トムラウシ山遭難はなぜ起きたのか (ヤマケイ文庫)

  • 山と渓谷社
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784635047463

作品紹介・あらすじ

2009年7月16日、大雪山系・トムラウシ山で18人のツアー登山者のうち8人が死亡するという夏山登山史上最悪の遭難事故が起きた。暴風雨に打たれ、力尽きて次々と倒れていく登山者、統制がとれず必死の下山を試みる登山者で、現場は修羅の様相を呈していた。1年の時を経て、同行ガイドの1人が初めて事故について証言。夏山でも発症する低体温症の恐怖が明らかにされ、世間を騒然とさせたトムラウシ山遭難の真相に迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 登山の経験のある方々にも関わらず命を落としてしまう。予想できない自然の変化や自身の知識不足。小さな島に暮らす私の夢は一度は富士山を見たい!又は登山したい!というものです。TVでよく沢山の方々が登山している様子をみて経験のない私でもツアーに参加して行けると軽い気持ちで考えていました。経験や知識の重要性を知る事ができたと思う。

  • この事案がニュースになった事は少し覚えているけれどもっとツアーや登山客を責めているような報道だったと記憶している。事前の準備と低体温症の知識などをしっかり持って登山する必要性を改めて感じた。

  • 「批判は悪だ」とか「誰が悪い」だとか感情論や犯人探しが目的ではない。
    2009年7月、北海道大雪山系トムラウシ山で実際に起きた、ツアー登山者18人中引率ガイドを含む8人が死亡するという山岳遭難事故。
    夏山でも気象条件次第で発症する低体温症の事実を検証する事によって、今後同様な事故を未然に防ぐリスクマネジメントのために。
    実体験だけでなく、本を読むことで自身の経験値を上げることもできるはず。
    事故やトラブルの検証は、今後の安全の為に必要なことだと思います。
    自分自身の身を守り、事故や怪我を防ぐ為に。登山を楽しむ全ての人の安全の為に。

  • 山は怖い。
    巨大な自然の力を前に人間の小ささを感じる。

    ツアー登山の是非について。
    登山ブームを迎えた日本にあって当然なサービスだろうと思う。
    計画を立ててくれて経験者と一緒に山を登れる、それだけでも料金を払って参加する価値があるだろう。

    責任を誰が負うかということは、商売をする方にとって確かに重要なことだろう。
    けれど、自分の命を守るということに関して、
    他の誰かが責任をとる、ということがそもそも可能なのだろうか。

    ツアー登山に参加する、病院で医療行為をしてもらう、海を泳ぐ、車に乗る、様々な場面に命の危険があるけれど、その全てにおいて決断して臨むのは自分ではないのか。

    この遭難事故の場合、確かにガイドのアドバイスがもう少しあったら、ガイドが出発すると判断を誤らなかったら、防げたことはたくさんあるだろうけれど、費用や今回の登頂、その他の何かをフイにすることと生きて帰ることを天秤にかけた時に、諦めようと声をあげるということ含め、個人個人も判断を誤っているとしか思えない。

    初心者のうちにこの本を読めて良かった。
    大事なことがたくさん書いてあるので、細かくは後ほど追記。

  • 山岳ノンフィクションドキュメンタリー

    緻密な取材と調査データ

    低体温症の知識
    休養とカロリー摂取の大切さ。

    ツアー登山の現状

    増える“自立しない登山者”

    自己責任の登山と、観光ツアーとの間。

    山との向き合い方が変わった。

  • 2009年7月にトムラウシ山で起きた遭難事故について、生存者の証言、気象、運動生理学、リスクマネジメント等といった観点から多角的に検証する。夏でも起きる低体温症、ツアーという形態の制約など、登山をしない身にも学ぶところが多い。ツアー登山にはツアー登山の利点があるということがわかったが、ツアーだからこそ起こりうる事態を想定し、備えや心構えをもっておかなければならないのはツアー会社・ガイド・利用者、みな同じではないかと感じた。

  • 大・市

  • ジャンフランコは記す。「山は根気強い勤勉さと、沈着と、頑張りの学校だ」と。そしてまた、山という自然に対して「勤勉さを学ぶ学校」でもある。p10

    記された通り読んでいくうちに山に対する畏怖と畏敬を感じてくる。
    登山者がまだ平気、まだ平気と思っているうちに急に引き返せない一線を越えていた恐怖は山に登らない私にも十分恐ろしいものだった。

    私自身がこの事故を体感したものではなく、客観的に観察できる立場である幸運を噛みしめ、同じ鉄を踏まないよう謙虚な姿勢を学びたい。

  • 自分も登山をするので、何度も悪天候に見回れたことがある。このトムラウシと同じように、ザックもウェアもゴアテックスなのにじっとり濡れて、真夏でも寒さに震えて山小屋に駆け込んだことがある。登山中はずっと自分の限界を念頭に頭に置きながら、危ないときは余力のある状態で停滞やビバークを決断する。
    そういうとき、いつも思い出すのはトムラウシ遭難のことだった。
    二ュースの短文ではまったくわからない当時の詳細が知れ大いに参考になった。
    暴風雨でも前日のカロリー摂取、当日朝の体調や睡眠状況などで大きくコンディションが変わる。多少の体調不良程度では、誰もが自分は死ぬわけがないと思っている。でも、嵐になった2日目に一旦行動を始めた上で、自分の体力を鑑みて行動できるかを判断できなかったのだろうかと思ってしまう。違約金を払って離脱することもできたのではないだろうか。

    ただ難しいのは天気で、午後から晴れるとちょっきんの予報がでていれば、行動してしまうかもしれない。そこがアウトドアアクティビティの難しさでもある。

  •  低体温症の恐ろしさよ。己が正常だと思っているが、徐々に判断がつかなくなるのは怖い。ふとした拍子に、簡単にひとはしんでしまう。

     山岳ツアーの話は本当に難しい。
     ツアーだからガイドが守るというだろうが、過剰に防衛して、登れたかもしれない山を取りやめることはクレームにつながらないだろうか。帰りの飛行機は予約しているのに行程を遅らせていいのかとか、本当に迷う。
     もちろん命あっての物種なのだが、命を失うとは思っていないから難しい。  

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著者プロフィール

1961年埼玉県生まれ。ノンフィクションライター。長野県山岳遭難防止アドバイザー。山岳遭難や登山技術の記事を、山岳雑誌「山と溪谷」「岳人」などで発表する一方、自然、沖縄、人物などをテーマに執筆活動を続けている。おもな著書に『ドキュメント 生還』『ドキュメント 道迷い遭難』『野外毒本』『人を襲うクマ』(以上、山と溪谷社)、『山の遭難――あなたの山登りは大丈夫か』(平凡社新書)、『山はおそろしい――必ず生きて帰る! 事故から学ぶ山岳遭難』(幻冬舎新書)などがある。

「2023年 『山のリスクとどう向き合うか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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