ねこと国芳

著者 :
  • パイインターナショナル
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感想 : 43
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784756242877

感想・レビュー・書評

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  • 猫絵というと真っ先に浮かぶのがスーザン・ハーバードさんとアン・モーティマーさん。
    クラシックな絵柄で薔薇とレースがとてもお似合い。描かれる猫種もグレードが高い・笑
    ゴージャスかつ美しく高貴な雰囲気が漂い、飾って鑑賞するタイプの絵。

    ところがこちらの歌川国芳さんは、ぐーっと庶民的で思わず手を伸ばしたくなるほど愛らしい。猫種はもう何が何だか・笑  黒猫が少ないということしか分からない。
    きっと国芳さんにとってはどうでも良いことだったのだろう。
    常時身の回りに10数匹いたそうで、まぁどんなに賑やかで楽しかったことだろう。
    可愛くて可愛くて可愛い。本当にそれしか言いようがない。

    お菓子の袋に頭を突っ込んでもがいている絵や、盆画の砂でつい用を足している絵、叩かれてもくわえた鰹節を離さない絵とか、おうちに猫がいるひとにとってはどれも「猫あるある」。
    Ⅱ章の「国芳のねこいがいのおしごと」では、風景画や戯画や役者絵も登場する。
    更にⅢ章では「ねこ絵描きのひみつ」として、肉筆によるラフスケッチまである。
    とりわけⅣ章からラストにかけてはもうひたすら面白い。
    東海道五十三次をダジャレでひっかけた様々な肢体の猫絵、猫の歌舞伎ポスター、そして猫の当て字、手まりの曲芸をする猫たち。
    私が特に好きなのは「隅田川の河涼みをする猫」の絵。彩色も実に美しく、のびやかで大胆な構図、背景の群衆もみな猫という、にゃんにゃんパラダイス。

    183ページの中に76枚の絵。
    描かれた猫の総数、実に352匹!ひとつとして同じものはない。
    世界10か国以上に同時発売だったらしく、テキストの半分は英訳となっている。
    いいでしょー、羨ましいでしょー、日本は200年以上も前からこんなに巧みに猫絵を描く人がいたのよー、それも版画よ、版画!・・と見えない相手に向かって何度叫んだことか。
    ついでに言うと、この本の栞の先端にクラフト製の猫が付いている。
    色彩の少なかった江戸時代に、絵草子屋の店先に並ぶ国芳さんの鮮やかな絵がどれほど当時の人々を熱狂させたか、想像に難くない。
    猫好きな人はもちろん、そうでない方にもおすすめ。

  • <能あるねこは爪を隠し、最後にしゃっと一掻きお見舞いする、のかもしれない >

    「武者絵の国芳」とも呼ばれる江戸末期の浮世絵師、歌川国芳。
    大胆豪放な構図で勇ましい武者たちを描く絵、またアルチンボルトを思い出させる寄せ絵のようなアイディアが光る絵を筆頭として、名所絵、美人画、役者絵、狂画など、多様な才を発揮した人物である。
    国芳はまた、無類の猫好きであった。常時、複数の猫を飼い、文字通り、肌身離さずかわいがっていたという。
    そんな国芳の絵を猫中心に集めた1冊。

    国芳以前にはこれほど猫らしく猫を描いた絵師はいないという。
    ひとたびパターン化されてしまえば描く方も見る方もそういうものと受け止めるが、対象がどう見えるのか、というのは実はそれほど単純ではないのだろう。猫は捕らえにくい被写体だった。
    猫を愛し、常に手元に置いていた、そしてまた、対象を捉える卓抜した眼力を持っていた国芳だからこそ、しぐさや姿を生き生きと描き出せたのだろう。

    国芳は、猫の擬人化という離れ業もやってのけている。
    同じく猫好きだった山東京伝作の猫が主人公のお話では、登場人(猫)物がときには猫そのものとして描かれ、ときには巨大化して人の着物を着て出てきたりする。
    猫なのに人。人なのに猫。
    何とも不思議な味わいである。

    国芳が生きた時代、天保の改革により、綱紀粛正で役者絵・美人画などが禁じられた。
    猫に歌舞伎を演じさせている絵を何枚も描いているのは、あるいはそうしたお上の目を逃れるためもあったものか。
    権力の弾圧に真っ向から立ち向かうというよりは、飄々と風刺しながら裏を掻いていた国芳。
    そうそう簡単には飼い慣らされませんぜ、と言わんばかりの絵にも見えてくる。

