翻訳地獄へようこそ

著者 :
  • アルク
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本棚登録 : 284
感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (201ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757430747

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳についてのエッセイ……とは違う気がするけど、いろいろな話。意外と一文一文を挙げて細かく解説してくれていて、面白かった。そして実際に出版されている本での例もたくさん……大丈夫なんかな(笑)。こういう感じ非常に好き。もともと翻訳家が違うと、読みにくかったりするなーと思っていたのですが、そういうことなのか!と思えた。

  • 面白かった!
    今まで読んだ小説で見つけた誤訳を解説していて、訂正された文章と比べると一目瞭然。すっきり分かりやすくなる。
    イギリスのcityは町に与えられる称号だとは知らなかった。
    知ってる単語だと思ってそのまま流しそう。
    紹介されている本も面白そうで欲しくなる。

    翻訳小説をよく読む人にもおすすめ。

  • 翻訳者の苦労が実例と共に説明されていて面白い。

    英語を更に知ることもできて参考になる。
    コンマ1つでそこまで意味が変わるとは意識していなかった。例えばEats, Shoots & Leavesについて。
    『コンマが入っているので、「食べて、撃って、去る」だが、コンマがなければ、Eats Shoots & Leaves で、「(笹の)若枝と葉っぱを食べる」というパンダの話になる。』

    書内で紹介されている書籍も面白そうなものがある。

  • 先日、「誤訳も芸のうち」などと悪びれもせず堂々と言い切っている某翻訳家の本を読んだら、解釈と訳があまりにも気持ち悪くて大変にストレスがたまった。(「超訳」は芸のうちかもしれないと思うけど、誤訳は誤訳だろ、と言いたい。まあそのタイトルの本は読んでないけど)
    とにかく「口直ししたい!」との思いから、宮脇氏のこの本を、砂漠で水を求める遭難者のような激しい渇望感で手にしました。

    すばらしくおもしろかったです!!
    宮脇氏の本の中で、一番おもしろかった。
    口直しどころか、すごく幸せな気分になりました。というのも、全ページから、著者が読書や文学、もっと言えば、「知識そのもの」をいかに尊び愛しているかが伝わってきます。翻訳や英文解釈という技術的な解説もその愛がベースにあるので、表面的に終わらず奥深く掘り下げていて、そしてとってもおもしろい。

    また、この本は「語学好きのためのブックガイド」的側面もあって、そのラインナップが浅学な私などは聞いたこともないような本ばかりで、しかも全部おもしろそう。
    なんてことだ、全部は買えないし、読めない! どうしよう!なんて困ってしまう。

    一番印象に残ったのは次の部分。
    「イギリスの小説は、一見深刻そうな純文学でも、えぐいミステリでも、だいたいユーモア小説だと思っておけば間違いない。少なくとも、翻訳者から見れば、そういうことである」

    初めて英語の小説を英語のままで読んだとき、一番に感じたのが、「英語の表現って、いつもどこかしらちょっとユーモラスなんだな」ということ。私が英語の文章を読むのが好きなのも、理由はそこなんだと言ってもいいかもしれない。
    日本語という言語にはやや薄めの特性だからか、英語圏の人とのちょっとした会話においてもその違いを感じます。同じことを言うのにも、英語はクスっとくるような言い方をするというか。(日本語は逆に「しみじみとした表現」が得意だと思う)
    英文のおかしみが、翻訳で消えてしまう実例、「語順を変えるだけで、原文の味わいを損ねることがある」(held at bayの章)などは、特に興味深かったです。

  • 出版翻訳者による翻訳にまつわるエッセイ。
    誤訳を例に出しているので、翻訳者を目指す人にとってのアドバイスにもなっている。

    普通に出版されている翻訳本でも、結構誤訳が多いのだなと思った。

    いかに原文のエッセンスを一語一句でもなく、意訳しすぎないように時代背景なども考慮すべきかなど、翻訳の奥深さを知ることができ、また、おすすめの本なども、テーマごとに紹介されているので、面白かった。

  • 翻訳ものが大好きなので、このタイプの本も大好きです。
    個人的には誤訳も何のその、気にならないタイプですが、確かに時々読みにくい翻訳があるなあ、と思っていたことに対して、回答を得たように思います。スッキリ。

    翻訳から、いろんな雑学に発展する感じで、とてもおもしろいです。
    残念なのは、引き合いに出されている本がどの本なのか、全部はわからないこと。繰り返します。ザンネン。

    ですが、アベラールとエロイーズとグレアムグリーンの評伝は読んでみようと思いました(笑)

