仕事と家庭は両立できない?:「女性が輝く社会」のウソとホント

制作 : 篠田 真貴子(解説) 
  • NTT出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784757123625

作品紹介・あらすじ

働く女性が増え、共働き世帯が主流となった今も、育児・介護など家庭の仕事を担い、その両立に悩んでいるのは圧倒的に女性です。こうした状況を、どうやって変えていけばいいのでしょう?長時間労働や性別分業が残る職場をどう変える? フレックス勤務の罠は? 今、組織や社会、そして個人に求められる意識改革とは? 〈世界の頭脳100〉に選ばれ、世界的ベストセラー『リーン・イン』のS.サンドバーグ(Facebook COO)の論敵としても注目される著者が、仕事と家庭のあいだで悩むすべての人に贈る、〈21世紀のまったく新しい働き方+生き方〉。
ヒラリー・クリントン、エリック・シュミット(Google会長)ほか推薦!
フィナンシャルタイムズ、エコノミスト絶賛!

感想・レビュー・書評

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  • 本書で『子育ての時期が辛くてもドロップアウトせず、何かしら仕事を続けること』を推奨していました。時短勤務やパートでも仕事をしていた方が、仕事から完全に離れて戻るよりも、追いつきやすいからです。
    アメリカでは(日本も同じだが)、一度仕事を離れた40〜50代女性の再就職が難しいらしいです。確かに採用担当の立場なら、ブランクが10年近くある人と、細々でも仕事を続けてきた人なら、後者を採用すると思いました。

    本書で初めて知った言葉で、『ROWE(完全結果志向の職場環境)』が気になりました。下記、参考文献の紹介があり、(パンチのきいた題名ですが)機会があれば読んでみたいと思いました。

     カリ・レスラーとジョディ・トンプソン著書
     「職場がクソな理由とその直し方」
     Why work sucks and how to fix it.

  • 『仕事と家庭は両立できない?』 「女性が輝く社会」のウソとホント(アン=マリー・スローター 著、篠田 真貴子 解説・監修・その他、 関 美和 翻訳、NTT出版) | 株式会社 ウエーブプラネット | コンセプト・ナビゲーター THE CONCEPT NAVIGATOR®
    https://www.waveplanet.co.jp/archives/1473

    仕事と家庭は両立できない? 「女性が輝く社会」のウソとホント|書籍出版|NTT出版
    https://www.nttpub.co.jp/search/books/detail/100002417

  • プリンストン大学の教授である著者のアン=マリー・スローターは、仕事に打ち込んでいれば、女性でもキャリアも家族もすべてを手に入れることができると考えて生きてきた。しかし、オバマ政権で国務省の幹部に就任し、2年間ワシントンでの単身赴任生活を送った後、息子たちと一緒に過ごすため国務省を退職。家族と過ごしたいというのは自分の選択なのに、キャリアを諦めた女性という目で見られることに衝撃を受けた著者が、仕事と家庭のあいだで悩むすべての人に贈る本。

    中心となる著者の主張は、現代の社会では「競争」に重きがおかれていて、子育てや介護といった「ケア」の価値が軽んじられているが、「ケア」にも高い価値を与え、「ケア」の仕事に従事する人にも相応の給与や社会評価を与える必要があるということ。

    本の中では、上記の主張のほかに、多くの人が何となく信じている母親神話や女性神話の信ぴょう性も論じている。以下、特に共感したものを箇条書きでメモ。

    ●例えば、必死に仕事に打ち込んでいれば、すべてを手に入れることができるという神話。しかし、多くの組織において体制そのものが時代遅れで間違っており、例えば、弁護士やビジネスマンは24時間365日メールに応えるのが当たり前。このような社会では仕事と家庭の両方を手に入れることは不可能。これが変われば、女性だけでなくすべての人によりよい社会が実現できるはず。

    ●二つ目は、協力的な相手と結婚すれば、すべてを手に入れることができるという神話。しかし育児・家事の分担はフィフティーフィフティーでは足りない。全てを仕事につぎ込むには、専業主夫の夫を持ち百パーセントの育児・家事をやってもらうことが必要。多くの男性の企業幹部は、そのようにして仕事に打ち込んできた。一方で、たとえ夫が専業主夫になってくれたとしても、女性自身がキャリアの成功と家族と過ごす時間とを天秤にかけるようになり、仕事だけに打ち込むことに心から満足できるのかは疑問。

