外は夏 (となりの国のものがたり3)

  • 亜紀書房
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本棚登録 : 467
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515939

作品紹介・あらすじ

推薦・若松英輔
「居場所を見失うことは誰にでもある。ひとはそれをふたたび、おのれの痛みのなかにも見出し得る。そうした静かな、しかし、燃えるような生の叡知がこの作品集を貫いている。」

汚れた壁紙を張り替えよう、と妻が深夜に言う。幼い息子を事故で亡くして以来、凍りついたままだった二人の時間が、かすかに動き出す(「立冬」)。
いつのまにか失われた恋人への思い、愛犬との別れ、消えゆく千の言語を収めた奇妙な博物館など、韓国文学のトップランナーが描く、悲しみと喪失の七つの光景。
韓国「李箱文学賞」「若い作家賞」受賞作を収録。

韓国で20万部突破!!
韓国文学の騎手が「喪失」をテーマに紡ぎ、2018年、韓国の最大手書店「教保文庫」で『82年生まれ、キム・ジヨン』に次ぐ小説部門第2位となったベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • 突然の別れに成す術もなく立ち止まり、時間が凍りつく。過去を想い、自問を繰り返す。
    その別れに自らの非を探しては何度も傷を引っ掻く。
    時間が止まってしまった人に対する、普通に暮らす人々の無理解、冷たさも同時に描く。
    別れが近付いたことを知る人の喪失への痛み。
    相手の中に信じていた姿を見失った時の喪失感。
    なんていう辛さだろう。どの話もヒリヒリと胸に痛い。

    タイトルの「外は夏」は、
    「スノードームの中の冬を思った。球形のガラスのなかでは白い雪が舞っているのに、その外は一面の夏であろう誰かの時差」の一文からだ。
    夏の暑く眩しい時にありながらも、そこだけ雪が舞う凍りついた閉ざされた狭い世界に、各章の登場人物の心が重なる。
    そんな時、何かが溶け出すのをただじっと待つしかないのかもしれない。
    少しだけ動く瞬間を見事に描いている。

  • 何かを失った人たちがテーマの短篇集。悲しみと喪失の七つの光景。


    「立冬」の止まっていた時間が静かに動き出す気配。「向こう側」の裏切られたという思いではなく実は安堵だったことに気づく感覚。

    「どこに行きたいのですか」
    これは、、気持ちが揺さぶられた。
    ”「命」が「命」に向かって飛びこんだのではないだろうか。”

    セウォル号沈没事故のことをおもいながら読む。

  • 私も祈る。しかし一体どこに向かって。~祈り・藤原新也展|夜のオネエサン@文化系|鈴木涼美 - 幻冬舎plus
    https://www.gentosha.jp/article/22652/

    ブックレビュー:『外は夏』 – K-BOOK振興会
    http://k-book.org/yomeru/190828/

    김애란 - YES24 작가파일
    http://www.yes24.com/24/AuthorFile/Author/107768

    亜紀書房 - となりの国のものがたり3 外は夏
    https://www.akishobo.com/book/detail.html?id=904

  • 晴れやかな季節の日に、重く澱んだ気持ちを抱えている時に感じる、世界から疎外された人になったような感覚が呼び起こされる、韓国文学短編集。
    安直な癒しや解決は無い、でも果てしない絶望でもなく、喪失を抱えて生きていくという、わずかな強さを滲ませる。

    最後に収録された短編「どこに行きたいのですか」のラストに至る情景の鮮やかさが素晴らしかった。
    「『命』が『死』に向かって飛び込んだのではなく、『命』が『命』に向かって飛び込んだのではないだろうか。」
    悲劇に向き合う角度を変えられた時に現れる、思いがけない姿。主人公と共に、その光景を見て泣き崩れる感覚を味わえて、本当に良かった。

  • 「立冬」:深夜零時過ぎに、壁紙を張り替えようと妻が言い出した。今から?うん。妻のほうから何かをやろうと言ってくるのは久しぶりだった…。息子を事故で無くした夫婦の話。「ノ・チャンソンとエヴァン」、「向こう側」、「沈黙の未来」、「風景の使い道」、「覆い隠す手」、「どこに行きたいのですか」。喪失をテーマにした短編集。どれも胸にジンとくる。

  • 初読

    訳者あとがきにて、日本の東北震災のように
    以後で変わってしまった出来事として
    「セウォル号以後文学」というのがあるらしい。

    これはその一例として言われる喪失を書いた短編集。

    表題作がなく「外は夏」というのはどこから来たのだろうな
    と読んでるうちに、
    なるほど、どの作品も、外は夏だというのに、中はひんやりと
    陰っているようなムードが共通している。

    少年と犬の「ノ・チャンソンとエヴァン」
    少し毛色が違う、滅びく言語の「沈黙の世界」
    が印象的。

    何を示唆してるのかわかるようで私にはもうひとつわからないな
    と感じる「覆い隠す手」等もあるのだけど、
    これもきっとその内また違った角度から読めるのではないか、
    という気がする。

    韓国の知らない日常生活も感じられて良かった。
    クロソイのわかめスープ、食べてみたい。

  • 個人的には「ノ・チャンソンとエヴァン」がひたすら胸が痛かった。
    しかし、何だかわかったような気になって感想を書くことができない。またいつか読み直そうと思う。

    ****

    【追記】
    読んですぐは本当に何を言えばいいのかわからなかった。
    でも結局のところ、(例えば)死者に対して生者である私(たち)は、どこまでもわかったような気になることしかできない。だからそう思うと何も言えなくなってしまうのだと思った。
    キム・エラン氏はそのことをわかりすぎるほどわかった上で、死者との間の、その埋められない隔たりを紡ぐ言葉を探しているのだろうなあ。

  • 「喪失」をテーマにした短編集。個人的に幼い息子を亡くし深い悲しみと傷をおう夫婦の話である「立冬」と愛犬を安楽死させてやりたかった少年の「ノ・チャンソンとエヴァン」、夫を亡くした後にスコットランドに住む従姉からバカンス中の留守を頼まれた妻の「どこに行きたいのですか」が特に好きだった。
    好きだと思ったところは色々とあるが中でも「ノ・チャンソンとエヴァン」の最終的にエヴァンが見つからなくなるシーンや「立冬」の最後あたりで息子の痕跡を見つけて泣いてしまう妻、「どこへ行きたいのですか」の最後の一文が好きだ。久々に一冊読み終えたがいい読書体験でした。

  • はじめての韓国文学。「喪失」をテーマにした短編集。全体にずっと暗いというか、静かな空気が漂っているような感覚でした。劇的な結末があるわけではなく、どうなったんだろう、と想像させるような終わり方。「沈黙の未来」「どこに行きたいのですか」は韓国で賞を受賞しているようで、この2篇は特に印象に残った。

  • 何かを失うことにまつわる短編集。
    消滅しつつある言語についての短編「沈黙の未来」が良かったです

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著者プロフィール

韓国・仁川生まれ。韓国芸術総合学校演劇 院劇作科卒業。2002年に短編「ノックしない家」で第1回大山大学文学賞を受賞して作家デビューを果たす。2013年、「沈黙の未来」が李箱文学賞を受賞。邦訳作品に『どきどき 僕の人生』(2013年、クオン)、『走れ、オヤジ殿』(2017年、晶文社)、『外は夏』(2019年、亜紀書房)、『ひこうき雲』(2022年、亜紀書房)がある。

「2023年 『唾がたまる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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