史記 武帝紀 1 (ハルキ文庫 き 3-16 時代小説文庫)
- 角川春樹事務所 (2013年4月11日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (409ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758437264
作品紹介・あらすじ
匈奴の侵攻に脅かされた前漢の時代。武帝劉徹の寵愛を受ける衛子夫の弟・衛青は、大長公主(先帝の姉)の嫉妬により、屋敷に拉致され、拷問を受けていた。脱出の機会を窺っていた衛青は、仲間の助けを得て、巧みな作戦で八十人の兵をかわし、その場を切り抜けるのだった。後日、屋敷からの脱出を帝に認められた衛青は、軍人として生きる道を与えられる。奴僕として生きてきた男に訪れた千載一遇の機会。匈奴との熾烈な戦いを宿命づけられた男は、時代に新たな風を起こす。北方版『史記』、待望の文庫化。
感想・レビュー・書評
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雪が、肩に降り積もっている。
大地も、白い布をまとったように見えた。
肩の雪は、振り払えない。後ろ手で、縄を打たれているからだ。
「いまでしょ」の林先生が「名作を見分ける」方法として勧めていたのが作品冒頭の一頁その一行目を見るということだった。よって、この大長編の冒頭三行を抜き出してみた。
北方版「史記(司馬遷)」と言いながら、この作品第一巻には司馬遷はおろか父親の司馬談も出ては来ない。武帝は即位間もない頃の劉徹として現れ、次第と力を蓄える28歳頃までが描かれる。初めて匈奴の奥深くまで侵攻した衛青がこの巻の主人公であり、冒頭の描写は衛青が無名の兵士だったときに皇后の母親の気まぐれで捕らえられ殺されそうになったときの描写である。まるで、景色を楽しんでいるかのような衛青の大物感を描き、歴史上有名ではない衛青を先ず中心に据えることで、この物語の壮大さが強調されるだろう。ともかく、私が名前を少しでも聞いたことがあったのは、武帝と、最後の方に出てくる衛青の甥、13歳の霍去病ぐらいのものだった(その後調べたら、衛青も李広も史記の列伝に採用されていた)。
このあと、約50年の前漢の歴史書が紐解かれるわけだが、北方謙三は何を描こうとしているのか。日本は弥生時代中期の未開地、倭国大乱はまだ始まっていなかった。朝鮮半島では楽浪郡が大きな力を持っていた。遊牧民族匈奴が広大な北を支配し、西域では大月氏、大宛、大夏などの民族が漢帝国との交易を望んでいた。
その中で描かれるのは衛青たち騎馬軍団の成長、漢(おとこ)の姿、青年武帝の野望だ。今のところ、予想は「北方版 漢(おとこ)列伝」のように思えるのだが、果たしてどうだろう。
2013年6月18日読了詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大水滸シリーズや、三国志を読ませて頂き、北方さんの中国モノの面白さは認識しておりますので、この「史記 武帝紀」もいやが上にも期待が高くなります。
物語は漢サイド、匈奴サイド、西方サイドと並行して書かれていて、スケールの大きさを感じます。
そして、やはりお得意の戦のシーンは、それはもう生き生きと描かれていて、圧巻です。
今後の展開を期待しつつ、次巻へ。 -
以前読んだ『三国志』の、勇猛で人間離れした登場人物とは違い、落ち着いた静かな人物たちの物語だと感じた。
そこまでの乱世ではないからなのか、帝の話だからなのか、どちらかというとしんみりした印象だった。
最近学校で奥の細道を読んだのだが、そこに李稜と蘇求が出てきた。
司馬遷と同時期の人のようなので、興味を持っている。-
よく読まれてますね。
李蘇決別が奥の細道にあるのは知りませんでした。
実は司馬遷が史記を書くようになるのは、李陵を擁護して王の怒りを...よく読まれてますね。
李蘇決別が奥の細道にあるのは知りませんでした。
実は司馬遷が史記を書くようになるのは、李陵を擁護して王の怒りを買い、罪を得たことから。お勧めした中島敦「李陵」にあります。2014/12/19
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漢と匈奴、戦いの歴史
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初めて読んだ歴史小説!
それぞれの登場人物の視点から物語が描かれていて面白かった。 -
高校時代にハマった真・三國無双2から三國志の歴史に興味を持ち、小説や漫画を読んだりしていた自分がもの凄く久々に手に取った歴史小説。
実を言うと、キングダムめっちゃ面白ぇーってなって春秋戦国時代に興味を持ち、その頃の話を小説で読むとしたら史記なのかな→お、史記あるやん。しかも登場人物に「えいせい」っているし、これだな!→えいせい違いやん…という理由で巡り会った本だったりする。
全7巻のようなので1巻はまさに序章という印象で。淡々とした文章のようで深みがある、なんて、恐れ多い表現かもしれないけど、サラッと楽しく読めました。これも何かの縁ってことで、最終巻まで突き進みたいと思います。 -
気になっていた、北方健三さんの歴史ものをようやく読み始めました。史記については、以前、横山光輝さんの漫画で読んだことがありますが、一つ一つのエピソードは面白いものの、全体としてまとまりがなくて難しいという印象でした。この北方さんの作品では、しかっりと物語として構成されているようで、第1巻から引き込まれました。
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次2巻。
てか解説が鶴間和幸とか、すげーな。 -
全7巻。
北方版史記。
久しぶりに北方版古代中国。
名前は聞いた事ある史記。
本物はどうなのか分からないけど
北方版は漢の武帝の生涯の物語。
三国志・水滸伝のような
血湧き肉躍る、豪傑達の物語ではなく、
割と淡々と、しみじみ「生」を見た作品って印象。
当然、北方版なので、
漢達の物語なんだけど、
前2作に比べると少し大人しい。
というか、大人な感じ。
スリリングで迫力ある前半と、
中盤以降、徐々に強くなる死の臭い。
真ん中に居るのが戦人でなく帝だから
死に対する想いが身近に感じたのかも。
戦で死ぬ訳じゃないから。
水滸伝より読み返す機会が多そう。
年取ってきたんだろうなあ。
きっと。
自分。
文庫版の最終巻のあとがきは
人選が違うと思った。