    ●また、柔軟な働き方が解決策になるという思い込み。実際には、制度があっても使っている人が少ないことが多い。また、制度があっても実際に使うと仕事熱心ではないと思われ、その後の出世コースからは外される。

    ●誰よりも長時間働く人が一番仕事ができるというのも多くの組織で信じられている誤った神話。実際にやり遂げた仕事の質と速さが働いた時間より重要。一方で、一刻を争う仕事や締め切りのある仕事は多いし、常に現場にいなくてはできない仕事もたくさんあるのは事実。それを踏まえれば、キャリアをいくつかのフェーズに分け、いつでもどこにでも出張できて、自由に長時間労働ができる期間と、それができない期間を設けるのが良い。そして、もちろん計画どおりにいくとは限らないが、仕事に百パーセント没頭したい時期と家族の世話に時間を使いたい時期とを、できるだけ早いうちに見通しておいた方がいい。

    幼い子供を抱えて働く身としては、共感する部分が非常に多かった。子供との時間を大切にしながら、24時間365日迅速な応答を求められる仕事をするのは無理。また、夫婦で公平に育児・家事を分担しても、専業主婦の妻を持つ男性程には仕事に時間を割けないというのも、当たり前だが本書で読んで初めて気づいた。

    反省しなければと思ったのは、男性よりも女性の方が家事が得意だと女性たち自身が考えているという点。私もつい家事のやり方を細かく指示したくなってしまうが、任せると決めたら夫のやり方に任せる必要がある。仕事でやり方を任されずにマイクロマネージされることを想像するとぞっとするが、それを夫にはやってしまっているということ。掃除の仕方とか、服の選び方とか、いろいろ言いたくなってしまうことはあるが、ぐっと我慢しよう。

  • 【1.読む目的】
    ・育休パパ(長期って書こうとして、女性だったら当たり前の長さだったと気づいたなう)に勧められた1冊。
    ・これからの世界での働き方を考える。
    ・女性の活躍や女性リーダーを考える上でのヒントになりそう。

    【2.気付きや気になった点、面白かった点等】 【3.感想】

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    「世界の頭脳100」に選ばれた女性が書いた、まったく新しい働き方の教科書。全米で話題沸騰の書、待望の邦訳!
    「BOOK」データベースより
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    この本、今年読んだ本のベスト3には入りますわ。
    性別、年齢、職種問わず、すべての人に読んでほしい。そして古い考え方からシフトするきっかけにしてほしい。


    著者のアン=マリー・スローターさんは、弁護士であり、学者であり、経営者であり、アメリカ国務省の政策企画本部本部長にもなったことがあるアメリカのスーパーウーマン。同時に、男子2人を育てるワーキングマザーでもあります。
    彼女は、夫に子育てを託し単身赴任で国務省の重役を2年間務めましたが、子供が荒れるなど色々問題が勃発したので、子育てを理由に契約更新を断り、家族のもとに戻りました。
    この本は、彼女が身をもって感じた競争社会の限界や問題、ケア(育児・介護など)に対する私たちの思い込みについて、様々な気付きと示唆を与えてくれる本です。


    この本を読んだ最初の感想→「アメリカ女性すごすぎ!」。
    アメリカは、男女平等ランキングで49位(144ヵ国で比較)。
    どちらかというとランキング上位の方なんですが、読んでいくと「よくこんな整ってない社会保障制度でランキング上位になれたもんだな…」と、心底感心してしまいます。
    どんだけ整ってないかというと、
    ・産休は産前産後あわせて12週。それ以上休もうとすると解雇されることも多々ある。もちろんその間は無給。
     (ちなみに日本は、産前は6週、産後8週が基本で、収入に関しては、会社からは無給だけど健康保険で手当が出る)
    ・育休の制度も基本はない
     (州によって多少違いはあるらしい。ちなみに日本は最長2年までで男女共に健康保険から育休手当も出る)
    ・保育園問題は日本と一緒。妊娠発覚時点で保活が必要らしいし、いい保育を受けたり、よいベビーシッターを雇うとかなりの額になるらしい。
    ・職場環境も超微妙…。
     (「従業員の柔軟な働き方」ではなく、柔軟なシフトに合わせて直前で従業員が割り当てられる、という企業側優位の理屈になってるサービス業もあるらしい。)
    などなど。

