそれぞれの人生が、このフランスの歴史を断片的に語り、この国の有り様を伝えてくれる。

    先の大戦、ドイツ占領下のフランスでもユダヤ人弾圧はあった。そのサバイバーである「隠れた子ども」だったロベール・フランクさんの話は、フランスでのユダヤ人たちがどんな状況にあったか詳細に伝えてくれる。学生の時ビデオで見たフランス映画「さよなら子供たち」ルイ・マル監督を思い出した。
    ベトナム戦争の頃フランスに逃がれてきたレ・ディン・タイさんの話や、クルド人領事館で働くイラクから逃がれてきたレワン・ハッサンさんの話もその体験は筆舌し難い。

    想像していた以上に、様々な人種と宗教を抱えるフランス。今は、新型コロナウィルスでアジア人への差別的行為が問題となっているが、共和国市民という共通の概念が、それを乗り越えていく礎にあることも、この本を読むことで分かる。2020.3.8

  • すてきな本に出会いました。
    「パリのすてきなおじさん」、街中の何気ないげおじさんたちだが、見た目が素敵だけではなく、生き方がすてき。

    最初は紹介された人の絵、顔つきと見なりすべてがパリのおしゃれと感心していたのだが、読み進めるうちに、人生そのもの、生きるということがどれだけ大変で、それでいて各人の歴史、哲学があると気づかされる。

    その言葉のかけらがどれだけ、キラリとひかることか・・・。

    ・「どうしてわたしたちはここにいるのか? なぜ人は生きるのか?」「人生を学んでいるあいだに手遅れになる」
    ・「静かな心でいれば、強くなれる」
    ・「人間には、人を憎む気持ちがある。権力者はそれを奨励する」
    ・「わたしは学問の意味を知りました。なぜ学ぶのか。博士になるためではない。世界を理解するため、自分で考えるためです」
    ・「ケツを振らなくても、まっすぐ歩ける」
    ・「料理人はテクニックは見せてはいけない。テクニックは食べれない」
    ・「ギャンブルしない人間は信用できない」
    ・「人を一般化しちゃダメ。どこにだって、いいやつもいるしバカもいる」
    ・「大事なのは将来ではない。いまですよ」

  • 移民問題や治安面でパリに対して暗い印象がずっとある。
    本書はシャルリーエブドや同時多発テロ以降に現地の「おじさん」達にインタビューしたもので、表紙のすてきな字面に相反して、濃密で奥が深い仕上がりになっている、というのが読後第一声の感想。

    おじさん達の趣味や仕事、人生観から移民問題・宗教・戦争の歴史と彼らのバックグラウンドに至るまでちょこっとだけ踏み込む。そのスタイルの読み応えがまたGOOD。

    「オッチャン」「おじちゃん」ではなく、どうしても登場する彼らを「おじさん」と呼ばずにはいられない。

    筆者のおもしろ豊かな妄想や好奇心から成る直球質問がますます読者を引き込む。撮った写真を観て描かれたみたいだけど、(恐い人もいたが)どれも温かみや人間らしさが滲み出ており、おじさんなのに(!?)愛くるしさすら覚えた。

    カレー街のタミル人おじさんと幼少期にナチスの魔の手を逃れたおじさんのエピソードにジンときた+共通するものを感じた。詳しくは書けないけど、苦い過去がある故郷や人種をそれぞれのやり方で受け入れ、その先の人生を生きる。
    最も印象的な「生きるということの断片」だったと思う。

  • タイトルと絵が素敵なだけでなく、
    本のサイズと厚みも素敵な本。

    ハードカバーなのですが、
    文庫本より一回り大きく
    単行本よりちょっと寸胴な
    その姿…

    素敵なおじさんの本らしいサイズ感が
    すごくいいです。

    パリで出会ったおじさんを
    一人一人紹介しているこの本。

    おじさんばかり集めて
    ホントにおもしろい本になるの?
    と心配になりそうですが、
    おじさんを侮るなかれ。

    おじさん一人一人の歩んできた人生は
    どれも濃厚で、
    焙煎コーヒーのように味わい深いのです。

    おじさんの人生を垣間見ているつもりが、
    いつの間にかおじさんを通して
    生きた歴史や世界の見方を
    学んでいる自分に気づいて、
    呆然とするはずです。

