ヒトラー・ユーゲントの若者たち―愛国心の名のもとに

  • あすなろ書房
4.18
  • (9)
  • (21)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 130
感想 : 23
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (223ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784751522172

作品紹介・あらすじ

なぜ、ヒトラーは熱狂的に支持されたのか? 丹念な調査から、歴史の謎に迫るノンフィクション。1930年代ドイツ、ナチス躍進のかげには、若者たちの存在がありました。小さなナチス党員となるべく教育された子どもたちは、何を思い、どう行動したのか? 残された記録だけでなく、実際にヒトラー・ユーゲントとして活動していた「元ヒトラー・ユーゲント」へのインタビューなどから当時何が行われていたのかを明らかにしていきます。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • ドイツ人でありながらナチスによる第二の被害者と言える、ヒトラー・ユーゲントについて綴られています。
    ヒトラー・ユーゲントはナチス版のボーイスカウトであり、軍事色の強いものでした。
    大人を熱狂させたヒトラーの扇動術は、当然ながらパワー溢れる若者をも虜にしました。
    疑うことなく思想を受け入れ、従順な人間兵器へと変えられてしまったのです。
    思慮のない熱狂こそ狂気なのだと思いました。
    芳しくない状況でこそ、冷静な思考が大事であることを教えてくれる一冊。

  • 1932年から、45年のドイツ無条件降伏、そして戦後の裁判まで。その時代に、そこにいた若者たちのまなざし、忠誠、友の死、日々の生活、怒り、再教育までも簡潔にまとめられている。

    ヒトラーやショル兄妹、師団長マイヤーなど、一部の人物が登場するのは流れから必然である受け止められるが、他についても戦後も生存していたのならもう少し説明が欲しいと感じた。
    (ヘンリー・メテルマン、アルフォンス・ヘックはWikipediaで見つけました)

  • ヒトラ-・ユーゲント(ヒトラ-青年団)は、ヒトラ-への忠誠をナチスによって洗脳され、ドイツを勝利に導くため憎悪と殺戮を奨励された、十代の若者たちの痛ましくも悲壮なドキュメントです。アーリア人とユダヤ人、弾圧と侵略、迫害者と犠牲者など、戦争が生み出す狂気は、人間の愚かしさの極限を見せつけられて、胸をえぐられます。「白バラ」の抵抗運動が示したように、ドイツの全ての若者の心が、ナチスによって毒されてはいなかったという事実は、尊い犠牲の果ての救いと慰めとなりました。

  •  第二次世界大戦中、日本もこんな感じだったのだろうか…。教育として正しいと教えられ、考え方を刷り込まれてしまう。その考え方に従わないものは、親であっても密告する。ナチス一色のそういう状況の中、おかしいことはおかしいと主張した若者、白バラのショル兄弟やヘルムート少年とその仲間たちのような者たちも少なからずいたことが紹介されていた。地図や年表が欲しいと何度か思った。

  • <HITLER YOUTH>
      
    ブックデザイン/城所潤

  • 結構前に読んだ本。衝撃を受けた記憶がある。

  • 親が立派なナチスでない場合や、問題のある態度をとっている場合、すなわりナチス党員でなかったり、ユダヤ人の友人を持っていたりする場合、子供は団員になることを拒絶されることもあった。相手にされなくなることを恐れて、子供たちは親に、党員になって、立派なナチスとして振る舞ってくれと懇願した。

    ナチスは何が子供や若者にアピールするかを、よく心得ていた。制服、帽子の飾り、バッジ、武器、そして英雄物語。ナチスはこういったものをどんどん提供した。そしてヒトラーユーゲントをいくつかの連隊からなる軍隊のようなものとして組織していった。入団した男子は最初は単なる少年という階級だが、そこから班を率いるリーダーとなり、次いで小隊、中隊、大隊を率いるリーダーへと昇進し、女子の場合は少女という階級から女子段のリーダーへと昇進することができた。しかしヒトラーユーゲントは独自性とか個性というものは容認しなかった。軍事教練や行進を通して、ヒトラーユーゲントは一眼となって考え、神津することを学んでいった。

  • 小説かと思いきや、ノンフィクションでした。

    ナチスが台頭する時、それを支えたのはヒトラーに心酔した若者たちの、組織化されたヒトラーユーゲントだった。彼らはアーリア人種をユダヤの血の混じっていない北欧人またはコーカサス人と定義し、自らを優秀人種と教えられた。ブロンドの髪とブルーの瞳が純粋なアーリア人のしるし。健康で、遺伝的な病気を持っていないことを証明して、ヒトラーユーゲントに入団を許された。(一部の身体障害者は入団を許されたが、精神的障害を持つものは団員になれなかった。)
    見習い団員は体が丈夫であることを証明するために走り、ボールを投げ、泳ぎ、体操をした。2時間のハイキングを完遂し、3日間のクロスカントリーハイキングを敢行したり。勇気を示す事ができれば「血と名誉」という銘の入った短剣をリーダーから手渡してもらえる。
    「若者は若者によって導かれるべきだ」というヒトラーユーゲントの哲学に基づいて、リーダー達も若者だった。指導部から会議の進め方の通信文を受け取り、歌を歌ったり、ゲームをしたり、スローガンを覚え、ナチス関連の本の朗読をしたり、プロパガンダのビラを読んだりした。

    子どもたちを立派なナチスにするための組織。
    自分が特別な血を引いた人間であると感じさせた、ユーゲントの活動は厳しいこともあるが達成感もあり、楽しく、社会に貢献していると感じさせるものだった。
    彼らは、両親がユダヤ人を助けるような事をしていたら、親に失望した。彼らの中には、ヒトラーが本当にはユダヤ人を虐殺しているわけではないと思っているものもいた。
    しかし、
    ヒトラーは障害者は税金を無駄に使わせる存在として「安楽死」または「慈悲死」を認可し、それで十万人もの人が亡くなったとも言われる。ユダヤ人でなくても、ドイツの敵と見なされれば処刑された。共産主義者、ポーランドの知識人、同性愛者、ジプシー(流浪人)などが含まれ、戦争が始まって6ヶ月たつころには五十万人もの人の命が失われた。敵を探し出して処刑するのは特別行動部隊。隊員らは異常な任務を与えられた普通の人々だった。特別行動部隊になった多くの武装親衛隊はヒトラーユーゲント出身も多数いたにちがいない。ヒトラーユーゲントは殺人機会の一部に成長していったのだ。


    現代では、イスラム国に心酔してしまう若者たちがいる。
    彼らには彼らはの正義があり、自分たちの思想が世界を救うと信じているものもいるだろう。ドイツでも今になって、移民問題からナチスの思想に傾く人もでてきたときく。
    でも、歴史に学んで欲しい。
    ノンフィクションで、淡々と語られる、ヒトラーユーゲントのやってきた事。ナチスの罪を。

  • 「自由とは何か」を考えさせられる1冊でした。
    アドルフ・ヒトラー独裁政治時代の若者にスポットをあてた本です。
    小説ではないので、実在する色々な人物が出てきて混乱しますが、独裁政治のために、若者たちがいかに“教育”されてきたか、“洗脳”されていたかの一端を知ることができます。

  • 著者は元教師。ナチスの時代にヒトラーユーゲントに参加していた人たちへ直接取材を行い書きました。

全23件中 1 - 10件を表示

スーザン・キャンベルバートレッティの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×