夏の戻り船 くらまし屋稼業 (ハルキ文庫 い 24-3 時代小説文庫)

著者 :
  • 角川春樹事務所
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感想 : 48
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758442183

感想・レビュー・書評

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  • とんでもなく上手いわー

    ウィッキーさんによると本作が出されたとき今村翔吾さんまだデビュー2年目とかですよ
    とんでもなく上手いわー(2回目)

    もう最初から結末は分かっていて読み始めるわけですよね
    くらまし屋の3人は必ず成功するわけですから
    今後そこを裏切ってくるというパターンもあるかもですが
    さすがにシリーズ3作目でそれはないでしょうからね
    しかも今回は表紙で虚の若き天才剣士榊惣一郎との対決があることもバラしてしまっているし
    まあおそらく引き分けになるであろうことも読めるわけです

    その分かってる結末に向かって緊張感をだんだんに高めていく過程がもう
    とんでもなく上手いわー(3回目)

    くらましの方法をちょっとづつ明らかにしてくとことか
    最初にくらまし屋に敵対する勢力を全て明かした上でそれぞれの思惑を待ち構える側である道中同心の篠崎瀬兵衛を通してちょっとづつ明らかにしてくとことか
    そうして読者は瀬兵衛と一緒に緊張感を高めていくわけです
    瀬兵衛と読者のドキドキがMAXになったところで…!

    とんでもなく上手いわー(4回目)

  • 今回のくらましの仕掛けはちょっとスケールダウンのトリックだったが、それに代わって新たな敵の発生。御庭番や薬園奉行所、道中奉行所の多勢が守る中、それを一人で殲滅する勢いの敵。過去2回の因縁ある道中奉行所の同心を何故かくらまし屋は助ける。
    一段落後に、新たな敵襲来。妻と娘の消息の手掛かりが微かに判明。謎が深まりつつ次に期待。

  • 「くらまし屋稼業」の3冊目。
    今度は余命僅かの元採薬使・阿部将翁の願いを叶えるお話。

    この将翁、仕事柄から幕府にとって重要な情報を持っており、それ故に闇の組織「虚(ウツロ)」に狙われている。
    そこから護らんとする薬園奉行により江戸市中から幕府の隠し薬園がある高尾山に匿われるが、駆り出された道中奉行に御庭番まで入り乱れる中で、平九郎らが将翁を晦ますことが出来るのかが、まずは見所。
    子どもを勾引かす賊の正体を知るべく取って返した平九郎が「虚」の面々と切り結ぶ場面もいつもの如くの見所。
    見慣れぬ得物を使う賊を斬って捨てては、最初の話に登場した榊惣一郎と丁々発止の立ち回り。巻を重ねるごとにその剣法が凄みを増す。

    駆り出された道中奉行を束ねるのが前二作でも登場した篠崎瀬兵衛だが、妻を娶ってからは全てを無難にこなすようにしてきた瀬兵衛が平九郎らの影に気づいたことでかつて「路狼」と呼ばれた頃の血を騒がせだし、見過ごすことが出来ない存在になっていく。
    その瀬兵衛とのこれからも続くであろう因縁や、これまでに加えて明らかにされた平九郎の妻や娘の話や平九郎の出自も含め、何巻にも続くこの物語の全貌の一端を垣間見せていく作りが巧み。

    将翁の最後は、もう「幸福の黄色いハンカチ」でしたね。分かっていてもウルッと来る。
    若き日の櫂五郎と武蔵がチラと登場するのも楽しかった。

  • シリーズ第3弾。
    今回くらますのは元幕府の採薬使・阿部将翁。
    訳あって幕府に軟禁されている余命僅かな将翁は、最後にどうしても行きたい場所がある、という。
    老齢で重い病を抱えていても、その旅が例え己の寿命を縮めるものであっても、死を迎える前にどうしても辿り着きたい場所とは。

    紆余曲折の末、72年ぶりに辿り着いた彼の場所で、若い頃に交わした約束を果たした将翁の穏やかな微笑みを忘れない。
    後悔ばかりの人生だったけれど、ようやく生きる意味を取り戻し、満足な最期を迎えたことだろう。

    今回は謎の多かった平九郎の過去も少し解き明かされ、今後の展開がますます面白くなったきた。
    勘が冴え渡る道中同心・瀬兵衛との絡みもこれから多くなるだろう。
    そして闇の「虚」メンバーの凄腕剣士・惣一郎との対決もカッコ良かった。

    お楽しみの『ぼろ鳶』リンクも、今回は幼い頃の武蔵が登場して嬉しい。
    お春と仲良くなれるかな?
    これで『くらまし』と『ぼろ鳶』の時系列も分かった。
    ということは若い頃の源吾もいつか登場するかな?
    シリーズを追うのがますます楽しみになってきた。

  • 今回くらますのは高齢の、余命わずかな採薬使。
    どうやって連れて行くんだろうと言う心配もよそに、
    展開は意外にもスピーディー。
    思いもよらない七瀬のアイデアがおもしろかった。

    でも今回の一番のワクワクは道中同心瀬兵衛の存在。
    赤也の得意とする変装の上を行く観察眼を持つ男は
    めちゃくちゃ人のことをよく見て、覚えていて、
    いつ3人の正体がばれるかとハラハラした。

