黒人と白人の世界史――「人種」はいかにつくられてきたか (世界人権問題叢書)

制作 : 中村 隆之 
  • 明石書店
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (370ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750352305

作品紹介・あらすじ

「ヨーロッパ人は、アフリカ人を奴隷にしたために人種主義者になった」。本書は、大西洋奴隷貿易、奴隷制、植民地主義とともに、「人種」がどのように生み出され、正当化されていったのかを歴史的に解明する。ル・モンド紙が「まるで小説のように読める」と評す、人種の歴史の新たな基本書。

感想・レビュー・書評

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  • “Black Lives Matter”がメディアを賑わした際、「まだそんなこと言ってんの⁉︎」と思わず口をついて出てしまった。当たり前のように人種差別の愚かさを学校で習い、「人類みな兄弟」の風潮にどっぷり浸かってきたもんだから、不思議で仕方なかったのだ。
    本書を知った時その出来事がフラッシュバックし、気づけば当時感じたモヤモヤもだいぶ大きくなっていた。

    著者はブラック・アメリカを専門とするフランス人歴史家。フランスは移民大国で、著者の講義にもかつて領土だったアフリカやカリブ海出身の学生が目立つという。
    「生物学的に人種は存在しない。しかし政治的、社会的現実として人種は存在する」
    後者の忌まわしき概念が、ヨーロッパ人によってどのように形成・正当化されていったのかを本書は追う。

    手間はかかったが、序文→(巻末にある)解説→本編 →再び解説の順で読むと、より理解が深まった。(プラス、各部の最後には結論がまとめられており、長い旅路を乗り切る良いアシストになる)

    「こうして、ヨーロッパ全体が目をつむって悪夢のなかに飛び込んでいった」

    第Ⅰ部 奴隷制と帝国
    黒人の歴史を考える時にまず「奴隷制」を連想しがちだが、そもそも奴隷だったのは黒人だけではない!というところから第Ⅰ部は始まる。奴隷制は結婚と同じくらい古い制度で、起源はB.C.3000年のメソポタミアにまで遡る。奴隷に転ずるのは戦争捕虜だった。
    アメリカ大陸の発見以降は先住民が、次第に黒人がターゲットに選ばれるようになる。この経緯まではあっという間だった…。

    第Ⅱ部 ニグロの時代
    「ヨーロッパ人はアフリカ人を奴隷にしたために人種主義者になった」
    16世紀末-18世紀末。
    18世紀の大西洋貿易を機に、「白人」「黒人」→「人種」の概念が誕生したようだ。
    奴隷貿易はポルトガル商人の独断場と化し、アフリカ交易網の拡大にまで及んだ。1787年に出版された、元奴隷による自伝(!)の一部抜粋は本書で一番生々しい証言だった。
    労働の強制及び反逆心を抑制するためにふるわれた暴力も、この頃は「善のための悪だ」と正当化されている…

    第Ⅲ部 白人の支配
    19世紀-20世紀中盤。
    奴隷貿易と奴隷制が(公式に)廃止されるのに反比例して、植民地支配が活発に。「白人優位の物語」は加速し、人種の概念はいよいよ定着し始める。
    ちなみに1899年の日英通商航海条約時、日本人は「文明化された国に属する国民」=「白人」として認定されていたらしい。さすがにこれは2-3度読みした。


    白人とは、肌が白い人ではなく自分たちの支配的地位の自然さに同意するに至った人達のことだと著者は語る。そう考えると、上記日本人の白人認定も納得がいく。

    同時に本書では、社会全体で共生していく関係を「親族性」と呼んでいる。しかし、それを許されない人達は確かにいたし、残念ながら今もいる模様。
    「親族性」が人種概念根絶への鍵であるならば、「人類みな兄弟」は決して甘っちょろい考えではない。というか、甘っちょろくなくて良かった。

