「身体」を忘れた日本人 JAPANESE, AND THE LOSS OF PHYSICAL SENSES

制作 : 青山聖子 
  • 山と渓谷社
3.98
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本棚登録 : 199
感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635640022

作品紹介・あらすじ

豊かな自然と付き合う中で、身体を使って暮らしてきたはずの日本人。解剖学者・養老孟司とナチュラリストのC.W.ニコルが、現代人の自然欠乏による「身体感覚の衰え」を語る。

感想・レビュー・書評

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  • タイトルから内容を想像して手に取り、果たして期待した通りの話。でも、2人の年配の男性が、自分たちが子供の頃はこうだった、あの頃はよかったが今は駄目だ、を延々と繰り返しているようにも思えて、本筋では共感しつつも、引いた目でバランスが良くないように思った。

    一つ印象に残ったこと。今でこそ、森を守ろう、自然と共生しよう、といってもある程度共感される流れもできてきている。が、高度経済成長まっしぐらの日本で、森を守ろうと1人で国などを相手に闘ってきたニコルさんの日々の壮絶さは、ちょっと想像を超えていると思った。「鬼」と言われた、というのも肯ける。

  • 昆虫を追って暮らす解剖学者と、黒姫の自然と共に生きる作家。現代の日本人が失ってしまった「身体感覚」の大切さを語る。

    そもそも人間は体内にだって無数の細菌を飼っていて共存しているように、常に自然環境や他の生物と密接に生きているはずであるのに、そのつながりを否定してしまう「都会」という生活環境が、さまざまな問題を生んでいる。もちろんそのくらしは快適で、人間は危険や苦しみを避けてここに至ったのも事実なんだけれど、行き過ぎた都市化はやはり問題を生じている。

    養老先生が提唱しているように「参勤交代」〜都市と田舎を強制的に行き来させるような施策も、意外に面白いのかも知れない。私自身、田舎暮らしにはおおいに興味を持っているのだけれども…。

  • 帯表
    都会の人は、弱い
    帯裏
    文明社会は、気温も明るさも一定で、風も吹かないという環境をつくりたがります。それが必要なときもあるけれど、そういう環境では感覚があまり働かない。だから、自然の中で、温度も変わるし、太陽も動くという環境で、五感を鍛えたほうがいいと思うんです。
    -養老孟司
    (第五章「聞くこと、話すこと」より)
    私は、50年前の日本の自然を見て、素晴らしいと思ったから日本に住み着いた。もし、いま日本に来たら、日本人にはならなかったでしょう。日本はずいぶん変わってしまった。
    -C・W ニコル
    (第七章「これからの日本のこと」より)

  • 東日本大震災でせっかく津波から助かったのに、そのあと低体温症で亡くなった子どもとお年寄りが多かったという。それは火をおこせなかったから。燃やすものはたくさんあったはずなのに、海水に濡れたから燃やせないって思い込んでいたから
    (CWニコル P76-77)
    危機にあって必要なのは知識よりも知恵。ときに単なる知識は思い込みを生み、非常時には役に立たないばかりか、かえって命を危険に晒すことにもなる。知識は体験(=身体的経験)を重ねて知恵となる。人間は火の使用をもって他の動物と区別されるというが、火おこしの知恵を失った現代人は原始の祖先より進化したといえるのか?。。。俺も含めて、なんかヤバイな。。。そんなことを思った。

  • 人は生き物と共存している。

  •   示唆に富み考えさせられる内容でした。一気に楽しく読了しました。蛇は大丈夫でクモが苦手な養老孟司さん&クモは平気でゴキブリはダメ、空手7段のC・Wニコルさん「身体を忘れた日本人」、2015.9発行。①一個の生き物が一つの生態系、つまりシステム。一個の細胞の中には遺伝子が2万個近くもあり、蛋白質が数え切れないほど入っている。②森(過伐状態)~川~海。海は7つではなく1つ。全部つながっている。虫が激減、次は魚のはず。③人間、物質的には7年に1回完全に入れ替わっている。同じはずでないが、意識が同じだと思ってる。

  • 極地での経験と自然に向き合ってきたニコルさんと、
    戦争前後の日本人とその環境の変化を肌で感じるの養老さんが、
    戦後日本の自然環境を経験ととも懐古しつつ、現代人への提言を述べる本。


    1+1=2が納得できない人へ。
    身体を回復するというのは、違いを感じ取る感覚を取り戻すところから。

    ヒト同士、都会の中のルール。存在と言葉を同じものと捉え、概念的に組み合わせ処理していく。
    身体的、あるいは精神的にも本来の動物として感覚は、ずっと変わらない脳と身体に依然残っている。

    養老孟司さんの、人の特徴的な力の一つは、同じにする力を持っているというのは非常に頷ける。
    在るものは、全ては違うのに、同じだと考えてしまう。これが行き過ぎると、周囲がすべて数値化できたり、同じもののように感じてくる。

  • ぶっとんだおじさん2人の対談なので、話半分で受け取った方がよいですが、地震で避難しているときに火の起こし方を知らなくて凍死した話や、安全にうるさい人が増えてる(から子どもに刃物を持たせないとか公園から遊具が撤去されるとかいうことが起こっている)けど、実は一番危ないのは自分自身という自覚を持った方がいいという話などにはうなずけた。

  • 対談本です。日本の森や文明、五感教育の話まで、ポンポン話しが展開して、さらりも読めます。お二人の幼少期の話もあったりして、古き良き時代の話をご近所のご年配の方から聞いてるように思えました。悪く言えば、ご本人達の自己満足本のようにとらえることもできます。わたしは年齢的に共感できることが多くて好きです。

  • 良書!
    自分は都会暮らしを一時した経験していないので書いている内容のことはよくわかる。
    しかし現在都会に住んでいる人や経験が長い人にとってはあまりピンと来ないのだろうと思う。
    そうした所で見方や感じ方が変わるのも含めて面白いと感じる。

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著者プロフィール

養老 孟司(ようろう・たけし):1937年神奈川県鎌倉市生まれ。東京大学名誉教授。医学博士(解剖学)。『からだの見方』でサントリー学芸賞受賞。『バカの壁』(新潮社)で毎日出版文化賞特別賞受賞。同書は450万部を超えるベストセラー。対談、共著、講演録を含め、著書は200冊近い。近著に『養老先生、病院へ行く』『養老先生、再び病院へ行く』(中川恵一共著、エクスナレッジ)『〈自分〉を知りたい君たちへ 読書の壁』(毎日新聞出版)、『ものがわかるということ』(祥伝社)など。

「2023年 『ヒトの幸福とはなにか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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