ザ・ビッグイヤー 世界最大のバードウォッチング競技会に挑む男と鳥の狂詩曲

  • アスペクト
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  • Amazon.co.jp ・本 (399ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757210394

作品紹介・あらすじ

「ザ・ビッグイヤー」。それは、1年間に北米大陸で見つけた鳥の種類の多さを自己申告制で競う、アメリカ探鳥協会主催の記録会の名称である。仕事も家庭も棒にふり、1000万円以上注ぎ込み、40万キロ以上も飛び回って1年間も「鳥探し」をする競技者・バーダーたちの駆け引き、軋轢、結託、嫉妬-。男のロマン、バカバカしさ、業の深さを爽やかに描いた傑作ノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 世の中、様々な**バカがいるが、これはまさしく鳥バカ、バードウォッチング・フリーク達の群像劇である。舞台は全米探鳥協会が主催する全米探鳥競技大会。ルールは至ってシンプル。「元旦から大晦日の1年間で米国全土にいる鳥を最も多くの種類を見たものが優勝」というもの。審判や細かいルール、証拠の写真提出などもなく、「何月何日、どこで、何を見た」というリストの提供だけで、競技参加者はお互いを信じあってレースを年間で展開する。(実際には、希少種の鳥はこの競技に参加するバーダーによって一時的に集中的に見られてしまうため、お互いのデータを突合すれべ真偽のほどは分かるようになっている)

    普通のこの競技の楽しみ方は、自分の生活圏でバードウォツチングをして、旅行先とかでもカウントしてそれを提出して自己満足する、みたいなものなのだが、中にはアラスカやアッツ島なども含む米国全土数千キロを常に移動し年間250日ぐらいを探鳥に費やすという猛者がおり、その猛者たちが自己レコードや「歴史上、最もアメリカ国土にいる鳥を1年間に見た人間」になるための挑戦を「ビッグイヤー」と呼ぶらしい。そのビッグイヤーの中でも稀に見る激戦かつ、もう二度と破られることはないであろう、1年間で745種類を記録した1998年のレースを、この本では3人のハードコア・バーダーを中心に追って構成している。

    まずこの本ではバードウオッチングとアメリカ探鳥史を分かりやすく紐解いてくれる。そうかハンティングがエコになって、バードウオッチングに進化したんだ。。みたいな薀蓄が多数あった上で、いよいよ真打の3名の伝説のバーダー、即ち98年大会をぶっちぎりの1位で優勝したキャラも一番濃いサンディ・コミト、エリートビジネスマンにして何事にもスマートなアル・レヴァンティン、原発に勤める収入をすべて探鳥に費やし、女房にも逃げられた巨漢にして朝寝坊・大いびき男のグレッグ・ミラーが登場し、98年のビッグイヤーの詳細がつづられていく。

    この本の帯にも「バカか偉業か?」と書かれているが、まさにおバカ全開のエクストリーム探鳥が展開されていく。1日数百キロの移動は当たり前。常に大しけの海に行ったかと思えば、人間が生きる上で極めて過酷な環境であるアッツ島に1週間滞在したり、あるいは空気も希薄な標高の山にヘリで探鳥をし、鳥の上から鳥を確認するといった完全に行過ぎたバードウォツチングがそこにに展開されていく。3人のそれぞれの立ったキャラもこの本のもう一つの味わいとなっている。(特にサンディ・コミトのキャラの強さは読者の頭の中に完全にイメージを作り上げる)

    やがて物語はTOP3人が共に700種を超えていく異常展開でのデッドヒートをハラハラドキドキに描き出してくれる。そして、運命の大晦日、3人はそれぞれの過ごし方で激闘のビッグイヤーを終えるわけだが、そこにはそこはかとない余韻が生まれる。(サンディコミトだけ、早寝をして、翌日元旦から新たな探鳥を全く懲りずにやりはじめるのだが。。)

    人はなぜは他から見ると大して価値のないことに夢中になったり、身持ちを崩してしまうほどにのめり込んでしまうのだろう。。この本の物足りなさとある種の凄みはこの3人がバードウオッチングの魅力をほとんど語らないところにあるし、そんなことはこの本の主題ではないのかもしれない。