    読んでていろんな事例や企業の話がでてくるんですけど、ハイキャリアはもちろん、貧困層の方になればなるほど、ホントにヒドイ…。
    文化の違いはあるにせよ、こんな社会保障で、男女平等ランキングが49位ってのはホントにすごい。。。

    ちなみに男女平等ランキングは、経済・政治・教育・健康における男女格差を数値化したランキングらしいです。
    気になったので、純粋に日本とアメリカでどっちの方が子供をより多く産んでるかもついでに調べてみました。
    結果、アメリカの合計特殊出生率は、188ヵ国中129位で、日本は170位…。
    もし、日本の文化でアメリカのような社会保障レベルだったらと思うとゾッとする…。
    こんな環境でもたくましく子供を育てて働いてるアメリカのママ、マジですごい。。。


    あと、もうひとつ思ったのは、
    「国の文化の違いより、すぐとなりの人との文化の違いを埋める方が難しそう。」という点も読んでて感じました。
    すぐとなりの人ってのは、たとえば「男女」とか「バリキャリと専業主婦」とか「地方出身と都会出身」とか。
    どこの国でも存在する違いなんだけど、そういう身近なところでの違いのほうが、違いを乗り越えるのがすごく難しいな、と思ったんですよ。

    会社の同僚(中国の地方出身の方)と話をしたときに感じたんだけど、地方で育ったからこその肌感覚、みたいなのがすごく似てるように思ったことがありました。
    「地方で育ったからこその肌感覚」ってのは、たとえば、人との距離感とか、死生観とか、決まりごとに対する臨機応変さ(ユルさ)とか、そういう価値観の根っこの部分みたいなもの。
    地方出身の私には、「同じ日本の、都会で育った人」の感覚よりも、「違う国の、地方で育った人」のほうが、なんか根っこの部分が近いのかもしれない、と感じたんですよね。
    (別に都会育ちの人とはウマが合わないということではないです。ただ、「国境を越えて同じなんだ」と感じたというだけの話。念のため。)

    そういう、日常のコミュニケーションで感じてたことを、この本でも感じました。
    アメリカも、やはりケア(家事・育児・介護など)の中心は女性だし、女性・男性それぞれの葛藤と生きにくさ、仕事とケアに対する価値観の差、妻と夫の家事のポイントの違いなど、価値観の違いが表れる場面は日本と驚くほど同じ。正直「そこまで同じなの?!」とびっくりするほど。
    国の文化の違いってわかりやすい分、「あ、この国はこういう文化なんだ」と受け止めやすいし、価値観の差もお互いに認識して折り合いをつけやすいような気がします。それに対して、「同じ文化」とお互いに思い込んでる場合、その思い込みが邪魔して、互いに主張を曲げられなくなるんじゃないかな、と思いました。
    文化的に日本ほど男女の差がなさそうなアメリカでも同じ問題で悩んでるんだもの、文化や風土もプラスされた日本で、「競争」と「ケア」に同じくらいの価値を与えていけるようになるのは、すごーーーく難しいだろうなぁ…。



    ワタクシ的名文
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    いろいろな意味で、この運動はまだ道半ばといっていい。21世紀の曲がり角に立った今、女性だけでなく男性もステレオタイプや思い込みから解放されるべきだし、それが女性の前進につながるはずだ。つまり、これまでのさまざまな「常識」に疑問をなげかけなければならないということだ。何が大切か、それはなぜなのか、何をもって成功とするのか、何が幸福の源なのか、真の平等とはいったい何なのか?それを問うには、職場環境から、人生設計から、リーダーの在り方まで、すべてを考え直してみなければならない。
    私の理想とする社会は、すべての人に充実した働き方の機会が開かれている社会だ。もちろん、単に給料のいい仕事がしたいという人には、その道が開かれていればいい。ただし、仕事と同時に、家族や友人を愛し気遣う生き方が尊重され、そこから深い満足を得られるような社会であってほしい。この本が、そちらの方向に向かう助けになれば幸いだ。
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    著者がこの本を書いた理由です。
    私自身、この本を読んでて自分のなかにある「競争の方が価値が高い」という思い込みに気づかされました。
    自分の中に無意識にある、「マナー」や「思い込み」や「常識」の呪縛にそれぞれが気付いて、価値観の再構築が必要なんだろうと思います。