    そしてまた死ぬまでに読みきれないほど、読みたい本ができてしまいました…

  • 著者は良い意味で重度の言語オタクのようだ(笑)。

    この本で紹介されている作品をほとんど知っている上で、翻訳"地獄"に沼っている人や、本格的に翻訳をするにあたって参考図書を探している人におすすめ。

    翻訳とは究極の精読である、とは聞くが、すでに訳書が出版されて"正解"が示されているような書物でさえも、これだけ言葉にこだわりを持った人に改めて読み解かれるのかと思うと、本というのは出版されてからがスタートなのだなと感じた。これは外国語→母国語への翻訳に限らず、作者の解釈→自分の解釈という意味でも同じなのかもしれない。

    翻訳が、ただ言葉を外国語から変換するだけの仕事ではないというのはなんとなく知っていたが、その言葉をきいてその国の人が何を連想するのかまで調べ上げることも仕事の内に入る(116p)という考えには納得した。そう考えると、一冊の本を訳すときにその国の歴史ごと知ることになるかもしれないわけで、やはり歴史というのはどの分野にも関わってくるのだなあ。

  • エンターテインメントから文学まで様々な作品を訳してきた著者が、多数の翻訳実例を交えながら翻訳のやり方を実践的に紹介。翻訳者の苦悩と翻訳の奥深さが伝わってくる一冊。『マガジンアルク』ほか連載に加筆修正し単行本化。
    (2018年)
    --- 目次 ---
    まえがき
    はじめに 翻訳とは外国語の言葉を訳すだけの作業ではないのです
    1章 翻訳基礎トレーニング
    2章 翻訳フィールドワーク
    3章 翻訳実践トレーニング

  • 作家や画家、作曲家、学者、思想家などの創作を仕事にしている人々の生活習慣やスケジュールをまとめた本。
    1日のスケジュールや人柄に加えて、その人のこだわりや欠かせない習慣・品について書かれている。(たばこ、葉巻、酒、薬が多い)

    大抵の人はある程度決まったスケジュールで動き、早寝早起きをして長めの散歩をして、午前中から机に向かい、気が向かなくても決めたノルマをこなすまで頑張り続ける。そんな姿を読むと、「天才」で「自分とはかけ離れた存在」の彼ら・彼女らが突然身近な友人にまで降りてくる。
    インタビューの引用も多く、実際に説明された言葉も楽しめる。

    161人の記事がまとめられているが、必ず聞いたことある偉人が1人はいるはず。ボーヴォワールやフロイト、マティス、トニ・モリソン、カントやカフカ。本棚のあの人のエピソードを読めるワクワク感でページをめくってしまう。
    個人的には、ボーヴォワールとサルトルそれぞれの習慣を読めたのは興味深かった。

    1人あたりの文量が少なく、ひとりひとりの章が独立しているため、隙間時間にパラパラと読めるのもいい。軽い読み物としておすすめ。

  • 翻訳ものの小説を読んでいて、何度か読み返す箇所が出てくることがある。あれ、これってどういう意味… よくわかんない… こんなことになる度に、ああ自分は読書好きなのに、なんて理解力がないんだ、こんなとこでつまづいてるのは自分だけに違いない!と思っていた。
    だけど、この本を読んで、自分のせいじゃないこともあるのかと安心した。この本は、マズイ翻訳もあるってことがたくさんの例で説明されている。そうだったのかー、翻訳が違っていたのね。にしても、外国語のエキスパートであり、文章書きのエキスパートでもある翻訳者の方が出した本に、翻訳のミスがあるなんて誰が思うだろうか。私は全く思ってなかった。
    翻訳本に関しては、賛否両論あるのも何度も目にしてきたが、そんなのは表現方法の違いだと思ってきた。でももしかしたら人にとっては許せない誤訳があるのかも… そして私が読んできた翻訳小説にも誤訳があったのかも…とちょっぴり切なくなった。
    でも、外国語の優れた物語をこうやって私が楽しめてるのも、翻訳者様のおかげです。これから私も原文で読めるように頑張ります。

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著者プロフィール

宮脇孝雄
1954年生まれ。早稲田大学政経学部卒業。翻訳家・エッセイスト。訳書に、セイヤーズ「顔のない男」、マクロイ「ひとりで歩く女」(以上、創元推理文庫)、ダニング「死の蔵書」(ハヤカワ文庫)、著書に「書斎の達人」(早川書房)、「翻訳の基本」(研究社出版)他がある。

「2023年 『ディンマスの子供たち』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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