- Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
- / ISBN・EAN: 9784758413299
感想・レビュー・書評
-
なんだよもう!
今村翔吾さん、これで3冊目だけどどれもこれもめちゃくちゃ面白いやないかーい!
なんでもっと早く教えてくれないのか!!(誰に対して怒っているのか?)
いい感じに歴史をおもちゃにしてますよね
(本作は歴史というより伝説ですが)
お!歴史をおもちゃにしてるってなんかいい感じの表現じゃなかろうか(自画自賛)
登場人物のキャラ立ちが端役に至るまで完璧です
これはもう誰かこのままゲーム化してくれまいか
ガードゲームとか良さそう
伝説・伝承が好きな人はかなり楽しめる作品です
(但し、今村翔吾さんの独自すぎるフィクション要素を受け入れられる人に限る)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
【読もうと思ったきっかけ】
歴史に元々興味はあったが、小説ではなく史実に忠実なものしか興味がなかった。
ただ最近フィクションの小説からも色々な気付きや発見があることが分かり、色々なジャンルを多読するようになる。その中で歴史のフィクションも読んでみようと思ったのがきっかけ。
【あらすじ】
平安時代「童」と呼ばれる者たちがいた。彼らは鬼、土蜘蛛、滝夜叉、山姥・・・などの恐ろしげな名で呼ばれ、京人から蔑まれていた。一方、安倍晴明が空前絶後の凶事と断じた日食の最中に、越後で生まれた桜暁丸(おうぎまる)は、父と故郷を奪った京人に復讐を誓っていた。様々な出逢いを経て桜暁丸は、童たちと共に朝廷軍に決死の戦いを挑むが。皆が手をたずさえて生きられる世を熱望し、散っていった者たちへの、祈りの詩。
【読後の感想】
初の今村翔吾氏の作品。
流石はデビュー5年にして直木賞を受賞した筆者。そのストーリー緻密さやエンターテイメント性には、まさに素晴らしいの一言。ここまで物語に引き込まれたのは、デビューして間もない頃に読んだ、伊坂幸太郎氏以来の衝撃!
特にラストの桜暁丸が格好良すぎるので、ぜひ歴史・時代小説に抵抗感がある方にこそ、読んでほしい一冊です。きっと歴史小説に対する認識がガラリと変わるはず。
(本書から得た気づき)
本書のテーマは「差別」だ。
日本は他の国と違い、国を統一する際に一切略奪・虐殺はなく平和理に統一されたと言われているが、本当にそうなのだろうか?
歴史を知れば知るほど、そうは思えない。
そのことを訴えるように、作中の平安時代に京人以外を蔑称(土蜘蛛・滝夜叉・山姥・鬼など)で呼び、支配し、ときには虐殺しているとストーリー展開している。
本書には書かれていないが、国譲りの出雲地方や蝦夷、熊襲など、今後考古遺伝学などが進歩すれば、もっと新たな発見があると思うので、化学の進歩を待ちたいと切実に思う。
(心に残ったセリフ)
「飯を喰らって眠り、好きなことに明け暮れる。人はそれだけでも十分に美しい。そのために土を舐めてでも生きねばならぬ」 -
うん、これは面白かった。
史実にフィクションを上手に取り入れた歴史エンタテイメント小説で、これまで読んできた本が、様々な場面でリークする。
絵本では赤羽末吉さんの「鬼のうで」。児童小説では「鬼の橋」。
「今昔物語」。「京都ぎらい」等々。
文章も構成も実に骨部で巧み。しかも全体の疾走感が頭が痺れるほどカッコいい。第10回角川春樹小説賞受賞作品。
舞台は平安時代。962年の「安和の変」から始まる。
この時登場するのが安倍晴明。もしや主役かと思わせるが軽いフェイントで、2章から登場する「桜暁丸(おうぎまる)」が主人公。
彼がのちの「酒呑童子」で、討伐しようとする朝廷側には、実在した源満仲・満仲の子である源頼光と頼光四天王と呼ばれた仲間。かたや「桜暁丸」側は言わばまつろわぬ部族たち。
タイトルになっている「童の神」は、子どもたちの神様という意味ではない。
夷、土蜘蛛、鬼、奴婢、僕などと同じく、京都人からは蔑まれる身分の者のこと。
