子どものまちのつくり方 明石市の挑戦

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  • 明石書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750347882

作品紹介・あらすじ

公共事業やバラマキはいらない。子どもを核としみんなにやさしいまちづくりが人口・財政・経済の好循環を創る。発想の転換で旧弊を廃した自治体経営、持続可能でユニバーサルな施策で時代を先導する明石市長が描く誰ひとり置き去りにしない共生社会の未来図。

感想・レビュー・書評

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  • 正に圧巻の一言。役所で、ここまで柔軟な政策が取れるとは考えもつかなかった。政策も住民に沿った考え方だし、地域特性を踏まえたものが多い。
    印象に残った言葉として
    ・地域特性と住民層を考えて、明石市は子育てに特化した政策が多い。他の自治体が全て同じ政策をとる必要はない。
    ・全ての自治体それぞれがフルパッケージ(図書館、病院、商業施設)である必要はない。それぞれの住民のニーズを考えることが重要。

    市長の考え方一つ一つが納得のできるものであり、今後の参考にしたい。

  • 【既読レビュー】

    図書館貸出。

    泉市長のツイートで日頃からささやかながら背中を押されている。

    久しぶりに明石市の生の雰囲気を体感しようと思ったのは、市長退任の発表があったから。

    昨年秋、電車から見覚えのある明石駅で何年かぶりに下車し、自分の目で生の現場を確かめた。

    見違えるぐらいの自然体かつ生き生きしている市民の姿を見ながら

    これが、泉市長が実質的に行っていたことの空間が存分に漂っているのを肌で体感していた。

    だからこそ、またいづれ、図書館の空間に出向けるようにしようと、図書館カードを作り、また、別の着眼点で楽しみができた。

    この著書に書いていること全てそのままが反映されているといっても過言ではないことを。

    海外の施策も随所に分析しながら、上手く市政の施策に組み込んでいく、芸達者そのものだとつくづく感じ入る。

    [人に光を]

    [サイレントマジョリティー]

    [経済的負担を減らすこと]

    [適材適所の人事]

    [フェイクではない、生のありったけを明石市を分かりやすく発信していく戦略]

    [教育・文化]

    [質と量 両方のバランス]

    [過度にならない、適宜な公的支援]

    [行政=市民の一体化]

    [多様性を母体にした、個別の対応ができるように構築]

    [図書館=本・文化の充実度]

    [発想の転換 知恵 創意工夫]

    [自らの足元=現場重視の施策]

    [現状の政治、行政についてのメス]

    [削減する 削減しない 現状に即した、線引きを含めたバランスある予算]

    [ハコモノは作らない その理由]

    [共在感]

    [タテワリ廃止の理由]

    [オール・フォー・オール]

    [どうすればできるか]

    そりゃ、人口増えるのは当然の成り行きですよ。

    地元・兵庫県民にとっても誇らしく思えますから。

    いかに、投票の重みを改めて感じますね。

    大阪とは、真逆=正反対。それだけは、はっきりと言い切れる。それだけです。

    だから、1月末の市長最後の著書は、しっかりと保存したく予約完了。また、こちらで記します。

  • 「こどもを核としたまちづくり」
    「やさしい社会を明石から」
    の2つをスローガンに、明石のまちづくりに疾走した元明石市長が書いた本。

    子ども医療費を所得制限なしで完全無料化
    第二子以降の保育料完全無料化
    離婚後の子ども養育支援
    無戸籍者への支援
    児童扶養手当を毎月支給
    児童養護施設・児童相談所をまちなかに設立

    これらのことを実施したことで、明石市は、定住人口・交流人口・出生数・税収入がV字回復した。
    特に、子育て世帯の20~30世代の人口が流入したおかげで、経済活性化にも繋がっている。
    関西圏で、学ぶ(大学)稼ぐ(企業)は周辺の大都市に任せて、「暮らすは明石市で」というメッセージを発信し続け、ようやく成果に結びついてきた。

    当初は、子どもを中心に政策を進めてきたが、全ての人が暮らしやすいまちづくりを目指している市長は、障がい者、お年寄り、犯罪被害者、刑務所出所者の支援にも次々と乗り出している。

