漁業という日本の問題

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  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757160552

作品紹介・あらすじ

このままでは日本の漁業は壊滅する。残された時間は少ないが、適切な資源管理を中心とした制度改革を実現すれば、補助金に頼らない、自立した、持続的に儲かる産業へと再生することは可能だ。

感想・レビュー・書評

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  • 少し前の著作であるが、著者のSNSを拝見していて、気になり手に取った。

    一般の人に知らされない情報がかなりあり、結局報道で知り得ることは本当なのか?という疑念が生まれた。
    このように、根拠となるデータや、世界各地の政策と比較しながら論理立てて解説してくれる人が必要だ。そして、そのような資料・書籍が一般の人にも手に入ることが大切なのだろう。ネットだけで情報が得られるわけでもないし、テレビやマスコミを鵜呑みにしてもいけない。必要な資料は自身で見極めて手に入れる大切さを知るとともに、書店の選書や流通・販売システムにまで思いを馳せるに至った。

  • 日本の漁業における論点(=乱獲)と解決策(=漁獲規制)がデータと共に分かりやすく説明されている。筆者の提示する解決策は、魚は取る量を規制し、代わりに質を上げること。持続性と経済性を兼ね備えた政策は可能であると説かれている。

    これだけ書くとシンプルに聞こえるが、日本でまだ抜本的な解決に至ってない理由は、現実を報じないメディア・漁師を補助金漬けにし票田として利用し続ける政治家・データを開示しない水産省・何も知らない納税者など各セクターに問題が潜んでいるためらしい。私はこの本のお陰で、乱獲について「何も知らない」納税者から「問題意識を抱いている」納税者になることができた。読める機会のある人は是非読んで欲しい。

  • 日本の食生活の基盤たる水産業の現実。戦後日本がとってきた政策は一次生産業を発展させたのか。オススメ!

  • この本を読んでから漁業に関して、自分ができる事を考える事が多くなったように思う。
    内容に興味があるなら、本書を読む前に以下のサイトを読むといいかもしれない。
    対談形式でわかりやすく現状の問題点と解決方法が書かれている。

    <a href="http://www.1101.com/toshio_katsukawa/" target="_blank">日本の魚は「世界一」じゃない!?</a>

    テレビではマグロやウナギが世界的に漁獲規制されそうだと報道していたが、日本の漁業がこの本に書かれている内容通りであれば、規制されなければ将来的にマグロとウナギが食べられなくなってしまうと危機感を持つことができた。
    それ以上に驚いたのはスーパーで販売せれているサバのような大衆魚が日本産ではなく、ノルウェー産だったという事で確かめてみたらその通りだった。
    しかし、漁業資源の管理はノルウェーやニュージランドのような成功例が既に存在しているので政府が動けば、すぐに開始できる事だと思うのでいかに早く開始するかが重要だ。
    漁業資源の管理は漁業者にとっても消費者にとっても利益のある事なので、漁業者の高齢化が進んで従事者が減少している今が体制を切り替えるチャンスではないかと私は考える。

  • ノルウェーが成功したのは、改革をしたから。日本が衰退したのは、改革をしなかったから。

  • 日本の漁業再生のためにネットを主戦場に闘う研究者勝川先生の著書。日本人なら全員読め!中高の読書感想文の指定書にしろ!というところですかね。
    ニシン、イワシから始まり、ウナギ、マグロと獲り尽くし食い尽くした挙句に、中韓の乱獲を非難する日本人の非自虐史観にはホント辟易とします。
    サーモンも鯖も輸入品に頼り、自国の沿岸は年老いた漁師が死に絶えるまで補助金塗れで獲り尽くすと。私の愛する秋刀魚もいつまで食べられるんでしょうね。