  • ビッグイヤーというバードウォッチング競技会、その中でも、エルニーニョ現象によって歴史的な年になった1998年を舞台に、上位3名を追ったノンフィクション。

    こんな競技があることを、まして自己申告するだけで観察数をカウント、順位を決めるルールで競技が成立するなんて、全く知らなかった。
    とにかく凄い世界だという感想ではあるが、個人的には、途中は中弛みで流し読みしてしまった。

  • 少し前のこと、スターチャンネルで「ビッグボーイズ 幸せの鳥をさがして」という映画をやっていた。
    タイトルがそそられない、テーマがバードウォッチング?ますますそそられない。
    でも、ジャック・ブラック、オーウェン・ウイルソンに加えてスティーブ・マーチン! 制作はベン・スティラー! とくれば観ないとね・・・。
    「家族バンザイ!」が鼻につくもののの、鳥を見ることにかける馬鹿な情熱がすごくいい。鳥の鳴きまねをするラシダ・ジョーンズがものすごくキュート。オタク系の女子っていい。

    でその原作本。
    「ビッグイヤー」というのは、北アメリカ大陸で1年間に見る鳥種の数を競う競技。
    北米に生息する鳥は700弱。それがビッグイヤーの優勝者になると700以上。その差は、渡りの途中に迷い込んだりした希少種。希少種が現れたとの情報が入るとすぐに飛行機で駆けつける。さらに、ヘリコプターをチャーターして鳥を見に行く、アリューシャン列島のアッツ島に迷い込んだアジアの鳥を見るためだけに行く、とまあ、ホントにあきれるほどの馬鹿な情熱。

    どうでもいいことにかける男の情熱、これほど滑稽で興味深くて素晴らしいものはない!

    しかも、記録が自己申告。紳士的・・・というか、「バードウォッチング」が自己満足の世界だから。
    そのビッグイヤーでも熾烈を極めた1997年、記録に挑戦した3人をユーモアを交えた文章で描く。
    アメリカのバードウォッチングの歴史、ビッグイヤーの成り立ちなども面白い。もともと、クリスマスにどれだけの数の鳥を殺せるかを競い合ったレース「サイドハント」に反対して見た鳥をカウントする「クリスマス・カウント」が発展、1年間に観た鳥の種類を競う「ビッグ・イヤー」になったそうだ。

    映画に戻ると、原作の鳥観察のドタバタは割と忠実。それに恋愛要素、家族愛要素を足して、キャラクターをデフォルメしているが、非常にうまい。
    ジャック・ブラック演じる四十男が病気の父親と森でトラフズクを見る静かなシーンなんて映画でも本でもグっとくる。

    願わくば鳥の写真とアメリカの地図がほしかった。まあ、WEBで調べながら読んだけど。

    そういえば10年ほど前、住んでいたところの近くの川で、カワセミを見かけた。へー、こんなところに珍しいと思い、しばらくたったある日曜日、
    ふたたびそこを通りかかると、大口径のレンズのカメラがずらりと並んでいてびっくりした。
    恐るべしバードウォッチャーの情報網。

    鳥類図鑑がほしいなあ、と思ってしまう。

  • ザ・ビッグイヤーって?
     米国で行われる世界最大のバードウォッチング競技会 です。
    それにに挑む男と鳥の狂詩曲 ♪

    「日本野鳥の会」が出しているノンフィクション。 面白そうです。

    エピローグで、まったく野鳥のことを知らなかった著者(記者)が、
    野鳥に興味を持ち、バードウォッチャーからバーダーへとはまっていくさまが描かれ、
    これは読むと楽しいぞ!と引き込んでくれます。