    その信念となっているのは、一人も取りこぼしがない、100%の市民が安心安全に暮らしていけるまちづくりを目指していること。
    有言実行のそのブレない姿勢は素晴らしい。
    ここにたどり着くまで数々の困難もあったと思うけど、今や日本中が注目している。

    従来の国、都道府県にべったりの市町村行政から一線を画して、自立した、そのまちにしかできない、まちづくりを目指しているところが斬新。
    やろうと思ってもなかなか出来ることでない。
    日本中の各市町村も、早くこのモデルにならってほしいと願う。

    パワハラにより辞職されたのが本当に残念。
    やはり決断力も実行力もある人というのは、エネルギーが強いから、怒りのエネルギーも強くなってしまうのだろうか。

  • 自分は言葉にすることが下手ですが、思っていたことを「言葉」にしてくれたのでとてもスッキリしました。

  • 所得制限撤廃は理想ではあるけど財源が…と安易に思ってしまうが、スクラップ&ビルドを徹底し、必要な施策に予算を充てている自治体があるとは…。しかも、それをトップ主導でやれているのが羨ましい。トップが変わらなければ無理。という悲しい事は言いたくないし諦めたくないけど、実際ここまで熱い思いを持って動ける首長はどれだけいるのだろうか…。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/773101

  • 泉市長の実践。読もうと思ったきっかけは、明石市では離婚後の養育費の支払いに関し、子どもに確実に支払われるよう独自の取組みをしている(払われない場合に市が立替え払いをして、その後市が支払い義務者に請求するという取組み)と知ったためでしたが、くしくも、最近感銘を受けた井手英策さんの持論と共通点が多く、この本の最後には対談も掲載されていて驚きました。
    市の立替え払いの仕組みは、犯罪被害者の損害賠償請求権にも行っているそうです。300万円を上限に立替支援金として支給して加害者から求償するという制度です。

    所得制限をかけると大多数の中間層の反発で理解を得られない、分断を生むから、所得制限はつけない。現金給付ではなく、意図した使い道に確実に使われる、現物給付。このあたりは、井手さんの考えに相当近いです。
    珍しいところでは「本」を大変重視しており、駅前の一等地につくった施設に、図書館と大型書店を両方入れるなど。
    企業誘致や産業振興をしたところで効果はたかが知れている、公共事業より人が集まることで生まれる需要による民間事業で潤うことはできる、と予算にプライオリティをつけて、子どもに、困っている人に、重点的に予算を配分して政策を行っていく。凝り固まっている予算配分を、福祉へ重点的に移行させる、変動が非常に困難だろうと想像するところですが、最初は何とか勢いつけて実施にもっていって、ついていくる結果で説得する。
    報道レベルでしか知りませんが、泉市長はこういうように、結構直感的に「これが重要だ」というところをグイグイやっていく方法で、これまで成功している人だと思います。(とはいえ最初の5年間は相当しんどく、次第に成果がリアリティをもって受け取られはじめた、といいます)

    「子どもに優しい街」からはじめ、今は「誰もがどこかで何かしらの恩恵を受けられる」というパッケージ化した施策に移行しているとのことです。井手さんの考えを、実際にこんなふうに実行に移すこともできるのだ、と希望を持てました。

  • 人口と出生数が減少する現状において、それほど大きくはない一地方都市として人口増・出生数増・税収増を達成した、刊行時点で「関西唯一の人口V字回復の街」である明石市政の取り組みが、主導する泉房穂市長自身によって綴られた、「暴言市長のもうひとつの顔」とも言えるのが本書です。

    姉妹書として、ほぼ同時に刊行された『子どもが増えた! 明石市 人口増・税収増の自治体経営』が存在しますが、こちらは識者との鼎談が基本となっていてゲストによる社会批評なども含まれそれはそれで興味深くありますが、現明石市政の取り組みを概観する目的であれば本書が適役です。近隣在住者の明石市移住を検討する材料にもなることでしょう。

    明石市の施策と特色をアピールすることが本書の狙いであることと同時に、障害者の弟をもつ兄として、読書家として、弁護士としてなど、市長の人生経験が施策にも色濃く反映されていることが読み取れます。

