保健室のアン・ウニョン先生 (チョン・セランの本 01)

  • 亜紀書房
3.81
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本棚登録 : 941
感想 : 79
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516363

作品紹介・あらすじ

韓国文学の新シリーズ〈チョン・セランの本〉刊行開始!
『フィフティ・ピープル』の若き旗手が放つ、奇想天外な物語。


この学校には、何かがいる——
養護教諭のアン・ウニョンが新しく赴任した私立M高校。
この学校には原因不明の怪奇現象や不思議な出来事がつぎつぎとまき起こる。
霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、
同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かう。

はたしてM高校にはどんな秘密が隠されているのか……。
斬新な想像力と心温まるストーリーで愛され続けるチョン・セランの魅力が凝縮した長編小説。


「私はこの物語をただ快感のために書きました。一度くらい、そういうことがあってもいいんじゃないかと思いました。ですから、ここまで読んできて快感を感じられなかったとしたら、それは私の失敗ということになります。」(「あとがき」より)


ドラマ化決定!

感想・レビュー・書評

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  • ブクログ通信で紹介された韓国文学本のうちの一冊。
    学校で繰り広げられるSF怪奇ファンタジーというのかな。頑張って半分まで読んだがこの世界観がよく分からずのめり込めず断念。苦手分野かも。ごめんなさい。
    作中に「夜間補習」「ボランティア活動認定書」などの言葉があり何だろう?と気になったが解説が良かった。韓国の教育事情や社会背景の詳細があり、それは勉強になった。

    • 地球っこさん
      なおなおさん

      身近な方に韓ドラファンがたくさんおられてよかったですね!
      ワイワイお話するって楽しいですもの。
      はい、私も少しずつ戻りたいと...
      なおなおさん

      身近な方に韓ドラファンがたくさんおられてよかったですね!
      ワイワイお話するって楽しいですもの。
      はい、私も少しずつ戻りたいと思います。
      今はヒッタイトとかイギリスとか大河に向けて平安とか、とにかくあっちこっち旅してるので、ちょっとずつね♪
      今は「マザー 無償の愛」を観てます。日本のドラマ、芦田愛菜ちゃんが子役で出演してたもののリメイクです。
      な、泣けるのです。韓国は愛菜ちゃんレベルの子役がバンバンいますね~
      2023/01/03
    • なおなおさん
      地球っこさん、
      「マザー」と言えば松雪泰子さんのかな。その時の子役は愛菜ちゃんだったのですね。
      観ておりました。そのリメイクをやっているとは...
      地球っこさん、
      「マザー」と言えば松雪泰子さんのかな。その時の子役は愛菜ちゃんだったのですね。
      観ておりました。そのリメイクをやっているとは観てみたいなぁ。
      リメイクされたりしたりと面白いですよね。
      芦田愛菜ちゃんと言えば先ほどTVでエジプトのことをやっていて、なんとヒッタイトの話題も!地球っこさんとマリモさんを思い出しました。通じたのかな(笑)
      紀元前のエジプトとヒッタイトの平和同盟条約の締結は、最古の国際条約とかナントカという話でした。
      エジプトにも飛ばなきゃ!ですね!
      来年の大河に向けて平安の勉強もせねば!そういえば藤原道長役を知り、びっくりしましたよ。どうなの?ナンテ^^;
      今年も読書で色んな所に出かけることと思います。レビューを楽しみにしております。
      2023/01/03
    • 地球っこさん
      なおなおさん

      そうです、松雪泰子さんのです。私は観てないのですが、韓国ドラマは時間も話数も日本のドラマより長いので、だいぶんキャラの心理と...
      なおなおさん

      そうです、松雪泰子さんのです。私は観てないのですが、韓国ドラマは時間も話数も日本のドラマより長いので、だいぶんキャラの心理とか濃く描かれてるようですよ。

      なんと!
      ヒッタイトの話題が。観たかったーー
      そうなんですよ、最古の国際条約が結ばれてるんです。

      道長役、柄本佑さんですよね。ちょっと(だいぶん)想像と違いました 笑
      でも色気も演技力もあるかたですよね。
      あとは一条天皇と藤原行成が気になります!!

