「大学改革」という病――学問の自由・財政基盤・競争主義から検証する
- 明石書店 (2017年7月25日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784750345468
作品紹介・あらすじ
昨今の大学改革は正しい方向に進んでいるのか? 大学だけ取り出して大学論を議論するのは危険だ。なぜなら、大学は日本社会のシステムと密接に結びついているから。国家(政府)の押しつけではない、民主主義社会を支える装置としての大学のあり方を提言する。
感想・レビュー・書評
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大学とは何なのか?どのようにして成立してきたのか?昔はどんなんだったのか?「学問の自由」「大学の自治」とはどういう意味なのか?日本で進行してる「大学改革」とは何なのか?今後どうなるのか?どうすべきなのか?大学関係者、特に国立大関係者なら知りたいこと、知っておくべきことが大変良くまとまっていてとても参考になります。やらされ感満載の現在の上(政府・財界)からの「大学改革」について単に愚痴を言ってすごすのではなく、批判するにしても同調するにしてもこれぐらいの知識を持っておく必要はあると感じました。断片的に見聞きしたり読んだりして知っていた情報も多いのですが、やはり総括され言語化されてまとまっているので頭の中が整理されます。ここで紹介されている事実を自分で調べてまとめ、起きていることの文脈、道筋を明らかにしていく労力は大変だと思う。こういう書籍を読むと、いわゆる文系の知性が重要であることを再認識させられます。「ゆとり教育」の本当の目的について、本書168~169ページに紹介されている、作家・三浦朱門さん(2002年の学習指導要領改訂に教育課程審議会会長として関わる)のインタビュー発言が非常に衝撃的で面白かった。衝撃的だけど非常に正直な発言で、分かりやすい。「できん者はできんままで結構。(中略)戦後五十年、落ちこぼれの底辺を上げることにばかり注いできた労力を、できる者を限りなく伸ばすことに振り向ける。限りなくできない非才、無才には、せめて実直な精神だけを養っておいてもらえばいいんです。(中略)それが「ゆとり教育」の本当の目的。エリート教育とは言いにくい時代だから、回りくどくいっただけの話だ。」。たいていの政策な額面の説明は politically correct な説明なので目的が良く分からないのだが、良し悪しはおいておい、このような本音のところを語ってもらえると理解はできる。本書ではこのような現状のもと、大学はこれからどうあるべきかという著者の案も述べられています。すぐには実現できないかもしれないが、単に大学のみ変えることはできないので、人口減などいろいろと問題を抱える日本社会全体の対応としてゆっくりでも変えていく必要はあるでしょう。こうなるとやはり結局は政治の出番かもしれません。国民全体が主人公の政治という良い意味での。
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◆5/24 シンポジウム「自由に生きるための知性とはなにか?」と並行開催した「【立命館大学×丸善ジュンク堂書店】わたしをアップグレードする“教養知”発見フェア」でご紹介しました。
http://www.ritsumei.ac.jp/liberalarts/symposium/
本の詳細
https://www.akashi.co.jp/book/b308606.html -
ついに「病」認定。我が国を含めた世界の大学の歴史的成り立ちと社会との関わりを解き明かし、大学の使命を再確認する。読み応えあり。
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☆ふむ(著作)コピペと言われないレポートの書き方教室
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大学は民主主義社会を実現するために存在していると筆者はいう。そして、大学はそのための学びと対話の場であり、学生は「調べ,知り、考察し、話し合い、共有できる知識を作っていく」技法を学ぶのである。
そういう哲学から、今日実施されている「大学改革」は全く間違っていることを、様々な角度から検証していく。日本における大学を議論する際の基本文献の一つだろう。 -
世間で言われる大学改革は本当に意味があるのか。
欧米と日本の大学の歴史にふれ、なぜ大学の学問の自由が保障されるべきなのかから始まり、選抜機能など大学(受験)教育以外の機能についてもふれ、そこからあるべき大学教育は何かを説いていく。
これは就活とも重なるところだが、受験の競争が厳しく人々の人生が追われてしまうのは受験システムの問題というより社会保障などの社会システム全体の問題なのだと思う。競争がうまく行えればよくなるという考えは危ういと感じた。
大学だけに留まらず教育、社会を考える上での必読書。 -
東2法経図・開架 377.1A/Y24d//K