足をどかしてくれませんか。——メディアは女たちの声を届けているか

  • 亜紀書房
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750516257

作品紹介・あらすじ

〈みんな〉が心地よい表現を考える

男性中心に作られるジャーナリズムの「ふつう」は社会の実像とズレている。
メディアが世界を映す鏡なら、女性の「ふつう」も、マイノリティの「ふつう」も映してほしい。

 ――女たちが考える〈みんな〉のためのジャーナリズム。


「家事をするのはお母さんだけ」と断言するCM、いじめを笑いの種にするテレビのバラエティ。
たびたび炎上するメディアのトップは、ほぼ男性で占められ、女性たちには決定権がない。
メディアには「理想の女性」が闊歩し、女たちのリアルも声も消されている。
メディアが世界の鏡なら、女やマイノリティの姿も映してほしい。
誰もが住みやすい社会にするために、メディアはどのように変わるべきなのか。
ジャーナリスト、研究者、エッセイストらが女性としての体験から、メディアのあるべき姿を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 小島慶子 古民家でお化けを一喝! 左足親指と旅の記憶:日経xwoman
    https://aria.nikkei.com/atcl/column/19/082800128/020100033/

    MeDi - メディア表現とダイバーシティを抜本的に検討する
    https://www.medi-gender.com/

    亜紀書房 - 足をどかしてくれませんか。 メディアは女たちの声を届けているか
    https://bit.ly/34M2c9e

  • フェミニズムは今ブームなのかな。

    〈本書の執筆陣の多くはテレビに出演したり、雑誌で連載を持ったり、大学で授業を行うことを稼業としたりしていて、ある種の社会的立ち位置を占め、それなりの発言力を持つ女性ばかりである〉と田中東子さん。

    そういうかたが声をあげてくれること、集団になることが大事だと思いました。
    私でも入社二年位まではセクハラが辛く、でも誰にも言えませんでした。
    今は強くなりましたから、そういう悩みはありません。
    だからといって、ここの執筆陣の皆さんのようにはなれないです…。

    本としては、とくに田中東子さんのお話(大学時代や、女子大学に勤めるようになった話、対談など)が面白かったです。

  • 女性に対する無意識の睥睨もあぶりだされる。ツイしたけど、衝撃だよ→ https://twitter.com/lumciningnbdurw/status/1294059769607516161?s=21

  • いろいろ学ぶことも共感することも多かったんだけど、ひとりひとりの人権が認められる社会のために大切なことを、自分なりにかみくだいて大きく5つにまとめてみた。

    【意思決定の場に多様性があること・多様な人々が均等に声をあげられること】
    政治にしても会社のトップにしても、何か全体のことを決める場には多様性があると良いなとずっと思ってたけど、多様性があるだけでなく、「多様な人が均等に声を上げられること」が大切なんだなと学んだ。それがダイバーシティ&インクルージョンの本質だから。
    「組織の多様性」が担保され、多様な人が均等に声を上げられることは究極のハラスメント対策になるらしい。(その反対の同質性の高い組織はハラスメントが起きやすい。職場領域のハラスメントに関しては「個人の問題」だけでなく、それを許す風土のある「組織の病」だから。)
    あと、「多様性があり、誰もが生き生きと働ける組織」になるための第一歩は「働き方の多様性」を進めることっていうのはすごく納得した....労働時間による差別がない働き方が広まっていくと良いな。

    【属性の多様性ではなく中身・経験の多様性】
    例えば女性軽視っぽいCMが炎上したりするけど、じゃあ女性が担当すれば炎上しないかっていうとそうではなく、女性だからジェンダーの問題に知見があるとか、敏感であるとは言い切れないらしい。男性が多い職場で男性と同等に働いている女性は、いわゆる「男性社会」に過剰適応してしまうことが問題の背景にあり、その結果、多くの女性が嫌がるが男性が喜びそうな企画をあえて女性が提案追認してしまうことがあるらしい。
    そこで属性ではなく中身のダイバーシティが重要って話になるんだけど、それはやっぱり日常でも感じるけど、結局属性ではなく個人の意識や感覚だよね...。分かりやすい男女や年齢だけじゃなくて、生育環境や教育水準、価値観など見えない部分が多様化していくと良いな。

