海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること

著者 :
  • 山と渓谷社
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感想 : 91
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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635062954

感想・レビュー・書評

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  • 『キリン解剖記』も面白かったが、こちらは海獣(+ラッコ、ペンギン)を網羅してあるので、読み応えがあった。
    ストランディングして(浜に打ち上げられて)死んだイルカ・クジラの解剖は、やっぱりすごい。大きさもナガスクジラなどは地上の動物よりずっと大きいので、動かすにも重機が必要とかは、まあそうかと思うが、ストランディングしたものは死んでしまうことが多く(大型のクジラの場合、陸に上がっただけで自重で内臓が潰れる)、死んでかなり経ったものもある。その場合腐肉に潜って解剖するという。好きじゃなきゃできない仕事だよ。腐敗が進行してドロドロのこともあるとか。でも作業している間は気にならないって、本物。
    鯨類と海牛類については、穏やかな生き方してるなあとちょっと羨ましくなったり。特にシャチが仲間を思いやる様子には胸打たれた。生まれ変わったらシャチになりたい。
    しかし、鰭脚類のセイウチはハーレムを作って大きなオスが複数のメスを支配し、負けたオスは一生メスに近づくこともできないなど、なかなかハードなので、セイウチには生まれたくないなと思う。

    とてもいい本だったけど、一つ引っ掛かったのは、素晴らしいテクニックと知識があり、絵の技術も一流である渡辺さんという女性が非正規であるというところ。それほどの人をなぜ正規で雇わないのか。高卒だと書いてあるので研究職は無理かも知れないが、それ以外の地位を与えるべきではないか。イラストも安く描かせてるんじゃないかと心配になった。こういう人を安く使うのは日本の役所の良くないところだと思う。女性研究者が少ないのも気になるが、ほんと人を大事にしない国だなと思う。

  • 「100年先の未来にも、クジラのことを伝えたい」【田島木綿子さんinterview前編】 | 聞く | くじらタウン
    https://www.kujira-town.jp/interview/20200805/

    海獣学者、クジラを解剖する。~海の哺乳類の死体が教えてくれること~ | 山と溪谷社
    https://www.yamakei.co.jp/products/2820062950.html

    • 猫丸(nyancomaru)さん
      <訪問>「海獣学者、クジラを解剖する。」を書いた 田島木綿子(たじま・ゆうこ)さん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.ho...
      <訪問>「海獣学者、クジラを解剖する。」を書いた 田島木綿子(たじま・ゆうこ)さん:北海道新聞 どうしん電子版
      https://www.hokkaido-np.co.jp/sp/article/578556?rct=s_books
      2021/08/16
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      ◆海の「検死官」のハードワーク
      [評]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)
      海獣学者、クジラを解剖する。 海の哺乳類の死体が教えてくれること...
      ◆海の「検死官」のハードワーク
      [評]内澤旬子(文筆家・イラストレーター)
      海獣学者、クジラを解剖する。 海の哺乳類の死体が教えてくれること 田島木綿子(ゆうこ)著:東京新聞 TOKYO Web
      https://www.tokyo-np.co.jp/article/134410?rct=shohyo
      2021/10/03
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      第1回 遠くて近い海獣を知りたい:かもめアカデミー:かもめの本棚 online
      https://www.tokaiedu.co.jp/ka...
      第1回 遠くて近い海獣を知りたい:かもめアカデミー:かもめの本棚 online
      https://www.tokaiedu.co.jp/kamome/contents.php?i=1391
      2022/08/23
  • 海岸に打ち上がること、ストランディング
    これが日本全国でほぼ毎日のように起こっていることは知らなかった。時々ニュースになるくらいだから珍しいことだと

    なぜ、打ち上がってしまうのか
    なぜ、死んでしまったのか

    海洋汚染の問題、乱獲の問題にも触れていますがとても読みやすくそしてわかりやすい

    私もクジラ、シャチ、イルカは好きです
    海も好きです

    この本を読むことで、海や自然について自分にできることを考えさせられます
    もっともっと、ストランディングについて知ってもらいたいという気持ちを作者さんと同様に持つことができました