      こちらこそなおなおさんのレビュー楽しみにしてます(’-’*)♪
      2023/01/03
  • この高校にはとにかく〈何か〉いる。
    アン・ウニョンは残念ながら、ただの保健室の先生ではない。
    霊能力を持つ彼女はBB弾の銃とレインボーカラーの剣を手に、同僚の漢文教師ホン・インピョとさまざまな謎や邪悪なものたちに立ち向かっていく。

    アン・ウニョンは死んだ人だけでなく、空気中に漂っている死者も生者も放つ、一種のエクトプラズム、ゼリーみたいな凝集体を見ることができた。
    そしてBB弾の銃とおもちゃの剣に自分のエネルギーを注ぎ込み、そのゼリーのようなぐにゃぐにゃのかたまりと戦う。
    アン・ウニョンは、まともな30代の女性がこんなものを毎日持って歩かなくちゃいけないのかと思うとむしゃくしゃしないでもなかったが、仕方ない。ほんとは、まともじゃないからだよね……と自分の人生に納得していた。

    この独特な世界観、なんか面白い。
    面白いだけでなくて、設定はユルユルフワフワって感じなんだけど、登場人物たちが直面するしんどさはやたらリアルで、呟く言葉や心の声には何度もハッとさせられる。

    邪悪な存在のせいもあって学校をとりまく空気はとても不穏で、自殺する生徒が続出するほど。
    その空気は現実の世の中の不条理や、ひとりひとりの生きづらさにも通じているんだろうね。
    ウニョンの舌打ちが聞こえてきそう。
    「配慮がないよね、チッチッ」

    それでもアン・ウニョンは、ゼリーと戦いながら保健室の先生として心肺蘇生法の講習や性教育にも熱心に取り組んでるし、ホン・インピョも漢文の先生として授業を行う。
    給食室のおばさんたちは、しょっちゅう火傷しながら給食を作り、マスコット的存在の鳳凰の気を持つアヒルは池で悠々と泳いでいる。
    そうやって日々、精一杯生きていれば、笑顔や感動も生まれてくることもあって、その一瞬に生きてる意味を感じとることもある。
    〈いいことばっかりじゃないけど、悪いことばっかりでもないよね〉
    そうだよね。案外幸せって、こんな感じなのかもね。


    本作品を読む前に、Netflixのドラマ『保健教師アン・ウニョン』を観たのだけど、まず最初驚いたのは「チョン・ユミさんやんっ!」
    主人公のアン・ウニョンを演じてるのは、『トガニ』『新 感染』『82年生まれ、キム・ジヨン』でコン・ユさんと共演してたチョン・ユミさん。
    ここで出会うと思ってなかったから、超びっくり!
    さらにウニョンのアンバランスさと、なんとも怖ーい笑顔がぶっ飛んでいて、超々びっくり!!
    わたしが知らなかったチョン・ユミさんの側面を知ってしまった。あぁ……すき。

    ドラマの脚本も原作者のチョン・セランさん。
    原作の10編の短編を6話にまとめてあるので、ストーリー展開が大きく変わり省かれた部分もあるのだけれど、それよりもわたしは、たとえば登場人物の性別とか、関係性とか、そういうちょっとした変更が、原作とはまたひと味違う雰囲気を醸し出していた気がして、この感じもすきだなぁ。
    まあとにかく何だか中毒性を持つ面白い世界だった。

  •  「夏目友人帳」(この世ならざるものが見える)と「ふたりはプリキュア」(手を握り合って力を発揮する)と「丸の内魔法少女ミラクリーナ」(ファンシーなアイテム)と「虚構推理」(事件は邪悪なもののせい)と、ボーイミーツガールとシャーマニズムとまっすぐ過ぎる正義感と親切心を混ぜてこねてジェリービーンズを散らしたような小説だった。
     チョン・セランの『シソンから、』が好きだったので色々読んでみようと思って、亜紀書房「チョン・セランの本」シリーズの1であるこれを。ファンタジーもりもりという事前情報は仕入れていたので面食らわずに読めた。養護教諭のアン・ウニョンと漢文教師のホン・インピョのコンビネーションが最高。文章も、本作はポップに振り切っているとはいえ、良い意味でちょっと引っかかる面白さがあって好き。
     著者あとがきに「永遠に書いていられそう」とあったが、二人の関係は一応決着がついて良かった。