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    先ほどの3人の学者がコンサルティング会社の依頼で行った調査に話を戻そう。綿密な調査の結果、この会社では男性も女性も同じように仕事と家庭の両立に対するストレスをため込んでいたことが分かった。また、過去3年間に長時間労働が原因でこの会社を辞めた社員の割合は、男女ともに同じだった。この会社の人事の問題は性差にあったのではない。経営陣の思い込みは間違いだった。問題は企業文化にあったのだ。
    この会社の上層部は、3人の発見したことを認めなかった。組織全体の哲学をいちから見直せと言われたくなかったし、クライアントに過剰な期待を抱かせてやらなくていい仕事までやりすぎている(たとえば、クライアントが到底みきれないほどのパワポ資料を何百枚と作っていた)という指摘もいやがった。もしすべてを根本からやり直すとしたら、膨大な努力と自省が必要になってしまう。
    上層部が望んでいたのは、これが女性の仕事と家庭の両立の問題だと確認することだった。それが確認できれば、彼ら自身の行動や考え方を変えなくていい。皮肉にも、コンサルティング会社の経営陣は「証拠に基づく分析を拒絶」したのだった。
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    あるコンサルティング会社の上層部から依頼されて、著名な3人の学者がその会社の内情を調査したんだそうです。
    上層部としては、自分の会社で起きている問題を女性特有の問題として片づけたいという思惑があったみたいですが、調査した結果、男女の性差に違いはなく、企業文化が原因だとわかってしまいました。
    本来であれば、そこで調査結果を受け止めて、改善に努めるのがあるべき姿だし理想的。でも、その会社の上層部は、客観的かつ証拠に基づく分析結果を拒絶し、自分たちの都合のよい思い込みの方を優先したそうです。
    なぜ、客観的な事実を受け止められないのかというと、この例の場合のように「大事になりすぎるのが自分たちにとって都合が悪い」って場合もあるし、個人レベルだと「自分の思い込みや予想が外れたことを認めたくないプライド」の場合もあるんだろうと思います。
    こういうの読むと「上層部の人たち、かっこわるいなー」と思うけど、実際の会社組織で見れば、こういう人の方が多いんじゃないかと思います…。逆にそこでちゃんと調査結果を受け止めて、自分たちにとってはイタい対策を考えて、実行していける人ってのは、多くの組織において「空気読めない鼻つまみ者」になってしまってるんじゃないかと思う…。
    私だって、鼻つまみ者になるのはイヤなので、「明らかに違うな」って思っても黙ってることも多いですし。(とはいえ、世間一般でみれば、空気読まずに発言する方だとは思うけどwww)
    「思い込み」とか「上司に対する過度の忖度」は、日常の作業レベルでも多いにあるし、それらが「事実」以上に大事にされることはすごく多いと思うんですが、そういうところに切り込める勇気をみんなが少しずつでも持てるようになるといいな、と思いました。
    あと、そういう「切り込む」タイミングで、できるだけカドがたたず、お互いにwin-winであるようにアピールするための「論理的なストーリーの構築力」とか「伝える力」とか「交渉力」とか、もっと自分にほしいな~と思う。