同じ人間ではないか、同じ命ではないかという怒りが「桜暁丸」たちの闘いの原動力だが、それは次々に争いを産むことにもなる。
朝廷にくみせず自治区で平和に暮らしたいという願いは叶うのか。。
戦いの場面の迫力ある描写が、読み応えたっぷり。
四天王のひとりである「坂田金時」と「渡辺綱」が魅力的に描かれているのも嬉しいところ。
今昔物語に登場していた「袴垂(はかまだれ)」と呼ばれる大泥棒も登場して、大切な役どころだ。
血なまぐさい話ばかりかと思われそうだが決してそうではない。胸が熱くなるようなひととひとの交わりもたくさん描かれている。
特に「皐月」「葉月」「穂鳥」などの女性たちの描き方が魅力的だ。
大江山の酒呑童子伝説に出てきた「茨木童子」は、この本では女性になっている。
有名な、酒呑童子の腕が切り落とされる場面もちゃんとある。
興味深いのは、アニメ「もののけ姫」に登場した「たたら場」が出てくること。鉄の鋳造技術を持った人々がかの地にも存在したのかもしれない。
大江山の鬼伝説に、新鮮な視点を与えてくれた一冊。
なだらか稜線を描く大江山の麓には、今は「鬼の博物館」があり、鬼のモニュメントがあちこちに建てられて旅人を歓迎してくれている。-
素敵なレビューを読ませてもらって、
早速、行きつけの図書館で借りてきました。
普段、手を出さない棚なので
なじみの司書さんに
「へぇーっ ...素敵なレビューを読ませてもらって、
早速、行きつけの図書館で借りてきました。
普段、手を出さない棚なので
なじみの司書さんに
「へぇーっ これも読むんだ」
と言葉をかけてもらったので
実は、…
と このブクログでのnejidonさんの棚の面白さを
勝手に紹介させてもらいました
いい一冊をありがとうございました2020/02/27 -
kaze229さん、こんばんは(^^♪
コメントありがとうございます!
うわわ!このレビューが素敵だなんて、お恥ずかしいです。
思った...kaze229さん、こんばんは(^^♪
コメントありがとうございます!
うわわ!このレビューが素敵だなんて、お恥ずかしいです。
思ったままさくさくと入力したような記憶がありますが。。
kaze229さんのお気に召すと良いですね。
急に心配になってきました・笑
どうか楽しい読書になりますように!
レビューも楽しみにしておりますね。
面白い棚と言ってくださって、ありがとうございます。
え?褒められたのかな(^^; うーん・・
2020/02/27 -
はい!
大いに誉めさせてもらっています。
自分だけの嗜好に頼ると、
どうしても偏ったモノになりがちなので
nejidonさんの ような 「...はい!
大いに誉めさせてもらっています。
自分だけの嗜好に頼ると、
どうしても偏ったモノになりがちなので
nejidonさんの ような 「面白い棚(選書)」に
出逢うと それはそれは 嬉しくて 楽しくて
いとおかし になってしまうのです
今回の「童の神」、
私にとっては 初めての作者 初めての作品
それが 面白いのだから
いゃあ こりゃあ 春から縁起が良いわぃ
と なってしまうのです
2020/03/04
-
-
苦手なジャンルかと身構えていたが、とても読みやすく瞬く間に平安中期の世界へひきこまれた。この時代のこの人物たちを見事にフィクションの世界でよみがえらせ描かれた、心に響く物語だった。「同じ赤い血…」はもちろん、終盤に連れて桜暁丸、彼の口からほとばしる数々の言葉が何回も心に沁みてきた。そして童たちの虐げられることに対する熱い想いに何度も心揺さぶられた。少しでも違う何かを排除しがちな世の中、同じ人間なのに…。彼らの想い、ありのままを受け入れる心、大切さを改めて噛みしめながら読了。
-
大江山の鬼退治という童話のような伝説ともなっている話を、リアルでありながらファンタジックに、生き生きと描いた小説。
平安時代。
中央集権が進み、宮中文化が栄えた平安時代は、平和でも安心できる世でもなかった‥?
