戦争とバスタオル

  • 亜紀書房
4.18
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本棚登録 : 337
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (376ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750517100

作品紹介・あらすじ

タイ、沖縄、韓国、寒川(神奈川)、大久野島(広島)――
あの戦争で「加害」と「被害」の交差点となった温泉や銭湯を各地に訪ねた二人旅。


ジャングルのせせらぎ露天風呂にお寺の寸胴風呂、沖縄最後の銭湯にチムジルバンや無人島の大浴場……。
至福の時間が流れる癒しのむこう側には、しかし、かつて日本が遺した戦争の爪痕と多くの人が苦しんだ過酷な歴史が横たわっていた。

■タイ…………ジャングル風呂と旧泰緬鉄道
■沖縄…………日本最南端の「ユーフルヤ―」
■韓国…………沐浴湯とアカスリ、ふたつの国を生きた人
■寒川…………引揚者たちの銭湯と秘密の工場
■大久野島……「うさぎの島」の毒ガス兵器


嗚呼、風呂をたずねて四千里――風呂から覗いた近現代史

感想・レビュー・書評

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  • 第1章 ジャングル風呂と旧泰緬鉄道(タイ)
    第2章 日本最南端のユーフルヤー(沖縄)
    第3章 沐浴場とアカスリ、ふたつの国を生きた人(韓国)
    第4章 引揚者たちの銭湯と秘密の工場(寒川)
    第5章 「ウサギの島」の毒ガス兵器(大久野島)

    歴史修正主義がなんと言おうと過去は現在と繋がっていることを人の記憶や行政の記録、建造物や死者達が物語る。私達の国がどんなに酷い事をしてきたのか…直視するのはしんどいけれど、ほんわかタッチの絵と文章のおかげで情景が目に浮かぶし、おふたりが持つ「出会うべき人に出会うべきタイミングで出会うパワー」に驚かされながら最後まで一気読み。今も昔も、被害は隠され分断され広くは知られないまま忘れられるのを待っている。反対に私達にできることは
    「隠さず、繋がり、忘れない」ことなのかも。たまには温泉で息抜きしつつ、語り、伝え続けたい。

  • 「お風呂は究極の非武装」。温泉、銭湯を通して訪れる日本の加害の歴史。

    日本の負の歴史だろう加害の歴史。原爆など被害者としての側面に比べあまり話題にならない。本書はタブーに近いだろう加害の歴史を訪ね歩く旅。

    泰緬鉄道のタイ、沖縄、韓国と神奈川県寒川町の旧海軍工廠と毒ガスで知られる大久野島。

    ある程度予測はしていたが、本書の立ち位置は賛否別れるところだろう。個人的には、やたらと「歴史修正主義」という言葉であったり今の政府、行政を完全に疑ってかかるような姿勢に違和感。加害の歴史を探るだけでも十分な内容になり得ただろう。

    加害と被害は表裏一体。現在の価値観で過去を評価するところに無理があるように思う。過去の悪行を暴くことで時分が免罪されるように思えてしまうのだろう。

    沖縄の高齢女性だってどうしても仕事はどこかで米軍につながらざるを得ないし、泰緬鉄道で捕虜を虐待したコリアンガードもいる。毒ガス工場に徴用された人達だって被害者であり加害者でもある。
    そんな微妙な部分の扱いが、本書では雑なように思えた。

    お風呂を通じて歴史を探る試みとしては面白い内容でした。

  • 291

  • 731部隊と毒ガスの使用が禁止されてたのはなんとなく知っていたが、日本国内でも作っていたとは。知ることは大事。今も向き合っている人がいるのは頭が下がります。

  • ようやく読めた。
    戦争加害から目を逸らしてはいけない。
    そのメッセージを本文からたくさん受け取った。
    「鬼にされた」、だから記憶を手放さないの言葉はすごくすごく重い。
    知ること。なかったことにしないこと。考え続けること。

  • お風呂は究極の非武装、ほんとに名言です。
    お風呂と戦争をたどる旅。戦争の加害については、恥ずかしながら知らないことばかりで、後半のものすごくヘビーな内容にはしばらく立ち直れそうもないほど暗い気持ちに。
    そんなに昔の話でもないのがまた恐ろしい。
    知ることができて良かったです。
    実際に足を運んで、現地の人の話を聞くというのが何より大切だと改めて思いました。
    とても良い本でした。

  • たくさんの人に読んで欲しい本です。文章はとても易しいですが、内容はかなり重たいです。でも、知れて良かったと思いました。今、色々と言われている"噂だけど…"という話も全部本当かもしれないと思いなおす程には怖かったです。

  • 安田浩一さんと金井真希さんの組み合わせ。こんな本あったんだと図書館のおすすめ本コーナーから手に取る。
    特に毒ガス製造と使用については、ほとんど何も知らなかったので勉強になった。戦争を経験した人が生きておられるギリギリの年代になってきた。その人たちがいなくなりつつあるのと同時に、また戦争をしそうな国になりつつある。恐ろしいことだ。どうやって伝えていくかというのは大きな問題なので、この著者たちの取材と出版はとても意義があると思う。

  • チェ ビョンデさんに会ってみたい。

  • お風呂特有のゆるさがあって、絵もほのぼのしたタッチで和みながら読める。自動あかすり機の記述は笑った。でも、読み進めると戦争や、戦争によって人生を翻弄された人たちの感情に触れる。良書。

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著者プロフィール

1964年生まれ。産湯は伊東温泉(静岡県)。週刊誌記者を経てノンフィクションライターに。『ネットと愛国』(講談社+α文庫)で講談社ノンフィクション賞、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(月刊「G2」記事)で大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。『ルポ 差別と貧困の外国人労働者』(光文社新書)、『ヘイトスピーチ』(文春新書)、『学校では教えてくれない差別と排除の話』(皓星社) 、『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)、 『団地と移民』(KADOKAWA)、『沖縄の新聞は本当に「偏向」しているのか』(朝日文庫)他、著書多数。
取材の合間にひとっ風呂、が基本動作。お気に入りは炭酸泉。

「2021年 『戦争とバスタオル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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