ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた――あなたがあなたらしくいられるための29問

  • 明石書店
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感想 : 105
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750348520

作品紹介・あらすじ

日常の中の素朴な疑問から性暴力被害者の自己責任論まで――「ジェンダー研究のゼミに所属している」学生たちが、そのことゆえに友人・知人から投げかけられたさまざまな「問い」に悩みつつ、それらに真っ正面から向き合った、真摯で誠実なQ&A集。

感想・レビュー・書評

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  • いろいろと考えさせられた。
    Q&Aの形を取っているけれど、そのQが確かによく聞く疑問ばかりで、勉強になった。

    感想
    ・多様性と秩序は両立できるか。
    ・ジェンダー学は、大学で研究するのに向いていると思った。実社会ではなく、大学やゼミという環境ならではの議論の深まりがあるかな、と。「だからどうする」というわけでもなく、思考することで潜在的な性的抑圧から意識が自由になる。身近なことを問い直す、見方を変えて気づきを得る楽しさがある。具体的な事例を抽象化、理論化する、みたいな。
    ・差別があれば特権もある。差別がなくなっても皆の権利はなくならないけれど、特権がなくなる。それを恐れる人がいる。
    ・私はジェンダーについて学ぶこと、気づくこと、声を上げることはしたいけれど、そうすることで「フェミニスト」にカテゴライズされ、「一般の声」から外されるのは望まない。
    ・悪い広告、いい広告とその重みがわかった。
    ・マジョリティだからとかではなく、自分の性と性自認が私は好きだ。これでよかったなと思う。ダンス部でも、男役より女役の方が踊りたかった。スローが好きだし。でもスローよりヒップホップが好きな女性もいるし、ジェンダーがさまざまというのはそれくらい普通のことなのだと思った。
    ・ダンス部の男役女役、宝塚の男役娘役、KPOPアイドルの露出や新体操の衣装…もジェンダー的に考えるところがあるのかな。
    ・私はジェンダー関連でつらさを感じたことはないけど、マジョリティの特権だったのか。
    ・EQUALITYとEQITYの図がわかりやすい
    ・すごく気を使う世の中になったけど、それはいいことだと思った。大学で空きコマに自習していたら、あるカップルが一緒に英語の課題をしていて、男子の方が「Ladies and Gentlemen…で書き出したけどこれって良くないかな」と彼女さんに聞いていた。タイムリーだなと思うと同時に、一歩立ち止まって適切かどうかを考える姿勢は素晴らしいと思った。
    ・生きにくさを、学問の原動力にできる・つなげられることは健全だと思った。
    ・因果関係は、注意して捉えないといけないと思った。(例えば、女性はすぐ仕事を辞めるので期待できないという考えの上司がいた女性は、機会や評価が不十分で満足できないため、辞めるだろう。そこで上司は「思った通りだ。だから、女性はすぐ辞めて使いづらいのだ」と考えるかもしれないが、実際のところは順序が逆で「そう思ったから事実になった」が正解かもしれない。また、UFOが落ちて人類は滅びると予言した宗教団体がいて、もちろんその予言は外れたが、人々はかえって信仰心を強めた(「我々の祈りの力で未曾有の事態を救ったのだ」という解釈)という話も思い出した。私は大学に進学し、今人生で一番勉強していると思うけれど、それは私が大学に入る学力を持っていたからではなく、その大学の学生であることの矜恃が勉強への意欲を掻き立てるのかもしれないと気づいた。)
    ・人の気分を侵さずに、自分が精神的に解放されることがジェンダー学の目的なんだと理解した。束縛する学問ではなくて、人を解放する学問。
    ・国籍も性別も、人ではなく自分について語るのに用いればよいのでは。
    ・ジェンダー学の趣旨は、すべての人の力や性質が同じ訳はないけれど、すべての人が同じ権利を有する権利はある、ということかな
    ・なんでもそうだけど、特にジェンダー学は、人に押し付ける思想・学問ではなく自分の内省用だと思う。


    2021/12/28
    日本と欧米を比べたときに、日本よりも欧米文化の方が優れている・憧れるというような主張を少なからず聞いてきたけど、日本の「さん付け」文化は、今の時代にとても適していて、世界に誇れるものだと思う。Mr.やMs.、HeやSheの文化がないことで、救われる人がいることに気づいた。