    もっとも猫は主人が何を思っていようとも、涼しい顔で身繕いをしていたのだろうけれど。


    *栞の先っぽに猫がついていてかわいらしい(^^)。猫好きの方、手に取ってみてください。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「これほど猫らしく猫を描いた絵師はいない」
      猫と言えば、国芳ですからねぇ、、、
      3月には風野真知雄「歌川国芳猫づくし」(文藝春秋)と言う...
      「これほど猫らしく猫を描いた絵師はいない」
      猫と言えば、国芳ですからねぇ、、、
      3月には風野真知雄「歌川国芳猫づくし」(文藝春秋)と言う小説も出たそうです。。。
      2014/04/15
    • ぽんきちさん
      nyancomaruさん

      猫と国芳の小説、楽しそうです。見かけたら手に取ってみよう・・・。
      nyancomaruさん

      猫と国芳の小説、楽しそうです。見かけたら手に取ってみよう・・・。
      2014/04/15
  • 2012年発表。


    いやぁ〜
    可愛い可愛い
    可愛いぃ〜い(笑)(>_<)


    猫、猫、猫の
    まさに猫づくし!


    錦絵に描かれた愛らしい猫の姿や、
    駄洒落が笑える
    猫で描いた東海道五十三次のパロディ、
    微笑ましい擬人化した猫たちの姿に
    頬も緩みっぱなし(笑)(*^o^*)
    ↑見て見て、この満面の笑顔



    大胆奇抜な発想と抜群のテクニックで
    江戸末期の浮世絵界を牽引し、
    現在も世界中の
    様々な表現者たちに影響を与え続ける
    粋でいなせな
    ラインを越えていく天才絵師、歌川国芳。



    自分は
    UFOや心霊やUMAなんかの謎を探る
    不思議冒険クラブの部長を
    小学生時代に務めてたくらい
    不思議な話には目がないんやけど(笑)、

    国芳の絵って
    妖怪の絵にしても
    ちょっと変わってるんですよね。


    歌川って浮世絵師は
    来るべき未来の姿や
    人に見えないものが
    見える特別な力を
    備えてたんじゃないかって説もあるし。
    (有名な「東都三ツ叉の図」っていう浮世絵には、
    東京スカイツリーとまったく同じ姿の
    背の高い建物が描かれてるのです笑)


    常に庶民の側に立ち
    権力に抗う反骨精神を
    ユーモアたっぷりな画風に忍ばせた様は、
    自分の中で
    今は亡き反骨のロッカー、
    忌野清志郎の姿にダブってきて、
    深く共感してしまうのです。



    しかし国芳の魅力は
    迫力の武者絵や
    衝撃的な妖怪絵だけではなく、

    実は無類の猫好きとしても知られ、
    常に十数匹の猫を飼い、
    懐に猫を抱いて作画していたというのは有名な話♪


    それだけに
    愛情あふれる猫の絵にこそ
    彼の魅力が凝縮されていると言っても
    過言ではないのです。



    本書はオールカラーで
    国芳が描いた実に352匹もの
    猫の絵ばかりを集めた
    画期的な浮世絵ガイドブックです。



    しかし江戸時代の生き生きとした猫の姿が見れるなんて
    猫好きとしては
    たまらんもんがあるし(笑)、

    当時の日本人たちが
    猫に深い愛着を持っていたことがスゴくよく分かります。



    そして猫好きのアナタに声を大にして言いたいのは
    しおりのスピン(紐の栞)までもが
    な、な、なんと
    猫の形になっていること!

    猫好きのツボを心得たその遊び心に
    万歳三唱しちゃったのは言うまでもありません(笑)(^_^;)



    金魚や亀の親子など
    猫以外の動物の絵も収録し、
    猫好き、浮世絵好き、
    江戸文化好きは必見の鉄板本!

  • わぁお☆浮世絵にこんなにときめいたのは初めてです!

    江戸の浮世絵師・歌川国芳。
    多くの作品を生み出す彼の傍らには、ねこたちがいたのだそう。
    江戸時代のねこ好き芸術家が描いたねこたちを、現代のねこ好きが堪能できるのが本書。

    美人の傍らのねこ、着物を着て人間のようにふるまうねこ、ねこが集って文字をなす・・・国芳の遊び心の赴くままに、ねこたちはいろいろな姿で画面に登場します。
    絵の中でさえも自由気ままにふるまうねこたちに、気付くと頬がゆるんでいるのです。

    全文英語も併記されているので、日本文化に興味がある外国の方へのプレゼントにもいいかも。

    余談ですが・・・
    第1章のタイトル「ねこ、ややこしくも愛おしい家族」・・・ねこと一緒に暮らしている人にとっては、たまらないタイトルですな。
    まさにそのとおり!