    【マイノリティを可視化すること】
    ブルボンヌさんの言葉がすごく分かりやすかった。↓
    見慣れないものが出てきたときって、どうしても最初の印象を属性全体に当てはめがちだけど、同じ属性の人が10人、100人、と増えていくと、「この中にもいろいろあるんだ」 というのがわかってくる。それはセクシュアル マイノリティに限らず、どんな属性でもそうだと思うんです。この間、ニューヨークのゲイプライドのパレードに社長と参加したんだけど、観客は 300万人以上、行進する人だけで15万人もいて。それだけいると、もう同じってことはまったくないことがありありとわかるんですよね。私たちのジェンダー感覚からも逸脱して いる不思議な人がいっぱいいる。だからマイノリティの多様性を可視化することはとっても大事。すべての人を言葉で説明はできないから。(※引用)
    以前読んだ本で見た「人間にはウチとソトという概念があって、ウチには多様性があり人間的だと感じる一方ソトの人々は単調で均一で人間的ではないと感じる傾向がある。」と少し通ずるな〜と思った。可視化することで、その属性も多様性があって人間的だと理解しやすくなるのかな。

    【みんな違うからいのちなんです】
    ブルボンヌさんの言葉がまた良かった。↓
    LGBTを否定したい人って、よく「種の保存に反する」って言うわよね。普段から人類のことを考えているはずもないのに。気に食わない否定したいからそれっぽい理由を後付けしている。種の保存の観点で言えば、むしろ一つしかパターンがないと不測の事態があったときに全滅してしまう。いろんなタイプが複合的に存在している種のほうが強いというのが自明ですよね。その意味では、今、いろいろと社会が動いている中で、「こっち側」の言葉を発する宿命を背負った少数派に生まれたことに、私は意味を感じるのね。せめぎ合いはどこまで行っても続くし、時代によっても波はあると思うけれど、 今のところはガス室で一斉に殺されるわけじゃない。(※引用)
    これまた以前読んだ本でみた「みんな違うからいのちなんです」じゃーーーん!と思った。絶対に社会でマイノリティは大事にされなきゃいけない〜〜だし、マイノリティの部分がある自分に誇りをもって生きたい。

    【よく話し合う・理解し合うことが必要】
    表現の自由なので、自分の意見が尊重されるのと同様に、自分と異なる意見も尊重されることは忘れちゃいけないなと思った。つい人権やマイノリティのこととなると正しさを主張したくなっちゃうけど、一方的に話しても理解されるわけがないから相手の意見も最後まで聞くことを大事にしたい。(できるかな〜〜)
    私は感覚派なのでモヤッとしてもうまく言葉に出来ないことが多いけど、これからは自分なりの考えを言語化できるようになりたいな。例えばCMや広告について、好きか嫌いか、その理由はなぜか、考えたら、次のステップとして周囲の人と意見交換してみると良いらしい。その時は違う見方に触れた時、自分の意見はどのくらい説得力があるか考えてみる。


    気になったことメモ↓

    言うまでもなく、女性は意志を持った1人の人間であり、男性が一方的に「ヤレるか、ヤレないか」を判断するのは女性の人格を無視した差別的で暴力的な発想である。

    乳幼児期に特定の大人から愛情を与えられなかった子どもは、里親に託されたあと親を試す行動をしたり、0歳からの育て直しが必要になる。実際に3歳になった女の子が、里親の愛情を試す行動を終えたあと、お母さんの膝の上で安心した様子で哺乳瓶でミルクを飲む姿が見られた。
    →子どもは、得られなかった愛情を「赤ちゃん返り」までして取り戻そうとする。「特定の大人 (親)からの愛情は、それほどまでに必要なのだ」


    男性の生き方は、非常に均質的でステレオタイプなものしか思い浮かばないんじゃないかな。女性には専業主婦からバーのママまで、いろいろな生き方があるけど、男性の世界は寄り道もない、単線的で想像力を発揮しにくい世界なのではないかと。

    ブル
    昔から「そんな子に育てた覚えはありま せん」という言葉があるけど、子どもは育てられた形でしかないと思っているんじゃない。 生まれ持ったその子の形と育てた意向とのセットなのにね。

    古田さんは「長時間労働」を止めることにも取り組んでいる。そのためには「ルール」「ツール」「カルチャー」が大事だという。止めるべき仕事のルール、効率化するツール、現場の多様性を阻害しないカルチャーだ。

    海外の研究によると、セクシュアルハラスメントをする因子を持つ人はいる。その特徴として、①共感力がない、②伝統的な男尊女卑の考え方を持っている、③優越感、独裁主義的な性格を持っている、が挙げられる。この人はセクハラをしやすい傾向にあるが、どこでも 必ずやるかといえばそうではない。「免責状態のある場」にいるからやるのだ。 ハラスメントを許す組織の外には、ハラスメントを容認する社会がある。

