- Amazon.co.jp ・本 (655ページ)
- / ISBN・EAN: 9784652077993
感想・レビュー・書評
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『ベルリン1919』『ベルリン1933』に続く三部作完結編です。『ベルリン1919』の主人公ヘレとその娘エンネ、『ベルリン1933』の主人公ハンスとその恋人ミーツェ、その他大勢の登場人物のその後が明かされます。20世紀前半の激動のベルリンを彼らと駆け抜けてみてください。
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東からソビエト軍が迫り、西からわ米英軍が迫る大戦末期のベルリン。労働者階級のゲープハルト家の孫娘のエンネの眼から見た敗戦直前と直後のベルリン。米英軍の空襲にベルリンの市街は廃墟となった。そしてソビエト軍がやってくる。ナチに賛同していた人が一転としてソビエト軍にすりよる。人間の汚く嫌な面をいやというほど見た。自由の為に戦って強制収容所に入れられたエンネの父のヘレ(ヘルムート)は12年に及ぶ収容所生活からようやく解放されてアッカー通り37番地に戻ってきた。しかし実際にいままで見たことのない父親をお父さんと思えるのかと悩むエンネ。
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転換期三部作、どれも大変面白かった。ひとりでも多くの人に読んで欲しい。
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ひたすら防空壕の中で耐え忍ぶシーンが恐ろし過ぎる。
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二週間くらいちょこちょこ読んで、きのう読了。コルドン「ベルリン三部作」最終巻。
マルタの登場に、ああやはりこうなってしまうのか、と思う。ヘレのことばはたしかに「正しい」、けれど、同時にマルタのことばにも真実がふくまれている。ヘレは兄、ムルケルは弟、そしてマルタは妹だから。マルタはきっと謝らずにはおれないだろう。でも、ナチを生んだドイツであろうとソ連に対して不正を不正という必要があるというなら、マルタにもヘレに、せめてひとことでも言い返させてあげてほしかった。ギュンターの妻でなく妹として、いつでも邪魔者として置いていかれた者として。
とはいえ視点人物は十二歳のエンネ。これまでの二作と違い女の子だからか、それとも時代がそれだけ下ったせいか、おじいパの「教育」はそれほど色濃くない。明るい時代をしらないこどもは、これからをどう生きていくんだろう。
冷戦を予感させるソ連とアメリカの支配体制の違い。ソ連のうしろ暗さ。ベルリンの物語は、まだまだつづく。 -
1945年。ドイツが戦争を始めて6年目。ソ連軍、英米連合軍が迫るベルリン市内には尚、250万人の人々が生きていた。日夜空襲を受け、市街地の大部分を破壊され、それでもナチ政権は断固抗戦を唱えた──。
ベルリンのヴェディンク地区、アッカー通りのアパートで祖父母のルディとマリーによって育てられたエンネは12歳になっていた。
米英軍の空襲とソ連軍との市街戦から逃げ惑い、何よりナチに支配された日々は5月7日、ドイツの無条件降伏・ベルリン陥落によって終わりを告げ、そして、強制収容所から父親ヘレが生還する。
遠くへ去ったまま還ってこない人々。ファシズムに抵抗し殺された家族。戦後の混乱の中で出会う不幸。自由だけど孤独な子どもたち。支配され、蹂躙され、破壊され、失ったものはあまりに多く、取り戻せるものは少なすぎた。しかし、希望を失っては生きてなど行けない。
12年間の空白を越えて、エンネとヘレは瓦礫と廃墟の町、その空に、ピンク色の凧を飛ばす。
それは、彼女が生まれて初めて見たベルリンの、本当の春だった……。
共産主義者を貫いたヘレ。ナチへの抵抗運動に身を投じたハンスと恋人ミーツェ。豊かな生活を望み、突撃隊員と結婚したマルタ。成人し、出征したムルケル。過酷な時代を生きるゲープハルト家三代に渡る人々を軸に描いた「転換期三部作」完結編。原題は「はじめての春」。
1919年のドイツ革命から第二次世界大戦の終わりまでを描く「転換期三部作」ゲープハルト家の物語はこれで終わりですが、ドイツはこの後東西分裂し、その象徴であるベルリンの壁が崩壊して1990年に再び統一国家となるまでに、更に長い時間を要するのです。 -
転換期3部作の3作目。
時は1945年春、舞台はベルリン。
ドイツの敗北が決定的になる中、ナチス独裁政治・戦争によってバラバラになっていたゲープハルト一家とそれに繋がる登場人物たちが、長い離散の末再会する(もちろん、二度と再会できない人物も多い)。
しかしその再会は単純に喜ばしいだけのものではなかった。
戦争とナチス独裁政治を、それぞれが生き延びる中で身に付けたものの考え方、見方、立場、人生観・・・、多くのことが違ってしまった。
たとえ血縁といえども、埋めるのには時間のかかる溝が出来てしまっている。
それでも分断され、荒廃した祖国を復興させる、あるいは自分たちの生活を取り戻すという希望だけは一致している。それは一筋縄ではいかないことは分かっているが、「希望をなくしたら、人生おしまい」。
このような終戦直前、および直後のドイツの民衆がおかれた混沌とした状況を、第1作目の主人公、ヘレの娘であるエンネの視点から描く。
エンネ自身、ナチスが政権を掌握した以降に物心がついた世代なので、彼女の目線ももちろんある種の色眼鏡がかかっている状況である。
その彼女が、このドイツに起こったこと、周りの人間に起こったことを理解していこうとする姿勢を通して、読者はこの時代の雰囲気を理解していくことになる。
この3部作は、YA文学の位置づけを与えられている。
自分が高校生くらいの時に、たとえばこの本を読んでいたら、どう感じていただろうかと、誰の立場に肩入れしただろうかと、少し時間を巻き戻したい気になった。