    結局時間がなくて、最初の方を読んだだけで中止。

    映画化されたので、TVで放映されるといいけれど、見れるとは限らない!
    DVDを買おう! (*^_^*)♪

    → 「ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して」 劇場公開日 2012年6月30日
    DVD → ビッグ・ボーイズ しあわせの鳥を探して [DVD]
    ジャック・ブラック、スティーブ・マーティン、オーウェン・ウィルソン主演で、北米最大のバードウォッチング大会「ザ・ビッグイヤー」に参加する男たちの姿を描いたハートフルコメディ。
    愛鳥家にとってあこがれの大会「ザ・ビッグイヤー」は、1年間に北米大陸で見つけた野鳥の種類の数を競い合う、アメリカ探鳥協会主催の記録会。
    しかし、その大会に参加するには、仕事や家庭に支障をきたすほどの時間とお金を費やさなければならない。
    年齢も立場も違う鳥好きな3人の男が、夢と現実の間で葛藤しながらも、野鳥を探し求めて奔走する姿を描く。
    監督は「プラダを着た悪魔」のデビッド・フランケル。製作総指揮にベン・スティラー。

    内容と目次は

    内容 :
    一年間に北米大陸で見つけた鳥の種類の多さを競う記録会「ザ・ビッグイヤー」。
    全てを投げ打ち大金をつぎ込んで鳥探しをする競技者・バーダー達の駆け引き…。
    男のロマンを爽やかに描くノンフィクション。 スピルバーグ映画化。

    著者 :
    ジャーナリスト。
    『デンバー・ポスト』紙在職中にコロンバイン高校銃乱射事件の記事でピューリッツァー賞を受賞。
    熱心な探鳥家でもある。米国デンバー在住。

    2013/11/12 予約  11/20 借りて読み始める。 読み終わる。

  • ノンフィクションの面白さをこれでもか!と教えてくれる本。
    世界は何て広くて面白いんだろう。

    北米を舞台に行われる「1年に何種類鳥が見られるか」というレース。バードウォッチングというともっとゆったりした物を想像するが、ここで行われるのはまさしく「競技」である。行動力、財力、運。全てを駆使して記録を目指す3人の男たち。3人ともそれぞれ個性的で面白い。

    もっとゆるいと思っていたのに、最後の方は夢中になって読んでしまった。アッツ島のツアーがなくなってしまうと、今後この記録が破られるのも難しいのだろうなと思う。仕方がないとは言え、ちょっと寂しい。

  • 「一年間で鳥を何種類見ることが出来るか」に金と時間と体力の限りを尽くして挑む、愛すべきバカ3人のドキュメンタリー。
    あまりにも住む世界が違いすぎてフィクションのように思えるほど。

  • 1年間にどれだけの鳥を見ることができるか?という競技会にのめりこむ男たちの話。

    最初は結構退屈。それはバードウォッチや競技会、そしてこの本のメインの登場人物3人の基礎的なことを説明しなければならないからかと。
    3人がそれぞれの事情と戦略を抱えて探鳥に奔走する様は読んでいて苦笑させられたり考えさせられたり。
    興味のない人間には何の意味もないことに大金や長時間を費やし、満足する。栄誉は同じ価値観を持つ人間にしか分からない。
    そこまで夢中になれる対象があるのはすばらしい。
    終盤、それまでお互い接触のなかった3人がそれぞれの記録を知り、ライバル心をむき出しにするところから(遅まきながら)話は俄然面白くなる。
    探鳥に賭ける情熱がますます盛んになるからだ。
    勝負の結末について、この本はそれほどページを割いていない。短いエピローグが十分にそれを補ってくれる。
    読んでいるうちにのめりこむ本ではあるけれど、でもやっぱりバードウォッチはよく分からない世界だ。

  • ビッグイヤーとは、北米大陸で1年間に何種類の鳥をみることができるかにチャレンジする試みのこと。本書は1998年に実際に繰り広げられた3人の探鳥家によるビッグイヤーの記録。というのは簡単だが、実際に行われることはほとんど狂気と紙一重。一年間、家庭生活を含めほぼすべてを犠牲にし、膨大な費用をかけ、時には身の危険にもさらされながら、鳥を見るためにだけ文字通り北米大陸中(南はメキシコ国境、北はアラスカ、アリューシャン列島)をかけめぐるのである。どんな分野にせよマニアの世界は部外者には窺いしれないものであるが、探鳥の世界においてもまたしかり。特に、ものの「収集」ではなく、単に「見る」、その一点にここまで情熱を傾ける様子には感銘さえ覚える。三人の悪戦苦闘に過度に感情移入しないで、適度なユーモアを交えたドキュメンタリータッチの文章がよい。

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