  • 海岸に打ち上げられた海の哺乳類たちを調査する海獣学者のエッセイ。
    クジラたちの生態がわかりやすい言葉で書かれており、とても楽しく読めた。
    摂餌方法とかとても興味深い。→

    クジラたちが海岸に打ち上げられる状態である「ストランディング」という言葉も初めて知ったが、意外とストランディングが頻繁に起こっていることに驚く。そして、陸に上がった彼らを調査する時間の短ささにも(内臓が溶けて爆発するとか、想像できない……)驚いた。

    あと、イルカやシャチ、ペンギンやマナティなどの話も楽しい。ペンギンの赤ちゃんの見た目の違いとか、謎が解けた感があったり!(もふもふボサボサの赤ちゃんはキングペンギンの子なのか)アシカとアザラシの違いとか、ふんわりとしかわかってなかったなぁ。今度水族館行ったら色々見てみよう。

  • 2000頭以上を調査解剖している女性研究者の奮闘と、
    海の哺乳類たちの生態、彼らを取り巻く環境問題を語る、エッセイ。
    1章 海獣学者の汗まみれな毎日
    2章 砂浜に打ち上がる無数のクジラたち
    3章 ストランディングの謎を追う
    4章 かつてイルカには手も足もあった
    5章 アザラシの睾丸は体内にしまわれている
    6章 ジュゴン、マナティは生粋のベジタリアン
    7章 死体から聞こえるメッセージ
    カラー写真の口絵8ページ。
    コラム、参考文献、ストランディングの連絡先一覧有り。
    ストランディングの情報が入れば、大荷物を背負い、東奔西走。
    クジラ等の海の哺乳類を解剖し、研究する著者が語るエッセイ。
    川田伸一郎/著『標本バカ』で、あのでっかいマッコウクジラを
    解剖する女性研究者の話があり、興味を持って探したら、
    こちらの本に巡り合いました。うん、読めて良かった!
    初っ端から始まる死体との出会い。
    現地での力技ながら繊細な解剖と調査、研究施設での「剥製」作成。
    血と汗とにおいに塗れつつも、気にしている暇が無いほどの、
    時間との戦い。それは研究者としての興味や探究心のために。
    苦心惨憺な行動のパワフルな文章から一転して、
    海の哺乳類たちの生態を教えてくれる文章は、分かり易く温かい。
    海の哺乳類に対する愛情が文中からほわほわと漂ってきます。
    ストランディングの謎、未解明な生態を、調査する熱情。
    特に環境問題の難しさも、真摯な心で語っています。
    海洋プラスチックやPOPsと、ヒトと野生動物の共存への問題は、
    身近で活動する研究者が肌で感じているんだなぁ。

  • 少し前にキリンの研究者の著書を読んでいて、テーマや本の構成の雰囲気が共通していたのでテッキリ同じ出版社の本だと思っていたのですが確認したら違いました。それはさておき。水中で暮らす哺乳類に魅せられた研究者による研究の広報本。知っているようで知らない海獣について、平易な文章で分かりやすく幅広い内容をキレイに読みやすくまとめてくれています。イルカとクジラの違いは大きさだけ、ということは知っていましたが、イルカはみんなハクジラの仲間でヒゲクジラは大型のものしか居ないというのは知りませんでした。時折痛ましいニュースとして取り上げられるクジラやイルカのストランディング(座礁)は、貴重な研究の機会であるけれどもいつどこで起きるか分からず、学術的なスキルだけでなく素早く移動手段や宿泊の手配をすることや、自治体との調整や交渉能力までが必要になるなど、当事者でないと想像できないあれこれが生き生きと書かれていて楽しく読了。自然や野性動物の研究は研究室にとじ込もって出来るものではなく、フィールドワークがあってこそ研究室に持ち帰っていろいろ精査出来るのだな、と再認識。『キリン解剖記』に続き、大変面白かったです。どちらも若い人たちに是非とも読んでほしい良作です。