  • 漁業に関する問題点が上手にまとめられていて、かなり勉強になります
    同時にこの本に書かれている現状に暗鬱たる気分になります

  • 日本人の魚離れがいわれて久しい。しかし、詳細なデータが明らかにするのは、昨今の魚消費量の減少が、実は消費者が魚を食べないことよりも、むしろ消費者に魚が充分に供給されていないことによるということである。そう現実は、日本人が魚から離れているのではなく、魚が日本人から離れているのである。では、いったいなぜ魚は日本人から離れてしまったのか。筆者はその原因が杜撰な資源管理と、旧態依然の日本漁業にあるとして、いくつもの事例を引く。資源変動を考慮しない根拠不明の漁獲枠設定と、魚の成熟を無視した乱獲競走等々。このままでは、世界有数の海洋資源をたたえる日本領海もその豊かさを保つことの難しく、ひいては日本の漁業、そしてそれに連なる日本の文化が失われてしまう。さて、ここにおいて、同様な窮地に陥った海外諸国はどのようにしてその問題にあたったのか。例えば、漁船ごと個別漁獲枠を割り当てるIQ方式を導入したノルウェー、さらには割り当てられた漁獲枠の売買を自由化するITQ方式を導入したニュージーランド。この二国は、既得権益からこれらの方式を拒む日本漁業を置いて、苦節20年、見事に資源の回復と漁業の再興をやってのけた。今日、鯖街道で有名な若狭の鯖と、その製品は、実は原産国のほとんどがノルウェーである。自分たちは、その事実と意味をもっとよく考えなければならない。なぜ、二国が資源の回復と、漁業の再興を達成できたのか、それはIQ/ITQ方式以前に、それを導入できるだけの「消費者の理解」があったからに他ならない。自分たちが「日本の漁業という問題」を政府や、漁業者に任せている限り、この問題はけして改善することがないのだ。

  • 目からウロコ、魚だけに・・・と言うようなオヤジギャグはおいといて。
    イメージが実態とかけ離れている。

    日本人が一人当たり最も魚を食べたのは2001年、日常的に魚を食べるようになったのは冷蔵庫が普及してからなのでまだ60年ちょっとの魚ブームなのです。魚離れは本質的な問題じゃない。
    一方で国内生産は90年頃をピークに半減、2000年には輸入量と逆転。65年頃からまず遠洋漁業が増加したが70年代には200海里の排他的経済水域を格国が宣言しその後はじわじわ減っている。
    90年頃までは沖合漁業がマイワシの爆発的増加(ほぼゼロ→ピーク400万t→現在5万t)に助けられ増えるが実際にはマイワシ以外は70年代前半をピークに減少している。
    養殖はというと天然魚のわずか5%で1Kgのハマチを育てるには5〜9Kg、クロマグロだと15Kgの餌(小型の天然魚)が必要なので基本的には何の解決にもなっていない。マイワシが豊漁な間はただ同然の餌で高級魚を育てることができたが今では餌の自給率は27%。
    魚も餌の魚粉もだんだんと買負けてきているのが現状。魚粉は中国で豚の餌となり一部は私のおなかの中に入ってきているのだが・・・

    レーダー探知機など装備はどんどん上がっているのに1操業あたりの漁獲量はどんどん減少している。理由はただ採り過ぎたから。高級魚から順にとりつくしている。
    例えばハマチの漁獲量は増加し値崩れを起こす一方ブリは激減している。体重1Kgのブリ(ハマチ)は1尾100円程度で水揚げされるが3年待って穫ると体重9KgでKg単価1500円、氷見の寒ブリなら1尾10万円を超えることもある。08年のブリ0歳魚は3600万尾で生産金額40億円、もし3年待てれば個体数が4割に減ったとしても重量で3倍、生産金額は50倍の2000億円になる。

    なぜ待てないかというと漁獲量に制限がないと一人で我慢しても他の人に穫られるため。日本ではサンマとスケトウダラには漁獲枠が設定されたが総量規制のみなので穫るのは早い者勝ち。解禁と同時にスピード勝負で穫りまくるため漁期は短く、設備はピークに合わせて過剰になり品質も良くならない。

    08年のイカ釣り船のストライキは漁師がかわいそうという報道だったが裏側では自分の船だけにイカを集めるための光量競争があり無駄に燃料が使われていた。自分だけ光量を落とすとイカは捕れないので競争には乗るしかない。

    ではどうするかというとノルウェーやニュージーランドと言った漁業先進国に回答が示されている。80年代頃から個別の漁獲枠を割り当てるIQ方式を導入し無駄な早取り競争をさけ、回復可能な資源量から年ごとの総漁獲量を決め船ごとあるいは共同体ごとに漁獲枠を割り振る。資源を大事にした結果一人当たり漁獲量は増え、加工業を含めて就業者数も増え収入も増えている。

    ノルウェーでは穫り過ぎたニシンを数年間ほぼ禁漁にし資源を回復させ結果として漁獲量も増やしている。一方で北海道のニシンは穫り尽くされ姿を消した。

    日本近海は世界の3大漁場で日本海側は中国、韓国との協議が必要にしても太平洋側は日本が独占しており、資源はいずれの海も減っている。昔は良かったという漁師を制度はそのままに補助金で助けても先は見えている。
    海は漁師だけのものではない。

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