  • 大学生向けということで、私には少し物足りなかったかな。でも必要な本だと思う。特に普通の男子学生にも読んで欲しい本。少しだけ前に進めるかも。ミソジニーの強い男の子はそもそも読まないだろうし、読んでもたくさん自分なりのツッコミを入れそう。

    全員にわかってもらおうと思わずに、少しずつ多数派になっていけばいいのだと思う。そうすると、集団の雰囲気は変わる。特に日本人は(笑)←苦笑です

    「インセル」という言葉、山上容疑者のTwitterから最近話題の言葉。「非モテ」という言葉も、男性学から言われ始めている。分断せずに共に生きる道、諦めずに探したいよね。

  • すごくわかりやすかった。ジェンダー初心者の人が質問しそうな事を取り上げてくれているので、納得して説明できそう。

  • 「ジェンダー」や「フェミニズム」などの言葉に恐怖を抱いているに配りたい。素朴な質問に対して、一言、詳しく、もっと詳しくの3段階で答えが載っているので、知識量関係なく読める。

  • 最近ジェンダー論について学んでいるのだけど、ジェンダーの考え方を身につけると、政治経済、文化や伝統のあり方まで、さまざまな分野の見方が変わるなと思う。

    この本では、Q&A方式で、ポップステップジャンプの3つの段階でジェンダーについての疑問に答えている。
    ジェンダー論というと女性優遇というイメージをもたれやすいのか、私自身もフェミニズムと結びつけて考えがちだった。
    そもそもフェミニストに対して主張が強い人たちという偏った見方があったのだけど、インターネット上の短絡的でネガティブなイメージで物事を判断していた自分が恥ずかしくなった。

    とくに学びが深まったのは、男性が向けられているジェンダーイメージで、男性に対する性犯罪はほとんどないものと私自身も決めつけていた。
    今問題となっているジャニーズの件も含めて、男性が受ける被害を軽いものと見做しがちというのは、自分にも当てはまると感じた。
    それが被害男性自身に、声を上げることを躊躇わせている要因になっていると知った。
    また、性犯罪が性欲を満たすためというより、相手を服従させ、支配する目的で行われているという指摘も納得できるものだった。

    全体的に回答が毅然としていて、ジェンダーの問題につきまといがちな主張した側が不当に叩かれるという事象にも、理路整然と問題点を洗い出して問題点を指摘していて、自分の認識が誤っていたと反省させられることもあった。

    自分は不利益を被っていないからとか、自分は気にしないからとか考えると、勿体無い。
    どんな人もジェンダーの問題を考えることはとても有意義になると思う。

    なぜなら、自分の考え方が強く社会や文化に根付いたものだと知ることにもなり、深く考えることもせず、自然と受け入れてしまっていたことを、改めて考える機会になるからだ。
    誰しも自分の選択した生き方を選ぶ権利があるのだけど、そうした選択したことを選べる社会にするためには、根幹から考え方を見直していく必要があるのだろう。

  • ジェンダー論は今どこで盛り上がっているか?
    私は、それは前時代とは異なる新しい生き方を始めようとしている20-30代(男女問わず)だと思う。

    では大学生はどうなのか?
    ジェンダー論についてこれより上の世代よりは親しんでいるはずではないのか。
    彼ら彼女らは時代の最先端を生きる新しい世代なのだから。

    大学生の間でもこんなに理解度に差があるという事実、
    ジェンダー学専攻の学生が日常生活で肩身の狭い思いをするという事実、
    これらはまだ変わらない大学生の現状なのだなと思った。

    これからの大学生はどう変わっていくのか。
    それより下の世代はどうなのか。
    ジェンダー論自体へのバックラッシュが来てしまうのか。

    願わくば、教育の一環としてとりいれられ、よりありふれた学問になりますように。

    本自体は、ジェンダー論への入門としてはフランクでとてもとっつきやすくていいと思う。この分野に親しみを持ってもらうこと、この点は達成しているだろう。

  • 「専業主婦になりたい人もいるよね?」「女性も『女らしさ』を利用しているよね?」「どうしてフェミニストは萌えキャラを目の敵にするの?」といった疑問を考えながら、男女平等、セクシャル・マイノリティ、フェミニズム、性暴力について学んでいく。

