検証 長篠合戦 (歴史文化ライブラリー 382)

著者 :
  • 吉川弘文館
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  • Amazon.co.jp ・本 (247ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784642057820

感想・レビュー・書評

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  • 著者の前作「長篠合戦と武田勝頼(敗者の日本史9)」の続編。
    前作で検討しきれなかった、長篠合戦の通説やそれに対する批判の再検討をまとめた一冊。続編。
    特に、鉄砲の装備、武田騎馬軍団、馬防柵、軍勢や戦術について検証している。
    結局勝敗を分けたのは、勝頼が騎馬軍団を頼りに突撃を繰り返したという愚将だったからではなく、鉄砲と弾薬、火薬の物量の問題であったようだ。

  •  長篠の戦いについては、織田信長の鉄砲3段打ちで武田騎馬隊を打ち破ったと言われている。旧日本陸軍参謀本部編の日本戦史にもそう書かれているとのこと。
     この通説に対しては、以前からも異論があった。本書は、戦国時代の武田氏をおもな研究フィールドとしている作者による研究結果である。それによると、武田勝頼も鉄砲は使っていたが、織田軍との鉄砲ならびに弾の量の多寡が勝敗を分けたと観ている。つまり海外貿易も含めた国力の差に因ると言うのだ。
     織田信長の天才性は発想や行動の革新性にあるのではなく、相手よりも人・金・物を多く揃えて臨むという常道を理解してそれができる体制を整えたところにあるのだろう。桶狭間の戦いのような小が大に挑むような戦いは2度とやっていないのだ。小が大を、弱が強を倒す話は源義経や楠正成のように日本人は好きだが、やはり最後は勝てないのだ。
     旧日本軍も、本書のように客観的に研究して勝敗の真相に迫っていれば、その後の戦いに臨む姿勢も違っていたかもしれないと妄想が広がってしまうのでした。
     

  • 武田騎馬軍団の脅威は、戦国大名は皆さん全員が感じていて、我が身をもって味わった家康の一生の思い出と言えるであろう最強軍団です
    一方、同一視点の著作「鉄砲隊と騎馬軍団」で知られる鈴木眞哉先生は、ポニーに乗っておどける中年武者のイラストを交えた著作で、日本の騎馬軍団の弱弱しくも絵空事である実態をバラしており、両者の戦いも興味深いところである
    正直≪≪平山優≫≫先生の著作の方が、文献から実相を読者に見えてくれて、只の主張と異なり我々の心に響く
    実際に動画で見た事があるが、鎧武者を乗せた小ぶりの馬が凄まじい勢いで疾駆する姿!
    アレから逃れられるとは思えない
    平山先生は、騎馬戦法の具体的な様子を紙面に再現し、信長が「御狂」として、軍兵の中に騎馬の突入を想定した軍事訓練の様子や、毎日の様に駆け巡る鍛錬を積まない馬は実にひ弱で、酷使すれば死ぬこともあるという実情まで披露してくれた
    (いい本が世の中には多いなあ、早く仕事ヤメテ本三昧の制海に浸りたい・・・ステイホーム、それはアタクシの希望、理想の天国)

    Nスペで取り上げられた「長篠の戦」鉄砲隊VS騎馬軍団として知られる戦いをどのように描くか興味深かったが、外国(世界)を見据えた戦国時代検証となり弾丸である鉛の成分から東南アジアとの南蛮貿易に主眼が置かれていた

  • [評価]
    ★★★★★ 星5つ

    [感想]
    タイトルに「長篠合戦」とあるが単に長篠合戦に関わる資料を検証しているだけではなく、織田・徳川、武田両軍に関連した多くの資料を検証し、両軍の経済力や軍事力を導き出し、長篠合戦への結果へと繋がっていく部分は面白く読めた。
    また、冒頭の3家の資料が成立した時代と経緯、それによる資料の信憑性に関する解説は他では余り知ることができないことだったので大変にためになった。

  • 勉強になりました!

  • 勝敗を分けた本当の理由、今一度史料と向き合い徹底検証。
    武田騎馬軍団を、織田・徳川の三千挺の鉄炮隊が三段撃ちで撃破。近年、その通説が揺らいでいる。両軍の鉄炮装備、武田騎馬衆の運用、兵農分離軍隊の実態など、合戦の諸問題を徹底検証。長篠合戦の真相に迫る話題作。(2014年刊)
    ・長篠合戦をめぐる諸問題―プロローグ
    ・長篠合戦をめぐる史料
    ・織田・武田両氏の鉄炮装備
    ・武田氏の騎馬衆と両軍の陣城
    ・長篠合戦を戦った軍勢
    ・長篠合戦像の空白は埋められるか―エピローグ

    うーん面白い。前著「長篠合戦と武田勝頼」と本書は各種史料及び先行研究を駆使し、従来説を大きく塗り替える挑戦的な内容である。
    私には内容の是非を判断する能力はないが、説得力を感じた。
    著者は「本書の評価は江湖に委ねる」とし「大方の批判は覚悟の上」としている。ところどころで丁寧に典拠を示している事に、著者の覚悟を感じた。まさに渾身の一冊と言える充実した内容である。

    本書により「長篠合戦」の研究が、新しい局面に進んだと言っても過言ではない。現時点では仮定や推論に留まる部分については、より一層の研究の進展が望まれる。後続研究は、本書で提示された史料解釈を咀嚼し、乗り越える事が必要となろう。
    長篠合戦に留まらず、東国の合戦がどの様に行われたのかを知る上でも有益であり、強くおすすめしたい。

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著者プロフィール

平山優(ひらやまゆう)
一九六四年、東京都生まれ。立教大学大学院文学研究科博士前期課程史学専攻(日本史)修了。専攻は日本中世史。山梨県埋蔵文化財センター文化財主事、山梨県史編さん室主査、山梨大学非常勤講師、山梨県立博物館副主幹、山梨県立中央高等学校教諭を経て、健康科学大学特任教授。二〇一六年放送のNHK大河ドラマ「真田丸」、二〇二三年放送のNHK大河ドラマ「どうする家康」の時代考証を担当。著書に、『武田氏滅亡』『戦国大名と国衆』『徳川家康と武田信玄』(いずれも角川選書)、『戦国の忍び』(角川新書)、『天正壬午の乱 増補改訂版』(戎光祥出版)、『武田三代』(PHP新書)、『新説 家康と三方原合戦』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『徳川家康と武田勝頼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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