安和の変が起きた962年に物語は始まります。
京の都にも、ほど近い地域にも、「童」と呼ばれる、朝廷にまつろわぬ者たちがいた。「童」というのは、子供という意味ではなく、鬼、土蜘蛛、夷、滝夜叉、山姥などをまとめて蔑んで呼ぶ言葉。
一方的に蔑む権力者に対抗して、乱が起きたのだが、あえなく鎮圧される。
安倍晴明は、皆既日食を凶事と断じ、ゆえに恩赦が出るように事を運ぶ。じつは童と通じていて、囚われた彼らを救ったのだ。
この年この日、越後で桜暁丸(おうぎまる)が生まれた。父は郡司で、流れ着いた異国の女性との間に子をなしたのだ。夷を差別しない人柄だったが、京に目をつけられてしまう。
桜暁丸は父と故郷を喪い、「花天狗」という盗賊となった。のちの「酒呑童子」この童子という名が子供という意味ではなかったわけです。
跋扈する盗賊や、表には出ずに山で暮らす人々との出会い。
それぞれの強さと意気地、はかなさとしぶとさ。
影に日に活躍する女性たちも魅力的です。
実在する人物も、伝承を思わせる内容も出て来て、その描き方がスピーディで熱っぽく、きらきらと輝くよう。
引き込まれて一気読み。
史実でこれほど大規模な闘いがあったのかどうか。
平安時代については、数字的なことがよくわからないのだが。
赤い血の流れる同じ人間でありながら、秩序になじまないという理由で、否定する。
元はそれぞれ離れた土地で、その土地なりに暮らしていただけなのに。
世の制度が整っていくときに起きる残酷さ。
時代の流れとはまた別な、異なるものを排除する心理。
現代でも、根深く、あちこちで起きている現象のようにも思います。
せめて、極端な差別や争いを起こさない方向へ、進んでいけたらと願うばかり。
2019年初読。2023年、文庫で再読。 -
少し前に
澤田瞳子さんの「落花」を読んだ。
その直後に 手に取った一冊
おっ 平将門の系譜に連なる者
土蜘蛛、葛城山、畝傍山、愛宕山
に纏ろう「民」たち
これは これは
あの敬愛する隆慶一郎さんが
何度も取り上げられておられる
「道々の輩」に連なる人々では ありませんか
その人々が
縦横無尽に活躍する物語り
これが面白くないわけがない
今村翔吾さんが
読み解く「酒呑童子」
いゃあ 最後まで
わくわく はらはらで
読ませてもらえました。
ブクログ友の書棚から
「ぉっ おもしろそう」と
選書させてもらった一冊です-
kaze229さん、楽しんでいただけて良かったです。
面白くないと言われたらどうしようと、どきどきして過ごしました・笑
そう、「道々の輩...kaze229さん、楽しんでいただけて良かったです。
面白くないと言われたらどうしようと、どきどきして過ごしました・笑
そう、「道々の輩」なのですよね。この言葉の響きだけで胸が弾みます。
隆慶一郎さんは、ジャンプの「花の慶次」から入ったのですが「死ぬことと見つけたり」が大好きです。
思いがけぬ共通点も見つかり、嬉しい限りです。
ありがとうございました。2020/03/04
-
-
本作の作中の時代は、平安時代の、所謂“摂関政治”が盛んになるような頃となっている。“摂関政治”なるモノは、都に天皇が在って、天皇の権威と権限を行使する朝廷が在り、朝廷の中で天皇を輔弼する最高責任者ということになる“摂政”や“関白”という地位に就く者や周辺に在る者達が幅を利かせるという様子を言う訳だ。「天皇の権威」に基づく「朝廷の威光」が大前提の体制だ。
「天皇の権威」に基づく「朝廷の威光」が大前提となる体制が築かれている他方、そういうことに関しては「知らん…」とか「無関係だ…」という立場に在る人達も実は一定以上に居た。それを「服させる」ということが永く行われていたのが、日本の古代史の「一つの大きな側面」でもあった。“摂関政治”というようなモノの時代に到ると、体制の大前提になる「朝廷の威光」について「知らん…」とか「無関係だ…」という立場の人達は少な目になってきてはいたものの、それでも未だ存外に多く在った。少なくとも本作の作中世界ではそうなっている。
「朝廷の威光」に「服する」ということになったのが後発ということになる、都から離れた地域で独自に勢力を持っていた豪族の流れを汲む人達、何かの折りに日本国内に渡来した人達の末裔が集まっているような場所に在る人達、主にそういう人達が「まつろわぬ者」と称された。場合によって、異人種の血が入っていて風貌に特徴が在ること等も在って、差別を受ける事例も少なくないため、集団で密かに何処かに暮らしている場合も在る「まつろわぬ者」に関しては、様々な蔑称で呼ばれて、後世に恐るべき魔物でもあるかのように伝えられている例も在る訳だ。そしてそれらに関して、“討伐”ということが行われる。要は朝廷の貴族達の下に在る武士団が武力行使を行って、「まつろわぬ者」の一団を服属させるか滅ぼすかしてしまうのだ。“戦”である。