  • こういうオフビート感覚の話は好きだ。「パーティで女の子に話しかける方法」みたい。
    おざなりなファッションの30代の保健室のアン・ウニョン先生は、実は霊能力者で、BB弾の銃とレインボーカラーのプラスチックの剣で、学校に現れる悪い霊を退治していく‥‥という物語だけきくとふざけているみたいだが、笑わせようとしない力の抜き加減が逆に笑いを誘い、それでいて社会問題も考えさせるという作風で、意外に重みもある。その上登場人物の高校生たちの青春小説としての面と、ウニョン先生と漢文のインピョ先生の近づきそうで近づかない仲にやきもきさせられる恋愛小説的な面もある。
    私が気に入ったのは「BB弾の銃は一日に二十二発、プラスチックの剣は十五分ほど使用可能だ。エジプト製のアンクの十字架やトルコのイビルアイ、バチカンのロザリオと浮石寺の数珠、京都の神社の健康祈願のお守りをプラスすれば二十八発と十九分まで伸ばすことができる。」(p14)とか、学校で飼っていたアヒルが猫に殺されたとき「鳳凰の気を持つアヒルだから大丈夫だと思ったんだけど、虎の気を持つ猫がいることを忘れてた‥‥」(p147)みたいなバカバカしいところ。それから「ふだんは「もう自分は完全に大人ですから」とか「うちら、いちばんしんどい年齢なんだから、仏頂面以外は見せてやらないよ」とでもいわんばかりの顔で幽霊みたいに歩いている三年生」(p85)「誰も教師は人気商売だと教えてくれなかったので、気づくのが遅すぎた。最初から魅力のある学生が成長して魅力ある先生になるのだと、なぜ知らなかったのか。」(p136)校訓の「誠実、謙遜、忍耐」に「この三つを合わせたら「服従」じゃないか」(p262)という的確な描写。
    そして、「後から来る者たちはいつだって、ずっと賢いんだ。」(p240)という優しさ。
    登場人物が死んでる者、転生した者、邪悪な霊能力者、恋人を亡くしたパンクロッカーなど個性派揃い。
    10編の連作短編で、どれも良いが、私は「街灯の下のキム・ガンソン」「穏健教師パク・デフン」が好きだ。

    訳者による後書きがとても親切で、物語の背景にある韓国の社会や歴史がよく分かった。

  • すごく好きだった。
    人には見えないものが見える保健室の先生。
    BB銃とプラスチックの剣で武装(?)して、高校にひそむ悪いものを退治するというゴーストバスターみたいな人なんだけど、エンタメ的な展開だけでなく、ときおり心のなかの深いところまでぐっと踏みこんでいくので、すごくつかまれる。

    「暴力的な死の痕跡は長く長く残った。まだ子どもだったウニョンは、生きていくのはつまるところ、あまりに暴力的な世界と毎日顔をつきあわせ、ときには避けられず傷つくことなのだと徐々に気づきつつあった」

    「ある年齢の人間には愛情と保護が心底必要なのだが、全員がそれを手にいれられるわけではない」

    「世の中が公平でないとしても、親切心を捨てたくはなかったからだ。ウニョンの仕事は、ウニョンが世界に対して捧げる親切と似ていた」

    ときにぶっとんだストーリーの合間合間にはさまれる、こうした洞察。世の中の不条理に深く気づいていそうなウニョン先生だけど、それでもまなざしがやさしくて明るいことに救われる。

    11月14日再読。やっぱり好きだ~。(それだけ)

  • ◎養護教諭のアン・ウニョン先生の赴任した私立M 高校には不可解な出来事が次々に起こる。
    霊能力を持つアン・ウニョン先生は漢文教師のホン・インピョ先生を包む加護の力を動力源に、BB 弾とレインボーカラーの剣で祓うのだ。

    「大好きだよ、ジェリーフィッシュ」
    校舎の下から這い出てくる怪異。擁護教諭のアン・ウニョン先生はこっそりおさめようとしたがエネルギーが足りない。学校創立者の孫のインピョ先生に躍っているところ(祓っているところ)を見咎められ
    〇ジェリー・フィッシュってやさしい呼びかけ

    「土曜日のデートメイト」
    その公園にはウニョン先生の初恋の人がいる。子どものころの想い出。
    インピョ先生と名所旧跡巡り(霊パワー充電)
    〇ホロホロと切ない子ども時代

    「幸運と混乱」
    ミヌとジヒョンは凸凹悪さコンビ。書類を盗んでボランティアをサボろうと画策しているが…。
    インピョ先生は美人工作員を送り込む
    〇わき毛…?

