姉妹都市の挑戦――国際交流は外交を超えるか

著者 :
  • 明石書店
3.00
  • (0)
  • (0)
  • (1)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 12
感想 : 1
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784750346250

作品紹介・あらすじ

1950年代に始まった日本における姉妹都市交流。外国人の存在自体が珍しかった当時の日本で、人々はなぜ姉妹都市交流を行おうと思ったのか? 人と人との顔を合わせた交流である姉妹都市交流の原点を辿り、あらたな国際交流のあり方を示すと同時にその意義と可能性を明らかにする。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 姉妹都市交流の変遷を掘り起こすと同時に、その交流はどのような影響を地域社会、そして世界に与えてきたのかを、現状・事例とあわせて描き出している。米国、中国、ロシア、韓国、イスラム圏とのそれぞれの姉妹都市交流など、様々な事例が取り上げられている。姉妹都市交流に焦点を当てた書籍は、他にあまり例がなく、貴重である。
    日本で姉妹都市交流が始まったのは1950年代であり、当時の人々は驚くほどの積極性を持って海外との交流に取り組んだという。原爆が投下された長崎市が、日本で初めてアメリカと姉妹都市を結ぶ第一号になり、日米の国民的な和解のシンボル的な意味をもつようになったというのは初耳だった。
    姉妹都市交流の地域社会のメリットについても、経済交流、まちおこし交流、課題解決型交流の3点にわたって触れられている。そして、自治体の国際活動は地域住民や地域社会の発展のために行われるべきものであるとして、姉妹都市交流は、地方自治体と市民とのパートナーシップによって行われるべきであると指摘している。
    評者は、地方自治体の姉妹都市交流については、その効果や地方自治体の施策としての優先順位といった点から懐疑的であったが、本書を読み、その歴史的意義や地域社会に与える効果について一定の理解はすることができた。
    しかし、本書でも指摘されているように、姉妹都市交流の効果を測定することは非常に難しいということを再認識した。また、歴史的沿革等から姉妹都市交流をするならまだしも、わざわざどこか姉妹都市交流をしてくれるような海外都市を探してきてまで姉妹都市交流をするのは本末転倒なような気がした。住民の国際理解を深める活動に意義はあるにしても、姉妹都市交流だと特定の国・都市に交流が限られるし、本書でも指摘されているように、特定の住民に影響を与えるにとどまるケースが多いように思われる。少なくとも、本書がいうように、姉妹都市交流を通じて何を達成したいのかは明確にすべきだろう。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

(公財)日本国際交流センター 執行理事
兵庫県庁で10年間の勤務後1988年より日本国際交流センターに勤務。多文化共生、移民政策、草の根の国際交流研究、日独フォーラム、アジアコミュニティトラスト、フィランソロピー活動など多様な事業に携わる。2003年よりチーフ・プログラム・オフィサー、2012年より執行理事。現在、文化庁文化審議会日本語教育小委員会委員。総務大臣賞自治体国際交流表彰選考委員、内閣官房地域魅力創造有識者会議委員、新宿区多文化共生まちづくり会議会長、第一回国際交流・協力実践者全国会議委員長、慶應義塾大学等の非常勤講師等を歴任。著書に『人口亡国――移民で生まれ変わるニッポン』(朝日新書、2023)、『移民がひらく日本の未来』(明石書店、2020)、監訳書に『スモールマート革命』(朝日書店、2013年)、編著書に『国際交流・協力活動入門講座Ⅰ~Ⅳ』(明石書店)、英文共著書にAsia on the Move(日本国際交流センター、2015年)等がある。慶應義塾大学法学部卒。米国エバグリーン州立大学公共政策大学院修士。

「2024年 『自治体がひらく日本の移民政策【第2版】』 で使われていた紹介文から引用しています。」

毛受敏浩の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×