サハラに死す――上温湯隆の一生 (ヤマケイ文庫)

著者 :
  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635047500

作品紹介・あらすじ

サハラ砂漠は東西7000キロ、横断するルートはなく、途切れ途切れにあるオアシスを点と点で結ぶしかない。この前人未踏の単独横断に、上温湯隆は一頭のラクダとともに挑み、しかし、志半ばで消息を絶ってしまう。サハラ砂漠に青春のすべてを賭けたひとりの青年の、その想いを描いた不朽の名作である。

感想・レビュー・書評

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  • これだけの意志と行動力のある若者が、冒険の途上で命を落とすとは…残念至極としか言いようがない。
    しかし、ある意味、青春を生き切った、とも言えるのかも。

  • 1970年代、たった1人で、ラクダでサハラ砂漠を横断しようとした若者がいた。

    相棒のラクダが死に、資金も尽きて一旦は旅を中断したが、どうしても諦めきれず、再びサハラ砂漠に挑んだ。
    二度目の旅に出るまでの間に書き綴られた、若者特有の焦りや不安感、あるべき姿への欲求はよく分かる。そういう時代が自分にもあったと思う。

    多くの人は、そう思いながらも程々に折り合いをつけて生きていく方を選んでいく。
    彼は、簡単に折り合いをつけない方を選んだのだろう。

  • ほとばしる若さと焦燥。サハラ砂漠7000km単独横断という壮大な目標に挑みながらも、ラクダの扱いや食糧管理にも見られる甘さやついつい村に長く滞在してしまって自分はなんて怠惰なんだとたびたび嘆くところや大学進学した同期を思って焦ったりするところなどに「どこにでもいる、自分ともそう変わらない22歳」を感じずにはいられない。日記という形式だからこそ、ありのままの部分と自分に対してすらカッコつけて書きつけるような部分が見られ、まぶしさや恥ずかしさ、そして結末を知っているからこその切なさが胸に迫る。そして文庫版の末尾になんと『極夜行』の角幡唯介さんが文章を寄せていて、古今に渡って冒険の持つ意味が考察されていたのが良かった。「彼の命を焼き尽くしたのは、砂漠の暑熱ではなく、彼自身の情熱だったのである」という一文があまりにも重く、まぶしい。それぞれが感じることは違えどどの年代の人が読んでも心が揺さぶられることうけあいの一冊。

  • こんなエキサイティングな本には中々出会えない、心からそう思った…!

    何といってもこれが日本の普通の家庭に生まれ普通の工業高校に進んだ20代前半の若者の実録であることに心打たれる...!
    エキゾチックでエキサイティングな旅の記録がすごくよかった。現地人の幾度もの利他的な行動には心うたれるものを感じ、著者の若さゆえのトラブルや失敗を経て成長していく姿もすごく伝わってきた。

    どの本よりも「情熱」という言葉がピッタリとあてはまる、とても熱い一冊だった!

  • 20歳の原点の冒険者版という感じがした。2歳若い時に読んだら絶対冒険に出てた。
    とりあえずかっこいい。

    冒険に生きて冒険に死ぬ人はなげここまで人を魅了して離さないのか。

  • 若く全てが正直

  • 最後の展開に心がついていかなかった。何回かページをいったりきたりして冷静になる時間が必要だった。淡々と描かれるサハラの過酷さが、本人には魅力であり、心を離さない魔力のようなものがあったのだろう。そんな主人公にも母親がおり、急に物語の視点が変わったことで感覚がついていかないのが、この本の魅力なのだろう

  • 正直なところ、前半は計画の準備不足さ、無謀さ、なによりラクダが可哀想というところが目についてしまった。しかし後半から、ある意味狂気すら感じる姿と展開におもわずのめり込んだ。

  •  1974年21歳の青年がモーリタニアのヌアクショットを相棒のラクダ サーハービーとともに出発。サハラ砂漠を単独横断し、7,000キロ先のポート・スーダンを目指した。まだ誰もなし得ていない冒険はしかし、志半ばで死す、ことになる。

     彼の日記や手紙でこの冒険を再構成。21歳の青年は、生きるためにそこへ行かなければならなかった。生き続けるために、行くしか無かった。

     日記に記される「自信」「希望」「絶望」。それらが常に行き来する、それこそが「若者」であることの証。2020年が終わろうとしている今でも、1974年の若者の冒険は普遍性を持ち得ている。

     角幡唯介の解説が全てを語る。「冒険を希求しない若者など、若者であることの権利を放棄した抜け殻のような存在にすぎない。若者が冒険を放棄した時、それは人間が生きているという経験を求めることをやめたときであり、同時に人間がその能力の一部を失って、人間であることをやめる階段を一段降りたときにほかならない。」 

  • 題名のとおり、サハラ横断を試み、若干22歳の若さで砂漠の上で死んだ青年の物語である。本人が作成した日記をもとに作成されているので、無謀な冒険に挑むリアルな青年の心の叫びが記されている。
    自分を鼓舞し、崇高な理想を掲げ、自分を追い込み、一方で、自分を卑下し、不安に押しつぶされそうになる、そういった心の葛藤、揺らぎが詳細に記されていて読み応えはあった。
    サハラ砂漠7000kmをラクダ一頭で横断しようと考えたこと自体が自殺行為で、全く共感はできないが、「何かを成し遂げたい」「成し遂げれば自分は成長できる」「この挑戦が自分の使命なのだ」と突っ走る気持ちはよく分かる。
    あとがきで、「空白の5マイル」の著者兼冒険家でもある角幡さんがそのことを端的に記している。
    「人は誰でも人生に何かを求めている。自分の人生に特別な何かが起きると期待している。...自分だけのオリジナルな、創造的な人生を築きたいと願っている。そうでなければ...いったいなんのためにこの世に生まれてきたのか理解できないではないか。...自分という人間がたしかにこの世に存在していることを自分の手で確かめてみたいのだ。それができなくて、なんのための人生だろう。」
    正にその通りだと思う。

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