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    なぜ働き方が硬直化しているのかといえば、家族を犠牲にして身を粉にして働いてトップに立った白人男性が、自分と同じような人間が一番優秀に違いないと思い込んでしまうからだ。だから、そんな上司は勤務時間を短縮したり、働き方を変えたり、しばらく仕事を休んだ方が成果が上がることをいくらデータで証明しても、全く信じないか、疑いの目を向けてしまう。
    法学者のジョアン・ウィリアムズはこの点をはっきりと厳しく指摘する。「休みが面倒だと思うような人生を過ごして、大好きだったおじさんの葬式にも出られず、子育てにも参加せず、長時間労働を賛美する文化で生きて来たら、死ぬほど仕事をしなくても成果は上がるなんてことは、どれほど統計で説明してもわからせることはできない」
    そうやってトップに上った多くの男性と少数の女性に、だから言わんこっちゃないと説教しても仕方がない。昔の社会の慣習にとらわれている彼らには、犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いするほうがいい。
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    さっきの引用と同じですね。。。
    お偉い学者さんも「わからせることはできない」って言いきっちゃってるし、そこはもう理解してもらうのは難しいんだろうな~と考えると残念な気持ちになります…。
    できることとしては「犠牲を払ってきたことを認めてあげて、子供たちの時代には違う世界を描くようお願いする」ってことだと言ってるんですが、ただ、実際問題これも超難しいですよねぇ…。
    「犠牲を払ってきたことを認める」ってことはまぁできると思うんですよ。先駆者たちに対して、感謝の意を表明することもできると思う。
    でもさーー、そういうやり方で来た人って、結局、次世代にも同じ価値観を強制しようとしちゃうのさーー。そこは別モノとは見てくれないんすよ。なので、結局、衝突は発生するんだよねぇ…。
    自分が所属する小さい小さい組織(家族含む)でも、そういうのはしょっちゅうだし、自分だって、気付かないうちに我が子に古い価値観を植え付けてる部分があるだろうと思うし。。。



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    このようなケアの理想は、他の多くの分野の偉業と同じく、難しくもやりがいのあるものだ。実際、メイヤロフは、優れたケア提供者になるために必要な要素を上げていて、それは優れた社員や管理職に必要な資質とまったく同じものだった。彼が上げたのは、知識、忍耐力、順応力、正直さ、勇気、信頼、謙虚さ、そして希望だ。
    (中略)
    また、真の忍耐力とは、自分でなにかを解決しようとしている人たちに「ある程度の回り道や試行錯誤を許すこと」でもある。この姿勢が、無駄な時間に見えて実は、成長に必要な「遊び」の部分なのだとメイヤロフは言う。グーグルも同じことを言っている。だから、レゴや卓球台やスクーターやおもちゃがオフィスのあちこちに置かれているのだ。
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    ホリエモンがちょっと前に保育士の給与問題について発言してましたけど、今の社会では、「ケア」は誰でもできる(とみんな思い込んでる)もの、「競争」は特殊スキルを持つ人ほど価値が高く優秀なもの、という思い込みがあります。社会の構造もそういうふうになっていて、ケアの仕事(介護ビジネス、教育ビジネス、保育ビジネスなど)はだいたい薄給だし、「競争」の仕事(いわゆるホワイトカラーな会社員とか)は給与もそれなりにいい。その考え方と構造を変えていきたいね、って作者は言ってるわけですが、この優れたケアの資質って、ほんとその通りだなーと思って。
    仕事で後輩をどう育成するか考えたことは、その後の子育てに確実に活用できてるし、子育てで得られる忍耐力とか順応力も、やっぱり仕事に活かされてるな、とよく思います。
    だから、子供を育ててることが不利にならずに、むしろ子供を育てた期間があることを堂々と履歴書に書いてアピールできるような価値観の社会に変わってほしいな、と思います。


    感想、書ききれない。
    働く女性は共感しまくりだと思うので読んでほしいし、働いてない女性も共感しまくりなので読んでほしいし、家庭と仕事の両立に苦しむ男性も「そうなんだよ」と思うところが多々あると思うので読んでほしいし、古い価値観のおじさんおばさんにも読んでほしい。
    オススメです!!!

  • 育児、家事、キャリア、フェミニスト、男女平等

  • 一番心に残ったのは、金融業界で25年間働いてきたという筆者の弟の言葉。

    「1番大変な時に、仕事を辞めるという決断をするな。家庭でも仕事でも、自分が世界一ダメな人間のように感じてしまう時期がある。そんな時期が必ず来ることを覚悟して、そのタイミングで決して人生の決断をしてはいけないと肝に銘じておいた方がいい。家庭でも仕事でも、支えてくれる人の輪を作り、その人たちに助けてもらって難しい時期を乗り切り、その間の中の人を大切にしよう。その人たちは仕事の邪魔ではなく、長い人生の中であなたの仕事を助け、あなたをより強くしてくれる存在だ。」