    問題の共通点は「決めつけ」と「現状追認」
    ここまで見てきた四つのジェンダー炎上事例に共通しているのは「決めつけ」と「現状追認」である。

  • 自分の姿勢、感覚がズレていないか読みながら考えた。苦笑いしながら心に押し殺していた事をきちんと言語化できるようになりたい。

  • 共感するほど、男性優位社会かつマジョリティ優位な社会にどっぷり浸かってきたんだなあ、と。今もまだまだ。負けずに、世の中うちらが変えていこーね

  • テレビ離れ、新聞離れ、雑誌離れが言われるようになって久しいけれど、世の中の感覚とメディアの感覚のズレがもたらした結果でもあるのだよね。世の中の半分は「女性(大雑把)」だけれど、ソサエティによってはいないもののようになっていたり、同等とはみなされていなかったり。持ち上げられるかと思えば、落とされたり。
    それぞれの場所で、違和感に声を上げていけるように。声の上げ方はいろいろある。
    それが「女性(大雑把)」に対するものだけでなく、さまざまな属性や考え方に対しても押し広げていく手掛かりになるのではないかな。
    ルース・ベイダー・ギンズバーグ逝去の報に触れ、あらためて先人の努力の果実を思い、その果実をさらに大きくして、未来の人へ手渡したいと願う。

  • フェミニズム=ブスでモテない女の怒り、と世間でぞんざいな扱いを受けている印象だが、この本では今まで日本社会に蔓延しているもやもやに切り込んでくれている。
    求められた「女らしさ」の型にはまり、「女は若いうちが1番」等社会から刷り込まれた価値観を考え直させてくれる1冊。改めてメディアの影響は大きいなと感じたし、自分の中で「それって変じゃない?」と疑問を感じることを常に持っていたいなと思った。

  • メディアの観点からフェミニズムを語る。確かにジャーナリズムの「ふつう」は世間一般のふつうと乖離しているように思う。

    最近意識してフェミニズムに触れるようになってつくづく思うけど、私自身男性優位の世界で生き抜くために、その思想にどっぷりはまってきたんだな。私は運良くその男性優位社会の規範のなかで「うまく」やってきて、それなりの境遇に落ち着いているけれど、どこかで何かが違えば転落するのは簡単だっただろうと想像できる。そうなった時にそれを自らの「選択」だったとは言えないだろう。

    ‘’多くの女性たちにとって、自分らしく生きるという選択が現実の暮らしで生き延びる戦略にはつながらないことが多い。‘’

    05 ジェンダー炎上する広告やCM(治部れんげ) がよかった。そういう表現に出会った時に、自分の頭で考えられるようにしたい。

  • ■感想:
    同じ女性であっても違った考え、見方が知れて面白かった。
    最近、女性学、フェミニズムに関心があり関連本を読むが、自分はつくづく男性社会に慣れてしまった女性なんだなーと思う。

    「あれ?これって普通じゃない?もしかしておかしいのかも」という感覚は、その普通が普通でない世界を知ってようやく違和感を感じるもの。

    東京で生まれ育った私は、朝の通勤電車の満員具合が「普通」だったけど、違う土地へ来て初めて、あれって異常だったと気づく。そんな感じ。


    ■メモ:
    ・圧倒的に男性優位な社会で生きる女性たちにとって、男性好みの女性になることは、本能的に身の安全を守る生き残り戦略となる。

    ・弱い立場、困った状況にあるマイノリティたちと一緒に考え、生きていくことこそフェミニズム。

    ・ステレオタイプの不自由な女性像こそ、メディアがつくっている部分が大きい。ー男女共同参画社会実現のためには、制度改革だけでなく、社会の風土改革、つまりメディアの改革が必要。この2つは車輪の両輪である。

    ・ジャーナリズムの仕事は権力の監視。

    ・視聴者にとって大切なのは、男か、女か、ではなく、意思決定の場に多様性があること。

    ・政策を作るのは政府、風土を作るのはメディア。

    ・セクシュアルハラスメントをする因子を持つ特徴として、①共感力がない、②伝統的な男尊女卑の考え方を持っている、③優越感、独裁主義的な性格をもっている、が挙げられる。

    ・不祥事の起こりやすい企業の特徴として「同質性の高さ」がある。

    ・問題の共通点は、「決めつけ」と「現状追認」。

    ・人の意識や社会の意識変革は最初はオセロの一コマの様。一つずつの変化があるとき、一気に変わることがある。


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著者プロフィール

東京大学大学院情報学環教授、東京大学理事・副学長(国際・ダイバーシティ担当)。ロイター通信社、東京大学社会情報研究所助手、ドイツ、バンベルク大学客員研究員を経て、現職。専門はジャーナリズム、マスメディア研究。2016〜2017年ノースウェスタン大学、ロンドン大学、ベルリン自由大学客員研究員。著書に『メディア不信』(岩波新書)、『〈オンナ・コドモ〉のジャーナリズム』(岩波書店)、『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス』『テレビ番組制作会社のリアリティ』(ともに大月書店・共編著)、訳書にドミニク・カルドン『インターネット・デモクラシー』(共訳、トランスビュー)などがある。

「2023年 『いいね! ボタンを押す前に』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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