  • 解説がわかりやすい!
    これがなかったら「わーかわいいー!」で全部片づけてしまってただろうと思うと、本当にこの本読んでよかったです。
    猫の表情、脚の動きや力具合、ポジション…それぞれに意味があることがわかると、こんなにも眺めるのが楽しくなるとは。損をしないで済みました!

  • 歌川国芳、大変有名な浮世絵画家ですが、彼はねこ好きでも有名だったそうです。そんなねこ好きの国芳の、ねこが描かれている作品たちを解説してくれるのが本書です。

    個人的には役者絵はどの画家でも特徴をとらえすぎててしんどい作品が多いのですが、国芳の作品も同様。ピックアップしているねこだけ見るとなんだかかわいかったり妙にリアルだったりと面白いです。

    モチーフと色々と引っ掛けられている作品が多いので、その時代の流行や事象に詳しくなければ説明はありがたいです。

    また、英文も一緒に載っているのですが、タイトルと英訳タイトルの差が面白かったです。そのままのタイトルをローマ字にして()で解説を入れて意味が通るようにしていたり、絶対このタイトルだと外国の方は意味がわからないんではといった英訳タイトルがあったり。

    本物のねこをきっちり写したリアル系、人間の姿・形をねこに合成した人間系とバリエーションも様々ですが、私の個人的なお勧めは128ページからのねこの当字作品集です。一匹一匹が面白いです。ご興味もたれた方は、是非本書で確認してみてください。

    図書館スタッフ(東生駒):homusa

    ----------
    帝塚山大学図書館OPAC
    http://lib.tezukayama-u.ac.jp/mylimedio/search/search.do?target=local&mode=comp&category-book=1&category-mgz=1&materialid=1100389883

  • 元日に読んだのにレビューをすっかり忘れていました。
    歌川国芳のねこを描いた浮世絵を集めた画集。
    猫好きさんの解説がまた、にゃんとも愛があって楽し♪

    国芳さんのイキモノ系はとってもユニークなものが多いのですが、ねこ以外のものも編集されており非常に楽しめます。
    あまり考えずにゆったり時間を使いたい日にオススメな一冊。

  • もうちょい説明があったらなぁ〜って気がしたけど、面白かった!

  • やばいわーかわいいわー。国芳ファンも猫好きも大満足の一冊では。
    栞紐の先にも猫ぶらりん!だし。

    贅沢禁止の改革で浮世絵の役者絵も規制されたから動物の擬人化に拍車がかかったらしいのですが逆に国芳の才能を開花させた感じ。
    解説は日本語と英語があるので外国の猫好きの方へのプレゼントにもいいかも。

  • 国芳の猫満載。日本語英語標記の本なので猫好きな外国人にプレゼントしたい。

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「国芳の猫満載。」
      度が過ぎるぐらいの猫好きが残して呉れた、猫好きのための画集。。。素晴しい!!!
      「国芳の猫満載。」
      度が過ぎるぐらいの猫好きが残して呉れた、猫好きのための画集。。。素晴しい!!!
      2013/06/05
    • hakubotanさん
      可愛くて憎たらしくて賢くてお馬鹿な、国芳の猫だらけです。こんな国芳の画集が欲しかったので飛びつきました。
      可愛くて憎たらしくて賢くてお馬鹿な、国芳の猫だらけです。こんな国芳の画集が欲しかったので飛びつきました。
      2013/06/05
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著者プロフィール

金子信久(かねこ・のぶひさ)
1962年、東京都生まれ。慶應義塾大学文学部哲学科美学美術史学専攻卒業。福島県立博物館などを経て、府中市美術館学芸員。担当展覧会に「亜欧堂田善とその系譜」(福島県立博物館、1990年)、「司馬江漢 西洋との接触、葛藤と確信」(府中市美術館、2001年)、「亜欧堂田善の時代」(府中市美術館、2006年)、「リアル 最大の奇抜」(府中市美術館、2018年)など。「亜欧堂田善の時代」展の企画と図録論文で第18回倫雅美術奨励賞受賞。主要論文に「亜欧堂田善の銅版江戸名所図群に関する絵画史的検討」(『国華』1220、1997年)、「迫真と形象化‐司馬江漢と亜欧堂田善の油彩画」(『民族藝術』22、2006年)、「司馬江漢 西洋風景人物図屛風」(『国華』1336、2007年)など。著書に『日本美術全集14 若冲・応挙、みやこの奇想』(共著、小学館、2014年)、『もっと知りたい長沢蘆雪』(東京美術、2014年)、『子犬の絵画史 たのしい日本美術』(講談社、2022年)ほか多数。

「2022年 『作って発見! 日本の美術』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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