ライオンズ、1958。

著者 :
  • 角川春樹事務所
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本棚登録 : 58
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (282ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784758412872

感想・レビュー・書評

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  • 時は1956年、まだ戦争の影をひきずりながらも何とか前に進んでいこうとする福岡の人たちにとって、西鉄ライオンズは希望の星
    三原監督を筆頭に大下弘、稲尾一久、中西太、豊田泰光
    仰木彬、当時の様子は知らないけれど、名前だけは知っている選手がずらりと名を連ねる

    当然、試合の様子も描かれていて、それこそ野球好きにはたまらない。タイトルを見てもそんな話かと思ってしまうが、実はそうではない

    任侠、野球、新聞記者、交わることのない三者に思えるが何と熱く潔く清々しいばかりの男たちの友情
    曲がったことや卑怯なことが大嫌い、筋を通す、強きを挫き、弱きを助けるまるで戦隊もののヒーローのよう

    そこまで頑なに筋を通さなくてもいいんじゃないと思ってしまいそう
    女性には分からない世界かもしれないでも、かっこよかった
    どこか懐かしい昭和の匂いがぷんぷんするが、私が知っている昭和よりも10年早い昭和だろう

    そして、最後には11ゲーム差を跳ね除けての西鉄ライオンズの3年連続リーグ優勝と日本一
    こんな時代があったんだ

    信念を貫いた田宮の死は何の後悔もないだろうが、生きていて欲しかった

    平岡陽明さん、good job !

  • 題名が悪い。
    この題名ではパイが少なく、こんなに面白い本なのに多くの人に読んでもらえないじゃないか。
    そう思ってしまうほどの良書。
    著者のインタビュー記事で稲尾和久や大下弘は信長のような歴史上の偉人なのだからある程度喋らせても良いだろうというのは同じく登場していたノムさんは怒りそうだが目から鱗でした。
    野球だけではなく、ヤクザだけではなく、時代だけではないすべての合わさった面白い本でした。

  •  一気に読み終えました。感動しました。神様・仏様・稲尾様のフレーズ、福岡の星・西鉄ライオンズが3年連続日本一、記録にも記憶にも残る出来事でした。「生きる」「球友へ」「男らしく」という三つのメッセージが刻まれた古ぼけたボールがすべてを包み込んでいます。平岡陽明さん、入魂の一冊だと思います。「ライオンズ、1958。」、2016.7発行。西鉄番の記者、木屋淳二を主軸に、根底には戦死した淳二の兄・木屋一弘が。左右を、男の中の男(ヤクザ)田宮直志と戦後球界最大のスター大下弘が固めています。この本は記憶に残ります!

  • かつて博多には、西鉄ライオンズというプロ野球チームがあった。伝説のやくざと、史上最強のスラッガー、そして普通の記者。自らの「生き方」を貫いた男たちのハードボイルドな人情物語。

    西鉄ライオンズの黄金期はテレビや活字でしか知らないけれど、本作で博多市民の熱狂ぶりや当時の雰囲気はよく伝わる。やくざの論理も明白だ(共感は全くはできないけれど)。番記者の選手との距離感の描き方も絶妙だ。作者はまだ作品数は少ないようだが、今後に多いに期待したい。
    (A)

  • 西鉄ライオンズの番記者・木屋は解雇された選手が元でヤクザの田宮と出会う。木屋の戦死した兄との縁で次第に親しくなっていく2人。さらにその縁はライオンズの花形選手・大下、孤児院の野球少年と輪を広げていく。野球の前では、そんな肩書きなど無縁のように思えたが、やがてその野球を巻き込んで田宮の組に不穏な影が。何よりも大事なヤクザの仁義と、木屋との大切な友情とで板挟みとなった田宮の苦悩が滲み出る。どちらにも筋を通そうとする田宮の男気が素晴らしい。何があっても田宮を慕い続けた木屋も。戦後の余韻を残す時代背景と博多弁も効果的。少し切なくも、暖かい人情味あふれるストーリーだった。

  • ライオンズ・ファンのみならず、野球好きは楽しく読めると思います。

  • 西鉄ラブの夫の本棚に
    ノンフィクションと思って買ったみたい
    「おもしろなかった」と
    いやこれは物語ですよ
    私は面白かったもん
    選手もヤクザもブンヤも
    博多弁が効いてました
    耳にタコができるくらい聞かされていたので選手の名前はすんなりと
    ≪ 復興を ひたすら生きる 野武士たち ≫

  • ★2016年9月4日読了『ライオンズ1958』平岡陽明著 評価A
    これが新人の作品とは恐れ入りました。話の展開のうまさと盛り上げは、横関大氏に似て、かなり上手です。お薦めです。

     かの有名な「神様 仏様 稲尾様」の西鉄ライオンズ3連覇の頃の博多のお話し。
     戦後まだ十数年、まだまだ血なまぐさい乱暴な時代。西鉄ライオンズの番記者で普通の新聞記者である木屋淳二。たまたまひょんな出来事から知り合った土建会社社長兼伝説のやくざ組長の田宮。西鉄ライオンズの名選手で美しい大きなホームランが有名な史上最強のスラッガーの大下弘。この3人の温かいそして太く短い交友を木屋と田宮を中心に上手に西鉄ライオンズの戦績を混ぜながら話は進む。

     残念ながら、私は西鉄ライオンズの最強時代は知らないが、この作品を読んでいるだけで、当時の猥雑な熱くたぎるような昭和の復興期を目の前に見るような気にさせる良い作品である。

  • ライオンズ、と銘打ってなければ、
    本屋で手にも取らなかったであろう一冊。
    ですが、いい意味で予想を裏切られました。

    男たちの友情、任侠極道の世界、白球を追いかける少年・青年・そしてプロの世界、故郷を離れた戦地で芽生えた熱き友情の男の世界。熱い、熱すぎる。もうてんこ盛り。

    森監督時代からのライオンズ贔屓なので、名前や伝説は耳にしていても、知らなかった西鉄時代のメンバーが描かれているというのは嬉しい物でした。(著者と同世代!ビックリ)

    今の埼玉西武ライオンズユニフォームはこの西鉄時代を踏襲した部分があって、表紙のイラストからしてもう「おおっ」と思いました。

    でも、ライオンズブルーに戻しましょうや(笑)

  • かつての博多には、西鉄ライオンズという恐ろしいほどの野球軍団があった。そんな野武士野球集団の「史上最強のスラッガー」と「伝説の博多のやくざ」そして「普通の新聞記者」との関係を通して己の生き方を描いたハードボイルドな作品。

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著者プロフィール

平岡陽明
1977年生まれ。慶應義塾大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2013年『松田さんの181日』(文藝春秋)で第93回オール讀物新人賞を受賞し、デビュー。19年刊行の『ロス男』で第41回吉川英治文学新人賞候補。22年刊行の『素数とバレーボール』は、「本の雑誌」が選んだ「2022年度エンターテインメントベスト10」第3位。他の著書に『ライオンズ。1958。』『イシマル書房編集部』『道をたずねる』『ぼくもだよ。神楽坂の奇跡の木曜日』がある。

「2023年 『眠る邪馬台国 夢見る探偵 高宮アスカ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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