  • 以前から「女性が輝く社会」という言葉に違和感を感じ、「多様な生き方が認められる社会」とかだったらいいのにと思ってきましたが、この本を読んで、違和感を感じる理由が整理された。子どもを含めて他者のケアをすることにもっと重きが置かれる社会になっていってほしい。著者によれば、子育てや介護など他者のケア(あるいはそのような対象を持っていなければ趣味時間でも良い)は、仕事のモチベーションや生産性を上げるということだが、本書の中でそのエビデンスがもっと充実していたら良いなとは思った。まずは自分の行動で実証してみたい、そして他者への説得を試みてみたい。
    そして私たち一人一人も、例えば主夫を無意識の偏見の目で見ないなど、意識の変革が必要だと思った。多様な生き方が認められる社会を作るのは一人一人の意識なのだから。

  • 「日経ウーマン」派生の女性向けの本を読んで抱いたモヤモヤ感を解消してくれた本。日経ウーマンではいかに共働き女性が「負担」を減らし、仕事を続けられるかという点(=女性の問題)に終始している感が否めなかったが、この本では、女性が本当に男性と同等に出世するケースでは家事の分担は公平ではない(大抵、専業主夫というバックアップがある)点を指摘しつつ、男性に期待されることや社会制度を変える必要、そのためには女性自身も男性に対する性差意識を変えなければいけない点が指摘されていて、本当の公平を目指せる気がしてくる。

    もっとも、実際に今の自分の世代で完全な意識改革ができる自信はないが。

    ちょうどこの本を読み始めたときに子供の授業参観があり、子育てしていて本当に良かったと素直に思った。頭だけで考えていると、学校行事や懇談会=「夫婦どちらが予定を調整して出席せざるを得ない」「なぜ母親ばかりが出なければいけないのか」という義務の押し付け合いになりがちだが、実際の子供を目の前にすると、同日来れなかった保護者が素直に気の毒になるとともに、この筆者が述べるケアギバーの重要性とやりがいが、(ケア従事者の能力云々の)理論はすっ飛ばして腑に落ちた。子育てというケアに従事することの価値が低められてしまった競争社会の、なんと虚しいことか。

    その意味では、専業主婦であることを全面肯定し、その後に社会復帰しようと説いた薄井シンシアさんに共通するものを感じる(この筆者は、どんな形であっても仕事を続けることを勧めているが)。

    また男性を含む社会を変えるという意味では、太田啓子さんの、子育て段階で性差をなくす意識を強く持つ重要性を改めて実感した。女性である自分が性差による役割を押し付けられるときと同等の性差別を、無意識に子供や男性に押し付けていないか。日々の自分の言動を振り返り、次世代が生きやすい世の中にしなければと決意をあらたにした。

  • 邦題でかなり損をしている。いわゆる女性活躍の本ではなく、その先にある真の男女平等を目指す本。仕事と家庭の問題を「女性個人の問題」ではなく、「ケア(育児や介護など)と社会の問題」という社会全体の問題としている。■それにしてもアメリカの福祉行政はかなりヒドイみたい。まともな産休もなく手頃な保育所もない。それでも働かないとやっていけない人たち。ワークライフバランスなんて「裕福な白人」の話。■そもそも「ワーク」と「ライフ」なんて天秤にかけるものではない気がしてきた。ほとんどの人にとって「ワーク」は収入を得るための手段であり、「ライフ」の一部でしかない。衣食住を整え、他人の世話をし、余暇を楽しむ。生活のためには働かないといけないけど、そこの価値観は逆転しないように気をつけたい。■結構なボリュームのある本だけど、内容は同じことの繰り返し。最後のQAは詭弁になっている部分も多く、著者自身も迷いや葛藤の中にいることが読み取れて興味深い。

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著者プロフィール

プリンストン大学教授。クリントン国務長官時代の国務省で要職を務めるが,育児のために辞職。その時の思いを綴った「なぜ女性はすべてを手に入れられないのか」が全米中で議論を呼ぶ。

「2017年 『仕事と家庭は両立できない?』 で使われていた紹介文から引用しています。」

アン=マリー・スローターの作品

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