韓国文学を旅する60章 (エリア・スタディーズ)

制作 : 波田野節子  斎藤真理子  きむ ふな 
  • 明石書店
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本棚登録 : 129
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750351070

作品紹介・あらすじ

いまもっとも注目されている韓国文学。さまざまな土地にゆかりのある、古典から現代まで総勢60人の作家/作品を通して、読者を旅に誘う。韓国を愛するすべての人に向けた、豪華執筆陣による珠玉のエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • ──文学と旅はよく似ている。──

    本書は文学を手掛かりにして、韓国に旅立つための案内書だ。
    執筆者たちは、韓国の古典から現代までの作家と作品について「場所」をキーワードにして語っている。その「場所」とは、作品の舞台であったり、作家が育った故郷であったり、執筆者が作家と出会った場所であったりと様々。

    現在の韓国文学は女性作家たちが書いた小説、特にフェミニズムの視点を含んだ作品が大きな流れを作っている。『82年生まれ、キム・ジヨン』や『ヒョンナムオッパへ』、『私たちが光の速さで進めないなら』など、数々の「女性の物語」が翻訳され、私たちも読むことができるようになった。
    これら今日の韓国文学、つまり民主化以降(1990年代~)の作品にあっては、雑誌やネットなどで紹介されたりブックガイドも出版されるなど、日本にいながら情報が入手しやすくなったと思う。
    しかしながら、それ以前の韓国文学を読みたいと思っても、これがなかなか情報量も少なく、翻訳されたものも限られており、また入手困難な状態となっていることに気づいた。
    現代の韓国文学を読んでいくと、おのずとその根底に流れている何か、(たとえば「恨」や「情」の概念など)を深く知りたくなって、過去へと手を伸ばしたくなる。なのに、私の手の届くところにないのだ。
    このもどかしい思いを全部とはいえないものの解消してくれたのが、この文学案内書。
    私はこの案内書で、韓国の古典の世界に少し触れることができた。そしてそれは興味のある朝鮮王朝時代を理解していく上でも、とても参考になった。
    これから少しずつ過去から現代の文学へと、何かを探りながら歩を進めていきたいと思っている。

  • 文学で読む韓国 「菜食主義者」翻訳者が四つのキーワードで概説 - 毎日新聞
    https://mainichi.jp/articles/20210209/k00/00m/040/303000c

    『ちぇっく CHECK』Vol.6刊行のお知らせ – K-BOOK振興会
    http://k-book.org/checkcheck/checkvol6/
    ↑もう1年前、次は出ないのかな?
    ↑と、書いたら出ました、、、

    韓国文学を旅する60章 - 株式会社 明石書店
    https://www.akashi.co.jp/book/b548792.html

  • 明石書店の「エリア・スタディーズ」シリーズといえば、地域の歴史や地域研究そのものに興味がある人なら、最初に手に取る1冊だろう。国、地域、民族などを、その分野のプロフェッショナルが60章に分けて紹介するので、ハンドブック的なものでありつつ、60章と何本かのコラムを通読すると、なかなかストロングな読後感が残る。中には文学をテーマにしたものが数冊あって、この韓国文学はその1冊。編著者も学術的側面と文芸的側面からの豪華な布陣。

    韓国文学は従来から紹介されつつ、「たまに目にする」というレベルだったが、ばーんと紹介されるようになったのは、パク・ミンギュ『カステラ』が第1回の日本翻訳大賞を受賞(2015)した前後からだと思う。韓国文学を読んでいても、特段のもの好きと思われることはなくなったように思う(ただし、これは海外文学好きの感覚であって、それ以外からは「もの好き」感を持たれることは変わらない)が、韓国との文化の微細なようで大きな相違への関心や、現代に生きる市民としてのシンパシーがあって小説を読んでいるだけで、その後ろにある歴史というものを知っているわけではない。いつかは知らないといけないな、と思いつつ放置していたところ、数年前に出版されていたことを知って読んでみた感じである。

    第1章は口承の伝統芸能、パンソリから始まる。ちょっと虚を突かれた感じはあったが、当然だ、『82年生まれ、キム・ジヨン』が突然、無から生えてきたわけはない。隣国のことなのに私のような一般人は所詮、このレベルだ。とはいえ、次に郷歌、時調といった古典的な文芸が紹介されるにつれて、興味もわいてくる。そういえば朝鮮漢文とかあるよな……この本では割愛されているけれど、それは紙幅の都合でしょうがない。

    現代韓国文学とのリンクを紹介していくのが目的の書籍なので、最初の数章以降は、各章で1人の作家に焦点を当てて韓国の近代文学史をたどっていく。初期の韓国近代文学を拓いてきた人々と、日本とのかかわりは切っても切れない。そして、朝鮮戦争。38度線以北の世界に行った作家・詩人は「越北作家」として、韓国の民主化以前はアンタッチャブル、名前を出すにも伏せ字という扱いだったのは地味に驚いた。まあ、日本でも黙殺というやり方はあるので、ユニバーサルなものだろうけれど。

    また、小説家だけでなく、詩人が多く取り上げられているのも印象に残った。詩歌の地位が高いというか、世相や心情を世に問う手段という点では、文学史からすると詩のほうが世界的には王道だと思う。私の観測範囲が狭いというのもあるけれど、日本では詩にあまり価値が見出されていない気がする。実際、「詩集は売れない」が出版業界では常識だという。

    終盤は邦訳の出ている人気作家が多く、時代背景も比較的知っていることが増えてくる。いわゆる「フェミニズム作家」と分類される人たちだが、女性が韓国だけではなく、世界的に置かれている状況を「知らなかった、ではすませないぞ」と突きつけていくやり方はなかなか爽快だとつねづね思う。「主義主張の強い」小説を嫌う向きもあるけれど、ペンの力を信じていることがストレートに伝わってきて、個人的にはいいと思っている。

    韓国の行政区画、道や首都ソウルの地図もあるので、手元に置いておくと、それだけでも現代韓国文学を読むのに大変役立つ。今回も知らないことをたくさん知ることができました。総勢49人の著者・編者の皆様に心よりお礼を申し上げたい。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/759191

  • 桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/639859

  • 女子栄養大学図書館OPAC▼ https://opac.eiyo.ac.jp/detail?bbid=2000058394

  • 文学を巡る豪華エッセイ集です。
    古典から、近代文学、民主化以降の文学まで、幅広く紹介されています。

    ブログはこちら

    https://okusama149.blogspot.com/2021/08/60757.html

  • 最近はK文学を好んで読んでいるもののこの本の章立てでいう「今日の韓国文学(民主化以降1990年代〜)」にくくられる作家がほとんどでした。その前の「独裁政権と産業化の時代(1960年代〜)」はチョ・セヒ作品より先に映画タクシードライバーを観て知り、まだまだK文学を時代区分ごとに読むには先が長いと思い知ることになりました。

  • 東2法経図・6F開架:929.1A/H42k//K

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著者プロフィール

新潟県立大学名誉教授。韓国近代文学。著書に『李光洙――韓国近代文学の祖と「親日」の烙印』(中公新書、2015)、『韓国近代作家たちの日本留学』(白帝社、2013)、『韓国近代文学研究――李光洙・洪命憙・金東仁』(白帝社、2013)。翻訳書に李光洙著『無情』(平凡社ライブラリー、2020)、金東仁著『金東仁作品集』(平凡社、2011)。主な論文に「東アジアの近代文学と日本語小説」(日本植民地研究会編『日本植民地研究の論点』岩波書店、2018)ほか。

「2020年 『韓国文学を旅する60章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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