本作の冒頭部は、「まつろわぬ者」の一団を服属させるか滅ぼすかしてしまう戦が展開されているような頃が描かれ、その最中に生まれていたという主人公の桜暁丸(おうぎまる)が登場する。
桜暁丸(おうぎまる)は越後の豪族の子である。妻に先立たれた父だったが、或る日漂着した異人種の女性を愛し、設けてしまった子が桜暁丸(おうぎまる)だった。故に桜暁丸(おうぎまる)は異人種の血が入った少し変わった風貌の若者に育って行った。
この桜暁丸(おうぎまる)が、後世に“酒呑童子”として伝えられることになる訳で、本作は桜暁丸(おうぎまる)が大江山を本拠地とする、幾つか集まった「まつろわぬ者」の集団の頭領になって行くまでの様々な出会いや別れ、戦い、更に“酒呑童子”の通名で知られるようになってから掲げようとした理想と、同志となった人達との共闘の様という物語だ。
この桜暁丸(おうぎまる)の対極に坂田金時が在る。坂田金時は、足柄山に在った「まつろわぬ者」の一族の出である。一族が朝廷に服属した時、自身は武士として生きる道を選び、源頼光の臣となった。そして「まつろわぬ者」を“討伐”という戦に加わっている。
若き桜暁丸(おうぎまる)の冒険や成長、様々な技や武器を駆使した戦いというような活劇と、興味深い出会いや別れのロマンチックな展開と非常に愉しい本作だが、なかなかに今日的なテーマが通奏低音になっていると思う。「多様性に寛容で居られるのか?居られないのか?」というようなことだ。
どういう場所の、どういう一族に生まれて来るのか?それは誰も自身で主体的に選べるのでもない。ただ、偶々生まれて各々の人生が在る。各々の人生は各々に尊く、他者からとやかく言われる何物でもない筈だ。敢えて“敵”のように認定する必然性等無く、闘って殺し合いまでしなければならない筈が無い。
「多様性に寛容で居られる」のであれば、どういう出自の人達であろうと、様々な人達が平和に共存出来る筈だ。「多様性に寛容で居られない」となれば、「造り出す?」というようなことまでしてでも“敵”を求めて戦うことになってしまう。
こういうような通奏低音を本作では感じた。これは或いは「“主流”をすこし外れてしまって“居場所”を求める人達」というような存在が、実は存外に多いのかもしれない、そして“主流”に与することを強いるかのような“同調圧力”とでもいうようなモノに「息苦しさ?」が感じられるかもしれない「現代」を、「愉しいファンタジー」という体裁で抽象したのかもしれないと思った。
「古くから伝わる物語」を「ファンタジー小説」に組み直し、そこに「現代社会のテーマ?」を織り込んでしまっている。或いは「未来の古典」を想わせる。広く御薦めしたい作品だ。 -
“大江山の鬼退治”で知られる、酒呑童子の物語をベースとした平安エンタメ小説。
差別や搾取のない世の中を創りたいと願う桜暁丸達と、彼らを「童」と呼び“蔑む朝廷側との闘いが続きます。
京人は桜暁丸達を、童もしくは鬼と恐れ蔑んでいたしたが、本当の"鬼”はそんな京人の心の中に居るのでは?と思いました。
キャラでは袴垂こと藤原保輔も良かったです。前半で散ってしまったのですが、却って心に残りました。 -
まるで痛快時代劇みたいな面白い小説でした(^^)
まだ30歳ちょっとの作者が こんな題材を自在に操ってモノにしていることにも感心しました。
昔話で みんながよく知っている登場人物が大勢出てきて、しかも彼らが血の通ったイキイキした配役になっていてとても興味深く読み進めます。
そうして虐げられ続けた者達をさまざま束ねて我らも京人(みやこびと)と何ら変わらない人間であると主張できる世の中にしょうと奔走するも、めでたしめでたし で終わらない!
久しぶりに血湧き肉踊る感じで読了しました 笑。 -
最近ハマっている作家「今村翔吾」の第10回角川春樹小説賞受賞作品。
「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」の後に読んだ作品でしたが、図らずもこれは時代は安倍晴明がいた時代とかなり昔ですが、同じ差別貧困が根底にある作品です。
ほとんど神話のようになってしまった酒呑童子が、どんな風に生まれて、なぜに戦い続けなければならなかったか?
京都に住う当時の富、宝を放火する人種の片方には、差別といつはてるともない蔑視にあがらうものが、穴蔵に身を潜め、時には盗賊として都に。
それを人を人と思わぬ蔑称で、恐れさせ、憎しみの対象にして帝は次々と兵を出した。
同じ人間として生きることだけを夢見て戦う外国人の血を引く酒呑童子。そんな物語だ。
今年評判になった山崎賢人くん主演の「キングダム」のアクションのような手に汗を握る激しい動きのある文章は見事。