    平九郎の過去も大方明かされ、この先どんなふうに宿願が果たされるのか、見ものだ。

  • 〈くらまし屋稼業〉シリーズ第三作。

    シリーズとしての設定や今後の展開がだいぶん見えてきた。
    まず主人公で「くらまし屋」のリーダー平九郎。
    これまで何となく匂わされてきたが、やはり妻と娘が行方知れずになっていて「くらまし屋」となったのは二人を探す情報を得るためでもあったらしい。
    元・人吉藩の下士だったという平九郎が何故江戸にいるのかはこれから描かれていくことだろう。

    それから謎の組織「虚(うつろ)」。第一作にも登場したが、人をさらってはどこかへ移しているらしい。平九郎の妻子の行方不明にも関わっているのか。
    この「虚」のメンバー榊惣一郎と初谷男吏コンビがどうにも不気味で、平九郎の剣の腕を以てしても互角に闘うのがやっとという感じ。今後も激突することになりそうだが、そのときはどんな死闘が繰り広げられるのか。
    「虚」のリーダーが誰なのか、何を目的に何をしようとしているのかも気になる。

    最後に道中同心の篠崎瀬兵衛。
    第一作では人の好い、御しやすい役人のように見えたが、実は切れ者だった。赤也渾身の変装術も見破られてしまっている。
    これから明智小五郎と怪人二重面相のような、ルパン三世と銭形警部のような、因縁のライバル関係が続くのか。


    さて今回の依頼人は齢八十八の元採薬使・阿部将翁。
    余命僅かの彼には、若き日に恋人と交わした約束を果たさねば死ねないという強い思いがあった。
    しかし彼はその知識故に様々な組織から狙われている。
    シリーズが進むに連れてどんどんミッションの難しさがパワーアップ。
    薬園奉行に道中奉行、御庭番に「虚」…阿部将翁を狙う者たちを掻い潜り、無事にくらませることは出来るのか。

    長い長い年月の中で時代に翻弄され続けた将翁が、いつまでも忘れなかった想い、きっとそれがあったから心折れずに頑張って来られたのかも知れない。
    まるで映画「幸せの黄色いハンカチ」のような話。将翁の物語の結末がハッピーエンドなのか悲劇なのかは別として、平九郎ら「くらまし屋」の力を借りてでも残り僅かの命を懸けても叶えたいという気持ちは分かる。
    平九郎もいつか妻子と再会出来れば良いが、それはいつどんな形でやってくるのか、楽しみと同時に心配でもある。

  • シリーズ第三弾。

    今回晦ませるのは、幕府の監視下に置かれている元・採薬使の阿部将翁。
    余命僅かながら“ある約束”を果たす為に陸奥まで晦ませてほしいという将翁を、幕府の役人や御庭番たちに囲まれた高尾山の小屋からどう脱出させるのか・・“くらまし屋”の腕の見せ所です。
    しかも、謎の闇組織「虚」も将翁を狙っていて、平九郎と「虚」メンバー・榊惣一郎(“瀬田宗次郎型”又は“”サイコ設定・沖田総司型”と勝手にカテゴライズさせて頂きます)との斬合いは手に汗モノでした。平九郎が探している妻子と「虚」が何か関係があるのかも、気になりますね。
    ラストは“幸せの茜色の手拭い”と、いった感じで胸が熱くなりました。
    そして、前巻で登場したお春ちゃんが元気そうで何よりです。

  •  修羅の集う山で平九郎の剣がうなりを上げる、「くらまし屋稼業」シリーズ第3弾。

     今回は一人の男を巡っていくつもの集団が入り乱れる中、くらませるという、これまで以上に過酷な展開で、前半はその駆け引きがポイントになっていました。

     そして、後半は一気に平九郎の剣が強敵に立ち向かう展開で、目が離せませんでした。

     最後はこの題名の意味も伝わり、思わず目頭が熱くなりました。

     とにかく、最初からこの物語の世界に夢中になっている自分がいました。

  • 令和5年2月14日読了

    皐月15日に、船で陸奥に晦ましていただきたい

    今回の依頼。余命いくばくもない老人を晦ませる。
    日付も指定された。
    老人を狙う謎の集団。この老人の半生とは。

    謎は、後半一気に解き明かされていく
    陸奥の国の小さな漁村。青い空が、海が、帰って来た老人を優しく包む。

  • キャラクターが多くて、私にはちょっとわかりにくかった。
    最後が美談すぎないところが、いいと思います。

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著者プロフィール

1984年京都府生まれ。2017年『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』でデビュー。’18年『童の神』が第160回直木賞候補に。’20年『八本目の槍』で第41回吉川英治文学新人賞を受賞。同年『じんかん』が第163回直木賞候補に。’21年「羽州ぼろ鳶組」シリーズで第六回吉川英治文庫賞を受賞。22年『塞王の楯』で第166回直木賞を受賞。他の著書に、「イクサガミ」シリーズ、「くらまし屋稼業」シリーズ、『ひゃっか! 全国高校生花いけバトル』『てらこや青義堂 師匠、走る』『幸村を討て』『蹴れ、彦五郎』『湖上の空』『茜唄』(上・下)などがある。

「2023年 『イクサガミ 地』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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