  • まだ途中、奴隷制は古代から世界中で行われてきた。何もヨーロッパが考えたことでない。15世紀以後のヨーロッパ発展の中で、アメリカを発見し、そこで大々的に行われた。その時でも、東アフリカから中東に向けた奴隷の方が人数が多いという。その辺もうちょい詳しく。なぜ北米ばかり、人種差別が大きいのか知りたい。アラブ人が行っていたアフリカ人奴隷の扱いはヨーロッパのそれと比較してどうだったのか。
    104ページアンティル諸島からインディアン消滅とあるけど、その辺詳細欲しい。人種の話なんだから。

    フランス革命に触発されて、アンティルで奴隷の反乱。ナポレオン法典にも人種差別が規定とか。教科書で教えてほしかった。自由平等博愛と謳うけど、実はそうでもないというのが有れば歴史の授業ももっと面白かったのにね。

  • 戦後すぐにユネスコによって否定された「人種」という概念が今なお根強く存在する。本書は人種の起源を奴隷制に置いてその本質を明らかにしていく。
    奴隷制は人種差別によって生み出されたのではなく、奴隷制こそが人種概念を生み出した。すなわち、奴隷制が解体される中で支配のツールとして白人、黒人という区別を設けていった。筆者は、奴隷の本質は親族性の否定と言う。そして、黒人は家族や国家の構成員ではないという意味で親族性が否定された下位の人種であり、奴隷と概念的に連続している。
    本書は本体の人種に入る前に壮大な奴隷の歴史について論じている。ヨーロッパ諸国が奴隷貿易に関わる前の奴隷制の歴史から始まっていて、直前に読んだ『人間狩り』の奴隷観が表層的だっただけに印象深かった。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/789680

  • NDC316.8
    [科学的には無効であっても、政治的、社会的現実として人種は存在する。人種は、ヨーロッパ人によってどのように生み出され、正当化されてきたのか、歴史的に解明する。大西洋奴隷貿易、奴隷制、植民地主義、ル・モンド紙が「まるで小説のように読める」と評す、人種の歴史を知るための新たな基本書。]

    目次
    イントロダクション―ニグロと白人、言葉の歴史
    第1部 奴隷制と帝国(奴隷という制度;サハラ砂漠以南のアフリカにおける奴隷制;ヨーロッパのダイナミズム ほか)
    第2部 ニグロの時代(ニグロのプランテーション(一六二〇~一七一〇年)
    不可能な社会(一七一〇~一七五〇年)
    危機に向かって(一七五〇~一七九四年) ほか)
    第3部 白人の支配(ドミ・ネーション(一七九〇~一八三〇年)
    奴隷制から人種へ(一八三〇~一八五〇年)
    新たな支配(一八五〇~一八八五年) ほか)

    著者等紹介
    ミシェル,オレリア[ミシェル,オレリア] [Michel,Aur´elia]
    1975年生まれ。ブラック・アメリカを専門とする歴史家。パリ大学で准教授を務めるとともに、アフリカ・アメリカ・アジア世界社会科学研究所(CESSMA)の研究者。テレビの文化局「アルテ」で2018年に放映されたドキュメンタリー映画「奴隷制のルート(Les Routes de l’esclavage)」の脚本作成に参加

  • 2022年11-12月期展示本です。
    最新の所在はOPACを確認してください。

    TEA-OPACへのリンクはこちら↓
    https://opac.tenri-u.ac.jp/opac/opac_details/?bibid=BB00600373

  • ● 1947年、ユネスコに民俗学、社会学、遺伝学、人類学、生物学の著名な学者たちが召集された。「人種は全く存在しない」生物学的に根拠のない人種と言う概念は、どんな差別的政策も正当化するものではないこと。

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著者プロフィール

1975年生まれ。ブラック・アメリカを専門とする歴史家。パリ大学で准教授を務めるとともに、アフリカ・アメリカ・アジア世界社会科学研究所(CESSMA)の研究者。テレビの文化局「アルテ」で2018年に放映されたドキュメンタリー映画「奴隷制のルート(Les Routes de l'esclavage)」の脚本作成に参加。

「2021年 『黒人と白人の世界史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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