遺伝マインド --遺伝子が織り成す行動と文化 (有斐閣Insight)

著者 :
  • 有斐閣
4.20
  • (7)
  • (10)
  • (3)
  • (0)
  • (0)
本棚登録 : 96
感想 : 8
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (236ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784641178052

作品紹介・あらすじ

四〇億年の生命進化の来歴を刻み、現存する一七〇万種の生物多様性の関連をつなぐ遺伝子。遺伝マインドとは、人間も生物の一種として遺伝子の影響を受けており、心のあらゆる側面にそれが表れていると考える姿勢や態度を意味する。行動遺伝学の知見を土台に、環境決定論でも、遺伝決定論でもない、いま求められる新しい遺伝観、および環境と社会の見方を提示する。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 自分用メモ。
    大学3年の7月に読んだ本だった。当時とても感銘を受けた本で、名著と思っていた。いつか読み返したいと思っていた。最近友人に貸すことがあったので自分も読み返してみた。

    読みながらの印象:「あれ、こんなに読みにくい本だったっけ…?」「なんか余談が多い…」「比喩がわかりにくい…」「同じことの言い換えが多すぎる…」「憶測とか推察が多い…」「例えが衒学的でちょっとサムい…」

    あるパラグラフで言っていることと、次のパラグラフで言っていることの論理的接続がよくわからないことが多かった。あるパラグラフの原因を次のパラグラフで説明しようとしているようだが実はそうなっていない、少なくとも直接に原因解説しているようには読み取れない(話が横道にそれているだけ)、みたいな文章構造が多く、よく混乱する。

    結局何が言いたかったのかはちょっとよくわからなかった。自分が読み取った結論は、「遺伝決定論も環境決定論も間違っていて、遺伝と環境の相互作用で個人の能力とかが決まるよ」というあたりだろうか。

    自分的に刺さったのは以下の考え。

    ・P.38、P.184など各所 ある特定の能力や疾患が単一遺伝子で説明されるということはとても考えにくい。例えば「野球がうまい」とか。そういった特定の能力はその個人の複数の認知的特性・身体的特性・パーソナリティ的特性が総体的に力を発揮した結果として構成されているはずであり、それらは複数の遺伝子が協調して発現しているから。
    これを遺伝子には「前文化性」があると表現している。人が名前をつけた能力・疾患などが何らかの遺伝子のよってもたらされているだけであって、遺伝子側からするとその能力・疾患をもたらすためにあるのではない。
    「野球がうまい遺伝子」があるわけではない。特定の遺伝子の組み合わせが「野球がうまい」と呼ばれるようになっただけである。逆に、別の遺伝子の組み合わせはそれに名前がないのなら何とも呼ばれない。
    ・P.102 ノコギリソウの例。標高の低い土地で、背が高く育つ種から低く育つ種までいくつか種類があったとき、標高の中程度の土地、標高の高い土地で育てると、低い土地で育てたときに期待される背の高さの順位にならない。遺伝子は環境と相互作用する。
    ・P.105 環境の自由度が高いほど遺伝の影響が現れる。自由に遺伝子が発現できる状況があるから。薬物中毒になりやすい遺伝子を持っている人が、厳しい田舎の環境と都会の環境のどちらにいたほうが薬物中毒になりやすいかというと、都会だろう。
    ・P.107 環境が厳しいほど遺伝の影響が現れる。ストレスフルな環境では、その環境に特に敏感に反応してしまう遺伝的素因を持つ人に、問題行動が強く現れることがある。
    ・P.110 これは特殊才能にも当てはまるかもしれない。例えばスポーツに対して厳しく教え込まれた人が才能を発揮するとか。
    ・P.150 環境自体が遺伝で決まる、という循環構造もある(本書では循環構造とは言っていないが)。野球が好きな遺伝子を持つ親は、子供が野球に触れる機会が多い環境を自然と作るかもしれない。野球が好きな遺伝子を持つ子供は、その能力を認められて周囲が環境を作るかもしれないし、自分で素振りが楽しいと思えたりする。という意味で、環境は遺伝子によって変わることがある。
    ・P.194 環境は平等で、心構えを正そうと試みたのになおかつ生じた不平等は自己責任とされる。この不平等が遺伝的な差異によって生まれているのだとするならば、遺伝的な差異による不平等が正当化されていることになり、これは優生思想であり、差別である。
    (現代日本において、環境が平等だなんて誰も思っていないし、環境が平等だったのに不平等になったとしてそれを救う必要はないと多くの人が考えているかというと、はそんなことない気がするけど)


    当時自分が読んだときに刺さったのは一番最後の点かもしれない。現代日本にはなくね?とは思うが、この考え方自体は刺さったのかもしれない。
    当時教育社会学を学んでいた。社会学は個人の行為の原因を何かと社会に帰結させようとするが、社会以前に生物として決まっているものがあるはずでは、という違和感がその当時は常にあった(たぶん)。「社会以前に生物として決まっているもの」とはまさに遺伝子で、特に遺伝子による差異を認めようとしない近代公教育システムの欺瞞が気持ち悪すぎるし、子どもの育ちを親(≒子供にとっての社会)にばかり帰結させるのも気持ち悪すぎて、この本を読んで「よく言った!!」と思って感動したのかもしれない。
    が、なんというかその理解を得るための書籍としては内容が長すぎた。2024年4月現在、2013年7月当時からたいぶたっているので、いつの間にか自分が内面化した考え、もう自分にとって当たり前になっている考え、驚きを持って迎え入れるほどではない考えが、今の自分にとっては多いのかもしれない。

  • ふむ

  • タイトルがミスリーディング。
    遺伝子についての知識を前提にして、社会問題を考えようというような内容の本。

  • 1575円購入2011-06-24

  • 身長や疾患について遺伝の影響が大きいということについては特に問題視されることはありませんが、認知能力や性格、犯罪傾向まで遺伝の影響を受けるということになると反対派が増えると思います。
    頭の中まで遺伝の影響が大きいとなると教育や更生の意味が大きく変わり、努力や勤勉さに未来への希望が無くなってしまいます。

    本書では膨大なデータを元に遺伝の影響が細かく数値化されており、特に音楽、言語能力、数学的能力や精神疾患に遺伝の影響が強く現れるとしています。
    また、家庭環境の影響は小さく、家庭以外の影響が大きいということです。さらに、厳しい環境ほど遺伝の影響が現れるということです。

    子どもの能力は遺伝に縛られ、家庭環境は関係ないということです。唯一親ができることは、非共有環境をやんわりと与えることぐらいなんでしょう。

    確かに、40億年を生き残ったDNAの歴史を考えたときとき、人間のエゴや知識で遺伝を超えることは難しいと思いました。

  • 遺伝子は私たちの日常の行動や心の働きに影響を及ぼすのでしょうか。
    それとも遺伝子と人間行動や心理とは無関係なのでしょうか。
    本書はこの問題に取り組むものです。

    【熊本県立大学】ペンネーム:渡邊榮文

全8件中 1 - 8件を表示

著者プロフィール

慶應義塾大学文学部教授
主要著作・論文:『生まれが9割の世界をどう生きるか―遺伝と環境による不平等な現実を生き抜く処方箋』(SBクリエイティブ,2022年),『なぜヒトは学ぶのか―教育を生物学的に考える』(講談社,2018年),『遺伝と環境の心理学―人間行動遺伝学入門』(培風館,2014年)など

「2023年 『教育の起源を探る 進化と文化の視点から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

安藤寿康の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
スティーヴン・D...
トマ・ピケティ
シーナ・アイエン...
ジャレド・ダイア...
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×