娘について (となりの国のものがたり2)

  • 亜紀書房
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本棚登録 : 605
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750515687

作品紹介・あらすじ

私の育て方が悪かったんですよね

「普通」の幸せに背を向ける娘にいらだつ「私」。
ありのままの自分を認めてと訴える「娘」と、その「彼女」。
ひりひりするような三人の共同生活に、やがて、いくつかの事件が起こる。

韓国文学の新シリーズ「となりの国のものがたり」第2弾!!

感想・レビュー・書評

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  • 同性愛者の娘を受け入れられず、苦悩する母親の一人称で語られる物語。老人ホームで介護者として働く母。娘を理解できない苦しみや苛立ち、老いていく自身の不安を、介護を担当する老婆の姿と重ね合わせる。多様性を理解しているつもりでも、実の子どもが当事者だったら、簡単には受け入れるのは難しいのが親心だろう。家族が後ろに繋がっていかない孤独や不安。自分の不寛容にどれだけ立ち向かえるのか。

    辛く重い内容ではあるのだけど、一気に読ませてしまう力があった。

  • 読んでていくつも泣ける場面があった。この社会の目を背けたい部分を、リアルに淡々と描いている。まるでドキュメンタリー作品のように。
    主人公は、老人ホームで働く60歳過ぎの女性。夫には先立たれ、一人娘がいる。その娘は大学の非常勤講師をしているものの、レズビアンで、周りから偏見を受けており、母親である主人公はそれを受け入れられずにいる。また、老人ホームで彼女がお世話しているのは、華麗な経歴を持つも独身で身寄りのない認知症の女性。ひどい扱いを受けるその老人を、自分の将来と重ね合わせて、なんとかしようとし、ついには驚くべき行動にでる。その姿は、彼女が受け入れられずにいた娘が、社会から偏見や差別を受ける弱者とされる人たちの、人間としての当然の権利を主張して戦う姿と通じるものがあった。
    この作品が扱う、老人やマイノリティの尊厳や権利。多様性が謳われる今も根強く残る差別や偏見。誰もがいつかは老人になるし、ある部分でマイノリティに属している可能性はある。同じ社会に生きる私たちの誰もが無関係ではない。暗いテーマではあるが、皆が考えなくてはいけないことだと思う。

  • 親の期待(平凡な暮らし)とは逆の道を突き進む一人娘。療養保護士のわたしが見つめる老いたものの末路。物語に救いはない。これが現実であると訴えかける。決して人ごと、他国のことではない。それはわたしのことでもあるのだと強く感じた。

  • 娘は母親に
    母は娘に似ている
    同性愛の娘がおそれず主張していることを
    介護施設で働く母親もまた60歳をすぎて
    堂々と実行にうつす
    娘グリーンのパートナー、レイン。
    若いころは海外で活躍したが家族のいないジェンさんは今はもう認知症で粗末な扱いをされている
    この四人が最後に寄り添っているのが痛ましくつらい


  • 少しでも長く健康に、私とパートナーと娘という家族で、自分達にとって心地のいい生活をし続けられるように努力することで、両親が世の中の同性愛者たちをどう見ていくのかを、期待しないで想像することしかできない。そういう感想に辿り着いた。

  • 女性と暮らす娘に失望しながら、老人ホームで介護の仕事をする私。年をとって先行きの見えない中でたくさんの諦めを一つずつ積み重ねていく私、娘についてと言うより娘を思う母についての物語である。
    塩田雅紀氏の絵が素敵でした。

  • こだまさんのつぶやきをみて読みました。

    「わたし」の世界がずっとどんよりしていて情景が目に浮かぶようでした。
    もっと韓国の小説を読んでみたくなりました。

  • 自分の為に泥沼の様に嘆いて居たのに、段々と娘の側から物事を見る「私」の変化の書き方にとても唸った。
    凄い文章、訳だと思った。
    皆が自分の中心から次第に俯瞰していき、登場人物も読者も最後は互いを遠くから確認し合った読後感。

  • 頭でわかっていることと実際の気持ちは違う。家族について、人をそのまま認めるということの難しさや過程、不条理な世の中に対するやり場のない怒りや不安。自分のなかにもある気持ちが主人公を通じて炙りだされる。

  • “言いたい言葉、言うべき言葉、言ってはだめな言葉。もう私はどんな言葉にも確信が持てない。こんな話、一体誰にできるだろう。誰が聴いてくれるのだろう。言えもしなければ、聴いてももらえない言葉。主のいない言葉の数々。”(p.58)


    “くだらない非難やあざけりから逃れようとした結果、自分がほんとにやるべきことができなくなる。そんなの、もうやめにしたい。これまであきれるほどくり返してきたけれど、これで終わりにしたい。”(p.182)


    “毎回それでも苦労しながらかろうじて乗り越え、また乗り越える。”(p.206)

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著者プロフィール

キム・ヘジン 1983年生まれ。2012年東亜日報新春文芸当選作「チキン・ラン」で文壇入りし、2013年長編小説『中央駅』で第5回中央長編文学賞を、2018年長編小説『娘について』で第36回シン・ドンヨプ文学賞を受賞した。その他の作品に、短編小説『オビー』、長編小説『九番の仕事』、中編小説『火と私の自叙伝』などがある。

「2022年 『君という生活』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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