    以下は各章に関してのキーワードや概要、所感などです。

    ----------
    『序章 いま、明石が熱い』
    →現明石市政の特色を概観しており、以後を参照するかの判断基準になります。
    →詳細は次章以降に譲ることとなります。

    『第1章 子どもを核としたまちづくり』
    ・子ども医療費を所得制限なしで完全無料化
    ・第二子以降の保育料完全無料化
    ・保育士へのサポート体制
    ・県内初の30人学級
    ・「所得制限がないからこそ中間層が引っ越してくる」

    『第2章 すべての子どもたちを、まちのみんなで』
    →様々な点で恵まれない子供たちへのサポートに関する章です。
    ・離婚後の子どもの完全医療費無料
    ・駅前に児童相談所を設置
    ・虐待防止対策
    ・大々的な里親の公募

    『第3章 やさしい社会を明石から』
    ・ろうあ者や車いす利用者への対策
    ・JR明石駅ホームドア設置
    ・犯罪被害者支援と加害者厚生支援
    ・排外主義の対極にある「おかえりなさい」が言えるまちづくり

    『第4章 本のまち、明石』
    →市長の読書家としての想いを感じます。
    ・駅直結再開発ビルの市民図書館と大型書店の同居と相乗効果
    ・図書館の利用市民層の広さ/移動図書館/ベストセラーでなく良書を厳選

    『第5章 発想の転換による自治体経営』
    →本書中でもっとも地方自治や一部は国政に対する筆者のスタンスと想いが率直に述べられています。
    ・フルパッケージはいらない
    ・全国一律は成り立たなくなっている
    ・私は「中負担・高福祉派」
    ・標準家庭像の認識のズレ
    ・組織再編とスリム化
    ・「民間並みの経営努力をすること」

    『対談 オール・フォー・オールのまちはつくれる』
    →財政社会学、財政金融史を専門とする経済学者・井出栄策氏との対談です。
    →実質的には対談というよりは井出氏から泉市長への解説付きインタビューに近く、批判的要素は見受けられず、学者から明石市施策にある普遍性のお墨付きを頂くための章といった印象を受けます。

  • まばら読み。

    まちづくりと離れたところで
    いいことが書いてあったのでメモ。

    冤罪の多くは、
    親に「正直に話しなさい」と言われたところから始まる。

    弁護士だった時代にそうした冤罪を見たことにより
    自分は絶対に弁護人の言うことを信じたそう。

    「正直に話しなさい」って
    もう信じてないよね。
    自分の子だけは、絶対信じようと心に誓った。




    本題のまちづくりに関しても
    芯がブレずに徹底している。

    弁護士時代に離婚弁護等を経験したことによる
    子どもにとって不利になりかねない、
    法の抜け穴を見事に埋める政策が素晴らしい。

    例えば、離婚調停が長引くと
    その間産まれたばかりの子どもは無国籍状態らしい。
    それをカバーする政策などが書かれてる。


    孤立感を減らすべく、児童相談所を住宅街に持ってくる、
    子どもが年賀状をかけるように普通のアパートのような建物名にする、
    など、細かい気配りも。


    しかも、子どもにとっていい町にすることで
    財政を立て直し、税収もアップさせた。
    つまり、子ども投資は回収可能な政策であるということ!
    老後投資は、申し訳ないけど
    税収アップには繋がらない。
    ただの投票の票集めのみにしか、繋がらない。

    たくさんのまちで、
    こうした未来を作るために動く人がリーダーとなってほしいなぁ。

    こんな町に住みたいなぁ。

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著者プロフィール

1963年明石市二見町生まれ。
82年明石西高校を卒業し、東京大学に入学。
東大駒場寮の委員長として自治会活動に奔走。
87年東京大学教育学部卒業後、NHKにディレクターとして入局。
NHK退社後、石井紘基氏(後に衆議院議員)の秘書を経て、司法試験に合格。
97年から庶民派の弁護士として明石市内を中心に活動。
2003年、衆議院議員となり、犯罪被害者基本法などの制定に携わる。
11年明石市長選挙に無所属で出馬し市長に就任。
全国市長会社会文教委員長。社会福祉士でもある。
柔道3段、手話検定2級、明石タコ検定初代達人。

「2019年 『子どものまちのつくり方 明石市の挑戦』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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