学問の力 NTT出版ライブラリーレゾナント023

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  • Amazon.co.jp ・本 (284ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757141353

作品紹介・あらすじ

「故郷をもった知識」を取り戻せ!センス・美意識・感受性-現代人が失った教養の原点を体験論を通して考察。

感想・レビュー・書評

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  •  進歩主義的な人生との向き合い方を根本的に見直すきっかけになる。
     『人との出逢いも、本との向き合い方も、描く未来も、そして突然のように亡った妻への想いも、もう一度自分が育み、身に纏ってきた、日本的文化というもののなかをぐぐらせて、新たな“形”としよう。』
     そう自らに誓わせてくれた重くて、深い一冊だった。
     日本が重症化しかけた頃に書かれた本だけど、こうやってもうその頃から十数年経過した今から、戦後の日本を振り返ると、時代時代のなかで、日本の揺れ動く姿を、日本の文化を纏いながら憂い、行動を起こしてきた人たちの姿が澄みやかに浮かんでくる。
     この流れに必死に抗ってきた人たちが確かにいたに違いないのだ。
     
     

  • 学問の話は前半だけで、後半は保守思想の話。が、人文・社会科学のグローバル化には反対の立場であり、ドメスティックな観点からしか論じる事ができないのであれば、前後半はつながっているのだろう。本著は「語りおろし」らしく大学院生数名相手の講義の文字おこしのようなので、内容的な精査はされていないようだが、反理性を唱えるあまり「人間が学問をし、知識を身につけ合理的になればなるほど堕落している」と題名批判になってしまっているのはいかがなものか。とは言え、20数年ぶりぐらいの佐伯啓思だったが、流石に読み応えがあった。西部邁亡き後、保守思想をリードしていくのはこの人なのだろう。ちなみに、著者曰く、思想的な現出順序は、自由主義→社会主義→保守主義らしく、社会主義の没落により本来は自由主義と保守主義が対立するらしいが、現実政治は学術通りには展開しないので思想的混乱は起きるのは仕方ないかな。

  • 本書のタイトルはともかく、ものの考え方、思想の背景のようなものが少し分かったような気がします。現在アメリカで力を持っているのが、新保守主義(ネオコン)と言われる考え方のようですが、保守主義と言いながら、市場主義、自由主義、個人主義、能力主義、成果主義など、保守という言葉と合いいれないような気がしていました。その原因の一つがアメリカの歴史をちゃんと考えていないというところにあります。アメリカはもともと建国の精神が個人主義、自由主義というところにあったはずです。その中での保守なのです。日本とはよってたつ背景が異なるのです。だから、日本の保守とアメリカの保守という言葉をいっしょにしてしまうところに無理があります。歴史をしっかり勉強し、その文化の背景をよく知った上で議論しないと、変なことになってしまいます。日本がもともと持っている文化として、たとえば「もったいない」という意識とか、家族や身内を大切にする考え方など、現在だんだん薄れてきてしまっているけれど、残して行きたいものがあります。武士道もその一つでしょう。また少し勉強をしないといけません。(最近文庫になっていますが、「買わないと」と一瞬思い、「いや待て、これ持ってる」と思いとどまりました。)

  • あと3日後に文庫版が出るという事実(笑)
    『西洋近代を問い直す』が良かったので、二冊目に入ってみた。

    私にとってテーマが幾分身近なものになって、読み易さアップ!
    「教養」という言葉への慎重な姿勢、グローバリズム一刀両断、ああ、いい感じ!

    つまり、私は私の持っている違和感や共感を大切にしていいんだな、と思えた。

    教育機関のサービス業化。それに伴う、いわゆる学問の質の低下。
    時短と効率が叫ばれる中、いかに上手く社会人になってゆくかに焦点が当てられる今日。
    けれど、学問をするには時間がかかる。

    知ることから分かることに繋がる瞬間、それを味わってこその学びなのだろう。

    グローバリズムは目線だけが外に向いていて、結局私がどこに立っているかを見失わせる方向付けだと思っている。
    足下を見ようとするのは簡単で、しかし足下を知ろうとするのは難しい。

    佐伯啓思は、学問の在り方についてというより、足下が何故あるかという大きな流れをまずは提示してくれている。
    思想という所では私の知識そのものが浅薄なため、まだ分かるどころか知るにも追いつけていないのだけど。

    また、文学と数学を支える日本的美。岡潔と小林秀雄の『人間の建設』を持ち出し、そこに通ずる感性を大切にすべきだと言ってくれる人がいる。

    励まされた一冊。文庫版も買います(笑)

  •  後半の国家論と保守論がものすごくわかりやすかった。今まで漠然と思っていたことが極めてロジカルに書かれていて、「そうなんです佐伯先生!」と机をバンバン叩くに至る。装丁がクラフト・エヴィング商會だったことにもくすぐられました。
     内田さんと佐伯先生がこれからの私の指標になると確信。

  • [ 内容 ]
    「故郷をもった知識」を取り戻せ!
    センス・美意識・感受性―現代人が失った教養の原点を体験論を通して考察。

    [ 目次 ]
    第1章 学問はなぜ閉塞状態に陥ったのか
    第2章 体験的学問論―全共闘と教養主義
    第3章 「知ること」と「わかること」
    第4章 現代はなぜ思想を見失ったか
    第5章 「保守主義」から読み解く現代
    終章 学問の故郷

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 思想、教養、歴史、政治、経済など多岐に渡っている。教養とは何かを考えるエッセンスが多い。

  • 正論が多いなあ。とりあえず佐伯さんのさわりにはなったけど。

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著者プロフィール

経済学者、京都大学大学院教授

「2011年 『大澤真幸THINKING「O」第9号』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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