海について、あるいは巨大サメを追った一年:ニシオンデンザメに魅せられて

  • 化学同人
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784759819717

作品紹介・あらすじ

ノルウェー北部に位置するロフォーテン諸島周辺の深海には,ニシオンデンザメという巨大ザメが生息する.体長は最大7メートル,体重は1トンに及ぶ.寄生動物に覆われた目は緑色に光り,筋肉には毒が含まれる.400年以上も生き続けるともいわれ,世界一のろいサメとしても知られているが,その生態は多くの謎に包まれている.本書は,この神秘のサメに魅せられた二人の男が,小さなゴム製ボートに乗り込み,サメ用の釣り針,350メートルの釣り糸,6メートルの鎖を使用して捕獲に挑んだ1年間の記録だ.その物語はサメの捕獲にとどまらず,海洋生物,天文,環境問題,詩,文学,神話,歴史,北欧の地誌など,人と海,人と環境をめぐる話題へと縱?に発展する.生命の素晴らしさ,自然の美しさと厳しさなどを活写した,珠玉のノンフィクション.世界20か国で出版が決まった話題作.【2015年ノルウェー・ブラギ賞ノンフィクション部門受賞】

感想・レビュー・書評

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  • ノンフィクションなのに詩的すぎ!
    ノルウェーの権威ある文学賞のノンフィクション部門を受賞し、世界20カ国以上で紹介されている話題の本。ニシオンデンザメを始め、海の生き物の描写の素晴らしさはもちろん、それ以上に、まるで北欧の海辺で思索に耽ったような、静かなひとときを体験できる、詩的な文学作品です。

    ノルウエー北部の海で、二人の男がゴムボートに乗って巨大サメを釣ろうと試みるというののが、本著の一応の”ストーリー”。

    「生命の素晴らしさ、自然の美しさと厳しさなどを活写した、珠玉のノンフィクション」と紹介されていますが、サメ捕獲までのドキュメンタリー的な記録ではなく、読み心地は、まるで散文詩のよう。

    宇宙の果てまで一気に広がった視点が、海を眺めながら巨大サメを追う自分たちにいつの間にか戻ってくる。このように著者の思考はいつでも果てしなく広がり、遠くへ飛び、深く潜り、過去へ戻り、そして今いる場所に戻ってきます。この視点の不安定さと、そこで語られる確かな事実の強さが、私たち読者をも、神話的なノルウェーの海辺での時間に連れ出してくれます。”非日常への旅”ができる、思い出深い1冊です。

    ブログもぜひ!
    https://hana-87.jp/2018/11/18/umikyodaisame/

  • ふむ

  • なかなか海に潜れなくてフラストしている中、サブタイトルの「ニシオンデンザメに魅せられて」を見て、つい買ってしまった。

    ノルウェーの二人の男がニシオンデンザメを釣りあげることに執念を燃やした1年の記録。
    ニシオンデンザメは400年も生きる最大7mにもなるサメ。生殖可能になるまで150年もかかる成長の遅い生き物で目は角膜を食べる寄生虫に覆われほとんど見えなくなっているなど、不気味かつ謎だらけの不思議な生き物。

    著者は生物学者でもなんでもなく、サメを捕まえたくなった男の一人でジャーナリスト。
    考えてみれば謎の多いサメはそんなに簡単に見つからないから謎なのであって、本書もノルウェーに暮らす男たちから見た海についてのエッセイのようなもの。北欧の海の釣りの合間にゆったり語りあっているような感じか。

    サメの捕獲ドキュメントとして読んでしまって、ますます欲求不満となってしまった。北欧の海も潜ってみたい。

  • 文章のトーンからノルウェー北部のヴェスト湾の海の空気が漂ってくるようなノンフィクション作品だった。

    人間にとっては静かで人里離れた地方だが、海は静かな時もあれば大きく荒れ狂う時もあり、決して一様な姿ではない。

    また、その深海300mから1000m以上の深いところに至るまで、様々な生き物が暮らしており、それらは人間の営みなどまるで関係ないように、生態系としての営みを保ち続けている。

    寿命400年というニシオンデンザメ自身が、そういった人間の時間軸を超越した海の世界の象徴のように感じられた。

  • 途中で挫折。自然や人の暮らし、歴史などを丁寧に描いたゆったりした読み物で、いい本なんだと思う。しかし、サメを捕ろうとして七転八倒する話を期待してたので肩透かし。

  • 壮大な話だけど、ものすごく脇道にそれる。
    司馬遼太郎の比ではない。ニシオンデンザメの話が3割、雑談が7割。
    著者が博識なのは判るが、ダラダラと関係ない話を読まされる身にもなって欲しい。もひとつ、もふたつ。

  • 海について、あるいは巨大サメを追った一年 モルテン・ストロークスネス著 茫漠たる海の神話的奥深さ

    2018/9/15付日本経済新聞 朝刊
     ノルウェー北方の暗い海に棲(す)むニシオンデンザメを釣る2人の男の物語だ。
     といってもニシオンデンザメなんて多くの人にとって初耳だろう。私も、漢字で書いたら西温田鮫(ざめ)か?程度のことしか思い浮かばなかった。しかしこの鮫、実に不思議で、体長はときに7メートル、体重1トンにも達し、肉食鮫としては世界最大。何より驚愕(きょうがく)なのはその寿命で、400~500年も生きるらしく、性的に成熟するのに150年もかかるという。江戸時代に生まれた子供が今頃ようやく中学生になったぐらいの感覚で、まったく想像を絶する時間的尺度で生きている魚なのである。
     その謎の鮫を、著者は絶対に釣ってやると決意して冷たい海にボートを浮かべる。なぜ釣らなければならないのか、そこは説明されない。読者も、なぜこの人はニシオンデンザメを釣らなければならないのか、よくわからないまま読み進める。だが、やがて著者が本当に書きたいのがニシオンデンザメのことではなく、海そのものだということが何となく見えてくる。
     著者はニシオンデンザメを躊躇(ためら)うことなく怪物と呼び、この鮫を釣るのを怪物を捕まえると表現する。まるで鬼退治に向かう桃太郎みたいで、動物愛護が当たり前の今の感覚からはかなりズレている。私も最初は違和感をおぼえたが、読むうちにそこに文学的な理由があることが理解できた。
     海には科学や数学的データからこぼれ落ちる現象的奥深さがある。海の容積を数字で表現しても何もわからない。たとえば500年も生きるこの鮫はまさに理解を超えた存在だ。著者は自らを鮫を怪物とみなす存在にあえて位置づけることで、現代を飛び越え、その現代の科学的記述では捉えきれなくなった海本来の茫漠(ぼうばく)とした暗がりを見つめ直そうとしているのだ。このような態度で彼が見つめる海は、エイハブ船長が白鯨を追いかけたあの海を彷彿(ほうふつ)とさせ、神話的だ。
     さて問題のニシオンデンザメを彼は釣れたのか? それは読んでのお楽しみだが、一つ言えるのは本書を読むことであなたの目の前には新しい海の姿が浮かんでくるだろうということだ。結局、私たちは海のことをまだあまり知らないのである。
    《評》探検家 角幡 唯介

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著者プロフィール

Morten Strøksnes

「2018年 『海について,あるいは巨大サメを追った一年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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