  • 給食に出るクジラの竜田あげが、ごちそうだった小学生の頃、学校で捕鯨船の映画を見ました。太いロープの着いた銛を大砲のようにシロナガスクジラに何本も打ち込み、血に染まった海から巨体を船にあげ、薙刀のような刀(大包丁?)でスルスルと解体していく働く大人の姿に感動したものでした。
    お父さんが捕鯨船に乗っている同級生もいました。
    近所の中学校には、校舎のすみにクジラの標本(もちろん、作り物)がありました。小学生が5~6人またいで乗れる位4メートルほどの黒いゴムの皮膚にリアルなフジツボが着いていて目はガラスでした。
    経年劣化が激しく、黄色のスポンジが出てきていて、中学入学時には、無くなってました
    何の為のクジラだったのか?分からずじまいになりました。(東京の学校です)

    科博の分館が新宿にあった時、科博祭りで 
    イルカの解剖を小学低学年の子と見学させてもらいました。社会人になった子に
    「イルカの解剖を見たの覚えている?」と聞いたら「うわー!あの臭いニオイ‼️忘れるわけないでしょ‼️」と叫んでいました。
    まさしく、あのニオイに身を置いていられる田島先生、研究者の皆様、暑さ、寒さの中
    ありがとうございます❗ご苦労様です。

  • 浜辺に打ち上がったクジラをどのように解剖し、どんな研究に役立てているのか、とてもわかりやすく説明してある。日本では年間300頭ものクジラがストランディング(座礁)しているとは知らなかった。

    本当は人間の環境破壊が野生生物に悪影響を与えていることを一番伝えたいのではないかな?と思ったが、あえてそのことは最終章に書き、まずは読み手が海に住む哺乳類たちに関心と興味を持つことを優先してある。確かに本書を読むと、クジラのことはもう魚じゃないしむしろ親戚(哺乳類)、ほっとけない!という気持ちになる。

    またコラムで非常勤スタッフさんのスゴ技について触れてあったのもよかった。こうした「権力を持たない」人にも敬意を払えるのは、著者の田島さん自身がすてきな人だからだろうなあと思った。

  • ストランディング。海岸に打ち上げられたクジラの死体を解剖して死因を解明するのが著者の仕事。
    知識がなくても読みやすい。
    とにかくクジラは大きいので10数人で重機を使いながら解剖していく様子に驚いた。匂いのこととかリアルに書いてあった。
    大きいものに惹かれるのか、女性でこの仕事に携わっている人が多いらしい。体力的に大変そうだが、解剖して実際に得られた知識を考察していくのもなかなか深い。

  • 友人が「職場で見つかった鯨を博物館に引き取ってもらった!」と報告してきてくれて盛り上がっていた最中に、偶然本屋さんで見つけた本。
    研究者の皆さんがワクワク楽しむ様子が伝わってきて、すごく面白かった!たった一体のクジラの死体から、ヒトの営みの環境への影響が様々に解明されていく過程がおもしろい。おかげでストランディングのニュースを見かけるたびに(あの鯨から標本は取れたのかしら…ゴミにされちゃったのかしら…)と気になる日々です。

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著者プロフィール

田島 木綿子
国立科学博物館 動物研究部 脊椎動物研究グループ 研究主幹、筑波大学大学院 生命環境科学研究科 准教授。博士(獣医学)。
1971年、埼玉県生まれ。1997年 日本獣医生命科学大学(旧・日本獣医畜産大学)獣医学科を卒業後、2004年 東京大学大学院 農学生命科学研究科にて博士(獣医学)取得、同研究科の特定研究員を経て、2005年からアメリカにあるMarine Mammals Commission の招聘研究員として、Texas大学医学部(Galveston, TX)とThe Marine Mammal Center(Sausalito, CA)に在籍。2006年 国立科学博物館 動物研究部 支援研究員を経て、現職に至る。

「2021年 『海棲哺乳類大全 彼らの体と生き方に迫る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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