    「ネイティブ教師マッケンジー」
    マッケンジー先生がソナのボサボサ頭から取ったのはトゲトゲの乾いたタネだった。
    そして、マッケンジー先生が好きなユジョン。
    〇インピョ先生、マッケンジー先生におそわれる。

    「アヒルの先生、ハン・アルム」
    生物のハン・アルム先生、アヒルのお世話係に任命される。生徒に人気のない先生だったが…。
    〇鳳凰と虎

    「てんとう虫のレディ」
    国内超有名ファミリーの娘キム・ラディから依頼が入った。ママが幽霊を見るんです。
    その父ジョシュア・チャンの大ファンのインピョ先生にサインをもらうためのCDを押しつけられてマンションに向かうウニョン先生。
    〇家族の絆

    「街灯の下のキム・ガンソン」
    ウニョン先生中学生時代の親友ガンソン。きっかけはイラストだった。そしていま幽霊として、この世から消える前に話をしにやってくる。
    〇ウニョン先生にBB弾とレインボーの剣とスタイルを与え、M高で働くことを心配していた親友。「壊れていけそうな気がする」に泣いた

    「ムシ捕り転校生」
    くっつかれると、魂が傷むムシ。学校に集まってきているらしい。ペク・ヘミンはそんなムシを捕るために転校してきた。ムシ捕りのために何度も生まれ変わるヘミン。本当の願いは…。
    〇インピョ先生とウニョン先生、転校生の願いを叶えるために頑張る。

    「穏健教師パク・デフン」
    校長から呼び出された。採用する社会の教科書についてだ。校長からは最悪の教科書を推された。どうしよう。
    〇夢の中の地図。あとから来る者はいつだって、ずっと賢いんだ。

    「突風の中で私たち二人は抱き合ってたね」
    インピョ先生にお見合い話。期待せずに行ったが、好みのタイプだった。一方、学校では教師・生徒の雰囲気が最悪に悪くなっていく。怪異なのだろうか?
    〇ウニョン先生と比べながら会う時点でね。「きみが付き合ってくれないから!」←情けないけどキュンとくるな。幸せな花柄生活を!

  • 初読みした『屋上で会いましょう』がどちらかと言うと社会派っぽい内容だと見受けられたので、こちらの『アン・ウニョン先生』が学園に巣食う怪異をハンティングする中堅保険教師バトル物だとは全く想像だにしなかった。

    シリアスとコメディのハイブリッドみたいな読み口。
    生徒に危機が差し迫るのだが、その危機を封印する為にはキーとなる男子生徒の脇毛を飾り結びしなければならなかったり、学生時代の同級生が化けて出てきた時も、実はおまえの「産毛」がかわいいと思ってたんだと告白されたり、そもそもアン先生の武器がプラスチックの剣とBB弾の銃だったりと所々で気が抜けてしまう。
    が、その塩梅と訳の分からなさ度合いが個人的にはとても好き。特に「ムシ捕り転校生」の話がいいな。

    よく分からないまま大団円を迎えるフィナーレも実に'それっぽくて'大好き。

    パステルな装画も挿絵もかわいらしい。



    1版3刷
    2021.8.31

  • ドラマを観てから原作本を読んだ。
    ドラマ化して雰囲気が損なわれていないし、原作とはちょっと違うストーリーがプラスされていて、逆にドラマにはない話も原作にはあって、どちらも面白い。

  • 大好きな一冊。Netflixで先にドラマを鑑賞し、原作があることを知って購入した。おもちゃの剣とBB弾で怪異と奮闘する保健室の先生。怖さはなく、ポップでたまに切ない優しいお話。

  • 面白かった。養護教諭が私立学校に潜む様々な魔物と戦う。コミカルな筆致なこともあり、日本のコミックやラノベにもよくあるような作品だとは言える。しかし、物語の内容や、随所でサラッと繰り出される毒舌からは、著者の人間や社会に対する洞察の深さや真っ当さが伝わってきて、これが並の作家によるものでないことがわかる。韓国の学校の様子もわかる。日本の学校の様子ととても似ている。

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著者プロフィール

1984年ソウル生まれ。編集者として働いた後、2010年に雑誌『ファンタスティック』に「ドリーム、ドリーム、ドリーム」を発表してデビュー。13年『アンダー、サンダー、テンダー』(吉川凪訳、クオン)で第7回チャンビ長編小説賞、17年に『フィフティ・ピープル』(斎藤真理子訳、亜紀書房)で第50回韓国日報文学賞を受賞。純文学、SF、ファンタジー、ホラーなどジャンルを超えて多彩な作品を発表し、幅広い世代から愛され続けている。他の小説作品に『保健室のアン・ウニョン先生』(斎藤真理子訳)、『屋上で会いましょう』(すんみ訳)、『声をあげます』(斎藤真理子訳)、『シソンから、』(斎藤真理子訳)、『地球でハナだけ』(すんみ訳、以上、亜紀書房)などがある。

「2023年 『八重歯が見たい』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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