人喰いの社会史: カンニバリズムの語りと異文化共存

著者 :
  • 山川出版社
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  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784634640733

作品紹介・あらすじ

どのような情況で人喰いの語りは創られたのか。インフォーマントの役割に着目し大航海時代から現代まで、スマトラを舞台に異文化接触と共存への道筋を解き明かす。

感想・レビュー・書評

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  • この本の基本姿勢はこの一文に現れている。「本書はそれ(食人)が史実を反映するかどうかを検討することよりも、これらが語られたことの事実を重視したい」 つまり、この本の主題は食人行為ではなく、食人行為の語りなのだ。食人を語ることによって何を目指したのか、あるいは歴史的・地理的条件の中で食人を語るということはどういう意味を持つのかその点を詳細に点検する大変興味深い内容。

  • スマトラの民族にかつて存在した食人風習と、その風習がどのような機能として扱われてきたのか。

    食人風習が他者を自分たちの地域に近づけないための噂として扱われていたのは興味深かった。
    貴重な品物の産地だから他者を近づけないために、食人風習があるという噂を流していたという説。

    内容は興味深いんだけど、馴染みのない名前と地名が大量に出てきて、史実に対する解説があまり優しくないので読むのは結構しんどかった

  • ふむ

  • 最終章に「食人慣行の史実を解明することが、本書の直接的な目的ではない」とあるように、歴史的に食人慣行を確定させていくことではなく、食人語りの歴史的背景を探っていく書籍でした。
    「食人」という行為が、時代/地域によってどのように捉えられたかや、どのように利用されていったかを追っていくのは非常に面白かったです。
    私がインドネシアの地理に詳しくなく一部理解に時間がかかる部分がありましたが、それ以外の内容は背景知識がほとんどない自分でもストレス無く読めたように思えます。

  • アメリカとスマトラを中心とした食人文化の研究書です。
    カニバリズムは実際に行われていた風習ですが、西洋人との貿易に対して原住民が考え出した作戦「語り」の意味合いが大きいと理解しました。
    資源の生産者と西洋人を直接交易をさせないために、現地のカニバリズムを強調してしまう経済的手腕に驚きを隠せません。
    スマトラの負の歴史という認識でありつつも、現在では旅行者向けに面白おかしく「語り」が行われているようです。
    恐ろしいことに違いありませんが、現地の経済に貢献し続けている文化です。

  • 人食い族とされた人々が、実際に食人習慣をもったか、そうでないかは簡単には判断できない。スマトラ、パプアニューギニアなどでは処刑した人を食べていた。蛮人に見られることが多い。

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著者プロフィール

1952年生まれ。東京大学人文科学研究科東洋史学専攻、オーストラリア国立大学大学院博士課程修了(Ph.D)。立教大学名誉教授、公益財団法人東洋文庫研究員。専門は、東南アジア海域史。著書に、『東南アジアの港市世界』(岩波書店)、『人喰いの社会史』『東南アジアの建国神話』(山川出版社)、『越境者の世界史』『海と陸の織りなす世界史』(編著、春風社)などがある。

「2022年 『海の東南アジア史 港市・女性・外来者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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