    ジェンダーを学ぶ大学生が、友人や知人からよく投げかけられる質問にいかに答えるべきかというところから始まったそうで、とてもわかりやすく、ジェンダー入門書として最適の一冊。
    (上野千鶴子をはじめ、社会学って文体がそもそも読みにくい。)

    個人的には最近知った「アセクシャル」という言葉についての回答がなかなか目から鱗でした。
    私の世代は、少女マンガ、歌謡曲、テレビドラマ、ファッション雑誌など、どれをとっても恋愛至上主義。
    「恋愛して結婚して子供をもって幸せな家庭を築く」という「ロマンティック・ラブ・イデオロギー」がひとつの理想として語られてきたわけですが、もしかしたらそれは経済的、商業的に洗脳されていたのかもしれません。
    「人を愛すること、愛されることはすばらしい」ということには今でも疑問をもちませんが、それがすべてじゃないし、そうじゃない人もいるよね、と考えてみることも必要なのだと思いました。

    一橋大学では2015年にゲイであることを友人に公表された男子学生が自殺するという事件が起きており、この「アウティング」についてもページが設けられています。
    どうするのが正しかったか、簡単に答えはでませんが、セクシャル・マイノリティへの理解が周囲にあれば、また違う結果があり得たかもしれません。
    ジェンダーについて、一方的な論理の展開ではなく、一緒に考えてみるという姿勢が全体に貫かれているのもよいと思います。


    以下、引用

    人に性的感情を抱かない「アセクシャル」
    恋愛感情を抱かない「アロマンティック」

    「そうはいっても人を好きになったりセックスしたりするのが普通だ」と思うかもしれません。では、逆に、なぜ恋愛やセックスをするのが当たり前だと思うのでしょうか。そこには「恋愛やセックスをしなければいけない」という思いこみがあるのではないでしょうか。「パートナーがいないと将来が不安だし、そのためには恋愛が必要なのでは」という意見もあるでしょう。しかし、パートナーとの関係はセックスをともなう恋愛関係じゃないとダメなのでしょうか。そもそも特定のひとりと生涯一緒にいなければならないのでしょうか。

    アウティング(他人の秘密を本人の許可なく別の人にいうこと)

  • 一橋大学社会学部佐藤文香ゼミでジェンダー論を学ぶ学生が実際に投げかけれてきたジェンダーに関する様々な29の問いに対して、大学生の視点で回答。回答は三部構成になっていて、「ホップ」は「ジェンダーについて聞いたこともない」という初心者向け、「ステップ」はジェンダーの授業でおよその知識はもっているという中級者向け、「ジャンプ」はジェンダー研究の最新動向もおおむね理解している上級者向けとなっている。
    「専業主婦になりたい人もいるよね?」、「どうしてフェミニストは萌えキャラを目の敵にするの?」など、フェミニズムに対してありがちな批判的な問いに対して、ジェンダー論を学ぶ学生たちが真摯に答えていて、良い企画だと感じた。ただ、完全に納得いったかというとそうではない部分も散見された。

  • 初心者にとってわかりやすく、入門書に最適だと思った

    ジェンダーに関する様々な問題の背景には
    「男性/女性はこうであるべき」
    「〇〇は男性/女性に特有のものだ」
    といった誤った神話があると思った

    私も時々、「男/女らしくないなー」など感じてしまう時があるが、男女に囚われず物事を考えたい

  • 男女平等と聞いて育ったのに、社会で未だに女性の感じる違和感について家族にわかってもらいたかったので買いました。同時に、男性が親や社会から受けてきて自分の一部となってしまったプレッシャーについても。
    とても真っ直ぐに書かれているので、嫌な気持ちなく読んでもらえるかなと期待してます。

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著者プロフィール

井戸晴香/上野真梨子/川平朋花/ケゼレー・クレア/児玉谷レミ/齋藤和泉/シム・ヒョナ/杉山貴郁/鈴木海渡/鈴木由佳理/照井琢見/田豊瑞/仲遥/永山理穂/パク・ソンジェ/平松廣大/前之園和喜/松永ちひろ/村川優希/山本美里/渡部まりな

「2019年 『ジェンダーについて大学生が真剣に考えてみた』 で使われていた紹介文から引用しています。」

一橋大学社会学部佐藤文香ゼミ生一同の作品

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