    「泣きたくなる旅の日は、世界が美しい」(小林希・著)とともに、
    焙煎コーヒーを飲みながら
    苦味も酸味も、そして香りも
    味わいたくなる本です。

  • 「パリでおじさんを集めよう」とひらめいて、いろんなおじさんたちに会い、その人たちの魅力をイラストとともに紹介している。パリのおじさんといってもルーツは様々で笑える話もあればシリアスなストーリーを背負っているおじさんもいる。鋭い「選おじさん眼」を持つおじさんコレクターである金井真紀さんがその勘を頼りに収集しただけにパリ選抜おじさんたちはかなりクセが強い。マスタークラスのおじさんだらけできっとおじさん好きにはたまらない。

  • 絵も雰囲気も素敵だった〜。カフェで読書してたんだけど、その場が一気にパリの雰囲気に(笑)!おりしもBGMはクレモンティーヌ。いいねぇ。
    パリにフリーメイソンの博物館があるなんて知らなかった。秘密結社の匂いがするから、こんなにオープンで明るい感じとは!

    「人生を学んでいるあいだに手遅れになる。だから大事なことを後回しにしてはいけない」そうそう!
    「細かいことにくよくよしない。今を生きるしかない」
    「人生で大切なのは、今、この時を味わうこと。大事なのは将来ではない。今、この瞬間に大事なものをちゃんと愛すること」

    ユダヤ人のロベール・フランクさんの話は重く辛く苦しさとともに忘れてはならないことだなぁと思った。「人は変わることができる。変わらなければならない」

  • プッと笑えるおじさんエピソードありーの、悲しい過去の歴史に涙するおじさんエピソードありーの。

    飽きないパリおじさん集です。

  • めっちゃくちゃおもしろかった!!⁡⁡⁡
    ⁡まず開いた瞬間⁡に目に入る
    ⁡「ひらめいた。パリでおじさんを集めよう」⁡
    ⁡という一言で一気にワクワク感が増す。

    工房でピカソと一緒に過ごした⁡
    ⁡ことのある⁡おじさんとか⁡
    ⁡地下洞窟に魅了されたおじさんとか⁡
    ホロコーストの⁡⁡隠された
    子供だった⁡おじさんとか…
    ⁡⁡
    ⁡おじさんを通して大事なことが⁡
    ⁡たくさん書かれてある。⁡⁡⁡
    ぜひたくさんの人に読んでもらいたい一冊⁡⁡
    ⁡おじさんってすごい笑

  • 人生経験豊かな"おじさん"。
    そんな"おじさん"をこよなく愛する作者の金井真紀さんが、パリ在住のジャーナリスト広岡裕児さんと共に、パリのおじさん達へインタビューをしていく。
    実にそのおじさんの数67人!
    インタビューした、おじさん達の似顔絵も毎度描かれており、イメージがしやすく、端的に纏まった文章は、とてもわかりやすかった。

    様々なおじさん達の人生、生き様に、私自身もいつからか魅せられていた...
    日本とは違い、多数の移民や難民を受け入れているフランスでは、様々な宗教や文化が入り乱れており、その人たちを本当に理解するためには、歴史を理解する必要がある。本編とは別に、そういった歴史的背景も記載されているため、勉強になった。

    おじさんは偉大だ...

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著者プロフィール

1974年千葉県生まれ。文筆家・イラストレーター。「多様性をおもしろがる」を任務とする。著書に『はたらく動物と』(ころから)、『パリのすてきなおじさん』(柏書房)、『虫ぎらいはなおるかな?』(理論社)、『世界はフムフムで満ちている』(ちくま文庫)、『日本に住んでる世界のひと』(大和書房)、『おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界ことわざ紀行』(岩波書店)など。難民・移民フェス実行委員。

「2024年 『それはわたしが外国人だから?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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